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ロードアジア選帰国インタビュー、五輪への思い ~女子編~
レース
2019.05.05
4月23~28日、中央アジアに位置するウズベキスタン・タシュケントで行われたロードレースアジア選手権。4月30日に帰国したエリート男子の増田成幸、窪木一茂、エリート女子に出場した牧瀬翼、U23女子の梶原悠未にアジア選手権での感触と来年に迫った東京五輪への思いを聞いた。
text&photo:滝沢 佳奈子
エリート女子はポイント獲得、U23女子は優勝
全長112.5kmで争われた女子ロードレースは、エリートとU23が混走。男子エリート同様、ラスト10kmと距離こそ違えど上りの先にゴールが設定された。
女子エリートは、樫木祥子、牧瀬翼、唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)、金子広美(イナーメ信濃山形)、そしてU23枠で梶原悠未(筑波大)が出場した。
作戦としては、1位だけを狙うのではなく、全員が上位に入って確実にUCIポイントを取ること。展開によって牧瀬か樫木をエースとして、周りがサポートしていくという戦略も敷かれていた。
梶原はエリートの選手たちをアシストしながらも、最後は自分のペースで上って、U23の枠でもポイントを獲得するという役割を担っていた。
レースは、終始カザフスタンの選手が人数を揃え、交互にアタックを仕掛けてくる展開で、そこに韓国の選手がチェックに入って逃げを潰すような展開。
梶原は常に集団前方に位置し、逃げに対応できるように準備をした。
ウズベキスタンの選手たちが集団前方でローテーションを始めると、アタックを全て吸収していき、集団は落ち着きを見せた。
一部始終を冷静に観察していた梶原は後半を振り返る。
「後半はほとんどウズベキスタンのローテーションで一列棒状っていう感じだったので、常に集団の10番手以降に下がらないように前に位置取りをしていました。
上りに入る前に少しペースが上がったんですけど、そこでもポジションを下げないように、あとはエリートの選手たちが前で入れるように、目で気にしながら走っていました。上りに入ってからは、最初30人くらいがバーンと出て、上って行ったんですけど、それは自分にとっては少しオーバーペースだなと感じたので、そこには付いて行かずに自分のテンポで淡々と上り始めました。
アンダーの選手とエリートの選手とのゼッケン番号がごちゃまぜで、判別が難しかったので当日の朝にスタートリスト見て、大体のアンダーの選手のゼッケン番号を覚えていたので、上りながらもアンダーの選手のゼッケンをチェックして、この選手はアンダーだから自分が前に行かなくちゃいけないとか、ここで自分がちぎれちゃいけないという判断を冷静にしながら、ラスト10kmの上りをとこなしました。
落ちてくる選手とかも結構いたので、その選手たちをどんどん抜かして行って、順位をどんどん上げていくっていう展開で、最終的にはエリート含めて8位になることができました。フィニッシュ後、すぐに順位が分からなかったんです、アンダーの選手は前にいたのか分からなくて。
自分が優勝したっていう確信が持てなかったんですけど、正式結果が出るまで自分が絶対優勝しているっていう思いで待っていました」
梶原悠未は、全てをオムニアムメダル獲得のために。
梶原に、五輪に向けて何に注力しているのか聞いた。
「2020年東京オリンピックの舞台では、一番金メダルが近いのは(トラックの)オムニアム種目だと思うので、今は東京オリンピックではオムニアム種目での金メダル獲得を目指しています。でもオムニアムの海外のトップ選手たちもこの時期ロードレースを走って、ワールドツアーで優勝などしている選手ばかりなので、自分もその選手たちに食らいついていけるようにロードレースでも活躍したいと思っています」
国内外問わずロードレースでも活躍を見せてきている梶原だが、ロードレースでの五輪出場というのも視野に入れているのだろうか。
「選考基準を突破して、日本代表に選ばれた際には出場したいっていう気持ちはありますけど、そこをメインというよりはオムニアムに特化した練習に今は重きを置いています。
でもロードレースに出ることによって、そこで磨かれた集団走行の技術であったり、体力、戦術の立て方はオムニアムに生きる部分もあるので、私は並行して強化していくことができればと思っています」
梶原は強い眼差しで明確な目標を強調した。また、トラック中距離の団体競技について、誰よりも冷静に現状を分析をする。
「(トラック中距離)合宿とかには大学との折り合いもつけながら現在も参加していて、合わせとかもしていますが、今の日本代表の現状ですと、もっと一人一人の能力を上げて行かなければオリンピック出場というところには難しいと思います。できれば中距離のオリンピック種目、チームパシュート、マディソン、オムニアム3種目全てに出場することが目標ですけど、まずは自分の中ではメダルをしっかりと狙いたいです。出るだけじゃなくてメダルを獲りに行くっていう強い気持ちで今は準備しているので、自分の中でもオムニアムで狙いたいっていう気持ちが一番ですね」
東京五輪オムニアム金メダルに向けて、現状の自身の達成度について、
「今年の(トラック)世界選手権でメダルを獲る位置にいることがオリンピックでのメダルの獲得を語れるのかなと自分でラインを設定していたので、届かなくて悔しい部分もありますね。10段階で評価すると、6くらいかなと思います」
と、明確な目標に対して自分の立ち位置を推し量る。決してブレることのない芯の強さ、それが心身ともに彼女の強さを証明する材料の一つなのだ。残りあと1年、さまざまな障害を乗り越えてさらに強くなった彼女が自由に羽ばたく姿を見たい。
牧瀬翼の課題。
TTでは、そもそもTTバイクに乗るのが3回目。準備不足だった。牧瀬は振り返る。
「個人的な感想としては準備不足で挑んでしまったことと、他の選手に対しても申し訳ない気持ちと悔しい気持ちがあります」
ロードに関しては、女子エリートの作戦どおり、メンバー全員がポイントを取ることを達成した。
「3枠目を取りたいということで今回のアジア選は挑んだんですよね。そのためには全員がポイントを取ることが必要だったので。レベルの差はまだ歴然としてありますね。でも最低限の目標としては達成されたのかなと」
今回チームTTを走ったことで課題や足りない部分がはっきりと分かったと話す。
「そもそも巡航できるスピードが遅いんですよね。ヒルクライムや平地のFTPくらいであれば長時間ローテーションでもいけるんですよ。でもチームTTに必要なのは、FTPよりもちょっと高い出力で。それでローテーションができないんですよね。今のレベルだと。そこはすごく感じました。ただ単に巡航スピードが遅いっていう。
梶原選手が一緒に入ってくれたから余計に感じることができました。トラック選手というのもあって、巡航できるスピードが全然違うんですよね。高出力高スピードで引いてくれるので、それを維持して回せないんです。そこがトラックとロードの大きな違いかもしれないですけど、世界でってみるとロードでもその能力は絶対に必要なので、それを感じ取ることができたのは非常に大きかったですね」
牧瀬はもともとは五輪出場に対してさほど興味がなかったというが、最近になって出たいという思いが強くなってきたという。
「どう考えても(ロードは)與那嶺(恵理)さんが突出して強いので、それはみんな認めていますし、ずば抜けて強いです。もしオリンピックで戦うってなったらそのレベルまでいかないと、ただ出るだけで、今のレベルのままだと完走できないと思います。
日本女子のレベルを考えると、この1年ちょっとで全体を上げるっていうのは厳しいと思っています。どこまで上げていけるかじゃないですかね。
自分のレベルが程遠いのも分かっていたんですが、最近自分の中でのレベルも少しずつ上がっていることに気づいて、レベル上げるスピードも上げないといけないのも分かっているんですけど、それができたら狙っていけるんじゃないかなというのを感じ始めたんですよね。まだまだというのは分かっているんですけど、以前よりはですかね」
最近の女子エリート、というか與那嶺の活躍は目覚ましい。
もあり、女子エリートのトップとの差は、男子エリートよりは力の差は大きくないかもしれない。だが、それでもまだまだ”メダル”という言葉を口にはできる現状ではない。日本女子の底上げに期待したい。
【女子エリート&女子U23 ロードレース リザルト】
1位 ZABELINSKAYA Olga (カザフスタン) 3時間9分5秒
2位 NA Ahreum (韓国) +47秒
3位 YLAZDANI Somayeh (イラン) +59秒
4位 樫木祥子 +1分16秒
6位 牧瀬翼 +1分43秒
8位(→U23でトップ) 梶原悠未 +2分1秒
10位 唐見実世子 +2分1秒
12位 金子広美 +2分25秒
【女子エリート チームTT リザルト】
1位 韓国 38分28秒
2位 カザフスタン +1分20秒
3位 香港 +1分58秒
4位 日本 +2分42秒
【女子エリート 個人TT リザルト】
1位 ZABELINSKAYA Olga (カザフスタン) 39分28秒
2位 LEE Yumi(韓国) +25秒
3位 HUANG TING Ying(チャイニーズタイペイ) +2分9秒
4位 牧瀬翼 +5分25秒
【女子23 個人TT リザルト】
1位 CHANG TING Ting(チャイニーズタイペイ) 41分5秒
2位 梶原悠未 +2分41秒
3位 BAYMETOVA Renata(ウズベキスタン) +2分46秒