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しなりの新境地を見せる、グラファイトデザイン T800

グラファイトデザインは、埼玉県秩父市に本社をもつフレームメーカー。もともとは、ゴルフのカーボンシャフトを製造する会社として多くの実績をもち、ツアープロの使用率は65%を誇る。2007年にサイクルスポーツ部門が誕生。ゴルフシャフトで培った、しなりを生かす技術を自転車にも応用し、独自のキャラクターをもつバイクを生み出している。

 

text::中島丈博 photo:岡 拓

''しなり''の新たな境地を見せる日本のカーボンロード

「T800」はグラファイトデザインの最上位モデルである。開発に2年の歳月が費やされ、カーボンレイアップスケジュールを4回も調整し直した。それは、走行性能はもちろん、走ったあとの余韻にまでこだわったフレーム開発を行ったためだ。日本の素材を使って、日本人が考える最高のバイクを作りたい。その考えのもとに生み出された。

 

カーボンモノコックのフレームは、100%東レ製のカーボンを使って製造される。カーボンの種類は、航空機のボーイング787にも使用される高強度の「T800S」と、強度と弾性率のバランスがいい「M40J」。それが55:45の比率で使用されている。これにより、軽くて高強度なフレームとなった。

 

とはいえ''しなり''を生かすというブランドコンセプトは変わっていない。フレーム前三角はすべて真円のチューブによって構成されている。もっともバランスのいい真円という形状を使いつつ、カーボンの積層をいじることで、よく進む''しなり''と''戻り''を提供し、ペダリングパワーを最大限推進力に変換するフレームに仕上げるためだ。

 

このモデルは100台限定生産で、初回60台はサイズによっては売り切れとなっている。2013年9月下旬から残り40台の受注を予定している、まさに超プレミアムなバイクである。

 

グラファイトデザイン・T800

フレームセット価格 42万円

 

フレーム:カーボン

フォーク:カーボン

コンポーネント:シマノ・デュラエース9000

ホイール:マヴィック・コスミックカーボン40C

タイヤ:マヴィック・イクシオンプロパワーリンク

ハンドルバー:グラファイトデザイン・クライムバーLR

ステム:グラファイトデザイン・オリジナル

サドル:セライタリア・SLR

シートポスト:グラファイトデザイン・スタンダードポスト

試乗車実測重量:6.7kg(サイズ53、ペダルなし)

サイズ:51、53、55

カラー:パールホワイト、ブラックメタリック

 

■写真下・左:フォークの肩にはバイクのコンセプトを表す「JAPAN PRIDE」の文字。フルカーボンフォークはエンドのみアルミ製。高精度かつ製品ごとのばらつきを抑えることができる。

 

■写真下・中:ヘッドチューブは上下とも1-1/8インチ径のベアリングを採用。上下異径としなかったのは、ヘッドまわりが過度の剛性を持つことを嫌うフレーム設計ゆえだ。

 

■写真下・右:「フレックスシートステー」と書いてあるとおり、リヤからの振動吸収性を考慮した作りとなっている。きゃしゃなフレーム形状のなかでも、とくに細いチューブを使用。

 

■写真下・左:トップチューブ、ダウンチューブの形状は、もっとも安定する形である真円。金属チューブと違い、カーボンは形状ではなく、その積層によって性格をコントロールできるからだ。

 

■写真下・右:シンプルなBBまわりはスタンダードなスレッドタイプとなっている。フレームに取り付けたときの精度を出したいと考えたときに、やはりスレッドがベストな選択肢だ。

■シートポスト径は31.6mm。シートチューブがやや長くなっているが、これは適宜長さをカットして使用できるようになっている。2本締めのシートクランプは確実な固定を可能にする。

 

CYCLE SPORTS.jp編集長・ナカジの試乗インプレッション

シンプルなグラフィックに細いチューブで構成されるフレームは、ひと目でグラファイトデザインだとわかる。最近のマッチョなロードバイクを見慣れているからだろう。真円のチューブは、思った以上に素直な乗り味。ゆるやかな上りも、シッティングでこなすと気持ちがいい。T800という高強度のカーボンを使用しているが、バキバキの硬さはないし、速度やペダルの入力によって変わるような加速もない。その代わり、ペダルにかけた入力どおりの反応を返してくる。強く踏めば強く、ゆったり踏めばゆったりとバイクが動く。

 

同社のコンセプトどおり「しなり」を生かして前に進んでいくタイプの自転車だ。ジオメトリーが近く、同じくモノコック構造を持つ同社のメテオランチと乗り比べてみると、さすがに硬いなーという印象。ただ、しなり方が異なる。ペダルへ込める力に対して素直に反応を返してくるという点においては共通だが、荒れた路面を走るとT800のほうが、より早く振動が収束するように感じる。また、踏み込んでいくとフレームがしなり、戻ってくるわけだが、自分の脚力と波長が合うなと感じたのはメテオランチのほうだった。完全に感覚の世界なのだが、ぐんぐん踏み込んでいったときのスピードの伸び方がメテオランチのほうがいいように思う。ただ、よりパワーがある人は、T800のしなりと戻りを生かして走ることができると思うので、より上級者になるほど強い味方になってくれるバイクといえる。

 

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問い合わせ先

グラファイトデザイン
0494-62-2101
http://www.gddirect-cycle.com/gd/