ニュース

第1回相馬復興サイクリング 相馬の今、復興を感じるライド

イベント
2018年9月30日(日)。福島県の相馬地方(相馬市、南相馬市、新地町、飯舘村)で震災復興サイクリングイベント「第1回相馬復興サイクリング」が開催された。

初開催となる今回だが、タイミング悪く台風24号が列島に襲い掛かり、各地のイベントが軒並み中止に追い込まれてしまった日曜日。まだ、台風までは距離があったことが幸いしロングコース開催はかなわなかったが、ショートコースのみでの開催となり、のべ540人が参加した。


 

震災から7年半。東日本大震災の揺れや津波で大きな被害を受けた相馬だが、その復興具合を肌で感じてほしいと企画されたのがこの相馬復興サイクリング。地元ショップ「ワラガイサイクル」の店主である今野さんからの熱いオファーを受けて、サイクルスポーツから中島と営業柴田が相馬へと向かった。

フルコースで通るはずだった飯館村は、「きれいな山間の景色が楽しめる村で、サイクリングには上りがきつすぎずちょうどいい塩梅なので、ぜひフルコース開催したかったが天気ばかりはしょうがない」と今野さんは語ってくれた。

天気はやはり雨。会場近くの駐車場に到着した早朝はまだ雨脚はそれほどでもなかったが、スタート時間が近づくにつれて雨脚が強まったり弱まったり、1日雨である事を覚悟させる降り方だ。とはいえ、スタートフィニッシュ会場である相馬市民会館は参加者であふれていた。
 
国指定重要無形文化財である「相馬野馬追」保存会の方からの口上に勢いをもらい、参加者は20人ごとに区切られてショートコースへと出陣していった。

 
国指定重要無形文化財である「相馬野馬追」。甲冑姿が勇ましい
国指定重要無形文化財である「相馬野馬追」。甲冑姿が勇ましい
サポートライダーの皆さん。雨の中ありがとう!
サポートライダーの皆さん。雨の中ありがとう!

イベントの醍醐味、エイドでは何が食べられる?

相馬のソウルフード「お星様ケーキ」
相馬のソウルフード「お星様ケーキ」
タコ、ツブの串焼きをゲット! 雨が強くなってきたので急いで軒先に避難
タコ、ツブの串焼きをゲット! 雨が強くなってきたので急いで軒先に避難

コースは一度内陸方向へと数km進んだ後、東に向きを変えて一気に太平洋を目指す。

最初のエイドステーションは相馬備蓄倉庫。真新しい倉庫は震災を機に建てられた施設である。そこでふるまわれるのは相馬市民のソウルフード「お星様ケーキ」。スイーツ男子営業柴田君は大いに喜んでいたが、取材のために先を急ぐからと中島にせかされながらケーキをほおばっていた。

「クリームケーキ、ベースのスポンジはふんわりで、サイクリング中でもすっとお腹に落ちてきて重くない!」

と満足そうだった。
 
コースが太平洋岸へ到達すると、イベントのメインスポンサーである北斗電気設備工事が誇る大規模ソーラー発電所が景色いっぱいに広がる。それを横目に海岸の平たん路突っ走る。その先は津波の被害から今年復旧したばかりの大洲松川線を通る。堤防の向こうの太平洋は、台風からくる風をうけて白波が立っていた。

内陸側は松川浦。そこに浮かぶ島には枯れた松の木が見えた。自分が走っている道路を含め津波で水没した場所だ。
 
第2エイドは相馬港。ここのグルメは「どんこ肝つみれ汁」と「タコ、ツブの串焼き」だ。汁物をもらったとたん、一瞬強くなった雨!!! つみれ汁に雨が入っては台無しと、手で覆いながら魚市場の軒下へと急いだ。

 

コースのハイライトは松川浦大橋。そして原釜慰霊碑へ

コースのハイライト「松川浦大橋」。2017年4月に通行が再開された
コースのハイライト「松川浦大橋」。2017年4月に通行が再開された
相馬市東日本大震災慰霊碑 原釜慰霊碑。多くの花が手向けられていた
相馬市東日本大震災慰霊碑 原釜慰霊碑。多くの花が手向けられていた

相馬港のすぐ先には相馬市東日本大震災慰霊碑 原釜慰霊碑が建てられている。イベントとしてはチェックポイントではないのだが、やはり手を合わせておきたかった。
 
慰霊碑から道を挟んで反対側の沿道から、参加者へ声援を送ってくれていた老夫婦と地震があった日の状況について少し話を聞かせてもらった。

最初の地震は、そのあとの余震に比べればさほど大きくない印象だったこと。
最初の地震で避難したけれど、揺れが収まって人々が家の片づけに戻ったところで津波が町を襲ったこと。
ちょっとした地形の違いで被災状況が違ったこと。
同じ避難所のなかでも、津波で家族を失った人とそうでない人がいた、その時の気持ち。
災害対策で備蓄していた食べ物は、家族の分だけ用意してそれを自分たちだけで食べるというのは、やはりご近所同士が一緒に過ごしている避難所では分け合わないと気まずかった。市からの供給物資ならそんな心配はなかった。
慰霊碑には名前を載せたくないという考えの人もいる。

など、復興した港の横でそんな話を聞いた。お礼を言って、その場を後にした。二人はそのあとも応援の小旗を参加者に向かって振ってくれていた。
 
コースも後半戦。海岸線に別れを告げ再び内陸へと進んでいく。最後のエイドステーションのトマトとニラ汁でエネルギーを注入してラスト14kmへと走り出す。この区間は斜度は緩いが、アップダウンが続くのでロングコースの終盤だったらきつかっただろうなと想像できた。
 
トータル3時間ほどでフィニッシュ。アサリ飯とのり汁をいただく。さらには梅干し、バナナ、塩もみしたキュウリもふるまわれた。われわれはそれだけは足らず、会場のブースでご当地グルメの「なみえ焼きそば」を買い食い。
 
お土産には、コース短縮で行くことができなかった飯館村の梅干し、塩分10%。しっかりしょっぱくて酸っぱい。疲れた体に梅干しいいですよね。

「次回、フルコース開催されたら改めて走りたいですね!」と、同行の営業柴田君もご満悦だったようだ。


text&photo:中島丈博
 


第1回相馬復興サイクリング
開催日:2018年9月30日(日)
開催地:相馬市民会館(福島県相馬市中村北町)
問・相馬復興サイクリング事務局(サイクルショップワラガイ)

 
お笑いコンビたんぽぽの川村エミコさんがプライベートで参加! 最近ロードバイクに乗り始めたそうで、この日がイベント初参加だったという
お笑いコンビたんぽぽの川村エミコさんがプライベートで参加! 最近ロードバイクに乗り始めたそうで、この日がイベント初参加だったという
沿道にはこんな応援看板も。地元の歓待ムードは参加者の誰もが感じたのではないだろうか
沿道にはこんな応援看板も。地元の歓待ムードは参加者の誰もが感じたのではないだろうか
北斗電気設備工事が誇る大規模ソーラー発電所
北斗電気設備工事が誇る大規模ソーラー発電所
2013年8月に落成した防災備蓄倉庫が第1エイドだ
2013年8月に落成した防災備蓄倉庫が第1エイドだ
第1エイドは田んぼに囲まれていた。しっかりと実った稲
第1エイドは田んぼに囲まれていた。しっかりと実った稲
大洲松浦線をゆく。思い返せば、ここが一番雨が強かったかも
大洲松浦線をゆく。思い返せば、ここが一番雨が強かったかも
どんこ肝つみれ汁。雨に濡れた体に暖かさと塩分がしみわたる!
どんこ肝つみれ汁。雨に濡れた体に暖かさと塩分がしみわたる!
相馬港エイドで会ったレディース&ジェントルマン。雨でも楽しそう!
相馬港エイドで会ったレディース&ジェントルマン。雨でも楽しそう!
フィニッシュ後に振る舞われたアサリご飯
フィニッシュ後に振る舞われたアサリご飯
最後のエイドで食べたニラ汁
最後のエイドで食べたニラ汁
コース途中の新地町特産ミニトマト「フルティカ」。ライドの途中で食べるトマトっておいしいですよね
コース途中の新地町特産ミニトマト「フルティカ」。ライドの途中で食べるトマトっておいしいですよね
マウンテンサイクリングin乗鞍で毎年お見かけする"悪魔おじさん"が、海辺にいる!?
マウンテンサイクリングin乗鞍で毎年お見かけする"悪魔おじさん"が、海辺にいる!?
ポイントとなる交差点には、こんな丁寧なサインボードを持ったスタッフが常駐していた
ポイントとなる交差点には、こんな丁寧なサインボードを持ったスタッフが常駐していた