トピックス

CYCLESPORTS.jpが選ぶ 2014年10大ニュース・プロダクツ編

2014年は新製品の発売ラッシュや、今後の自転車界のトレンドとなりそうなアイテムが相次いで登場した。魅力的な製品が“豊作”だったこの1年を10のトピックスで振り返る。

 
text●浅野真則

1.シマノXTRがついにDi2対応

シマノのMTBコンポーネントの最高峰、XTRがフルモデルチェンジ。今回の最大の注目点は、電動変速システムDi2にMTBコンポーネントとして初めて対応したこと。その意味でもエポックメイキングなモデルと言える。ロードバイクではDi2がスタンダードになり、シクロクロスでも徐々に支持を拡大しているだけに、MTBでも電動変速化の波が拡大しそうだ。

 

2.ロード用ディスクブレーキシステムの台頭

ロードバイクの世界にもディスクブレーキ化の波が押し寄せている。3大コンポーネントメーカーでは、シマノとスラムがすでにこの流れに対応。シマノでは、油圧式ディスクの他、機械式ディスクもラインナップし、電動変速システムDi2との組み合わせも可能。現在はジャイアント・ディファイシリーズなど快適性重視のコンフォートロードや未舗装路も走るグラベルロードが中心に勢力を拡大しているが、ピナレロドグマシリーズやコルナゴC60といったピュアレーシングロードでもディスクブレーキを搭載するモデルが登場しつつある。来年以降、ダイレクトマウント方式のディスクブレーキシステムが登場し、今後さらに普及が進むことも予想される。

3.シマノ105がフルモデルチェンジ。11スピード化の波が加速

シマノのロードコンポーネント105がフルモデルチェンジ。リア変速が11スピード化され、上位モデルとの互換性が生まれたことが最大のトピック。4アームデザインのクランクセットを採用するなど、上位モデルのテクノロジーや上質なデザインを継承している。2015年モデルのミドルグレードのバイクの多くが新105を搭載しており、これでロードレース界ではますます11スピードが主流となっていくことは間違いない。

4.カンパニョーロもスーパーレコード、レコード、コーラスをフルモデルチェンジ

カンパニョーロのロード用コンポーネントの上位3モデルにあたるスーパーレコード、レコード、コーラスがモデルチェンジを果たした。コーラスにエレクトロニック変速システムEPSが登場したほか、4アームクランクを採用したのが目を引くが、チェーンリングの歯数構成ごとにピンの位置や数を変えて変速性能を高めたり、さらなる多段変速が可能になるなど操作性に関しても改良が加えられている。

5.ウェアラブルカメラの人気が加速。“カメラ戦国時代”へ

アウトドアアクティビティやエクストリームスポーツの世界で人気に火がついたウェアラブルカメラが自転車界でも存在感を示し始めた。この分野では圧倒的な人気を誇るゴープロ・ヒーローシリーズに加え、後発のガーミンVIRB-Jエリート、シマノスポーツカメラはANT+規格の通信システムに対応し、サイクルコンピューターやスピード・ケイデンスなどの各種センサーとの親和性を高めることでサイクリストの支持を集めている。ほかにもソニーなどの家電メーカーも市場に参入しており、ウェアラブルカメラ戦国時代を迎えている。

 

 

6.フルカーボンクリンチャーホイールが台頭

リム強度が十分に保ちにくい、強度を保つとしたら重くなりがち——などの理由で作るのが難しく、少数派に過ぎなかったフルカーボンクリンチャーホイール。ロヴァールが40mmハイトでペア重量1375gという軽量モデルをリリースするなど、少しずつカーボンホイールの市場で存在感を増している。ゴキソ、ライトウェイト、ボントレガーなども以前からフルカーボンクリンチャーホイールを発売しており、群雄割拠の様相を呈してきた。種類が豊富なクリンチャータイヤを使え、パンク修理も容易、日ごろの練習からレースまで使える汎用性の高さを売りに、今後ますます存在感を高めていくことは間違いない。

 

 

7.レーシング系タイヤも“チョイ太め”がトレンドに

レース系ロードバイクのタイヤは、長年700×23Cがスタンダードとされてきた。しかし最近、ワイドリムホイールの台頭に伴い、24~25C程度の太さで210g前後の重量のチョイ太めの軽量レーシングタイヤがレースシーンでも人気を集めている。太めのタイヤは、空気圧が同じであれば細めのタイヤより進行方向の接地面の長さを減らすことができ、転がり抵抗の低減が実現できるからだ。このジャンルのタイヤでは、スペシャライズドのS-ワークスターボ、マヴィックのイクシオンシリーズなどが人気を集めているが、今後各ブランドの製品開発競争が厳しくなりそうだ。

8.完成車重量4.65kg! トレックエモンダSLR10登場

トレックが2015年モデルで発表した軽量ロードバイク「エモンダ」。シリーズ最高峰であるエモンダSLR10は、マスプロメーカーの完成車としては驚きの4.65kg という軽さを実現した。690gの超軽量フレームに、軽量パーツメーカー・チューンのハブやリム、サドルなどを組み合わせている。度肝を抜く軽さにばかり注目が集まるが、トレックファクトリーレーシングチームの選手たちがこのバイクを絶賛するように、レースで使えるタフさも兼ね備える。UCIの車重規定では6.8kgを下回らないことと定められているが、それを大幅に上回る軽さを実現したエモンダ。軽量化競争に火を付けるか!?

9.フィッティングサービスがより身近に

自転車は機材スポーツ。ライダー一人ひとりの体に合ったバイクを使うことで、痛みや故障の原因を解消し、よりサイクルライフを楽しめるようになる。また、レースでも成績が残せるようになる。そのことが広く周知され、フィッターがバイクのポジションをライダーに合わせて調整するフィッティングサービスの人気が高まっている。スペシャライズドのBGフィットが人気だが、シマノも今年、満を持してバイクフィッティングを開始。ユーザーとしては選択肢が増えることになり、フィッティングサービスはこれからますます普及していきそうだ。

10.ヘルメットにもエアロ化の波

ヘルメットの開発の歴史は、頭部の保護が第一だが、ヘルメット内部が蒸れない通気性の高さも重要なファクターだ。そのために各メーカーはベンチレーション機能を高めることに力を注いでいたが、最近は少し違った傾向が見られるようになった。それはヘルメットのエアロ化。ジロのエアアタックやカスクのインフィニティ、スペシャライズドのイヴェードのように、ロードレース向けのヘルメットでありながら空力性能に優れるモデルが続々登場している。今後は通気性能に優れて軽量なオーソドックスなヘルメットと、空力性能に優れたエアロヘルメットの両者を乗り方に応じてユーザーサイドで使い分ける形が主流になっていくかもしれない。

 

 

番外編 比較的低価格なパワーメーターが続々登場

ライダーの出力をベースに運動強度を決めて行うパワートレーニング。効率的に強くなるためには不可欠といってよいトレーニングだが、高価なパワーメーターが必要なためにまだホビーサイクリストにまで普及しているとは言い難かったのが現状だ。しかし、ガーミンベクターS JやローターパワーLTのような10万円程度で買える比較的安価なパワーメーターも登場。また、ステージズは7万円台から入手できるパワーメーターを販売することが決まっている。これはパワーメーターの価格破壊と言ってよく、パワートレーニングがわれわれホビーレーサーにとってより身近なものとなり、今の心拍トレーニングぐらい広く普及する日もそう遠くはないかもしれない。