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《手ぶらでMTB》vol.5 ああ、ここが東京都でさえあったなら。『八幡浜市民スポーツパークMTBコース』

四国の西端にある八幡浜市がもし、仮に、『東京都八幡浜市』であったなら。このコースは確実に2020年東京五輪のコースとして採用されていたはずだ。20年以上に渡って世界的なコースへの進化を遂げてきた『八幡浜MTBコース』を評するのに、これ以外最適な言葉はない。パブリックなMTBコースとして理想的な運営を続ける、もちろん手ぶらで来て乗れる八幡浜のMTBコースを紹介しよう。
 
Text&Photo:中村パンソーニ

公営MTBコースとしての理想的な形



コースの成り立ちから20年近く、正しいパブリック(公式)MTB コースとしての進化を続けてきた『八幡浜スポーツパークMTBコース』。毎年UCI公認のレースが行われる日本でも有数のMTBレースフィールドであり、五輪代表選手を選出するレースには、ほぼ必ずと言っていいほど、この八幡浜のコースが使われてきた。

愛媛県八幡浜市のローカルの熱い情熱から始まったMTBコースの設立は、長い時を経て、消滅の危機にも直面しながら、その支援者を増やし続けてきた。その結果、今や八幡浜市による管轄となり、レンタルバイクはもちろん、ヘルメット、洗車場、シャワーなど、スポーツ施設として最適な設備を備えたコースとなった。しかも走行料・駐車料金無料で年中無休だ。
 
そしてコース整備やレンタルバイクの整備も、このコースで育ったXCエリート選手によるプロショップが、八幡浜市から依頼を受け、愛と責任を持って望んでいる。まさに理想的なあり方の公営MTBコースである。

 

3つのコース、初級、中級、超上級



昨今、MTBのクロスカントリーレースは、『XCO』というクラス分けで呼ばれている。このXCOの『O』とはなにか、もちろんオリンピックのOである。五輪を頂点とするXC界であるからこそ、それを目指すコースも自ずと五輪スタンダードに近いものとなってくる。
 
八幡浜、現在のコースレイアウトも、初級者から五輪を狙う選手まで走り込めるものだ。15年以上にも渡る数々の日本トップシリーズやUCI公認レース、そして地元ローカルの草レースなど、数多くのレースイベントを通して練り込まれただけはある。が、コース数はそんなに多くはない。基本的に3つのセクションから成り立っている。
 

3次元の動きを体得せよ「ツチノココース」



まず、レンタルバイクで初めてMTBに乗るという方でもMTBならではの動き方が習得できる楽しいコース、「ツチノココース」だ。コースの最高地点付近にある(駐車場もあるので心配ない)ここは、いわゆるパンプトラックのようなコブありタニありバームあり、の3次元にカラダとバイクが動くのを体得できる。子どもから大人まで、特に子どもはここでバターになるまで(*)走り続けられることだろう。(*グルグルと走り回り続けた虎が溶けてバターになっちゃった、という著名な絵本が昔あったのだが、いろいろあって絶版になった。詳しくはネットの海を探ってほしい)

 

永遠に走り続けたい「トレーニングコース」



ツチノココースで存分に腰を柔らかく動かしたら、次は正式名称を「トレーニングコース」と称される、全長2.4kmの通称北コースを走ってみよう。この「トレーニング」と称されるこのコースは、ハッキリ言って『キモチイイ!』。

広めでスムーズなトレール、適度なアップダウンがありながら、いくつものコーナーを介して標高を上げ、そして下げる。その慣性力でバイクとカラダはまるで転がるボールのようにコース路面にへばりつき、いわゆる「フロウ=流れのあるライディング」をそのまま体感できるコースとなっている。「トレーニングコース」だなんて大ウソである。「超気持ちいいコース」と改名すべきだ。
 

悲喜こもごものドラマを産んだ「J YAWATAHAMA XCコース」



そして南側にある3kmほどのコース部を含んだ全体を5.6kmの「J YAWATAHAMA XCコース」と称する。この通称「南コース部」は、日本でもトップクラスのエリート選手が、その五輪への夢を賭ける場となってきた。またハッキリ言ってしまうと『大変難しい!』コースだ。
 
斜度は急で、路面も木の根っこがボコボコと続く、あるいはまともに乗ることすら難しいセクションもある。「桜坂」「ゴジラの背」など、MTBレーサーたちの悲喜こもごもとしたドラマが展開された、日本MTB史上に長く語り継がれるセクションがそれだ。 八幡浜に来たなら、南コースも含めたコース全体を、やはり走っておきたいものである。これが五輪代表選手選考レース会場として使われてきた。おそらく東京五輪への代表選考にも使われるのだろう。楽しみである。
 

レンタルバイクは200円、ヘルメット込み



さて手ぶらさんに必需のレンタルバイクだ。これは管理塔事務所に申し込む。

申請用紙に必要事項を記入し、保証料金1000円(MTB返却時に返金)を払えば、レンタル料金大人1日200円、中学生以下は100円だ。ヘルメットも込みの料金なので、ほんとに手ぶらでどんと来いだ。

レンタルの台数は20台近くと豊富(スペシャライズドの調子いいものが揃っている)、子ども用バイクも7台ほどあるので、家族揃ってカモンも可能。走った後には洗車場で軽く洗って返却しよう。走った後にはシャワーを借りることもできるという、繰り返し書くが、理想的なMTB環境である。
 
 

コース外でのお楽しみ

またここはみかんのくに愛媛である。国道沿いにある八幡浜名物じゃこ天の揚げたてを立ち食いするのもたまらないが、JR八幡浜駅前には柑橘類の販売所がアナタを待っている。ここで柑橘サイエンティストたちが生み出した各種柑橘の食べ比べを行うのも、八幡浜MTBコースの楽しみ方、そのひとつだ。

現在のXCコースとしてのスタンダードに、そしてパブリックMTBパークとしてのあり方に、何年も前からコミットしているこの八幡浜のコース。もしこのコースが東京にあったなら、間違いなく五輪会場になっていたことだろう。今からでも遅くない、東京都八幡浜市の設立になんとか清き一票を投げかけてみたいものである。

 


八幡浜市民スポーツパーク スポーツゾーン(多目的グラウンド)
住所: 愛媛県八幡浜市若山9-160
アクセス:JR予讃線八幡浜駅から車で15分 、松山自動車道大洲ICから車で40分
走行料金:無料 、駐車料金:無料
コース利用時間9:00~16:00 基本無休(年末年始は休業)
レンタルバイク:大人一日200円、ヘルメット込み・
トイレ、シャワー、洗車施設あり

問・八幡浜市 生涯学習課 
TEL  0894-22-3111

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