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TOJ、酷暑の東京ステージを優勝で飾った窪木

レース

最終、気温32度の東京ステージ

東京ステージのスタートには小池百合子東京都知事が駆けつけた
東京ステージのスタートには小池百合子東京都知事が駆けつけた
伊豆ステージまでのジャージ獲得者が一番前に整列する
伊豆ステージまでのジャージ獲得者が一番前に整列する
最終東京ステージのホームチームは日本ナショナルチーム
最終東京ステージのホームチームは日本ナショナルチーム

5月26日(日)、今年のツアー・オブ・ジャパン最終決戦である東京ステージ。パレード3.8km+7kmの周回コースを16周する全112kmのクリテリウムコースだ。

TOJの期間中、途中天気が崩れることが予報にあったものの、幸いなことに結局全てのステージで晴天に恵まれた。

最終ステージ前の時点で、完走さえすれば、クリス・ハーパー(チームブリッジレーン)の総合優勝とフィリッポ・ザッカンティ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ)の山岳賞獲得は確定。

スプリント賞に関しては、昨日逃げに入ってポイントを積み重ねたフェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)とレイモンド・クレダー(チーム右京)が同ポイント。東京ステージで4周ごとに設けられたスプリントポイントと、最終のゴールスプリントでの戦いに委ねられた。
 

逃げで最後の存在感を示す選手たち

ガルシアの抜け出しにグアルディオラとともに追走をかける安原
ガルシアの抜け出しにグアルディオラとともに追走をかける安原
ガルシアに追いつき、4人の逃げグループが長い間先頭に立ち続けた
ガルシアに追いつき、4人の逃げグループが長い間先頭に立ち続けた
チームブリッジレーンがリーダージャージを守りながら集団をコントロールする
チームブリッジレーンがリーダージャージを守りながら集団をコントロールする

スタートすると、安原大貴(マトリックスパワータグ)がファーストアタック。スペインからの遠征で疲れを残し、調子が上がりきらなかったが、多くの人の声援のおかげで東京までバイクを降りずに来られた。特に気持ちが折れかけたいなべステージでの声援は力になった。「いなべでたくさんの人が応援してくださって、元気だぞ!っていうのを見せたくて、絶対何がなんでも逃げたいなと思っていて」と安原は振り返る。

さまざまな選手がTOJ最後の逃げに乗ろうと試みるものの吸収。やっと決まったのは、前年度優勝者ゼッケン1番をつけるマルコス・ガルシア(キナンサイクリングチーム)のアタックだった。安原もどうにかガルシアに追いつき、無事に逃げグループに乗り込む使命を果たす。逃げは、ガルシアのチームメイトのサルバドール・グアルディオラとフォン・カーホー(HKSIプロサイクリングチーム)を加え、4人のグループができあがった。

一方で集団は、グリーンジャージを着るクリス・ハーバー擁するチームブリッジレーンのコントロールとなった。

スプリント賞はゴール一本勝負。

ブリッジレーンのコントロールとともにスプリント勝負を狙うチームの選手が牽引に加わる
ブリッジレーンのコントロールとともにスプリント勝負を狙うチームの選手が牽引に加わる
ただでは帰るまいと逃げグループからさらに抜け出すガルシア
ただでは帰るまいと逃げグループからさらに抜け出すガルシア

スプリントポイントで拮抗するチーム右京とジョッティ・ヴィクトリア・パロマーは、スプリントポイントでは争わず。ゴール一本での勝負となった。スプリント賞で3位につけていた窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング)もゴール勝負を想定し、最後の逆転を狙う。

逃げと集団の関係はしばらく変わらず。メイン集団では、終盤にかけて最終ゴールスプリントを狙うチームが集団けん引役をそれぞれ投入。チーム右京やチームブリヂストンサイクリング、ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー、愛三工業レーシングチームなどが加わった。

12周目に入ると同時に逃げグループからガルシアが沈黙を破る単独アタック。安原のローテーション中にさらにグアルディオラがアタックし、キナン2人の逃げグループができあがった。安原は「追えないペースではなかった」と語るが、カーホーとけん制をしている間にタイム差を稼がれてしまった。
気迫の逃げはガルシアとグアルディオラの2人に
気迫の逃げはガルシアとグアルディオラの2人に
ジョッティからは、地元である小林海も希望して牽引に加わった
ジョッティからは、地元である小林海も希望して牽引に加わった
グアルディオラが力を尽くすも、ラスト1周のラインとほぼ同時に集団に吸収された
グアルディオラが力を尽くすも、ラスト1周のラインとほぼ同時に集団に吸収された
昨日落車をした増田は、「おそらく仙骨とか腸骨とかが折れている」と話していたが、「こんなところで投げ出せない」と最終ステージ出走。仕事を勤めながら10位完走を果たした
昨日落車をした増田は、「おそらく仙骨とか腸骨とかが折れている」と話していたが、「こんなところで投げ出せない」と最終ステージ出走。仕事を勤めながら10位完走を果たした
虎視眈々とレースを運びをする窪木
虎視眈々とレースを運びをする窪木

初日ステージ以来の日本人優勝

スプリント勝負を勝ち切った窪木
スプリント勝負を勝ち切った窪木
チームメイトと最高の成果に喜ぶ
チームメイトと最高の成果に喜ぶ

しかしメイン集団もいよいよ活性化を始める。キナン2人の逃げグループはラスト2周でスピードが上がった集団にキャッチされた。

集団内でいい位置につけるチーム右京や宇都宮ブリッツェン、チームブリヂストンサイクリングの姿が見える。拮抗し合いながら最後の左コーナーを抜け、一番最初に見えたのはチームブリヂストンサイクリングの白いジャージ。そのまま同チームの窪木が飛び出し、十分な差をつけてゴールラインを一番に切り、初日以来の日本人選手優勝でTOJ最終ステージを飾った。

最終スプリントについて窪木はこう振り返る。

「孫崎選手がラスト2kmからずっと10番手くらいでずっといい位置どりをしてくれて、左コーナーに曲がるところでは5番手くらいに上がり、ラスト250mに入ってから孫崎選手がスプリントをして、それを自分が捲りにいって発射して、全開でもがけた結果、優勝につながりました。後ろも結構離れていたので、今日は勝ったなという思いで気持ち良くスプリントできました」

UCIレースでの勝利は初である窪木はこう語る。

「なかなかUCIレースで勝利がない状態でここまできていて、この勝利はキャリアにおいてもこれから弾みがつく勝利になったと思いますし、日頃からやってきたトレーニングがこの結果を生んだと思うので、自信を持って練習に励めるし、今日はチームメイトが最高の形で自分をスプリントさせてくれたおかげで優勝ができたので、チームメイトには本当に感謝したいですし、自分は年長なので、これまでの知識とか技術とかを下の世代に伝えていけるよう、チームでいい循環ができるようにまだまだ成長できたらいいなと思います。」
 

ハーパーが総合優勝、ズルロがスプリントジャージを獲得

2019年のTOJを制したハーパー
2019年のTOJを制したハーパー

今年の総合優勝者となったハーパーは、「チームとしては逃げもありましたが先頭を走っていて、そのあとスプリントをしたいチームが前に出てきて、集団牽引を始めました。それはプラン通りだったと思いますし、チームとしてはいい位置でレースができたと思います」と今日のステージを振り返った。

ステージ2位に入ったズルロは、スプリント賞ジャージを獲得。「良いレースができました。今日は窪木が本当に強すぎました。僕に必要だったのはポイント賞ジャージを守るためにポイントを稼ぐことだったので、2位に食い込めたことはうれしいです。もちろんステージ優勝はしたかったんですけど、今日は窪木選手が強すぎました」と話した。

最終ステージリザルト

第8ステージ順位

1位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 2時間23分1秒
2位 フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) +0秒
3位 オールイス・アウラール(マトリックスパワータグ) +0秒


個人総合時間賞(グリーンジャージ)

1位 クリス・ハーパー(チームブリッジレーン) 19時間49分57秒
2位 ベンジャミ・プラデス(チーム右京) +40秒
3位 ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) +51秒


個人総合ポイント賞(ブルージャージ)

1位 フェデリコ・ズルロ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) 87pt
2位 窪木一茂(チームブリヂストンサイクリング) 80pt
3位 レイモンド・クレダー(チーム右京) 67pt


個人総合山岳賞(レッドジャージ)

1位 フィリッポ・ザッカンティ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ・ファイザネ) 33pt
2位 クリス・ハーパー(チームブリッジレーン) 15pt
3位 エミール・ディマ(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー) 12pt


個人総合新人賞(ホワイトジャージ)

1位 クリス・ハーパー(チームブリッジレーン)
2位 ドリュー・モレ(トレンガヌ・INC.・TSG・サイクリングチーム)
3位 小林 海(ジョッティ・ヴィクトリア・パロマー)


チーム総合順位

1位 チーム右京



text&photo:滝沢佳奈子


http://toj.co.jp/