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ビンディングペダルの歴史

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ビンディングペダルの歴史は、1984年にリリースされたルック・PP-65が原点とされる。ルック以前にも、ペダルとシューズの一体化構想は散見されたものの、着脱のしにくさや重量、既存シューズとの互換性問題から普及には至らなかった。ルックが、〝ルックタイプ〞と呼ばれる3つ穴でクリートを固定する構造を考案し、軽量なプラスチック製クリートを実用化させたことで、飛躍的に性能が向上。ベルナール・イノーやグレッグ・レモンが使ってロードレースで活躍したこともあり、一気に普及した。この〝ルックタイプ〞は、ロードペダル&シューズのデファクトスタンダード(事実上の標準規格)となり、今でもほとんどのペダル&シューズメーカーで使われている。
 

ビンディングの歴史は 効率性と快適性の追求

ルック・PP-65
ルック・PP-65


1990年には、シマノがSPD規格のペダル&シューズをリリースし、ビンディングシューズの弱点とされていた〝歩行のしにくさ〞を解消。オフロード系ユーザーやツーリング系ユーザーにも広く受け入れられるようになった。

余談だが、ビンディングペダルの登場以前のスポーツバイクは、足(シューズ)をトゥクリップ&ストラップでペダルに固定する〝クリップ式〞が主流で、これは今でも競輪などのピスト競技や一部ツーリストに使われている。

​クリップ式からビンディング式になったことで、例えば信号待ちなどですぐに足を出したいときに出しやすくなり、足をペダルへ固定後に旋回させる動き(足首を左右にねじる動き)を実現できるようにもなった。また、どんなレベルのユーザーであっても、〝引き足〞を使えるようにもなったので、極端に表現するならクランク360度全てで推進力を生み出すことも可能となった。

 

タイムの登場で認知された フローティングの重要性

タイム・50.1レーシング
タイム・50.1レーシング


先走って〝旋回〞という言葉を使ってしまったが、この旋回という動きの重要性に気づいて実現したのが1987年に設立されたタイムである。

シューズとペダルを固定した後も足をわずかに左右へと動かせるように遊びを設けたことで、ペダリング中に関節が受けるスラスト方向のストレス軽減が目指されたのだ。この遊びは〝フローティング〞と呼ばれ、足首や膝、股関節といった脚まわりの関節で起こるケガ(スポーツ障害)の防止・軽減・解消が期待される。

一方で、ペダリング中に関節へスラスト負荷が掛からない人もおり、そのような人にとっては単に足首が左右にブレやすいペダルになりかねない。例えばピスト競技は、バンクというきわめてフラットで均一な環境も手伝って、関節にスラスト負荷が発生しにくい。このため、フローティングを排除してペダリング効率を高める傾向が強くなる。

今でこそ、ルックなどタイム以外のペダルもフローティングを選べるが、ビンディングペダルが登場した当初は、固定重視のルックVSフローティング重視のタイム、という構図が成り立っていたのだ。
 

SPDとSPD-SL 2種類のシューズ規格

ビンディングペダルは、大きく2種類に分けられる。元祖とも言えるルックタイプの3つ穴式は、その後に自転車部品最大手のシマノが〝SPD-SL〞と称したことで、その名称で認識しているライダーも多いだろう。そして歩行性を加味した2つ穴式のSPD。

これら両者には基本的に互換性はなく、シューズとペダルの規格が同一であることが前提となる。一部メーカーからSPD-SL系(ルックタイプ)シューズにSPD系ペダルクリートを装着するためのアダプターがリリースされてはいるものの、ソール形状の違いが大きく、またペダルのスタックハイトが高くなってしまうという問題もあり、一般化はしていない。

軽量性やロードクリアランスの大きさ、踏み面の大きさといった〝ペダリング性能〞だけでいえば、SPD-SL(ルックタイプ)が優れるが、サイクリストの増加とともに自転車を使っての観光やレクリエーションを楽しむ人たちも増え、日常使いに適したSPD系のペダル&シューズをロードバイクに組み合わせることも一般化してきている。

また、これら2種の他に、スピードプレイが4つ穴式を提唱。シディなどの一部シューズメーカーが、スピードプレイ専用のシューズを用意している。