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精度向上、軽量化も果たしたペダルベースのパワーメーター

ガーミンのペダルベースのパワーメーターの最新モデル・ベクター3。左右独立計測など旧モデルの優れた機能を継承しながら、さらに軽量化を実現し、計測精度も高まっているのが特徴だ。製品概要とファーストインプレッションをお届けする。
text:浅野真則 photo:浅野真則、中島丈博

外付けだったポッドを内蔵。より軽く、付け替えやすさも向上

「ガーミン・ベクター3」 価格:12万8000円(税抜)

ベクター3は、ガーミンのペダルベースのパワーメーターである「ベクターシリーズ」の最新モデル。

旧モデルまで外付けだった通信用のポッドがペダルに内蔵されているのが特徴だ。そのため、旧モデルより40g以上軽い316gとなった。さらにペダルの装着や取り外しもペダルレンチ1つでできるようになり、ポッドを正しい向きに装着したり、ペダルをポッドと接続するというひと手間もなくなった。作業性の向上により、複数のバイクでの使い回しやすさはこれまで以上に向上したと言えるだろう。

他に旧モデルから進化した部分として、計測精度が±1%に向上したことも挙げられる。旧モデルも他社製パワーメーターに遜色ない±2%という計測精度を実現していたが、より高精度になり、正確なパワーデータがとれるようになったことはトピックと言えるだろう。

主要機能は旧モデルから継承しており、パワーやケイデンスはもちろん、ペダリングの左右バランスやペダリング中クランクを1周させる間にどの局面で有効なトルクを発生させているかが分かるパワーフェーズ、ペダルの踏み位置がペダルの左右の中心からどのぐらいずれているかを示すプラットフォームセンターオフセット(PCO)といった高度なサイクリングダイナミクスを計測できるのも特徴だ。なお、サイクリングダイナミクスは、ガーミンのGPSサイクルコンピューター・エッジシリーズとベクターシリーズを組み合わせた場合のみ表示できる機能だ。
 
ガーミン・エッジシリーズと最高の相性を誇る。こちらは最新モデルの「エッジ1030」。
このように、ガーミン・エッジシリーズと最高の相性を誇るが、もちろん他社製のANT+サイクルコンピューターとの組み合わせも可能。さらにこのモデルからはBluetooth通信にも対応するので、Bluetooth規格のヘッドユニットやスマホと組み合わせて使うこともできるようになった。

クリートは従来のモデル同様、LOOKのKEOシリーズに対応。LOOKペダルや旧モデルのユーザーならスムーズに移行できる。

ベクター3シリーズのラインナップは、左右独立計測が可能なベクター3のほか、左ペダルのみ計測可能なベクター3Sも用意される。ベクター3Sはアップグレード用のキットを使用することで左右独立計測できるようにすることも可能だ。
 

エッジシリーズの機能をフルに生かせる唯一のパワーメーター

パワーメーターの価格破壊が進んでいる。各社が片側計測のモデルをリリースし、パワーメーターは戦国時代の様相を呈してきた。そんななか登場したのがガーミンのペダルベースのパワーメーター・ベクターシリーズの最新モデルに当たるベクター3シリーズだ。

最大の特徴は旧モデルまでペダルと別体だった通信用のポッドがペダル本体(厳密にはペダル軸)に内蔵されたことだろう。これにより、見た目がすっきりしただけでなく、装着や取り外しもより簡単になった。取り付けや取り外しはペダルレンチひとつででき、気をつけるべきポイントは規定トルクで締め付けることぐらい。複数のバイクで使い回すことが容易なのもベクターシリーズの特徴だったが、最新モデルではさらに使い回しやすさが向上している。

ちなみに重量は、先代モデルがポッド込みのペア重量で358gだったのに対し、ベクター3はペアで316gと軽量化も進んでいる。パワーメーターが追加されている分、一般的なペダルより重量は重くなっているが、それでもパワーメーター相当分はペアで100g程度だろう。手に持つとそれなりに重量感はあるが、走行中にペダリングしていてもそれほど重さを感じることはなかった。むしろクランクの先端部というバイクのかなり低い部分にパワーメーターがつくため、走行中、特にコーナーリング中などはバイクの低重心化に貢献している気がした。

ペダルの作りもしっかりしており、スチールシャフトを採用していることもあって踏みごたえは非常にカッチリとしている。普通のペダルと同じように使えるが、108kgという体重制限が設けられている。とはいえ、ごく一般的な体型のサイクリストなら、そのあたりも気にせずに使えるだろう。

パワーメーターで重要な計測精度も±1%にまで向上し、他社製の多くのパワーメーターより高精度ななのもベクター3の大きな特徴だ。旧モデルでは±2%だったが、メーカーによるとキャリブレーションの方法を見直すことで精度アップを実現したという。計測精度の高さは、ペダリングの変化によるパワーの変動をより正確に反映してくれることにつながる。
さらに計測ポイントがライダーとの接点であるペダルにあることから、ライダーの生み出すパワーを正確に計測できていて、高ケイデンスでペダリングしているときも、低ケイデンス・高トルクでペダリングしているときも、体感による主観的強度とのずれが少ない非常に正確な数字を反映していると感じた。走行後ログを確認したが、自分で見た限りではスパイク(突発的に高いパワーが記録される現象)もデータの欠落もなかった。
 

フレームとの相性を気にしないでいいのも魅力だが……

ここまで主にメリットを書き連ねてきたが、もちろん少なからずデメリットと思われる点もある。

一番懸念されるのは、対応するクリートが、ルックのKEOシリーズのみという点だろう。旧モデルではペダルシャフトを交換することでシマノのSPD-SLペダルにも装着できたが、ベクター3ではシマノSPD-SLクリートに対応する予定はないという。タイムやスピードプレイペダルのユーザーは、そもそもこのモデルを使えない。

落車時やコーナーリング時に地面にヒットして衝撃を受けるリスクが高いのも気になるところだ。実際のユーザーから「落車しても壊れなかった」という声を聞いているが、やはり精密な計測機器なので、衝撃によるダメージが計測精度に影響を与えないのかは不安になる。ただベクター3ではペダル本体の形状を見直し、コーナーリング時にバイクを傾けた際にも地面にヒットしにくいように改善しているというから、この点は評価できる。

クリートの問題や地面にヒットしやすいという問題は、いずれもペダルベースのパワーメーターの宿命ではある。ベクター3もこの宿命から逃れられるわけではないが、ライバルと比べて高精度で取り付けも簡単というアドバンテージがある。しかも、サイクリングダイナミクスという他社にはない機能が備わっている割に価格もこなれている。

さらにクランクベースのパワーメーターのように、「フレーム形状によって取り付けられない」ということもないし、使えるコンポーネントが限られるということもない。ハブベースのパワーメーターのように決戦用と練習用にパワーメーターつきのホイールを用意する必要もない(この場合、レースでも練習でもパワーを計測するには結果としてパワーメーターが2台必要になる)。複数のバイクで手軽にパワーメーターを使い回ししたい人や、フレーム形状やコンポーネントの制約を受けることなくパワーメーターを使いたいという人にはおすすめだ。

ベクター3シリーズは、旧モデルと同様、左右独立計測が可能なベクター3と片足計測とすることで価格を抑えたベクター3Sの2タイプをラインナップする。購入するなら初期投資はかさむが、機能をフルに使える左右独立計測のベクター3がおすすめだ。ベクター3Sもアップグレードすることで左右独立計測が可能にはなるが、トータルのコストで比較するとはじめからベクター3を購入した方が費用を抑えられるからだ。


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