トピックス

新連載! 安井行生のロードバイク徹底評論 第1回 Cannondale SYNAPSE HI-MOD2 vol.2

2012年、名車スーパーシックスエボを完成させて、レーシングバイクカテゴリでライバルを置き去りにしたキャノンデールが、エンデュランスロードにも本気になった。イタリアで100km、日本で300kmを走り込んだ安井が、シナプスの本質とエンデュランスロードのあり方に迫る。技術者インタビューを交えた全10回、1万文字超の最新ロードバイク論。vol.2。
 
text●安井行生 photo●我妻英次郎/安井行生/キャノンデール・ジャパン

トスカーナの試乗会で開発者にインタビュー

筆者が新型シナプスに触れたのは、イタリア・トスカーナ地方で行なわれたプレスローンチだった。海外で行われる発表会のメリットは、誰よりも先にニューモデルに乗れることではなく(どうせ日本にも数週間後に入ってくる)、異国の景色や食事や高級ホテルでもなく(仕事なんだから宿やメシなんかどうでもいい)、実際に図面を引いている現場の技術者に話を聞けることだ。設計した本人へのインタビューを交えながら、新型シナプスを検分していくことにする。まずは、そのコンセプトから。
 
Q:コンセプトは前作と同じですか?
A:同じです。レーシーな走りを追求したいのならスーパーシックスエボをお勧めします。でも様々なことを楽しみたいのであればシナプスがいいでしょう。シナプスのジオメトリは多くのライダーに対応しており、サイズレンジもワイドになっています。技術的にも大きく飛躍しており、より多くの人によりよいライディングフィールを与えることができるバイクに仕上がりました。
 

誠実になったジオメトリ

そのジオメトリを見てみると、手抜きが少ないものであることが分かる。新型シナプスは、純レース用バイクと従来のコンフォートバイクのちょうど中間となるジオメトリ(=S.E.R.G.:シナプス・エンデュランス・レース・ジオメトリ)を採用し、どんな用途にも幅広く対応させているという。フォークオフセットは2種類(サイズ48と51が50mm、それ以上が45mm)で、チェーンステー長も54までは410mmだが56は413mmと微調整されている。BBドロップも3種類。
 
フォークオフセットとチェーンステー長が、全サイズで共通だった旧シナプスよりはずっと良心的なものとなった。そして、フレームリーチは最小の362mm(48サイズ)から最大の394mm(58サイズ)まで、ぴったり8mm刻みで比例的に増えている。シート角とヘッド角を全サイズで微調整した証拠だ。ヘッドチューブはかなり長いが、コンセプトを考えれば仕方のないところだろう。
 
実は、エボになる前のスーパーシックスやCAAD10では、50、52、54の3サイズでリーチが5mmしか違わなかった。そのうえ、あろうことか60より63のほうがリーチが短いという瑕疵(かし)を持っていたのだが、最新のジオメトリではスーパーシックスエボも新型シナプスも以前のような歪さはなくなっている。目立たないところではあるが、キャノンデールのジオメトリには大きな進歩を見て取ることができる。
 

「バリステックカーボン」とは一体何なのか?

具体的な技術について聞いていこう。
Q:フレームの製法について教えてください。
A:モノコックとチューブtoチューブを組み合わせて作っています。トップ~ヘッド~ダウンチューブ、BB~シートチューブ、シートステー、チェーンステーというパーツごとにモノコックで作り、それらをチューブtoチューブで接合しています。スーパーシックス系と同じ製法ですね。
 
Q:プレゼンを聞いてもカタログを読んでも、バリステックカーボンというものが一体何なのかがよく分からないのですが…。具体的に教えてください。
A:レジンそのものと、繊維とレジンの配合方法がバリステックカーボンのキモです。カーボン製品にとってレジンの性能は非常に重要なんですが、バリステックカーボンとは、特殊な樹脂とカーボン繊維を組み合わせて、衝撃を吸収して破断しにくく作るテクノロジーです。
 
Q:秘密は樹脂にあるわけですね。他ブランドのアンダー700gの軽量フレームのチューブは、握るとたわんでしまうほど薄く危うく作ってあることが多いですが、エボはあれほど軽量なのに凹みにくい気がします。それはバリステックカーボンの性能に関係していますか?
A:まさにそのとおりです。耐衝撃性のある特殊な樹脂を使っているんです。
 
Q:繊維についてですが、他メーカーは「○トンの高弾性カーボンを使っている」などと宣伝していますが、キャノンデールは弾性率を公表していませんね?
A:素材そのものが大事なのではありません。高級肉を使ったからといって美味しい料理ができるわけではありませんよね。大切なのは、料理としての完成度。どう作るか。だれが作るか。素材そのものよりも、バイクになったときのパフォーマンスが大切なのであり、素材そのものが何であるかにはあまり意味がありません。
 

ホイールが上下だけでなく左右にも動く設計

Q:ではフレームについてですが、しなりは設計時に織り込んでいるのでしょうか?
A:しなりというより、目標はフロントとリアのバランスをとりながらあらゆる種類の凹凸に対してスムーズに走れるフレームにすることでした。タイヤが石に乗り上げるとき、真っ直ぐ乗り上げればホイールが上下に動くだけですが、石の端に乗り上げると、石を横に弾くような動きになり、ホイールは石とは反対方向に弾かれます。ストラーデビアンケみたいな道路を走っていると、石がホイールを横方向にシェイクする力をかけて、真っ直ぐ進もうとしているバイクの進路を左右に乱します。新型シナプスのフレームの動きは、2次元の動き(上下)だけではなく、3次元の動き(上下左右)も考えて設計しています。
 
Q:快適性(垂直方向の柔軟性)だけでなく、横方向にも衝撃をいなしながら進んでいる、と?
A:そのとおり。フレーム全体としてはスプリントをしたときなどペダルから大きな入力があったときには硬く、しかしダートなどを走っている時はホイールが上下だけでなく左右にも動いて、路面をキレイに追従する設計なんです。
 
vol.3へ続く
vol.1へ戻る