柳生新陰流で知られる剣術の始祖柳生石舟斎。ほかに宮本武蔵も歩いた剣豪の里をたどる、とっておきのヒルクライムコースを紹介しよう。なお、コースではトンネルを走ることになるので、前後ライトは必ず用意しておこう。
※この記事はサイクルスポーツ2007年5月号からの転載です。現在とは情報が異なる場合もありますので、ご了承ください。 地図の拡大を見る

●柳生の交差点。この橋を渡らず、手前を左にいけば十兵衛杉、橋を渡って右へいけば芳徳寺と一刀石へ向かう

1.スタートしてまもなく、右手に転害門が見える。この辺りは道が細く、また交通量も多いのでゆっくり走ろう

2.柳生へと続く国道369号線の標識はいたるところにある。間違って山の中に迷い込んでしまわないように
 奈良公園から県庁へと向かい、東へ進むと奈良自転車道のスタート地点がある。最初は狭い道を走ることになるが、転害門を過ぎるとまもなく柳生へ誘う交差点となり、標識に従って国道369号線を渡ると交通量は一気に減る。ここから円成寺まで、ゆるやかな上り坂が続く。
 新奈良ゴルフクラブを横断してしばらくすると、右手に地元で穫れた野菜やよもぎ餅などを販売している露店に出くわす。お母さんが作るよもぎ餅は補給食にちょうどいい。余分に買って、ジャージのポケットにしまっておくのもオススメだ。この先、コンビニエンスストアなんてないのだから……。
 露店のすぐ先に円成寺はある。無料の駐車場に自転車を停め、庭園を散策しよう。本堂や多宝塔へは拝観料が必要だが、奈良を本当に味わうためにもぜひ拝みたい。多宝塔には運慶25歳ごろの作といわれる大日如来坐像が、本堂には阿弥陀如来坐像、釋迦如来像、十一面観世菩薩など、「知ってる人は知っている」級の国宝がずらり。
 本堂はひんやりとして冷たい。暗さに目が慣れるにつれ、像の細やかな装飾が目に映るようになる。円成寺最大の魅力は、先に挙げた釋迦如来像などを目と鼻の先に拝めるところだ。観光客でごったがえす地域ではありえないほどの距離で見学ができる。
 円成寺に名残を惜しみつつ、柳生まで一気に下る。上った後のごほうびは最高に気持ちがいい。下りきったところに橋があり、その手前を左折すれば十兵衛杉への入り口だ。十兵衛杉へは階段を上ることになるので、クリートを滑らせないよう気をつけよう。このほかの名所もあまり舗装されていないので、観光を第一とするならMTB用のシューズがいいだろう。
 先ほどの橋を越え、小さな十字路を右折する。すぐに派出所があるのでそれが目印。芳徳寺や一刀石へ向かうなら、この先にある真っ赤なもみじ橋を通りすぎ、山脇のバス停で左折しよう。もみじ橋を渡るルートより走りやすい。
 芳徳寺は沢庵禅師を開基とし、父である石舟斎を弔うために柳生宗矩が建てた菩提寺だ。裏手には柳生家一族の墓所もある。そして一刀石へは芳徳禅寺からさらに上る。この辺りは道も狭いので、自転車は押して歩こう。時間に余裕があれば、旧柳生藩家老屋敷にも立ち寄りたい。山岡荘八作「春の坂道」は、ここで構想が練られた。また、家老屋敷ではちょっとおもしろい解説が聞ける。柳生新陰流の剣は殺人剣ではなく、活人剣。抜かずの剣だというのだ。剣を抜く前に精神の修行と鍛錬を行なう、いわば「道」である。展示される品々に、剣や鎧兜が少ないのも道理というわけだ。
 山脇のバス停からは平たんな道が続く。しばらくして道が細くなってきたらヒルクライムの本番だ。ここから水間トンネルまでひたすら上りが続く。途中、「名張・奈良」と書かれた交差点を右折、その次の交差点では奈良公園へ直進する。水間トンネルまでもう少し。
 ライトの点灯を確認したら、トンネルを慎重に進もう。トンネルを抜ければ長い下りが待っている。ヘリポート手前に若干上りがあるが、それを越えればもう安心。突き当たりの県道188号線を右折すると、奈良公園に戻ってくる。

3.十兵衛なべがオススメの囲炉裏茶屋「暖」。ランチメニューもあり、コーヒーだけのオーダーも可能だ

4.円成寺手前の露店では、観光客のみならず地元の人も新鮮な野菜を買いにくる。お母さんとの歓談で時間を過ごすのだ

5.円成寺内の鎮守社、春日堂と白山堂。いずれも鎌倉時代のもので、この建築自体が国宝である

6.柳生十兵衛が寛永3年(1626年)に植えたという十兵衛杉はかなりの迫力モノ。交差点からそう遠くないので、時間があれば寄ってみたい

7.県道369号線から1も行けば、山道の先の一刀石にたどり着く。文字どおり一刀両断された石の透き間からは向こう側が見える

8.武家屋敷らしく、座敷から臨む庭が美しい。山岡荘八もここで茶を飲んだのだろうか

9.ここまで戻ってくると、交通量が徐々に増えてくる。水間トンネルもあるので安全確認はしっかり

10.トンネルを抜けると後は下りになるが、クルマのスピード抑制のため道路にはあえて凹凸を設けてある。自転車にはちょっと怖い
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●問い合わせ先
お母さんの露店(営業時間:10時前~夕方まで、定休日:月曜~金曜)
囲炉裏茶屋「暖」(営業時間:11時~21時、定休日:なし、おもなメニュー:1350円/小春弁当※コーヒー・デザート付き 1850円/柳生膳※コーヒー・デザート付き 350円/コーヒー 600円/抹茶セット※葛餅もしくはケーキ、TEL:0742・93・0025)
忍辱山 円成寺(拝観時間:9時~17時、休山日:なし、拝観料:400円、TEL:0742・93・0353)
神護山 芳徳寺(拝観時間:9時~17時30分、休山日:なし、拝観料:200円、TEL:0742・94・0204)
旧柳生藩家老屋敷(入館時間:9時~16時30分、休館日:年末年始、入館料:350円、TEL:0742・94・0002)
●駐車場
スタート&ゴール地点となる奈良公園の内外には、県営高畑駐車場(営業時間:9時~17時、定休日:なし、駐車料:1000円/1日)、奈良県文化会館駐車場(営業時間:9時~21時30分、定休日:なし、駐車料:1000円/1日)、若草山麓駐車場(営業時間:24時間、定休日:なし、駐車料:無料)などいくつかの駐車場がある。くわしくは奈良市駐車場案内のウエブサイト(www.parking.city.nara.nara.jp/parking)を参照するといい。
●食べ物&お土産
円成寺手前の露店は土日のみ。お母さんが作るよもぎ餅は2個250円で、その大きさにまず驚く。お母さん曰く「2人で来はる人が多いからね。3つ分のよもぎを2つにしてるんよ」とのこと。また、お菓子のような軽い食感の煎餅(250円)もオススメだ。平日に走るならその手前隣にある囲炉裏茶屋「暖」で休憩ができる。喫茶メニューもあるので気軽に立ち寄ってみよう。なお、円成寺の庭園でも軽食を取ることができる。