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ツール・ド・フランス2017 ハイライト

ツール・ド・フランスで4度目の総合優勝を果たしたフルームは、マイヨ・ジョーヌを着た息子と一緒にパリの表彰台へ上がった。しかし、総合2位になったコロンビアのウランとのタイム差は1分を切っていた...
photo : Luca Bettini/BettiniPhoto©2017

32歳のフルームが4度目のマイヨ・ジョーヌ

photo : TDW/BettiniPhoto©2017
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第104回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、英国のクリストファー・フルーム(チームスカイ)が、32歳で4度目の総合優勝を果たして幕を閉じた。しかし、パリの表彰台で彼の右側に立ったのは、開幕前には優勝候補に上げられていなかったコロンビアのリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)だった。

昨年総合2位だった地元フランスのロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)は総合3位の座を1秒差で守り、かろうじて表彰台に上がったが、今年のツールでフルームとマイヨ・ジョーヌを競うだろうと予想されていた選手たちは、様々な理由で期待に応えることなくレースを終えた。

ツールで2013年に初優勝し、翌年は落車の怪我で序盤にリタイアしたが、2015年からは連覇を続けてきたフルームの4度目の勝利は、過去3勝と比べると総合2位の選手とのタイム差が最も少なかった。しかも、彼がマイヨ・ジョーヌを着てパリに凱旋できることが確定したのは、最終日前日の個人タイムトライアルが終わった時だった。

昨年までのフルームは、前半戦で総合首位に立ち、強いチーム力でレースをコントロールして後半戦にマイヨ・ジョーヌを手放すことはなかった。しかし今年は、中盤のピレネー区間で総合首位の座を2日間、イタリアチャンピオンのファビオ・アルー(アスタナプロチーム)に明け渡してしまった。

ドイツのデュッセルドルフで開幕した104回大会は、フランスの5つの山脈(ボージュ、ジュラ、ピレネー、中央山塊、アルプス)がすべてコースに盛り込まれたが、頂上ゴールのステージはたった3回しかなく、厳しい峠で大差が付くことはなかった。

その代わりに、より勾配のキツい峠をいくつも越えるステージが勝負どころになるのではと期待されていたが、マイヨ・ジョーヌ争いを決定づけるような闘いは最後まで見られなかった。

南仏マルセイユで行われた最終日前日の個人タイムトライアルも22.5kmしかなく、スタート前に総合首位のフルームはバルデに23秒差、ウランに29秒差という僅差で追い詰められていた。

もし、個人タイムトライアルの距離が長ければ、フルームの勝利を疑う者はまずいなかっただろうが、今年の状況は、逆転の可能性を秘めるものだった。そしてウランは、個人タイムトライアルが不得意な選手ではなかった。

しかし、ツールを3度制したベテランのフルームは、最終決戦となった個人タイムトライアルでミスを犯さなかった。彼は区間優勝こそできなかったものの、実力通りの走りでマイヨ・ジョーヌを守り、マイヨ・ジョーヌを着た小さな息子と一緒にパリの表彰台に上がることができた。

「今回は最も僅差のツール・ド・フランスで、総合を争う選手たちの戦いがより激しかった。それがこのマルセイユでのタイムトライアルまで続くとは思っていなかったが、そうなった」と、フルーム自身も総合2位のウランとのタイム差がたった54秒という展開は予想していなかったことを明らかにしていた。

ツールで4度目の総合優勝を果たしたフルームは、来年エディ・メルクス(ベルギー)、ベルナール・イノー(フランス)、ジャック・アンクティル(フランス)、ミゲル・インドゥライン(スペイン)が持つ5勝の記録に挑むことになる。
 
 
photo : TDW/BettiniPhoto©2017
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波乱の幕開け

photo : TDW/BettiniPhoto©2017
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30年ぶりでドイツがグラン・デパールになった今年のツール・ド・フランスは、デュッセルドルフの市街地で競われた第1ステージの個人タイムトライアルから波乱が起きた。この日は雨で路面が滑りやすくなっていて、スペインのアレハンドロ・バルベルデ(モビスターチーム)がコーナーで転倒してフェンスに激突し、そのまま救急車で搬送されてしまったのだ。

しかし、波乱はこれで終わらなかった。第4ステージのゴールスプリントでは、病気から復活してツールに出場していた英国のマーク・カヴェンディッシュ(チームディメンションデータ)が、世界チャンピオンのペテル・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)と接触してフェンスに激突し、右の肩甲骨を骨折してしまった。

この事故で、サガンはUCIのレース審判からスプリントで違反があったと判定され、失格処分になってしまった。翌日、ボーラ・ハンスグローエはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えたが却下され、サガンは世界チャンピオンでありながら、世界最高峰のレースを追放されてしまうという不名誉な結末になってしまった。

今年、6年連続でマイヨ・ベール獲得を目指していたサガンが消えてしまったことで、ポイント賞争いは突然オープンになった。サガンが失格になったゴールスプリントでツール区間初優勝を果たしたフランスチャンピオンのアルノー・デマール(エフデジ)は、マイヨ・ベール獲得に名乗りを上げたが、彼は第9ステージを制限時間内にゴールできず、早々と姿を消した。

今年のマイヨ・ベール争いで序盤から主導権を握っていたのはドイツのマルセル・キッテル(クイックステップフロアーズ)だった。彼はドイツのデュッセルドルフからスタートしてベルギーのリエージュでゴールした第2ステージで区間優勝したあと、第11ステージまでで区間5勝したのだ。

ツール・ド・フランスの長い歴史の中で、最初の11ステージ中、5ステージで区間優勝した選手は、キッテルの他には1909年のフランソワ・ファーベル(ルクセンブルク)だけだった。しかも、キッテルは、6区間あったスプリントステージで勝てなかったのは落車で足止めを食らった1ステージだけだった。今年のツールで彼はまさに無敵の強さだった。

ところがパリまであとわずかというアルプス初日の第17ステージで、キッテルはレース序盤の落車に巻き込まれ、負傷してしまった。彼はマイヨ・ベールを着たままツールを去ることになってしまった。

その日、ポイント賞を引き継いだのはオーストラリアのマイケル・マシューズ(チームサンウェブ)だった。こうして最終日までフラットなステージがなかった後半戦で区間2勝し、山岳ステージでも逃げに加わって中間スプリントポイントを獲得し続けた26歳のマシューズが、初めてマイヨ・ベールを着てパリの表彰台に上がる栄誉を得たのだ。
 
 
photo : Luca Bettini/BettiniPhoto©2017
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photo : TDW/BettiniPhoto©2017
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予想外のマイヨ・ジョーヌ争い

photo : POOL Bernard Papon/BettiniPhoto©2017
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開幕前に、ディフェンディング・チャンピオンのフルームの最大のライバルになると思われていたのは、コロンビアのナイロ・キンタナ(モビスターチーム)だった。彼は2013年と2015年に総合2位、昨年は総合3位で、フルームが総合優勝した年は常に彼とマイヨ・ジョーヌを争ってきた。

ところが、今年最初の山岳区間だった第5ステージのラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユで、フルームがライバルの調子を見るために攻撃を仕掛けた時、キンタナは付いていくことができなかった。5月にジロ・デ・イタリア(UCIワールドツアー)を走ったキンタナは、明らかに今年のツールは本調子ではなかった。

そのステージで区間優勝したイタリアチャンピオンのファビオ・アルー(アスタナプロチーム)が、今年はマイヨ・ジョーヌ争いに加わったのだが、彼には総合首位の座を守れるチーム力がなかった。序盤の落車で多くのチームメートが負傷し、6月のクリテリウム・デュ・ドーフィネ(UCIワールドツアー)で総合優勝したヤコブ・フルサング(アスタナプロチーム)も、第13ステージでリタイアしてしまった。

アルーは2日間だけ総合首位に立ってマイヨ・ジョーヌを着たが、マシューズが勝った激坂ゴールスプリントの第14ステージで終盤にアシストがなく、集団の前方でゴールできずにタイムを失ってしまった。その不運がなくても、頂上ゴールが少なく、最終日前日の個人タイムトライアルでレースが決した今年のコースでは、アルーには総合優勝できるチャンスはほとんどなかっただろう。

キンタナと同様に、開幕前にフルームの主要なライバルとして注目されていたのはオーストラリアのリッチー・ポート(BMCレーシングチーム)だった。かつてフルームのアシストだったポートはBMCレーシングチームに移籍し、昨年初めてフルームのライバルとしてツールを走ったが、不運なパンクで序盤戦からタイムを失い、総合5位でレースを終えた。

しかし、今年のポートはもっと不運だった。彼は第9ステージ終盤の下り坂で、雨でぬかるんだ路肩の草むらに車輪を取られて転倒し、右鎖骨と骨盤の右寛骨臼を骨折。フルームとマイヨ・ジョーヌを争うことなく、レースを去らなければならなくなってしまった。
 
 
photo : TDW/BettiniPhoto©2017
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ポートの落車に巻き込まれて激しく転倒したアイルランドのダニエル・マーティン(クイックステップフロアーズ)は、今年のツールで最も幸運な選手だった。その落車で彼は大怪我を負っていても不思議はなかった。しかし、奇跡的にマーティンは無傷で、最後までマイヨ・ジョーヌ集団で総合争いに加わる活躍を見せた。

そしてポートが落車したステージで区間初優勝したコロンビアのリゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック)が、今年のツールで最大の伏兵だった。彼はジロで2回、総合2位になったことはあるが、今までツールで好成績を上げたことはなく、30歳になった今季は目立った活躍もなかった。

キャノンデール・ドラパックは、ウランと米国のアンドリュー・タランスキーが今年のツールで総合のエースを務めると発表していたが、エースナンバーを付けていたのはフランスのピエール・ロランだった。

しかし、最後にフルームが最大の脅威として注目したのはウランだった。彼は総合2位になった2014年のジロで、個人タイムトライアルを制していた。最終日前日に、ウランは29秒差をひっくり返し、フルームからマイヨ・ジョーヌを奪い取る奇跡の逆転劇を演じるのではないかと期待されたのだ。

そのプレッシャーは想像も付かない。ウランはタイムトライアルのゴールがあったスタジアム入口の手前でコーナーを曲がりそこない、あやくうフェンスに接触して転倒するところだったが、かろうしでこらえることができた。奇跡は起こらず、ウランは総合2位で今年のツールを終えた。
 
 
photo : TDW/BettiniPhoto©2017
photo : TDW/BettiniPhoto©2017

ツール・ド・フランス2017 結果

1 クリストファー・フルーム(チームスカイ/英国)86時間20分55秒
2 リゴベルト・ウラン(キャノンデール・ドラパック/コロンビア)+54秒
3 ロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル/フランス)+2分20秒
4 ミケル・ランダ(チームスカイ/スペイン)+2分21秒
5 ファビオ・アルー(アスタナプロチーム/イタリア)+3分05秒
6 ダニエル・マーティン(クイックステップフロアーズ/アイルランド)+4分42秒
7 サイモン・イエーツ(オリカ・スコット/英国)+6分14秒
8 ルイ・メインティス(UAE・チームエミレーツ/南アフリカ)+8分20秒
9 アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード/スペイン)+8分49秒
10 ワレン・バルギル(チームサンウェブ/フランス)+9分25秒

[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):マイケル・マシューズ(チームサンウェブ/オーストラリア)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):ワレン・バルギル(チームサンウェブ/フランス)
■新人賞(マイヨ・ブラン):サイモン・イエーツ(オリカ・スコット/英国)
■チーム成績:チームスカイ(英国)
■スーパー敢闘賞:ワレン・バルギル(チームサンウェブ/フランス)
(http://www.letour.fr/le-tour/2017/us/)


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photo : Luca Bettini/BettiniPhoto©2017
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