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ヴィッレッラが初優勝! ジャパンカップ 2016

快晴に恵まれた25回記念大会は
下馬評通りロンバルディアで5位に入った
25歳のヴィッレッラが、
最後の古賀志林道でアタックを決め
プロ初優勝を果たした

25回記念大会を制したイタリアの若手選手

 
1990年に開催された、宇都宮ロード世界選手権のメモリアルイベントとして誕生したジャパンカップサイクルロードレース(アジアツアー1.HC)は、今年25回の節目の年を迎え、例年以上の盛り上がりを見せた。

しかし、中東のカタールで初開催されたドーハ世界選の1週間後というスケジュールが、少なからずレースに影響を与えた。これまでジャパンカップの1週間前と言えば、イタリアで『イル・ロンバルディア(UCIワールドツアー)』が開催されており、その厳しいクラシックレースを競った選手が大勢来日していた。

今年はドーハ世界選が10月上旬に開催されたため、ロンバルディアはジャパンカップの3週間前に終了していた。ドーハ世界選はフラットなコースだったため、代表選手の多くはスプリンターで、ロンバルディアを競うような選手たちは参加していなかった。

その間は大きなレースもなく、ディフェンディング・チャンピオンのバウケ・モレマ(トレック・セガフレード)も3週間レースもなく、トレーニングもしていないという不安材料を抱えていた。

しかし、ロンバルディアで5位に入ったイタリアのダビデ・ヴィッレッラ(キャノンデール・ドラパック)は、ジャパンカップを今季最後の目標としていた。チームのエリック・バンランクル監督は、レース前に「ロンバルディアの後、彼はとても調子がよく、このレースのために3週間しっかりトレーニングをしてきた。やる気満々さ」と、語り、彼の成功を確信していた。

レーススタート前、ジャパンカップで優勝経験があるイタリアのダミアーノ・クネゴ(NIPPO・ヴィーニファンティーニ)とマヌエーレ・モーリ(ランプレ・メリダ)に注意しなければならないライバルを聞くと、2人とも真っ先にヴィッレッラの名前を上げていた。
 
逃げにはキャノンデール・ドラパックのブレシェルが加わっていた             
逃げにはキャノンデール・ドラパックのブレシェルが加わっていた             
危険なヴィッレッラを終始マークしていたモーリ                            
危険なヴィッレッラを終始マークしていたモーリ                            
快晴の下、16チームの78選手がスタート。1周目の下り坂で堀孝明(宇都宮ブリッツェン)、井上和郎(ブリヂストンアンカー)、マルコス・ガルシア(キナン)、マッティ・ブレシェル(キャノンデール・ドラパック)が集団から逃げ出し、ベンジャミン・ヒル(アタッキ・チームグスト)が追いついて5人の逃げ集団を形成した。

いつもとシナリオが異っていたのは、この逃げにUCIワールドチームのブレシェルが加わっていたことだった。ヴィッレッラが所属するキャノンデール・ドラパックは、これで集団を引く必要がなくなった。

3周目の山岳賞は宇都宮ブリッツェンの堀孝明が獲得し、地元ファンを喜ばせてくれた。さらに6周目の山岳賞は、今季で引退すると表明している井上和郎(ブリヂストンアンカー)が競り勝ち、表彰台へ上がる栄誉を獲得した。

5人の逃げはレース中盤に最大で3分以上の差を付けたが、いつものようにUCIワールドチームが追い上げ始めると、タイム差はすぐに縮まっていった。

残り2周回に突入した時、ブレシェルはコントロール・ラインで振り返り、集団がすぐ後方に迫っているのを目にした。残り20kmを残し、レースは振り出しに戻った。

そして最終周回に突入したとき、先頭集団はたった25人に絞られていた。そこから最後の古賀志林道の上り坂のふもとで、ヴィッレッラがアタックし、後続に10秒ものタイム差を付けて山頂を通過した。
 
沿道では8万5000人の観客が勝敗の行方に注目していた        
沿道では8万5000人の観客が勝敗の行方に注目していた        
独走でフィニッシュに飛び込んだヴィッレッラ                    
独走でフィニッシュに飛び込んだヴィッレッラ                    
2度目の優勝を目指すモーリ、チーム右京のスペイン勢、オリカ・バイクエクスチェンジのクリストファー・ユールイェンセンとロバート・パワーらが下りでヴィッレッラを追撃したが、うまく協力することはできず、タイム差は一向に縮まらなかった。

最後はヴィッレッラが後続に6秒差を付けて逃げ切り、プロ2年目で初めての勝利を収めることができた。2位にはユールイェンセンが入り、3位争いのスプリントはパワーが制して表彰台に上がった。

まだ25歳のヴィッレッラは「このコースは僕にとても合っていた。落ち着いて走ることができた。最後の上り坂でアタックしようと考えていて、その1回のアタックが絶好のタイミングで、差を付けることができた」と、レースを振り返った。

「ヒザの怪我で今季はずっと優勝を逃してきたけれど、こんな勝利でシーズンを締めくくることができたのは素晴らしいよ。日本のファンは大好きだ。こんな光景は生まれて初めて見た。彼らは沿道を埋め尽くし、とても熱狂的だった。本当にスゴイことだったよ」と、喜びを語ったヴィッレッラ。次の目標は、ジロ・デ・イタリアで区間優勝することだ。

2016 ジャパンカップサイクルロードレース結果

1 ダビデ・ビッレッラ(キャノンデール・ドラパック/イタリア)3時間46分43秒
2 クリストファー・ユールイェンセン(オリカ・バイクエクスチェンジ/デンマーク)+6秒
3 ロバート・パワー(オリカ・バイクエクスチェンジ/オーストラリア)+14秒
4 マヌエーレ・モーリ(ランプレ・メリダ/イタリア)+14秒
5 オスカル・プジョル(チーム右京/スペイン)+14秒
6 アレックス・ピーターズ(チームスカイ/英国)+14秒
7 ベンジャミン・プラデス(チーム右京/スペイン)+17秒
8 ハビエル・メヒアス(チームノボノルディスク/スペイン)+43秒
9 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+43秒
10 ジョゼフ・ロスコフ(BMCレーシングチーム/米国)+43秒
(http://www.japancup.gr.jp/)
 
左から2位のユールイェンセン、優勝したヴィッレッラ、3位のパワー          
左から2位のユールイェンセン、優勝したヴィッレッラ、3位のパワー