ニュース

ジロ・デ・イタリア2019で南米エクアドルのカラパスが総合初優勝

レース
南米エクアドル初のグランツール勝者になったカラパス 
南米エクアドル初のグランツール勝者になったカラパス 
 
第102回ジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)は、2019年6月2日にヴェローナで最終ステージとなる17kmの個人タイムトライアルを競い、エクアドルのリチャルド・カラパス(モビスターチーム)がリードを守り、総合初優勝を成し遂げた。

エクアドル出身の選手がジロで総合優勝したのは、もちろん初めてだ。南米出身の選手としては、2014年に総合優勝したコロンビアのナイロ・キンタナ(モビスターチーム)以来2人目となった。

総合2位には地元イタリアのヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)が入り、総合3位の座はスロベニアのプリモシュ・ログリッチェ(チームユンボ・ビスマ)が、最後の個人TTで取り戻した。

しかし、ログリッチェは最終ステージで区間優勝はできず、米国のチャド・ハガ(チームサンウェブ)が、30歳でグランツール区間初優勝を手中に収めた。

日本から参加していた初山翔(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)は、6時間5分56秒遅れの総合142位で完走を果たした。


大会期間中に26歳の誕生日を迎えたカラパスは、2017年からスペインのモビスターチームで走り、昨年のジロでは土砂降りの頂上ゴールを制し、祖国エクアドルに初のジロ区間優勝をもたらしていた。彼は総合4位になっていたが、今年はミケル・ランダのアシストとしてスタートしていた。

スペインのモビスタチームにとっては、1980年のチーム創立以来、15回目のグランツール制覇となった。

 
表彰台でチームメートに胴上げされたカラパス 
表彰台でチームメートに胴上げされたカラパス 
最終日の個人TTで優勝したハガ
最終日の個人TTで優勝したハガ
最終日の個人TTでマリア・ローザを守ったカラパス 
最終日の個人TTでマリア・ローザを守ったカラパス 
表彰式が行われたヴェローナのアレーナには、大勢の観客が詰めかけていた
表彰式が行われたヴェローナのアレーナには、大勢の観客が詰めかけていた

フルーム、ベルナル、バルベルデが欠場し、ドゥムランが序盤にリタイア

今年のジロ・デ・イタリアは、ディフェンディングチャンピオンのクリストファー・フルーム(チームイネオス/英国)が参加せず、代わってエースを務めるはずだったコロンビアのエガン・ベルナル(チームイネオス)も直前のトレーニングで落車して鎖骨を骨折し、参加できなくなってしまった。ゼッケン1を付ける予定だった世界チャンピオンのアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)も4月中旬のトレーニングで負った怪我が回復せず欠場し、モビスターチームは急遽ランダがエースを務めることになった。

個人タイムトライアルが3ステージあった今年のジロで、開幕前に有力な優勝候補として名前が上がっていたのは、2017年に総合優勝したオランダのトム・ドゥムラン(チームサンウェブ)と、今季ティレーノ~アドリアーティコ(UCIワールドツアー)とツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)で総合優勝していたスロベニアのプリモシュ・ログリッチェ(チームユンボ・ビスマ)だった。

さらに昨年ジロでマリア・ローザを13日間着用し、ブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝した英国のサイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)、ジロで2度の優勝経験がある地元イタリアのベテラン、ヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)、昨年初出場で総合3位になり、新人賞を獲得したコロンビアのミゲルアンヘル・ロペス(アスタナプロチーム)も優勝候補に名乗りを上げていた。

ボローニャ郊外の丘の上にあるサン・ルーカ聖堂前にゴールした初日の個人タイムトライアルでログリッチェが優勝し、マリア・ローザ争いはスタートした。ところが第4ステージでドゥムランが落車に巻き込まれて負傷し、翌日リタイアする番狂わせが発生した。マリア・ローザ争いに大きな影響を与えた第4ステージで区間優勝したのは、奇しくもカラパスだった。

一方、ドゥムランのリタイアで強敵が1人減ったログリッチェは、第6ステージで7分以上の大差で逃げ切った地元イタリアのヴァレリオ・コンティ(UAEチーム・エミレーツ)に総合首位の座を明け渡した。しかし、この時手放したマリア・ローザを二度と取り戻せなくなるとは、彼は夢にも思わなかっただろう。

ログリッチェはサンマリノの丘にゴールした第9ステージの個人タイムトライアルでも区間優勝したが、マリア・ローザにはまだ手が届かなかった。断続的に降る雨の中で競われたこの個人タイムトライアルを、カラパスはログリッチェよりも1分54秒遅れで走りきったが、彼が守るべきエースのランダは3分3秒も遅れてしまっていた。
 
第14ステージで区間優勝して総合首位に立ったカラパス
第14ステージで区間優勝して総合首位に立ったカラパス
カラパスは初めて袖を通したマリア・ローザに何度もキスをしていた
カラパスは初めて袖を通したマリア・ローザに何度もキスをしていた

後半戦に入って山岳ステージが始まり、マリア・ローザは第12ステージで逃げに加わっていたスロベニアのヤン・ポランツェ(UAEチーム・エミレーツ)が、チームメートのコンティから引き継いだが、それを守れたのはたった2日だった。モンブラン南斜面のクールマイユールにゴールした第14ステージで27.8kmを独走して逃げ切ったカラパスが、区間優勝とマリア・ローザの両方を手中に収めてしまったのだ。

その時点でログリッチェのタイム差はたった7秒しかなかったが、カラパスは最終日のヴェローナまでマリア・ローザを手放すことはなかった。一方、ログリッチェはロンバルディア地方で行われた翌日のステージで不運が重なり、40秒も失ってしまった。彼は終盤機材故障に見舞われた際、スペアバイクを積んだチームカーが近くにおらず、チームメートのバイクを借りてレースを続けたのだが、下り坂で転倒して遅れてしまったのだ。

終盤の山岳ステージでもログリッチェは精彩を欠いた。カラパスとのタイム差は開く一方で、最終日の個人タイムトライアルで逆転できる可能性も失ってしまった。レース後のインタビューで、彼は山岳ステージで胃の問題を抱えていたと明かしている。

ログリッチェとは対照的に、初日の個人タイムトライアルで23秒遅れの区間3位に入ったニバリは、ドメニコ・ポッツォヴィーヴォやダミアーノ・カルーゾといったチームメートたちの献身的なサポートを受けながらアタックを続けたが、ランダがアシストに回ったモビスターチームに競り勝つことはできなかった。しかし、彼は総合2位でレースを終え、ヴェローナの表彰台で祝福された。34歳のニバリにとって、これはグランツールで11回目の表彰台だった。


■総合初優勝したカラパスのコメント
「ボクはこの勝利を妻と子供たちと一緒に楽しみたい。両親とは電話で話すよ。自分が成し遂げた事をとても誇りに思っている。グランツールで勝つという夢を実現できて嬉しい。ボクたちは決して子供の頃の夢を忘れてはいけない。それは強い決意を持って努力すれば常に現実になりうる。

ボクはヨーロッパで4年間自転車レースをしているが、チャンスを掴まなければならないことに気がついた。第15ステージで得た30秒が肝心だった。ボクはニバリとログリッチェの牽制から利益を得た。それがこのジロの勝敗を決した。ボクにとっては、これはほんの始まりにすぎない。ボクたちはいつももっと夢見るものさ」


■総合2位になった34歳のニバリのコメント
「今朝、ボクはこのジロで勝つのは非常に難しいと知っていた。でも、良いタイムトライアルをしようと思っていた。だからボクは最後まで全力を尽くしたんだ。ジロで総合2位というのはまだ良い成績だ。とくに半年前、ツール・ド・フランスでの落車後の背中の痛みに苦しんでいたことを思えばね。グランツールで総合優勝を目指して闘うことはポジティブなことさ」


■総合3位で終わったログリッチェのコメント
「自分が抱えていた様々な問題の後で、最後の表彰台に上がって終われたのはとても素晴らしい。今日は疲れを感じていた。でも、山岳ステージで胃の問題でひどく苦しんだ後だったから、このタイムトライアルで自分に競争する力があるとは思っていなかった」
 
ジロ・デ・イタリア2019の表彰台。左から総合2位のニバリ、総合優勝のカラパス、総合3位のログリッチェ 
ジロ・デ・イタリア2019の表彰台。左から総合2位のニバリ、総合優勝のカラパス、総合3位のログリッチェ 
ポイント賞のマリア・チクラミーノを獲得したアッカマン
ポイント賞のマリア・チクラミーノを獲得したアッカマン
山岳賞のマリア・アッズーラを獲得したチッコーネ
山岳賞のマリア・アッズーラを獲得したチッコーネ
新人賞のマリア・ビアンカ02年連続で獲得したロペス
新人賞のマリア・ビアンカ02年連続で獲得したロペス
 
■第21ステージ結果[6月2日/ヴェローナ(フィエラ)~ヴェローナ(アレーナ)/17 km(個人TT)]
1. HAGA Chad (TEAM SUNWEB / USA) 22’ 07”
2. CAMPENAERTS Victor (LOTTO SOUDAL / BEL) 0’ 04”
3. DE GENDT Thomas (LOTTO SOUDAL / BEL) 0’ 06”
4. CARUSO Damiano (BAHRAIN - MERIDA / ITA) 0’ 09”
5. LUDVIGSSON Tobias (GROUPAMA - FDJ / SWE) 0’ 11”
6. CERNY' Josef (CCC TEAM / CZE) 0’ 11”
7. BILBAO L. DE ARMENTIA Pello (ASTANA PRO TEAM / ESP) 0’ 17”
8. CATTANEO Mattia (ANDRONI GIOCATTOLI - SIDERMEC / ITA) 0’ 20”
9. NIBALI Vincenzo (BAHRAIN - MERIDA /ITA) 0’ 23”
10. ROGLIC Primoz (TEAM JUMBO - VISMA / SLO) 0’ 26”

21. LANDA MEANA Mikel (MOVISTAR TEAM / ESP) 0’ 57”
36. CARAPAZ Richard (MOVISTAR TEAM / ECU) 01’ 12”
139. HATSUYAMA Sho (NIPPO - VINI FANTINI - FAIZANE' / JPN) 03’ 37”

第102回ジロ・デ・イタリア 個人総合最終成績

1. CARAPAZ Richard (MOVISTAR TEAM / ECU) 90h 01’ 47”
2. NIBALI Vincenzo (BAHRAIN - MERIDA /ITA) 01’ 05”
3. ROGLIC Primoz (TEAM JUMBO - VISMA / SLO) 02’30”
4. LANDA MEANA Mikel (MOVISTAR TEAM / ESP) 02’ 38”
5. MOLLEMA Bauke (TREK - SEGAFREDO / NED) 05’ 43”
6. MAJKA Rafal (BORA - HANSGROHE / POL) 06’ 56”
7. LOPEZ Miguel Angel (ASTANA PRO TEAM / COL) 07’ 26”
8. YATES Simon Philip (MITCHELTON - SCOTT / GBR) 07’ 49”
9. SIVAKOV Pavel (TEAM INEOS / RUS) 08’ 56”
10. ZAKARIN Ilnur (TEAM KATUSHA ALPECIN / RUS)  12’ 14”
142. HATSUYAMA Sho (NIPPO - VINI FANTINI - FAIZANE' / JPN) 6h 05’ 56”

[各賞]
■ポイント賞(マリア・チクラミーノ):ACKERMANN Pascal (BORA - HANSGROHE / GER) 
■山岳賞(マリア・アッズーラ):CICCONE Giulio (TREK - SEGAFREDO / ITA)
■新人賞(マリア・ビアンカ):LOPEZ Miguel Angel (ASTANA PRO TEAM / COL) 
■スーパーチーム成績 : モビスターチーム(スペイン)

ジロ公式サイト
 
    
    

第21ステージのハイライト映像