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変速機を無線電動化×ミックス!「Xシフター」カスタムレポート【実際に使ってみた】

新製品
2018年の台北ショーで発表された無線電動変速ユニット・Xシフターを、編集部員が実際に自費購入し、使い倒してみました。あらゆる変速機を無線電動化することができるこのユニットの、唯一無二の魅力とは?
(text&photo:江里口恭平)

Xシフターを実際に組み付けて使ってみた

Xシフター価格/4万2000円(税抜)
Xシフター価格/4万2000円(税抜)

電動変速機が浸透してきた昨今。あらゆるブランドの上位グレードには電動モデルが必ずラインナップし、そして先日のスラム・レッドeタップアクセスに見られるような多段化、無線化などで話題をさらうのも、やはり電動変速機。とはいえ、それが手持ちの全てのバイクを電動化できるほどにお安い金額と言えないのも事実だ。

かくいう筆者も、ガチ仕様のロードバイクとは別に、フジのCX車を通勤や街乗りで使っている。昨年一度だけCXレースに出走したものの、気張って走る気は全くないので、各所にゆるいカスタムが繰り返されているバイクだ。
さて、そこにやって来たのがXシフター、昨年の台北ショーで、やれ超フラッグシップモデルやeバイクやと並んでいた中で公開されたこのXシフターは、「これこれ、こういうのでイイんだよ」と思わしめた、手元のコントローラから無線でユニットを操作し、ユニットがリヤディレイラーのワイヤーを引っ張るという代物だ。
真面目な内容は本誌3月号特集やこちらに詳しい。

改めて簡単にXシフターを説明すると、手元でシフトアップ・ダウンを操作するコントローラーユニット(POD)と、リヤディレーラーのワイヤーを引っ張るモーター・バッテリー・コンピューターが内蔵されたメインユニット(Elink本体)の二つからなり、フロント用とリヤ用の2つの変速タイプがラインナップ。
メインユニットはシートステーやチェーンステーにタイラップなどで固定し、そこからシフトワイヤーをRDに繋げることで、モーターがワイヤの引っ張り量を調整する。
また、専用のアプリから変速段数(3段から13段まで)やワイヤの引き量(何mmか)を細かく設定・調整することができるので、一度取り付けてしまえばあとの細かいメンテナンスはアプリ上から行うことができる。
 



と、仕組みが分れば、現在使っている機械式コンポをお手軽に電動化するということも理解できる。

だがそもそも、わざわざ無線化する必要があるのだろうか。もちろんかっこよさとかロマンと言いたくなるが、正直言うとXシフターの動作速度やレスポンスは、シマノ・105にも追いつくか怪しいレベルだ。そのまま純正機械式変速を使った方が圧倒的に変速の使い勝手はいいし安心できる。
ただXシフターは、コンポーネントが全て統一され、きちんと動作することが当たり前になった今だからこそ、変速だって何でもありなアソビじゃないか?と改めて思わせてくれる気がする。

それは操作感の話だけではない。これは一例であるが、9速対応のリヤディレイラーの稼働範囲は、12速のものと大きな相違はない。それならXシフターを採用することで、スプロケットとチェーンさえ対応するものに代えれば、リヤディレイラーが9速対応のままでも11速を操作することができるということだ。つまりはソラで11速化、あるいはXTR12速でデュラエース11速を動かすこと、旧時代コンポの電動化などなど、いわゆるミックスコンポすらもXシフターで容易になるのだ。


さて、振り返って筆者のフジ号は現在、フロントをシングルに変更している。とすれば、そこからXシフターのリヤユニットを取り付けると、もはや有線変速機内蔵レバーを使う意味は無い。
と言うわけでレバーをシンプルなブレーキレバーに交換。右ブラケットの下側にコントロールユニットを取り付け、ブラケットを握ったちょうど指先で変速操作が可能になった。
 
下のパーツがコントロールユニット・PODとメインユニット・Elink。ついでにブレーキレバーとワイヤディスクブレーキキャリパーも交換
下のパーツがコントロールユニット・PODとメインユニット・Elink。ついでにブレーキレバーとワイヤディスクブレーキキャリパーも交換
せっかくなので11速化してみましょう、と105グレードのスプロケとチェーンを用意。このスプロケ、10速対応のフリーボディにも入る
せっかくなので11速化してみましょう、と105グレードのスプロケとチェーンを用意。このスプロケ、10速対応のフリーボディにも入る
ブレーキレバーのブラケットに取り付けたPOD。2つのボタンでそれぞれシフトアップ、シフトダウンできる。コイン電池を内蔵
ブレーキレバーのブラケットに取り付けたPOD。2つのボタンでそれぞれシフトアップ、シフトダウンできる。コイン電池を内蔵
元々のワイヤの取り回しを踏襲し、シートステー部にElinkを設置。これを起点にワイヤが引かれる。このユニットにバッテリーやコンピューターが内蔵
元々のワイヤの取り回しを踏襲し、シートステー部にElinkを設置。これを起点にワイヤが引かれる。このユニットにバッテリーやコンピューターが内蔵
こちらはアプリの管理画面。アプリを起動すると10秒ほどで自動接続。Elinkのバッテリー残量もチェックできる
こちらはアプリの管理画面。アプリを起動すると10秒ほどで自動接続。Elinkのバッテリー残量もチェックできる
設定で11速を設定し、そこから変速の引き量を設定。この作業によって、3段から13段までのあらゆる変速機(正確にはスプロケ側であるが)に対応可能
設定で11速を設定し、そこから変速の引き量を設定。この作業によって、3段から13段までのあらゆる変速機(正確にはスプロケ側であるが)に対応可能
現在通勤で使っていますが、変速動作のストレスフリーの大切さを改めて感じました
現在通勤で使っていますが、変速動作のストレスフリーの大切さを改めて感じました

そして元々バイクの初期装備としてソラで組まれていたものから、スプロケとチェーンを105グレードの11速対応モデルに交換。現行シマノのスプロケ(CS-HG-700-11など一部)は、10速対応フリーボディでも11速を入れることができるのため交換はスムーズだ。あとは11速チェーンを付け替えて、アプリで詳細を設定すれば、これでフジ号の11速化は完了。通常有線ならSTIレバーをを取り付けワイヤ調整をして……という作業は無線化したため不用だ。
もとのソラのRDがGSだったため、11-34Tの11速を導入しても問題無く稼働。フロントシングルにとってワイドギア&クロスレシオ化は非常に有効だ。


ちなみに気になる操作感として、現在ガシガシ動かしている身としては、一言二言言いたくなることはある。
まずは、コントロールユニットの操作感が乏しいので、真冬の厚手のグローブではシフト動作に難がある。強めに押すことを心がけないと、わりと頻繁に操作ミスが発生する。また、スリープモードに入るのが早いので、しばらく止まってからまた走りだそうとすると変速してくれず、長めのタイムラグが発生する。そしてやっぱりたまに変速してくれない。改善することは、正直まだまだある。


でもそんなことを言っていたら、ちゃんとフル電動コンポをそろえるというのが一番の解決となるのは間違いない。
それでもこのXシフターがユニークなのは、今使っているコンポを無線電動変速化すること以上に、各メーカーがMTBやロード、グラベルなどさまざまな領域に広げているトータルコンポーネントの変速システムを、外部ユニットを介させることで、もっとミックスした、何でもありな、すなわち自分にフィットした楽しみ方へと繋いでくれるものである。
ひとくせも二癖もあり、そしてあまり完成されていない。「そうそう、こういうのがイイんだよ」と思わせてくれるメカに、たまにはのんびり付き合ってみるというのも、悪くないのかもしれない。


問・トライスポーツ
問・アクションスポーツ