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中央山塊で競われたツール・ド・フランス第14ステージはスペインのフライレが逃げ切り優勝

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独走で逃げ切ってツール区間初優勝を果たしたスペインのフライレ (©Bettiniphoto)
独走で逃げ切ってツール区間初優勝を果たしたスペインのフライレ (©Bettiniphoto)
 
第105回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月21日にサン・ポール・トロワ・シャトーからマンドまでの188kmで、中央山塊が舞台の第14ステージを競い、スペインのオマール・フライレ(アスタナプロチーム)が独走で逃げ切って区間初優勝を果たした。

総合トップ3は揃ってゴール。マイヨ・ジョーヌは英国のゲラント・トーマス(チームスカイ)が守った。


ツール公式サイト


 

ベルギーのナショナル・デーにストゥイヴェンが逃げ切れず

MAP : ASO
MAP : ASO
第14ステージは152選手が出走。カザフスタンのアスタナプロチームは、7月19日に急死したカザフスタン出身のフィギュアスケーター、デニス・テン選手を悼み、喪章を付けてスタートした。

オフィシャル・スタートと同時にマイヨ・アポワを着たフランスのジュリアン・アラフィリップ(クイックステップフロアーズ)がアタック。彼は山岳賞総合2位のワレン・バルギル(チームフォルチュネオ・サムシック)とたった14ポイント差で、中央山塊で少しでもポイントを稼いでおきたかった。しかし、彼はすぐには逃げ出せなかった。

序盤はアタックが続き、5km地点で集団は4つに分断。先頭ではトーマス・デヘント(ロット・スーダル)とシルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)がアタックし、アラフィリップらが追走。カテゴリーのない上りが始まった12km地点で、先頭はデヘント、フライレ、アラフィリップ、アントニー・ペレス(コフィディス)の4人になった。

そこにさらに次々と選手が合流し、20km地点で先頭の逃げは32人に膨らんだ。そこにはマイヨ・ベールを着たペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)、フィリップ・ジルベール(クイックステップフロアーズ)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシングチーム)、ヤスペル・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)も加わっていた。7月21日はベルギーの独立記念日(ナショナル・デー)で、逃げには6人のベルギー人選手が入っていた。

逃げる32人の中で総合成績が最も上位だったのは総合25位のダミアーノ・カルーゾ(BMCレーシングチーム)だったが、マイヨ・ジョーヌのトーマスよりも39分遅れていたため、メイン集団はこの逃げを容認し、67km地点でタイム差は5分半にまで開いた。

81km地点のカテゴリー4の丘はマイヨ・アポワのアラフィリップが先頭で通過し、1ポイントを獲得。90km地点の中間スプリント地点はマイヨ・ベールのサガンが先頭で通過した。ここでサガンは集団には戻らず、逃げに留まった。

ゴールまで残り70km地点で逃げと集団のタイム差は9分10秒になり、今年最大の差になった。集団ではパトリック・ベヴィン(BMCレーシングチーム)が遅れ始め、そのままレースをリタイアした。

カテゴリー2のクロワ・ド・ベルテル峠で、先頭の逃げからスペインチャンピオンのゴルカ・イサギレ(バーレーン・メリダ)がアタックし、単独で山頂を越えた。20秒後にアラフィリップはトムイェルテ・スラフテル(チームディメンションデータ)の後ろで3位通過し、2ポイントを獲得できた。

クロワ・ド・ベルテル峠の下りでイサギレにスラフテルとストゥイヴェンが合流し、先頭は3人になった。その後方ではクイックステップフロアーズが引き、追走グループは小さくなっていた。

カテゴリー3のポン・サン・ゾー峠は、ストゥイヴェンが先頭で通過。追走グループは46秒遅れ、メイン集団は14分20秒遅れだった。ゴールまで残り31kmで、先頭からストゥイヴェンがアタックし、独走を開始。残り20kmで追走する19人と1分半差、メイン集団と18分15秒差だった。

ゴールまで残り11kmで、ストゥイヴェンは後続に2分近いタイム差を付けた。その後方では、ジルベールがアラフィリップのために先頭を引いていた。最後に待ち構えていたカテゴリー2のクロワ・ヌーヴ峠のふもとに到着した時、ストゥイヴェンのアドバンテージは1分40秒あった。

ジャラベール山のニックネームで知られる平均勾配10%のクロワ・ヌーヴ峠を独走で逃げるストゥイヴェンには、沿道から熱い声援が送られた。しかし、3kmの登坂は彼にはキツすぎた。後方ではフライレとデヘントがアタックして抜け出し、フライレが単独で先頭のストゥイヴェンを追いかけ始めた。

ストゥイヴェンが山頂まで残り1kmになった時、追走グループからさらにマイヨ・アポワのアラフィリップが飛び出し、クロワ・ヌーヴ峠の観客をわかせた。しかし、前方では山頂まで残り600メートルで、フライレがストゥイヴェンを追い越して先頭に立っていた。

アラフィリップが山頂の手前でストゥイヴェンに追いついた時、フライレはもうカテゴリー2の山岳ポイントをトップで通過していた。そこからゴールのマンドまではまだ1.5kmあったが、フラム・ルージュでフライレはアラフィリップとストゥイヴェンに10秒差を付けていた。

フライレはそのまま独走で区間優勝した。彼は昨年のジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)で区間優勝しているが、ツールで区間優勝したのはこれが初めてだった。

区間優勝は逃したが、アラフィリップはこの日山岳賞のポイントを6ポイント稼ぎ、バルギルとの差を20ポイントに広げることができた。

区間3位で終わったストゥイヴェンは、ナショナル・デーにツールで区間優勝した9人目のベルギー人選手にはなれなかったが、敢闘賞を獲得して表彰台に上がることができた。
 
故郷のナショナル・デーに区間優勝をもたらすことができなかったストゥイヴェン (©Bettiniphoto)
故郷のナショナル・デーに区間優勝をもたらすことができなかったストゥイヴェン (©Bettiniphoto)

クロワ・ヌーヴ峠で総合争い!

20分遅れでレースを続けていたメイン集団では、予想通りゴール前のクロワ・ヌーヴ峠で総合争いのアタックがかかった。ゴールまで残り3.2kmでミケル・ランダ(モビスター・チーム)がアタックし、プリモシュ・ログリッチェ(チームロットNL・ユンボ)と一緒に先行。そこからログリッチェが飛び出し、単独になった。

それを追いかけるメイン集団はミハウ・クフィアトコフスキー(チームスカイ)が引き、マイヨ・ジョーヌの集団は10人ほどになってしまった。そこからゴールまで残り2kmで、トム・ドゥムラン(チームサンウェブ)がアタックし、ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)がメイン集団から脱落した。

残り1.5kmのクロワ・ヌーヴ峠山頂はログリッチェが単独で先行して通過し、その後方では総合トップ3のトーマス、フルーム、ドゥムランが続いた。ログリッチェはそのまま単独でゴールし、総合でのタイムを8秒縮めることに成功した。総合トップ3の3人は一緒にゴールし、この日の勝負はドローで終わった。

しかし、ログリッチェ以外の選手たちはわずかなタイムを失ってしまった。不運だったのはダニエル・マーティン(UAEチーム・エミレーツ)で、彼はクロワ・ヌーヴ峠のふもとでパンクに見舞われてしまい、マイヨ・ジョーヌのトーマスよりも1分43秒遅れてゴールした。


■ツールで区間初優勝したフライレのコメント
「ボクはストゥイヴェンに追いつく自信があった。彼は長いこと前に1人でいて、最後の丘は強い向かい風が吹いていた。ボクはできるかぎり彼を追いかけるために、上りのふもとで追いかける決断をした。マンドで区間優勝したのは信じられない。スペインではとても有名なステージだからだ。

競技キャリアをスタートした時、ツールの区間で勝つなんて想像していなかった。最初に、ボクはツールに選ばれたという素晴らしいニュースでそれを得た。最初の1週間で、このレースがどれだけ難しいかがわかったが、ボクはそれに対処した。

今日のステージはボクたちが狙っていた数少ないターゲットの1つだった。今からはフルサングが総合で可能な限り上位を得られるように働くことだけにこの身を捧げるよ」
 
 
総合のトップ3は一緒にゴールした (©Bettiniphoto)
総合のトップ3は一緒にゴールした (©Bettiniphoto)
 
■第14ステージ結果[7月21日/サン・ポール・トロワ・シャトー〜マンド/188km]

1. OMAR FRAILE (ASTANA PRO TEAM / ESP) 04H 41' 57''
2. JULIAN ALAPHILIPPE (QUICK - STEP FLOORS / FRA) +06''
3. JASPER STUYVEN (TREK - SEGAFREDO / BEL) +06''
4. PETER SAGAN (BORA - HANSGROHE / SVK) +12''
5. DAMIANO CARUSO (BMC RACING TEAM / ITA) +12''
6. SIMON GESCHKE (TEAM SUNWEB / GER) +19''
7. NICOLAS EDET (COFIDIS, SOLUTIONS CREDITS / FRA) +19''
8. LILIAN CALMEJANE (DIRECT ENERGIE / FRA) +23''
9. DARYL IMPEY (MITCHELTON - SCOTT / RSA) +30''
10. THOMAS DE GENDT (LOTTO SOUDAL / BEL) +37''

29. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM LOTTO NL - JUMBO / SLO) +18’ 01’’
30. CHRIS FROOME (TEAM SKY / GBR) +18’ 09’’
31. TOM DUMOULIN (TEAM SUNWEB / NED) +18’ 09’’
32. GERAINT THOMAS (TEAM SKY / GBR) +18’ 09’’
33. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) +18’ 19’’
34. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM LOTTO NL - JUMBO / NED) +18’ 23’’
35. EGAN BERNAL (TEAM SKY / COL) +18’ 23’’
36. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) +18’ 23’’
40. JAKOB FUGLSANG (ASTANA PRO TEAM / DEN) +18’ 38’’
41. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) +18’ 38’’
43. PIERRE ROGER LATOUR (AG2R LA MONDIALE / FRA) +18’ 56’’
50. DANIEL MARTIN (UAE TEAM EMIRATES / IRL) +19’ 52’’

■第14ステージまでの総合成績
1. GERAINT THOMAS (TEAM SKY / GBR) 58H 10' 44''
2. CHRIS FROOME (TEAM SKY / GBR) +01’ 39’’
3. TOM DUMOULIN (TEAM SUNWEB / NED)  +01’ 50’’
4. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM LOTTO NL - JUMBO / SLO) +02’ 38’’
5. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA)  +03’ 21’’
6. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) +03’ 42’’
7. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM LOTTO NL - JUMBO / NED) +03’ 57’’
8. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL)  +04’ 23’’
9. JAKOB FUGLSANG (ASTANA PRO TEAM / DEN) +06’ 14’’
10. DANIEL MARTIN (UAE TEAM EMIRATES / IRL) +6’ 54’’


[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):PETER SAGAN (BORA - HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):JULIAN ALAPHILIPPE (QUICK - STEP FLOORS / FRA) 
■新人賞(マイヨ・ブラン):PIERRE ROGER LATOUR (AG2R LA MONDIALE / FRA) 
■チーム成績:MOVISTAR TEAM
■敢闘賞:JASPER STUYVEN (TREK - SEGAFREDO / BEL) 

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第15ステージはモンターニュ・ノワール山脈を越える

MAP : ASO
MAP : ASO
7月22日は、ミヨーからカルカッソンヌまでの181.5kmで、南中央フランスのモンターニュ・ノワール山脈を越える第15ステージが行われる。後半に越える標高1205メートルでカテゴリー1のピック・ド・ノール峠はツール初登場で、全長12.3km、平均勾配6.3%だ。

翌日の月曜日は2度目の休養日になり、その後はピレネー山岳区間がスタートするため、第15ステージはふたたび大きな逃げが決まるステージになりそうだ。

第14ステージのハイライト映像