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ディスクブレーキ搭載のレース系フラッグシップ「ピナレロ・ドグマF10 ディスク」アサノ試乗します!その21

ピナレロのレーシングバイクの最高峰・ドグマF10にはディスクブレーキ搭載モデルもラインナップされる。その名もズバリF10ディスク。ピナレロの最高峰レーシングロードとディスクブレーキシステムのマリアージュは、うまく成立しているのか——。
 
text:浅野真則 photo:吉田悠太

剛性アップと軽量化、空力性能向上を果たし、先代モデルを凌駕

「ピナレロ・ドグマF10 DISK」フレームセット価格/70万円(税抜)
ピナレロ・ドグマのピュアレーシングモデルF10シリーズには、ディスクブレーキ仕様のF10ディスクもラインナップされている。基本的なテクノロジーに関してはF10のものをそのまま継承しているが、ディスクブレーキの搭載を前提にデザインされているのが特徴だ。

キャリパーブレーキ仕様との大きな違いは、ホイールは前後とも12mmスルーアクスル仕様として足まわりを強化し、制動時の安定感やレスポンスを向上させていること。細かな部分では、フォークのドロップエンド付近にある空力性能向上のためのフォークフラップが、ディスクブレーキキャリパーを搭載するため、キャリパーブレーキ仕様とは異なるデザインを採用している。また、リアエンド幅も142mmにワイド化している。

ディスクブレーキ化のためのデザインを除けば、キャリパーブレーキ仕様のドグマF10に搭載されているテクノロジーはこのモデルでも網羅している。

フレーム素材には、東レが開発した強度と剛性に優れるトレカT1100Gカーボンファイバーと最小限の樹脂を組み合わせたプリプレグを使い、剛性アップと軽量化を実現。オンダフォークのドロップアウト付近にはフォークフラップを搭載し、ダウンチューブのボトルケージ取り付け部にはコンケーヴ形状(凹型)を採用して空力性能も強化している。Di2のジャンクションを内蔵するeリンクシステムや取り外し可能なフロントディレイラー台座も採用されている。

フレームセットの受注販売のみで、フレームサイズは46から62まで11サイズ展開。カラーはカタログも出る5色の他に、カラーオーダーシステム・マイウェイでのカスタムも可能だ。
 
F10ディスクのオンダF10フロントフォーク。スルーアクスル化され、整流効果を高めるフォークエンド付近のフィン・フォークフラップもディスクブレーキ用にデザインされている
キャリパーブレーキモデルと同様、上が1"1/8、下が1"1/2の上下異径ヘッドチューブを採用。キビキビとしたハンドリングと、コーナーリング時や制動時の安定感を高い次元で両立する
BB規格はオーソドックスなスレッド式で、イタリアのブランドらしくイタリアン規格。圧入式BBのような音鳴りが発生しにくく、信頼性や耐久性を重視したチョイスといえる
フラットマウントに対応し、コンパクトにディスクブレーキキャリパーをまとめたリアエンド部。スルーアクスル化のため、アルミ製のリプレイサブルエンドを採用する。140mmローター径に対応
キャリパーブレーキと違い、シートステーまわりにブレーキがないのですっきりとしたルックスになったシートステー付近。フレームと一体化したシートクランプは、固定力も十分だ
ヘッドチューブは前後方向に長く、整流効果を意識した形状に。ステムやスペーサーも涙滴形状になっている。フォークのショルダー部とダウンチューブのデザインに連続性を持たせ、乱気流の発生も防ぐ

ディスクブレーキ化されてもF10らしさが損なわれないのは見事


ロードバイクのディスクブレーキ化の波は、2018年モデルではレーシングモデルにも押し寄せている。それはドグマも例外ではない。ドグマのレーシングモデルF10シリーズにも、このF10ディスクがラインナップされている。

ロードバイクのディスクブレーキ化について、個人的には現時点では何でもかんでもディスクブレーキ化することには反対の立場だ。バイクによって相性があると感じるのが最大の理由だ。軽量なレーシングモデルではトータル重量が軽くできるキャリパーブレーキがよく、重量よりも安定性や快適性が重視されるエンデュランスモデルではレバーの引きが軽い油圧ディスクが相性がよいと思うのだ。だからレーシングバイクならキャリパーブレーキの選択肢を残してほしいというのがホンネだ。

さて、話をF10シリーズに戻そう。F10はキャリパーブレーキモデルとディスクブレーキモデルをラインナップし、ユーザーが好みのモデルを選べるようになっている。これは非常に喜ばしいことだ。気になるのは「ディスクブレーキ化することによってF10とどの程度乗り味が違うのか?」ということにつきる。

両者の違いを見ると、ディスクブレーキ仕様はホイールの固定方式が一般的なクイックレリーズではなく、前後とも12mmスルーアクスル仕様に変更されているのが大きな違いだ。また、ディスクブレーキ化に伴い、リアエンドの幅も142mmに拡大されている。もちろんディスクブレーキ専用にフレームのレイアップも最適化されているだろうし、細かな部分では、フロントフォークのフォークフラップがフラットマウントディスクブレーキのキャリパーを搭載するために形状が変更されている。リアブレーキもシートステーからチェーンステーに移動しているので、シートステーまわりはすっきりとしたデザインになっている。

F10との違いを探すべくバイクを走らせると、第一印象ではF10と大きく印象が変わらない。高速巡航時はフレームまわりの空気の抜けがいいように感じられたのも同様だった。基本的にはコンケーブ形状のダウンチューブやフレーム内蔵のシートクランプなど、F10の主要テクノロジーはそのまま備えているので、軽さと剛性、空力性能を兼ね備えたF10の素性の良さは継承している。F10にディスクブレーキをポン付けしただけではこのような洗練された乗り味にはならないだろうから、ピナレロの開発陣はF10らしい乗り味のチューニングにも細心の注意を払っているのは間違いない。

とはいえ、全く同じ乗り味かというとそうではなく、違いが感じられる部分もあった。

ひとつは、ダンシングしたときにホイールとフレームとの一体感が高いように感じられたことだ。これはスルーアクスルを採用したことによるものだと思われる。乗り手によっては「キャリパーブレーキモデルより乗り味が硬い」と感じられるかもしれない。特に体重が軽いライダーはそのことを強く感じるのではないだろうか。

もうひとつは、ディスクブレーキ化によってブレーキキャリパーがフレームの下部に移動したことで、安定感が向上しているように感じられることだ。下りやコーナーでの安定感の高さに関してはディスクブレーキモデルに分があると感じられたほどで、「ディスクブレーキモデルの方が乗りやすい」と評価する人もいるのではないだろうか。とはいえ、スルーアクスルかでホイールとフレームの一体感が増しているからか、シャープでキビキビしたハンドリングが損なわれているわけではないのもポイントだ。

これを踏まえて、F10とF10ディスクのどちらを選ぶか? 答えはロードバイクに何を求めるかによって変わる、というのが個人的な意見だ。

いずれもレーシーな乗り味であることに変わりはないので、レースメインで使うのが大前提。その上で、上りや加速時の軽快さを重視するならキャリパーブレーキモデル、下りやコーナーを安心して攻めたいならディスクブレーキモデルを推したい。
個人的な好みで言えばキャリパーブレーキモデルだが、F10ディスクはこれまでに乗ったどのレーシング系ディスクブレーキロードよりも完成度が高く、洗練された乗り味であった。
 

spec.

「ピナレロ・ドグマF10 DISK」
フレームセット価格/70万円(税抜)

フレーム/カーボン 
フォーク/カーボン 
コンポーネント/カンパニョーロ・H11
ホイール/カンパニョーロ・ボーラワン35ディスク
タイヤ/ピレリ・Pゼロヴェロ  700×25C
ハンドル/モスト・タロン
シートポスト/ピナレロ・オリジナル
サドル/モスト・セライタリア
カラー/925マーズオレンジ、916ブラックラバ、917BOB、918レッドマンゴー、920チームスカイ
サイズ/44SL、46.5SL、50、51.5、53、54、55、56、57.5、59.5、62
試乗車重量/7.32kg(51.5サイズ・ペダルなし)



■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、海外のグランフォンドにも参加経験がある。愛車はスコット・アディクトとキャノンデール・キャード10。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。
 

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