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100回記念大会ジロ・デ・イタリア レースプレビュー

100回記念大会のジロが、今日サルデーニャ島で開幕する。優勝候補の筆頭はディフェンディングチャンピオンのニバリと、コロンビアのキンタナだ。3週間後にミラノでマリア・ローザを着て、終わりのないトロフィーを掲げるのは誰か? ベルギーの新聞記者、ヒューゴ・コールビッツ氏のレースプレビューをお届け。
text : ヒューゴ・コールビッツ(ヘットニュースプラッド)

ニバリ VS キンタナ!

第1ステージのスタート地、アルゲーロ(サルデーニャ島)                            
第1ステージのスタート地、アルゲーロ(サルデーニャ島)                            
100回記念大会はアルー(左)の故郷サルデーニャで開幕し、ニバリの故郷シチリア島を巡るレイアウトになっているのだが、アルーはケガで出られなかった
100回記念大会はアルー(左)の故郷サルデーニャで開幕し、ニバリの故郷シチリア島を巡るレイアウトになっているのだが、アルーはケガで出られなかった
ビンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)の3勝目か、ナイロ・キンタナ(モビスターチーム)の2勝目か。それがイタリアのサルデーニャ島で開幕する第100回ジロ・デ・イタリアの最大の問題だ。

5月28日に『ラ・コルサ・ローザ(イタリア語でバラ色のレースの意味。ジロの愛称)』での3勝目を上げられれば、“メッシーナの鮫” ニバリはミラノのドゥオーモで聖人に認定されるだろう。

もし勝てれば3大ツアーでの勝利数が5勝になり、彼はフェリーチェ・ジモンディ(ジロで3勝、ツールとブエルタでそれぞれ1勝)に並ぶのだ。ジモンディは3大ツアーすべてで優勝している6人の選手の中で、唯一ニバリと同じイタリア人だ。

ジロ・デ・イタリア100回大会の開幕は、直前に起きたミケーレ・スカルポーニ(アスタナプロチーム)の死亡事故でかき乱された。今週の火曜日に、ジロ主催者のRCSスポルトは彼に敬意を表し、モルティローロ峠を『スカルポーニ・クライム』と名付けると発表した。

スカルポーニの訃報に限らず、今年のジロはすべてが順調というわけではなかった。ニバリの後継者と目されるイタリアのファビオ・アルー(アスタナプロチーム)が、トレーニング中のケガで出られなくなってしまったからだ。

それは主催者にとって悪いニュースだった。彼らが100回大会の開幕地に選んだサルデーニャ島は、アルーの出身地だったのだ。そこでアルーは、今年からライバルになったニバリと競うシナリオのはずだった。そしてサルテーニャ島の後にはニバリの故郷シチリア島のステージがあり、そこで今度はニバリがアルーを迎え撃つはずだった。

ニバリで熱狂する100回大会で、コロンビア人として誰も成し遂げたことがないジロ2勝目という歴史を作る可能性があるのがキンタナだ。イタリアのツアー・オブ・アルプス(旧ジロ・デル・トレンティーノ)やスイスのツール・ド・ロマンディから遠く離れたスペインのブエルタ・ア・アストゥリアスで調整していたコロンビアの英雄キンタナは、ニバリと戦う準備はできていると断言している。
 
 
●ビンチェンツォ・ニバリ(バーレーン・メリダ)
1984年11月14日、イタリア、メッシーナ(シチリア島)生まれ。
32歳。180cm、67.2kg。
3大ツアーすべてで優勝している。
[主な戦歴]
2010 ブエルタ・ア・エスパーニャ 総合優勝
2013 ジロ・デ・イタリア 総合優勝
2014 ツール・ド・フランス 総合優勝
2016 ジロ・デ・イタリア 総合優勝




■ニバリのコメント「とても調子がいいと感じている。ここサルデーニャの気候は格別だ。ジロ・デ・イタリアの100回大会のスタートを楽しみにしているよ。僕の望みはみんな知っての通りだ。僕は最後の表彰台に上がりたい。その一番高いところに上がるのは簡単ではない。だからもう一度ジロで勝てなかったときは、このレースの栄誉のために、総合2位、3位を目指して闘うだろう。我々はチームとして、ここに来るために可能な限り最高のコンディションを作ってきた。ライバルたちには多大な敬意を持っているよ」
  
 
●ナイロ・キンタナ(モビスターチーム)
1990年2月4日、コロンビア、ボヤカ生まれ。27歳。167cm、58kg。
[主な戦歴]
2013 ツール・ド・フランス 総合2位/山岳賞/新人賞
2014 ジロ・デ・イタリア 総合優勝
2015 ツール・ド・フランス 総合2位/新人賞
2016 ツール・ド・フランス 総合3位
2016 ブエルタ・ア・エスパーニャ 総合優勝
 
 
 

■キンタナのコメント「同じ年にジロとツールの両方で勝てるかどうかはわからない。僕が挑戦するのは初めてだからだ。まずはジロで勝たなければならない。優勝したからこそ、初出場には思い出がある。この特別な回を逃すことはできなかった。100回目のジロだ。歴史的だ。レースの動向で変わるトップチームが通常よりも多く、総合を狙う選手もより多い。エトナ山での第4ステージで、今回の主役たちはすぐ明らかになるだろう。しかし、決定的な週は最終週になるだろう。僕は可能な限り最高の成績を望んでいる」
 
 
 
ニバリ、キンタナの他にも、今年のジロには素晴らしい選手がたくさん参加する。フランスのティボ・ピノー(エフデジ)、オランダのトム・ドゥムラン(チームサンウェブ)、スティーフェン・クラウスウェイク(チームロットNL・ユンボ)、バウケ・モレマ(トレック・セガフレード)。それにアダム・イエーツ(オリカ・スコット)やイルヌール・ザカリン(カチューシャ・アルペシン)もいる。

ウエールズ人のゲラント・トーマス(チームスカイ)は、今年のジロで初めて自分のためにグランツールを走ることができる。スペインのミケル・ランダが、彼をサポートするはずた。

残念ながら今年もツール・ド・フランスを狙うクリストファー・フルーム(チームスカイ)、アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)は参加しない。ロマン・バルデ(アージェードゥゼール・ラモンディアル)も、スポンサーの意向でジロへの参加を取り消されてしまった。
 
 
トム・ドゥムラン(チームサンウェブ)      
トム・ドゥムラン(チームサンウェブ)      
ティボ・ピノー(エフデジ)                  
ティボ・ピノー(エフデジ)                  
ゲラント・トーマス(チームスカイ)                                  
ゲラント・トーマス(チームスカイ)                                  

自転車競技の歴史を巡るコース

MAP : RCS Sport
MAP : RCS Sport
100回記念大会のコースは、イタリアの自転車競技の歴史が作られた場所を数多く訪れる。例えば、エディ・メルクスが初めて優勝したブロッカウス(第9ステージ)がある。ファウスト・コッピが亡くなったトルトゥーナ(第13ステージ)にも訪れ、翌日はその“カンピオニッシモ”が生まれたカステッラニーアからスタートする。

最終週の幕開けとなるロベッタ~ボルミオ(第16ステージ)と、モエーナ~オルティセイ(第18ステージ)が今年のクイーンステージになるのは間違いない。我々は最終週の3日間で2つのクイーンステージを見られるのだ。

イタリアのグランツールは、ツール・ド・フランスよりも様々な面でよりオープンだ。より多くの熱狂を生み出すために、今週の初めにはダウンヒル競争を導入すると発表された。最も速く下り坂を下った選手は、最後に5000ユーロを手に入れるというのだ。しかし、それは選手や関係者から批判されてすぐ中止になった。

サルデーニャ島での開幕初日には、オルビアでベテランのアンドレ・グライペル(ロット・スーダル)と若手のフェルナンド・ガビリア(クイックステップフロアーズ)の激しいゴールスプリント争いが見られるはずだ。あるいはそのドイツ人対コロンビア人の戦いの間に、オーストラリア人のカレブ・ユーワン(オリカ・スコット)が割って入るかもしれない。

もしも初日にガビリアが勝てば、100回目のジロは始まりと終わりがコロンビアの勝利になるかもしれない。しかしそれでは、きっとティフォーズィ(イタリアの熱狂的なレースファン)はがっかりするだろう。ニバリの後継者として、彼らはアルーや、新世代の“カンピオニッシモ”の誕生を待ち続けている。それはいつでもジロから誕生する。

今でもジロは、世界規模で金を稼ぎまくるビジネス・マシーンになってしまったツールよりも、本当に自転車競技を愛するファンとともに生き続けているのだ。
 
 
第16ステージ(MAP : RCS Sport)
第16ステージ(MAP : RCS Sport)
第18ステージ(MAP : RCS Sport)
第18ステージ(MAP : RCS Sport)

第100回ジロ・デ・イタリア 全日程

5月5日(金) 第1ステージ[アルゲーロ~オルビア/206km]
5月6日(土) 第2ステージ[オルビア~トルトリ/221km]▲
5月7日(日) 第3ステージ[トルトリ~カーリアリ/148km]
5月8日(月) 休養日
5月9日(火) 第4ステージ[チェファル~エトナ/181km]▲▲△
5月10日(水) 第5ステージ[ペダーラ~メッシーナ/159km]
5月11日(木) 第6ステージ[レッジョ・カラブリア~テルメ・ルイジャーネ/217km]
5月12日(金) 第7ステージ[カストロビッラーリ~アルベルベッロ(バッレ・ディトリア)/224km]
5月13日(土) 第8ステージ[モルフェッタ~ペスキーチ/189km]▲▲
5月14日(日) 第9ステージ[モンテネーロ・ディ・ビザッチャ~ブロッカウス/149km]▲▲△
5月15日(月) 休養日
5月16日(火) 第10ステージ[フォリンニョ~モンテファルコ/39.8km]個人TT
5月17日(水) 第11ステージ[フィレンツェ(ポンテ・ア・エマ)~バンニョ・ディ・ロマーニャ/161km]▲▲
5月18日(木) 第12ステージ[フォルリ~レッジョ・エミリア/234km]
5月19日(金) 第13ステージ[レッジョ・エミリア~トルトゥーナ/167km]
5月20日(土) 第14ステージ[カステッラニーア~オローパ(ビエッラ)/131km]▲▲△
5月21日(日) 第15ステージ[バルデンゴ~ベルガモ/199km]▲▲
5月22日(月) 休養日
5月23日(火) 第16ステージ[ロベッタ~ボルミオ/222km]▲▲▲▲(チマコッピ)
5月24日(水) 第17ステージ[ティラーノ~カナッツェーイ(バル・ディ・ファッサ)/219km]▲▲
5月25日(木) 第18ステージ[モエーナ~オルティセイ(ザンクト・ウルリヒ)/137km]▲▲▲△
5月26日(金) 第19ステージ[サン・カンディード~ピアンカバッロ/191km]▲▲△
5月27日(土) 第20ステージ[ポルデノーネ~アズィアーゴ/190km]▲▲▲
5月28日(日) 第21ステージ[モンツァ(モンツァ・サーキット)~ミラノ/29.3km]
[総距離:3615km]
 
MAP : RCS Sport
MAP : RCS Sport
全コースプレビュー http://www.cyclesports.jp/depot/detail/70901
大会公式ホームページ http://www.giroditalia.it/


第100回ジロ・デ・イタリア スタートリスト(全22チーム)
http://www.cyclesports.jp/depot/detail/78962