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アルプ・デュエズにゴールしたツール・ド・フランス第12ステージはマイヨ・ジョーヌのトーマスが区間優勝

レース
マイヨ・ジョーヌでアルプ・デュエズを制したトーマス (©Bettiniphoto)
マイヨ・ジョーヌでアルプ・デュエズを制したトーマス (©Bettiniphoto)
 
第105回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月19日にブール・サン・モーリス・レ・ザルクからアルプ・デュエズ頂上までの175.5kmでアルプス最終日の第12ステージを競い、マイヨ・ジョーヌを着た英国のゲラント・トーマス(チームスカイ)が、小集団でのゴール勝負を制し、前日に続いて区間優勝した。

第12ステージは、前日に大きく遅れたコロンビアのリゴベルト・ウラン(チームEFエデュケーションファースト・ドラパック・P/Bキャノンデール)が出走しなかった。

さらにレース中には、1週目に区間2勝したスプリンターのフェルナンド・ガビリア(クイックステップフロアーズ)、ディラン・フルーネウェーヘン(チームロットNL・ユンボ)の2人と、アンドレ・グライペル(ロット・スーダル)が途中リタイア。この日だけで9人がレースを去り、完走は153人だった。



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オランダのクラウスウェイクが独走!

MAP : ASO
MAP : ASO
第12ステージはウランが出走せず、161選手がスタート。オフィシャルスタートとともにアントニー・ペレス(コフィディス)がアタックしたが成功しなかった。ゆるやかな下り坂でアタックが続き、平均時速が60km/hというスタートになった。シルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)のアタックも決まらず、26km地点でまだ逃げは生まれていなかった。

この日最初のカテゴリー超級のマドレーヌ峠の、25.3km続く上り坂がスタートし、ダニエル・ナバロ(コフィディス)がアタックしたが、これも決まらなかった。集団の後方では、グライペルやアルノー・デマール(グルパマ・FDJ)といったスプリンターだけでなく、ドメニコ・ポッツォヴィーボ(バーレーン・メリダ)も遅れ始めた。

ここで山岳賞を狙うワレン・バルギル(チームフォルチュネオ・サムシック)が、アシストのエリー・ジェベールと一緒にアタックを決めたのをきっかけに、山頂まで17kmで30人の先頭集団が形成された。そこにはマイヨ・アポワのジュリアン・アラフィリップ(クイックステップフロアーズ)と、オランダのスティーフェン・クラウスウェイク(チームロットNL・ユンボ)も加わっていた。

クラウスウェイクは、スタート時点の総合成績が2分40秒遅れだったため、チームスカイにとってはマイヨ・ジョーヌを脅かす危険な存在だった。

53.5km地点のマドレーヌ峠の頂上は、残り300メートルでアタックしたマイヨ・アポワのアラフィリップが先頭で通過した。マイヨ・ジョーヌ集団はここで2分40秒遅れていた。下りでそのタイム差が3分を超え、クラウスウェイクがバーチャル・マイヨ・ジョーヌになった。

後方ではトニー・ガロパンがレースを棄権し、AG2R・ラモンディアルは5人になってしまった。ガロパンはツール開幕1週間前に行われたフランス選手権で落車し、負傷していた。

マドレーヌ峠を下り終えた補給所で、先頭集団は26人、マイヨ・ジョーヌ集団とのタイム差は3分20秒だった。補給所を通過した後、先頭集団からフランスのピエール・ロラン(チームEFエデュケーションファースト・ドラパック・P/Bキャノンデール)がアタックし、次のカテゴリー2のラセ・ド・モンベルニエール峠を単独で上り始めた。彼は2011年にアルプ・デュエズ区間で優勝した経験があった。

ロランはラセ・ド・モンベルニエール峠の頂上を先頭で通過し、20秒後にマイヨ・アポワのアラフィリップが続いた。ここでマイヨ・ジョーヌ集団は4分10秒遅れていた。ロランはゴールまで残り84.5kmの中間スプリント地点も先頭で通過したが、4km先でアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)とクラウスウェイクに捕まった。

残り78kmで先頭の逃げは11人になり、つづくカテゴリー超級のクロワ・ド・フェール峠を上り始めた。そして残り73kmで、クラウスウェイクがアタック。山頂まで1kmで、追走するバルギルのグループに2分30秒差を付けていた。

後方では次々選手がリタイア。フルーネウェーヘン、グライペル、ガビリア、マルセル・ジーベルク(ロット・スーダル)がツールを去った。

クラウスウェイクはクロワ・ド・フェール峠の山頂をトップで通過。山頂を2位で通過してポイントを稼いだバルギルは3分遅れ、マイヨ・ジョーヌ集団は6分10秒遅れていたが、ゴールまではまだ54kmあった。
 
 
アルプ・デュエズ区間で逃げ続けたクラウスウェイク (©Bettiniphoto)
アルプ・デュエズ区間で逃げ続けたクラウスウェイク (©Bettiniphoto)
 

クロワ・ド・フェール峠を下り終え、最後のアルプ・デュエズが始まる前に、クラウスウェイク以外の選手たちはチームスカイが引くマイヨ・ジョーヌ集団に全員捕まってしまった。ゴールまで残り13.8kmのアルプ・デュエズのふもとで、先頭を逃げ続けるクラウスウェイクのアドバンテージは4分20秒にまで減っていた。

マイヨ・ジョーヌ集団は、ツール初参加のエガン・ベルナル(チームスカイ)が先頭を引いてアルプ・デュエズを上り続けた。その加速について行けない選手たちが次々と脱落していった。ゴールまで残り10kmで、クラウスウェイクとマイヨ・ジョーヌ集団のタイム差は3分23秒になっていた。ここでダニエル・マーティン(UAEチーム・エミレーツ)も脱落し、マイヨ・ジョーヌ集団は10人ほどに減っていた。

マイヨ・ジョーヌ集団では、ヴィンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)やナイロ・キンタナ(モビスター・チーム)が飛び出したが、そのまま抜け出しはしなかった。

残り7kmで、ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)がアタックして先行したが、ベルナルが引き続けるマイヨ・ジョーヌ集団を大きく引き離すことはできなかった。ここでキンタナがマイヨ・ジョーヌ集団から遅れてしまった。

ゴールまで残り5kmを切り、クラウスウェイクとマイヨ・ジョーヌ集団の差が1分を切ったところで、21歳のベルナルは仕事を終え、マイヨ・ジョーヌ集団の先頭はマイヨ・ジョーヌを着たトーマスになった。この日は残り4kmから沿道にフェンスが置かれていたため、その手前は観客が溢れかえっていた。

そこでフルームがアタックし、ニバリは減速したエスコート・ポリスのバイクにぶつかって転倒してしまった。その混乱を尻目に、フルームは先行していたバルデを抜き去り、ゴールまで残り3.5kmでクラウスウェイクを抜いて先頭に立った。

そのままフルームが独走をするかと思われたが、マイヨ・ジョーヌ集団の最後尾を走り続けていたオランダのトム・ドゥムラン(チームサンウェブ)が追い上げ、ゴールまで残り3.1kmで先頭のフルームに追いついたが、彼はトーマスとバルデも運んでしまっていた。

そこからアタックの掛け合いが続いたが、抜け出せる選手はなく、残り1kmのフラム・ルージュでミケル・ランダ(モビスターチーム)が追いついて先頭は5人になった。残り700メートルでランダが最初に仕掛けたが、最後のカーブで先頭に立ったトーマスがそのまま抜け出し、英国人として初めてアルプ・デュエズで優勝した。

区間2位にはドゥムラン、3位にはバルデが入り、わずかなボーナスタイムを獲得した。アルプス3連戦を終え、総合リーダーのマイヨ・ジョーヌはトーマスが守り、総合2位のフルームは1分39秒差、3位のドゥムランは1分50秒差になった。

残り4kmで落車したニバリはすぐレースに復帰し、13秒遅れの区間7位でゴールしたが、病院で検査を受けた結果、椎骨の骨折が見つかり、第13ステージは出走できなくなってしまった。彼は2分37秒遅れの総合4位に付けていた。


第12ステージはゴールの制限時間が41分26秒で、カザフスタンのドミトリー・グルズジェフ(アスタナプロチーム)とエストニアのレイン・タラマエ(ディレクトエネルジー)が時間内にゴールできず、レースを去った。

前日に救済されたドイツのリック・ツァーベル(チームカチューシャ・アルペシン)もこのステージの途中でリタイアし、完走は153人だった。


■英国人として初めてアルプ・デュエズで区間優勝したトーマスのコメント
「正直なところ、言葉がない。すごいよ。今日ここでボクには勝つチャンスはなかった。クラウスウェイクがものすごいプレッシャーをかけ、ボクたちは苦しんだ。(最後の上りで)ボクはフルームに付いていった。フルームはアタックした。ボクは自分で追いついた。それは全く信じられないことだ。それが起きるとは思わなかった。

ボクはただ、ドゥムランに付いていく努力をしただけだ。もし、区間優勝したければ、最後のコーナーで1番にならなければダメだとわかっていた。だからランダを追い越して、それから持てる全てを出し切ってスプリントをした。自分が勝ったと気がついたのは、数秒後だった。

おそらくボクはもう数日間マイヨ・ジョーヌを守れるだろう。でも、このレースはとても過酷で、確実なことはわからないものだ。ボクは今でもフルームのために走っているし、彼も人間だ。ボクは3週間をどうやってやりきるのかわからない」
 
 
 
■第12ステージ結果[7月19日/ブール・サン・モーリス・レ・ザルク~アルプ・デュエズ/175.5km]

1. GERAINT THOMAS (TEAM SKY / GBR) 5H 18' 37''
2. TOM DUMOULIN (TEAM SUNWEB / NED) +2’’
3. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA) +3’’
4. CHRIS FROOME (TEAM SKY / GBR) +4’’
5. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) +7''
6. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM LOTTO NL - JUMBO / SLO) +13’’
7. VINCENZO NIBALI (BAHRAIN - MERIDA / ITA) +13’’
8. JAKOB FUGLSANG (ASTANA PRO TEAM / DEN) +42’’
9. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL) +47’’
10. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM LOTTO NL - JUMBO / NED) +53’’
12. DANIEL MARTIN (UAE TEAM EMIRATES / IRL) +01' 45’’
14. ALEJANDRO VALVERDE (MOVISTAR TEAM / ESP) +04’ 29’’
16. PIERRE ROGER LATOUR (AG2R LA MONDIALE / FRA) +04’ 35’’ 

■第12ステージまでの総合成績
1. GERAINT THOMAS (TEAM SKY / GBR) 49H 24' 43''
2. CHRIS FROOME (TEAM SKY / GBR) +01’ 39’’
3. TOM DUMOULIN (TEAM SUNWEB / NED)  +01’ 50’’
4. VINCENZO NIBALI (BAHRAIN - MERIDA / ITA) +02’ 37’’ 
5. PRIMOŽ ROGLIC (TEAM LOTTO NL - JUMBO / SLO) +02’ 46’’
6. ROMAIN BARDET (AG2R LA MONDIALE / FRA)  +03’ 07’’
7. MIKEL LANDA (MOVISTAR TEAM / ESP) +03’ 13’’
8. STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM LOTTO NL - JUMBO / NED) +03’ 43’’
9. NAIRO QUINTANA (MOVISTAR TEAM / COL)  +04’ 13’’
10. DANIEL MARTIN (UAE TEAM EMIRATES / IRL) +5’ 11’’
16. PIERRE ROGER LATOUR (AG2R LA MONDIALE / FRA) +16’ 31’’ 

[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):PETER SAGAN (BORA - HANSGROHE / SVK)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):JULIAN ALAPHILIPPE (QUICK - STEP FLOORS / FRA) 
■新人賞(マイヨ・ブラン):PIERRE ROGER LATOUR (AG2R LA MONDIALE / FRA) 
■チーム成績:MOVISTAR TEAM
■敢闘賞:STEVEN KRUIJSWIJK (TEAM LOTTO NL - JUMBO / NED) 


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第13ステージはスプリンター向き

MAP : ASO
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7月20日はブール・ドワザンからバランスまでの169.5kmで、平坦な第13ステージが行われる。厳しいアルプス3連戦で強豪スプリンターが大勢リタイアしたため、思わぬ選手にチャンスが巡ってくる可能性もある。


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第12ステージのハイライト映像