難易度=(1~5)〈1=初めての人でも安心/2=自分で「やる気はあるぞ!」と言える人向き/3=1日に80km走った経験がある人向き/4=1日に160km走ってみたい健脚派向き/5=風雨の下でも160kmを完走するやる気のある人向き〉
「百哩走大王」とは、30歳以上の大人のサイクリストの全国組織である『センチュリーランを走る会』が、会員の年間活動記録に応じて与える称号。自転車百哩走大王たちが国内外のレースではない長い距離を走るイベントを、実際に参加したライダーの目で紹介する。
※この記事はサイクルスポーツ2004年6月号からの転載です。現在とは情報が異なる場合もありますので、ご了承ください。 地図の拡大を見る

●秀麗な姿から伯耆富士とも形容される大山


●スタート・ゴールとなる大山ホワイトパレス


●大山南壁がとても美しい鍵掛峠からの眺め
「緑が萌える初夏の大山は、ブナの原生林を小鳥がさえずり、風もさわやかです……」、この大会案内のキャッチコピーに誘われて、初めての参加となった。
 大会そのものは'03年で8回目。中国地方随一の秀峰である大山の麓を左回りに一周する、66km(制限時間6時間以内)のサイクリング大会だ。
 距離が短いからといって侮ることはできない。コース内の標高は200m(最低)から1000m(最高)で、通算すると1700mもの標高差を駆け上がらねばならないのだ。まさに山岳コースといえる。
 私は大会の前日、スタート&ゴール会場となる大山ホワイトパレスに泊まる予定だったので、コースの下見を兼ねて一部をクルマで走ってみた。すると会場に到着する手前10kmに、とても長くて急な下り坂があった。「まさか明日、ここを上ることはないだろう」と、そのときは勝手に思い込んでいた。そう、そのとき私は、大山を「右回り」で走っていたのだ。前述のごとく大会は「左回り」ということで、この甘い見通しが当日の走りにも影響を与えてしまった。

●コース最高地点。標高1000mの新小屋峠
 大会当日の朝は薄曇りだったものの、雨の心配はなかった。さわやかな高原の朝で、そこかしこで小鳥のさえずりも聞こえた。
 開会式は9時30分より行なわれ、主催者である「りんの会」の役員から注意事項が説明された。「'03年の申し込みは174人で、大会は年々盛況になる」「今年は笹川スポーツエイドの後援を受け、30万円の支援がある」「これまで毎年なんらかの事故があった。救急車の出動もあるため、今年こそ事故なしで閉会したい」といったことを、司会者がユーモアを交えて語る。おかげで参加者たちは、リラックスしてスタートの時間を迎えることができた。
 2分おき、30人のグループでのスタートで最後のグループとなった。開会式で左回りであることを知った私は、「やだな~」という思いを引きずったまま走りはじめたのだが。
 結果、5km地点でブナ林の中を延々と続く坂を見たとたんに弱気になってしまい、テレビ取材(BS衛星)のカメラが通り過ぎたとたんに歩いてしまった。「スタートして20kmを過ぎないとエンジンが掛からない」というスロースターターゆえ、いきなりの激坂にかなわなかった。

●香取にある長い直線の上り坂
 その後は、大山南壁の切り立った斜面につくられた環状道路を走る。上ったり下ったりの繰り返しで、標高800mの標識を3、4回ほど目にしただろうか。道路をつくった人も、ここを自転車で走るとは想像しなかっただろうと思う。
 また、すれ違うクルマの中からこちらを見る人が、「なんでこんな高いところを走っているの?」とビックリしている様子を思い浮かべると、なんだか愉快な気分になってきた。
 走りはじめて20kmほどで、なんとか最初のチェックポイント(CP)に到着して休憩をとる。「このコースはほとんど平地がない」と走る前から聞いてはいたが、いざ走ってみると本当にそうだった。しかし、どこを走っていても美しい大山の眺望があり、豊かな自然からエネルギーをもらって走ることができた。
 長い坂を上ったり下ったりすることも、「人生悪いことばかりではない」「明けない夜はない」などと少し哲学的なことを考えるきっかけにもなるわけで、そうやってくじけそうになる気持ちをコントロールすることもできた。
 このコースの最高標高地点(1000m)新小屋峠からは、6kmの下り。ところが50km地点の船上山CP付近より、足がけいれんし始めて歩くことが多くなり、ゴールの5km手前では強烈な足のけいれんに見舞われた。そのまま5分間ほどは動くことができず、脂汗も流れる。ただ、残り数kmでゴールと思うと、「走れなくても前に行こう」という気持ちが強く、なんとかゴールすることができた。
 ゴール後は主催者が具だくさんの豚汁を用意してくださり、おいしくいただくことができた。この大会に流れる暖かい雰囲気と関係者の人柄が、この一杯の豚汁に込められているようだった。
 さあ、乗鞍もメじゃない(?)ほどの激坂を、ぜひチャレンジしてほしい。


●大会開会式の風景。バックは大山の北側

地図拡大
小屋谷明彦 広島市在住
「完走者全員が勝者」という精神に共感し、センチュリーライドの世界へ。戦略的な要素もあって興味は尽きず、はや5年が経過した。
 今は日本一周を夢見て、さらに百哩走大王めざして各地の大会へトライしている。
[参加データ]
(第8回大会=2003年5月18日)
バイク:ビアンキ カンピオーネ
タイヤ:700×23C
ギヤレシオ:53×39T/13~26T
●コース
大山ホワイトパレス→桝水高原スキー場→鍵掛峠→御机スキー場→鳥ヶ山(CP)→新小屋峠→地蔵峠→船上山(CP)→一息坂峠→香取(CP)→大山ホワイトパレス
●距離数
66km
●問い合わせ先
りんの会事務局
〒683-0004 鳥取県米子市上福原2丁目12-14 大塚方
TEL.0859-23-1195
URL=http://www.geocities.co.jp/NatureLand-Sky/3680/
●会場までのアクセス
航空機の場合:米子空港からタクシーで約50分
鉄道の場合:JR山陰本線「米子駅」からタクシーで約40分
クルマの場合:米子自動車道「溝口インター」から県道45号線経由で約11.5km、約20分