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シマノ・デュラエースR9100シリーズ緊急試乗レポート

先日ついにヴェールを脱いだシマノ・デュラエースR9100シリーズ。先代と同じリア11スピード採用となったが、果たしてどこが進化しているのか? サイクルスポーツ.jp編集部では、いち早く同シリーズ搭載車に試乗することができたので、その模様を緊急レポートする。
 
text:浅野真則 photo:茂田羽生

感性に訴える部分のチューンナップも進む

今回デュラエースR9100シリーズのテストにあたって試乗したのは、ランプレ・メリダの新城幸也も駆るメリダのオールラウンド系レーシングバイク・スクルトゥーラチーム。2017年モデルでは、メインコンポーネントに最新のデュラエースR9100シリーズを搭載する。なお、試乗車にはローター製のクランクとチェーンリング、KMC製のチェーンが付いていたことをあらかじめお断りしておく。
 
見た目に大きく変わったのは、ブラケットの形状だ。先代と比べて明らかにブラケットの先端が一回り細くなっている。レバーのリーチ調整幅も大きくなり、手の小さな人にとっては朗報と言えそうだ。さらにレバー形状も先代より曲線的になり、握りやすさや操作性が向上している。
 
その操作性だが、完成度の高かった9000シリーズからさらに進化していた。変速時のレバー操作は、より軽く、より少ない入力で動作させられるようになったと感じた。リアのトップ側からロー側まで変速していく際にも、ごく軽い、ほぼ一定の力で確実に変速するし、フロントのインナーからアウターに変速する場合にも精密機械のようにシャキッと確実に変速する。純正ではない組み合わせでさえこうなのだから、ドライブトレインをすべて純正品でそろえたら、さらに小気味のよい変速フィールが体感できそうで期待が高まる。
 
ブレーキの操作フィールもカッチリ感が増していた。これはキャリパー本体にブースターが内蔵されていて、制動時のたわみを低減しているからだろう。制動力そのものは先代でも十分なレベルにあり、R9100シリーズも高いレベルにあるが、レバーを引いてリムとブレーキシューがコンタクトしてからバイクが減速する際の操作フィールがよりソリッドかつスムーズで快くチューニングされているように感じた。
 
デュラエースR9100シリーズに関して、9000シリーズユーザーの中には、今回静観を決め込もうと思っている人は少なくないと思う。リアは11スピードのままだし、先代モデルも十分完成度が高かったからだ。だが、デュラエースR9100シリーズは、9000シリーズのヘビーユーザーである自分から見ても確実に進化している。特に数値には表れにくい「心地よさ」のようなライダーの感性に訴えかける部分のチューニングは確実に進み、完成度はさらに高まっている。
 
高級外車では操縦には直接関係ないパワーウインドウのスイッチの操作感にまでこだわって開発されているというが、それに近いシマノ開発者の執念のようなものがR9100シリーズからは感じられるような気がする。
 
ブラケットは先端が一回り小振りになって手の小さな人でも握りやすくなっている。また、ブラケットカバーの素材も、握りやすく安定感のあるものに変更され、人間工学に基づいた進化を遂げている
ブラケットは先端が一回り小振りになって手の小さな人でも握りやすくなっている。また、ブラケットカバーの素材も、握りやすく安定感のあるものに変更され、人間工学に基づいた進化を遂げている
ブレーキレバーやシフトレバーの形状も一新し、よりエルゴノミックなデザインに。シフト操作はより軽い力で、より小さなストロークで確実にできるようになった
ブレーキレバーやシフトレバーの形状も一新し、よりエルゴノミックなデザインに。シフト操作はより軽い力で、より小さなストロークで確実にできるようになった
フロントディレーラーは多様化するフレーム形状に対応するデザインに進化。ディレーラー側にケーブルアジャスターを搭載し、従来のようなケーブルアジャスターも不要になった
フロントディレーラーは多様化するフレーム形状に対応するデザインに進化。ディレーラー側にケーブルアジャスターを搭載し、従来のようなケーブルアジャスターも不要になった
リアディレーラーは11-30Tのスプロケットに対応。ドライブトレインの近年のトレンドであるフロントコンパクト化、リアのワイドレシオ化に対応している
リアディレーラーは11-30Tのスプロケットに対応。ドライブトレインの近年のトレンドであるフロントコンパクト化、リアのワイドレシオ化に対応している
MTBコンポに採用されている、サイドへの張り出しが少ない「シャドーRDデザイン」を採用。エンド幅が広いディスクブレーキロードでもサイドへの張り出しが少なくなることで、転倒時や接触時のダメージを軽減
MTBコンポに採用されている、サイドへの張り出しが少ない「シャドーRDデザイン」を採用。エンド幅が広いディスクブレーキロードでもサイドへの張り出しが少なくなることで、転倒時や接触時のダメージを軽減
リアディレーラーのパンタグラフの形状も一新。リアがどの段数にあってもディレーラーのプーリーとスプロケットの歯先の距離を一定に保つように設計を改め、安定したシフト操作を実現した
リアディレーラーのパンタグラフの形状も一新。リアがどの段数にあってもディレーラーのプーリーとスプロケットの歯先の距離を一定に保つように設計を改め、安定したシフト操作を実現した
テンションプーリー、ガイドプーリーともに11Tだが、よく見ると歯先の形状が違う。担う役割が異なるため、それぞれに最適な設計が施されているからだ
テンションプーリー、ガイドプーリーともに11Tだが、よく見ると歯先の形状が違う。担う役割が異なるため、それぞれに最適な設計が施されているからだ
ブレーキキャリパーにはブースターを内蔵。制動時のキャリパーのたわみを低減し、安定した制動力をもたらす。タイヤとのクリアランスも拡大され、最大28Cのタイヤも装着できるようになった
ブレーキキャリパーにはブースターを内蔵。制動時のキャリパーのたわみを低減し、安定した制動力をもたらす。タイヤとのクリアランスも拡大され、最大28Cのタイヤも装着できるようになった
キャリパーブレーキの各アームは、先代モデルより密着度が増し、ギャップが少なくなった。リリースレバーもアームと一体感のあるデザインとなり、よりすっきりとしたルックスになった
キャリパーブレーキの各アームは、先代モデルより密着度が増し、ギャップが少なくなった。リリースレバーもアームと一体感のあるデザインとなり、よりすっきりとしたルックスになった

メリダ・スクルトゥーラ チーム


ランプレ・メリダが実戦で使用するものと同じフレームに、新型デュラエースを組み合わせたチームレプリカモデル。
チームからの要望に応えて作り上げた「CF4 lite MC」カーボンフレームは、高剛性や軽量さだけでなく、レース使用時の落車やサポートカー積載時の不要な衝撃に対しする耐久性も備えている。オールラウンドバイクとして、今年のツールでも度々新城幸也が使用している姿が見られた。
完成車のパッケージとしてはR9100デュラエースに目が行きがちだが、ホイールにフルクラム・レーシングクアトロを採用するなど、選手が乗るバイクと同等のスペックで 組み上げられているのもポイントだ。

 

シマノ・R9100デュラエース完成車価格/85万円(税抜)
フレーム/スクラトゥーラCF4 lite R12 カーボン
フォーク/スクラトゥーラ ミッド スーパーライト
コンポーネント/シマノ・R9100デュラエース
シフター/シマノ・R9100デュラエース
ブレーキ/シマノ・R9100デュラエース
ホイール/フルクラム・レーシングクアトロ カーボン
タイヤ/コンチネンタル・グランプリ4000S 700×25C
ハンドル/FSA・Kフォース
ステム/FSA・OS99-6
サドル/プロロゴ・スクラッチ2
試乗車実測重量/6.6kg(サイズ50)
サイズ/44、47、50、52、54

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