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第33回マウンテンサイクリングin乗鞍 日本一の頂と年代別の頂を決めるクライマーのアツい夏

レース
全国のクライマーが最大の目標にするレース・マウンテンサイクリングin乗鞍。チャンピオンクラスはクライマー日本一決定戦として注目を集めるが、各年代のチャンピオンを決める年代別クラスでも熱い戦いが繰り広げられている。

今年は男女ともトップカテゴリーの連覇記録が止まり、新たなチャンピオンが誕生した。もちろんそれだけではなく、各クラスの闘いもまた熱い! トップカテゴリーではない、でもリアルホビーヒルクライマーはいかにして乗鞍を戦ったのか。当サイトの試乗連載でもおなじみのライター浅野氏のレポート。

text:浅野真則 photo:吉田悠太

男子チャンピオンクラスは中村俊介選手が優勝。連覇中だった森本誠選手は2位。

チャンピオンクラスは昨年3位の中村俊介選手が山の神・森本誠選手を下して初優勝。「残り数kmで単独で飛び出す形になったが、追いつかれるかと不安だった。来年も挑戦者の気持ちで走りたい」
チャンピオンクラスは昨年3位の中村俊介選手が山の神・森本誠選手を下して初優勝。「残り数kmで単独で飛び出す形になったが、追いつかれるかと不安だった。来年も挑戦者の気持ちで走りたい」
まずはチャンピオンクラスと女子一般クラスのレポートからお届けする。

男子の最高峰クラス・チャンピオンクラスは、全国のヒルクライマーが日本一の称号を賭けて戦う“日本一のヒルクライマー決定戦”。序盤はスローペースで展開したが、第2チェックポイントの位ヶ原山荘を過ぎたあたりからレースが活性化。

残り4km付近で独走態勢に入った中村俊介選手が、大会4連覇中で通算8回優勝の森本誠選手を下し、チャンピオンクラス優勝の栄冠を勝ち取った。

 

 
昨年優勝の森本誠選手は2位。5連覇ならず
昨年優勝の森本誠選手は2位。5連覇ならず

●チャンピオンクラス優勝 中村俊介選手
タイム 55分34秒218


「今年は例年より参戦するレースを絞って臨みました。作戦としては、なるべく前方で展開しつつ勝負所まで脚を使わないことを心がけていました。

序盤はサイクリングのようなペースでしたが、第2チェックポイントの位ヶ原山荘を越えたあたりで自分のペースで引いたら集団の人数が減り、さらに勾配がきつくなったところでダンシングしてペースを維持していたら、大雪渓が見え始めた残り4kmぐらいの地点でひとり飛び出す形になりました。

そこからは風も強く、追いつかれるのではないかと不安でしたが、残り500mでようやく勝ちを確信しました。でも未だに優勝したという実感が持てません(笑)。来年も戻ってきますが、挑戦者のつもりで楽しく走りたいです」

 

一般女子は牧瀬翼選手が優勝。連覇中だった金子広美選手は3位

一般女子クラスには、今年の全日本選手権ロードレースで3位になった牧瀬翼選手が初挑戦。同レース2位で乗鞍連覇中の絶対王者・金子広美選手との戦いが注目された。

レースは中間点付近までに両選手のマッチレースになったが、牧瀬選手は残り7kmで金子選手を振り切るとそのままゴールまで独走し、初優勝を果たした。

 


●一般女子クラス優勝 牧瀬翼選手
タイム 1時間8分34秒209


「乗鞍に今年初めて挑戦しましたが、きっかけはホイールをサポートしてくださっているGOKISOの近藤会長に誘っていただいたことでした。

普段ロードレースばかり走っているので、いいチャレンジだったし、楽しかったですね。

事前に2回試走に来たのですが、ペースの上げ下げに強いというロードレーサーとしての強みを生かして走ろうと決めていました。レース展開は、序盤は金子選手と豊島選手の3人で走っていましたが、中間点では金子さんとのマッチレースに。

残り7kmぐらいで単独になり、そのまま逃げ切ることができました。来年も機会があれば出たいですし、そのときにはレコードタイムの更新を意識して狙いたいですね」


 

乗鞍は各世代のNO.1クライマー決定戦でもある~ライター浅野の参戦レポート~


マウンテンサイクリングin乗鞍は、ヒルクライマー日本一を決める大会と言われる。それはゴール地点の標高が2720mと国内最高だからというのもあるが、やはり大会の格が違う。高校球児が甲子園を目指すように、ヒルクライマーは乗鞍を目指すのだ。

僕は6年前から乗鞍には毎年年代別クラスに参加している。年代別クラスの上位選手は相当に強い。乗鞍というとチャンピオンクラスばかり注目されるが、各年代の日本一のクライマーを決める大会でもあると思う。だから、同年代の強豪選手と戦えるのはワクワクするし、この日のためにライダーもマシンもベストの状態に仕上げるべく準備するのだ。個人的には年代別クラスで優勝し、胸を張ってチャンピオンクラスに挑むのが選手としてのひとつの目標だ。
 
昨年に引き続き、天候に恵まれてフルコースでの開催となった。ただし今年は第2チェックポイント以降は風がかなり強く、高所での酸素の薄さと強い向かい風が選手を苦しめた
昨年に引き続き、天候に恵まれてフルコースでの開催となった。ただし今年は第2チェックポイント以降は風がかなり強く、高所での酸素の薄さと強い向かい風が選手を苦しめた
昨年入賞したからか、僕のゼッケンは出場クラスで2番目に若い「4002」だった。今年の調子を考えると、ちょっぴり荷が重い!?
昨年入賞したからか、僕のゼッケンは出場クラスで2番目に若い「4002」だった。今年の調子を考えると、ちょっぴり荷が重い!?
ゼッケンを背中の指定位置に装着。なるべく着用時にたるみが出ないように丁寧に取り付ける。ゼッケンをあえてしわくちゃにしているのは、空気をはらみにくくするためだ
ゼッケンを背中の指定位置に装着。なるべく着用時にたるみが出ないように丁寧に取り付ける。ゼッケンをあえてしわくちゃにしているのは、空気をはらみにくくするためだ
午前7時、最初のレースとなるチャンピオンクラスがスタート! 今年は大会全体で4357人がエントリー。参加者の最年少は13歳、最年長は85歳(!)だった
午前7時、最初のレースとなるチャンピオンクラスがスタート! 今年は大会全体で4357人がエントリー。参加者の最年少は13歳、最年長は85歳(!)だった
スタートの時を待つ。僕が出場した40-45歳クラスは600人弱が出場する激戦区のひとつで、2組に分かれてレースが行われた。表彰台に立てるのは、2組合わせた上位6人だけだ
スタートの時を待つ。僕が出場した40-45歳クラスは600人弱が出場する激戦区のひとつで、2組に分かれてレースが行われた。表彰台に立てるのは、2組合わせた上位6人だけだ


バイクは昨年と同じ。ヘルメットはカブトの超軽量モデル・フレアーを投入し、装備はいくらか軽量化された。機材は万全なのだが、今年はライダーが仕上がっていない。体重こそ昨年と変わらないが、猛暑の影響で思うように練習ができなかったのもあって、調子が上がっていないのだ。直前の追い切りで調子が上向きになったのが唯一のプラス材料だが、“年代別クライマー日本一決定戦”に臨むには心もとなすぎる。だが、当日までできる限りのことをし、スタート地点に立った。

号砲とともにクリートをゆっくりキャッチ。年代別クラスはネットタイム方式で順位が決まるので、慌てる必要はない。計測ラインに向けて加速し、前を走る選手を追う。序盤から飛ばしすぎないように意識して、明らかに自分より速い選手は先に行かせ、いいペースで走っている選手の後ろに入った。この時点で前には1人。最初のチェックポイントがある三本滝までにさらに二人ほど飛び出していったが、ややオーバーペースに感じられたので一定の間隔を保ちながら走る。先行する2人は位ヶ原山荘までにパス。単独で第2チェックポイントの位ヶ原山荘を超えた。このまま行けば入賞もあり得るか?と欲が出てきた。

しかし、位ヶ原山荘を過ぎてすぐ、別の選手にパスされた。単独で走っていたと思っていたのだが、どうも何人か着いてきていたらしい。立て続けにもう1人に抜かれる。着いていこうにもペースが上がらず、ガマンの時間が続く。さらに残り3kmほどのところでもう1人に抜かれた。気持ちが切れそうになるが、入賞の可能性が残っている限りは全力で食らいつく。結局フィニッシュまでに追いつくことはできなかったが、これが今の実力だから仕方がない。

 
フィニッシュ直後。去年よりタイムが悪かったけれど、来年リベンジしたい。年齢別クラスだって同世代のサイクリストとの熱い戦いが繰り広げられているのだ!
フィニッシュ直後。去年よりタイムが悪かったけれど、来年リベンジしたい。年齢別クラスだって同世代のサイクリストとの熱い戦いが繰り広げられているのだ!

タイムは1時間6分55秒。昨年より1分半以上遅かった。年代別クラスだって付け焼き刃の練習でなんとかなるほど乗鞍は甘くない。だからこそ挑みがいがあるのだ。

ゴール地点は少し風が強かったけれどからりと晴れていた。雪渓も森林限界を超えた山岳の風景も相変わらずの美しさだった。乗鞍が終わると夏が終わったように感じる。今年の夏は不完全燃焼だったが、来年は晴れ晴れしい気持ちでこの絶景を堪能したいものだ。

 
今年のチャンピオンクラスの上位6人。優勝は中村俊介選手、2位森本誠選手、3位田中裕士選手、4位嘉瀬峻介選手、5位梅川陸選手、6位中川真也選手だった
今年のチャンピオンクラスの上位6人。優勝は中村俊介選手、2位森本誠選手、3位田中裕士選手、4位嘉瀬峻介選手、5位梅川陸選手、6位中川真也選手だった



※詳しいレポートは9月20日発売のサイクルスポーツ11月号をチェック!




大会名:第33回マウンテンサイクリングin乗鞍
日時:8月25日(受付)〜8月26日(レース)
場所:乗鞍高原観光センター前(長野県松本市)
コース:乗鞍エコーライン(乗鞍高原観光センター前〜長野・岐阜県境)
全長20.5km、標高差1260m
主催:マウンテンサイクリングin乗鞍実行委員会
問い合わせ:大会事務局 TEL0263-41-7666
WEB:http://norikura-hc.com/