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【欧州レポート】ディスクブレーキロードのシェアは本当に市場で拡大するのか?

ディスクブレーキロードの存在は、ここ数年いつも話題の的である。だが、日本のマーケットにはまだまだ懐疑的な声が多いのもまた事実だ。

ここで、今のいま、欧州バイクブランド各社がディスクブレーキロードをどう思っているのか、数社の声を集めてきた。

 
text:中島丈博

欧州マーケットといえど、まだ意見はばらばら。でも……。

-イタリア2社

「ハイエンドクラスからディスクブレーキ化が進んでいる。見た目がもうちがう。リムブレーキは古いバイクというイメージを持たれているから、それがまずマイナス。

高いものを買う人は"最新モデル"が欲しいと思っているから、古いイメージのバイクは買わない。あとグランフォンドライダーから、ディスクブレーキの支持が大きい。グランフォンドは長い上りに加えて、長い下りもある。そうなるとブレーキ性能が非常に重要。ディスクブレーキはそこが評価されている。下りでストレスなく走れるというのは大きなアドバンテージだ」。



こう語るメーカーがある反面、以下のような声もまだある。


「ケースバイケース。一概にいうことはできない。過渡期だから。人による。今年がディスクブレーキに完全移行というのはまだ早い。ただ確実に増えていく」。



-ドイツ1社

欧州マーケットのトレンドに強い影響力を持つドイツではどうか。

「安いグレードから、ディスクブレーキ化が進んでいる。ソラ、ティアグラグレードのモデルにワイヤ引きディスクブレーキ。トップモデルもディスクブレーキモデルが動き出している。

ここ2〜3年でロードバイクの新車の40%はディスクブレーキになるだろう。欧州市場はもともとMTBのマーケットが全体の50%ある。そのため、MTBでディスクブレーキの性能や扱いに慣れている。でも日本のマーケットは、ほとんどがロードであることを考えると、欧州と同じようにはいかないかもしれない。ユーザーも販売店も」。



-スペイン1社

「レースにおいて、ディスクブレーキロードは下りで明らかにアドバンテージがある。上りでは確かに重量でのハンデがあるかもしれないけれど、フィニッシュにたどり着くまでのことを考えたら、ディスクブレーキをネガティブにみる必要はない。ただ、チームのメカニックは必ずしもそうじゃない。新しいものを使うというのは、負担が増えることになるから。ベテランメカニックになればなるほど、そういう考えを持つ人は多い。

ただそれは、リムブレーキとディスブレーキが混在していることが原因の一つでもある。単純にキープする機材が倍になる。それをメンテナンスするのは骨の折れる仕事だ。どちらかに統一されれば、大きく進展するだろう」。



-米国1社

「米国では確実に売上げを伸ばしている。だが、スポーツバイクに限らない話だが、乗り物はマーケットにあるライド環境に大きな影響を受ける。そしてどんないい規格も、市場で地位を確立するのに5年はかかる。ロードバイクにおいては、ダブルレバーから手元変速、MTBにおけるVブレーキからディスクブレーキへの移行もそうだった。だからディスクブレーキもラインナップが増えだした2015年から数えて、それくらいの時間がかかるだろう」。



振り返って日本。悪いところを見て何もできずに動けなくなるのか。それともチャレンジして、新しい発見をするのか。どちらが趣味をより楽しめているといえるのか。そんなことを考えさせられた。

改めて感じるのは、今ここが基準になって「良いものとは何か」という、”ディスクブレーキロードの価値観”が形成されていくスタートラインであるということ。現状でのベストではあるが、何が"正解"かをみんなが探っている。リムブレーキロードバイクにおいても、それは常に行われてきたことだが、かなり精度が上がっている。ディスクブレーキロードはこれからが面白い。各社のリサーチ&ディベロップメント能力によって、ロードバイクの勢力図が大きく変化していくことになるだろう。ユーザーの悩みはまだまだつきない時期が続きそうだ。