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23歳のスラフテルがサプライズ優勝! ツアー・ダウンアンダー総集編

UCIワールドツアー開幕戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーは、23歳のスラフテルが総合優勝!

 

Photo: Graham Watson

再出発を目指すブランコプロに初優勝をもたらしたスラフテル


UCIワールドツアー開幕戦のサントス・ツアー・ダウンアンダーが南半球のオーストラリアで開催され、今年もUCIプロチームと地元オーストラリア選抜の19チームが、真夏の太陽の下で熱い闘いを繰り広げた。

 

今年、オーストラリアの大地をイメージさせるオークル・オレンジのリーダージャージを獲得したのは、オランダ出身のトムイェルテ・スラフテル(ブランコプロサイクリングチーム)。それは彼自身でさえ予期していなかったサプライズな総合優勝だった。

 

現在23歳のスラフテルは、2011年にラボバンクでデビューして以来、今年のダウンアンダーの第3ステージで区間優勝するまでは、プロとしての優勝経験すらない選手だったのだ。アンリーからスティーリングまでの139kmで競われたそのステージはアップヒルゴールで、彼は地元のマテューハーレイ・ゴス(オリカ・グリーンエッジ)や世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(BMCレーシングチーム)というビッグネームたちをスプリントで下してプロ初優勝を手に入れた。

 

その前日にマウント・バーカーからロスターバーまでの116.5kmで競われた第2ステージでも、スラフテルはコース終盤の丘でゲラント・トーマス(スカイ)、ハビエル・モレノ(モビスター)、ベン・ヘルマンス(レディオシャック・レオパード)とともに集団から抜け出し、区間4位でゴールした。

彼はそこで総合5位になり、新人賞ジャージも獲得していた。そのステージで区間優勝して総合首位に立っていた英国のトーマスとのタイム差は、第3ステージではひっくり返せなかった。

 

しかしスラフテルはトーマスにたった5秒差で、オールド・ウィルンガ・ヒルにゴールする運命の第5ステージを迎えた。 オーストラリア建国記念日の1月26日に行なわれた第5ステージ。

ゴールへとつづくオールド・ウィルンガ・ヒルの坂で、集団は英国の最強チーム、スカイのエドワルド・ボアソンハーゲンが先頭を引いてコントロールしていた。残り2kmを切って、最初に仕掛けたのはスラフテルと同じくたった6秒差で総合首位の座を狙っていたスペインのハビエル・モレノだった。

 

残り1kmでモレノにまず追いついたのは、ディフェンディングチャンピオンのサイモン・ゲランズ(オリカ・グリーンエッジ)。ゲランズはすでに総合争いからは脱落していたため、狙いは区間優勝だった。

先頭を走るモレノとゲランズの走りを後方から追い上げていたスラフテルは「トーマスに差を付けられさえすれば、3位でもよかった。でもタイム差に確信がなかった。だから区間優勝して総合での差を付けたかった」と考え、アタックしたのだ。

 

後方から追い上げてきたスラフテルにゲランスはすぐ反応したが、モレノは付いて行けなかった。

そして最後はベテランのゲランズがスラフテルをスプリントで下し、ガッツポーズでゴールラインを通過。

しかし、このアタックが功を奏し、スラフテルはオークル・オレンジのリーダージャージをトーマスから奪い取ることに成功した。

 

この日総合2位になったモレノとのタイム差も13秒で、最終日のクリテリウムで首位の座を守るには十分だった。スラフテルはツアー・ダウンアンダー15年の歴史で、初のオランダ人総合優勝者となった。

この勝利は、今季チームスポンサーを見つけなければならないオランダのブランコプロサイクリングチームにとって、大きな後押しになるだろう。

 


●総合優勝したスラフテルのコメント


「ボクは年齢を気にしていない。ボクたちはみんな同じ集団で走っていて、もっと若い選手だっている。今日は自分が若いとは考えなかった。でもボクはサントス・ツアー・ダウンアンダーで優勝した。それは素晴らしい気分だ!


ブランコチームがこの1週間成し遂げてくれたすべての仕事を本当に誇りに思っている。アデレードにはきっとまた戻ってくるよ。今後も同じシーズンのスタートを切りたいからね」

 

集団ゴールスプリントは巨人グライペルが圧勝!


今年のツアー・ダウンアンダーで3ステージ競われた集団ゴールスプリントは、すべてドイツのアンドレ・グライペル(ロット・ベリソル)が圧勝した。

彼はプレイベントのピープルズチョイス・クラシック(UCI未公認レース)でもスプリントを制し、今のところ4戦4勝だ。

 

今大会では、第3ステージの区間優勝で通算13勝になり、オーストラリアのロビー・マキュアンが持っていた最多区間優勝記録を塗りかえた。

最終日の通算14勝目は、彼自身の生涯通算勝ち星100勝目でもあった。

 

第15回サントス・ツアー・ダウンアンダー 個人総合最終成績

1 トムイェルテ・スラフテル(ブランコプロ/オランダ)18時間28分32秒

2 ハビエル・モレノ(モビスター/スペイン)+17秒

3 ゲラント・トーマス(スカイ/英国)+25秒

4 ヨン・イサギレ(エウスカルテル・エウスカディ/スペイン)+32秒

5 ベン・ヘルマンス(レディオシャック・レオパード/ベルギー)+34秒

6 ウィルコ・ケルデルマン(ブランコプロ/オランダ)+34秒

7 ゴルカ・イサギレ(エウスカルテル・エウスカディ/スペイン)+36秒

8 ダニエーレ・ピエトロポッリ(ランプレ・メリダ/イタリア)+36秒

9 ティアゴ・マシャド(レディオシャック・レオパード/スペイン)+38秒

10 ユッシ・ベイッカネン(FDJ/フランス)+41秒


[各賞]

■スプリント賞:ゲラント・トーマス(スカイ/英国)

■山岳賞:ハビエル・モレノ(モビスター/スペイン)

■新人賞:トムイェルテ・スラフテル(ブランコプロ/オランダ)

■チーム成績:レディオシャック・レオパード(ルクセンブルク)


[各ステージの優勝者]

■第1ステージ:アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル/ドイツ)

■第2ステージ:ゲラント・トーマス(スカイ/英国)

■第3ステージ:トムイェルテ・スラフテル(ブランコプロ/オランダ)

■第4ステージ:アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル/ドイツ)

■第5ステージ:サイモン・ゲランズ(オリカ・グリーンエッジ/オーストラリア)

■第6ステージ:アンドレ・グライペル(ロット・ベリソル/ドイツ)

 

 

自転車レース界が混沌とするなか、2013年のロードレースシーズン開幕


さまざまな事件や問題が未解決のまま、2013年のロードレースシーズンはスタートした。

UCIワールドツアーの開幕戦であるツアー・ダウンアンダーがオーストラリアで始まる直前に、米国では昨年USポスタル事件で米国アンチドーピング機関(USADA)から永久資格停止処分を受けてツール・ド・フランスのタイトルも失ったランス・アームストロングが、TVのトーク番組で現役時代のドーピングを認めた。が、USADAの報告書が暴いた国際自転車競技連合(UCI)の不正疑惑は、まだ霧の中だ。

 

USポスタル事件が発端となって大手銀行がスポンサーを撤退したオランダの旧ラボバンクは、チーム名称をブランコプロサイクリングチームに改め、スラフテルの活躍で好調なシーズンスタートを切ることができた。

しかしオランダでは、過去のラボバンクのドーピング調査が始まっている。2006年に発覚したエウフェミアーノ・フエンテス医師を首謀者としたスペインの巨大ドーピング事件、オペラシオン・プエルトもいまだに解決していないが、その裁判がマドリードで1月28日に再開する。

 

ロシアのカチューシャチームが、UCIのライセンス委員会からUCIプロチーム登録を却下された事件もまだ決着していない。

 

格下のUCIプロコンチネンタルチームに登録され、すでにアルゼンチンのツール・ド・サンルイスでシーズンインしたカチューシャは、スポーツ仲裁裁判所の裁定を待っている。

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