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コペンハーゲン世界選手権

北欧を舞台に競われた今年の世界選は、大方の予想通りの集団ゴールスプリントになり、英国のカベンディッシュが、世界最速スプリンターの称号に恥じることのない走りでアルカンシエルを手中に収めた!
Photo: Graham Watson、http://www.copenhagen2011.dk

トム・シンプソン以来の英国人世界チャンピオン誕生!

ロンドン五輪が来年に控えた英国に世界チャンピオンが誕生した。3大ツアーで通算30勝を上げ、今年はツール・ド・フランスでマイヨ・ベールも獲得した “世界最速スプリンター” のマーク・カベンディッシュには、コペンハーゲンの集団ゴールスプリントで敵はいなかった。今年ミラノ・サンレモを制したマテューハーレイ・ゴスのためにスプリントをお膳立てしたオーストラリア勢を尻目に、カベンディッシュは集団の右はじから瞬く間に先頭へと飛び出し、車輪1つの差を付けてフィニッシュラインを通過した。発射台はいなかったが、8人のチームメートたちが彼を勝利へと導いたのだ。 14kmの周回コースを19周し、266kmで競われた男子エリートに、国別ランキングでトップ10に入る英国チームは9人で挑んだ。カベンディッシュを守る8人の騎士には、世界選直前まで行われていたブエルタ・ア・エスパーニャで総合2位になったクリストファー・フルームと、総合3位のブラッドリー・ウィギンスも入っていた。彼らはこの日、集団を常にコントロール。TTスペシャリストのウィギンスとデービッド・ミラーは、終盤にきっちりと逃げを吸収し、勝負を集団ゴールスプリントに持ち込んだ。「これはボクたちにとって3年越しのプロジェクトだった。本当に誇りに思っている」と、カベンディッシュはゴール後に語っている。 英国車連のこのプロジェクトは、2009年にチームスカイとともにスタートした。ツール総合優勝を目標に掲げたプロチーム・プロジェクトは、英国の五輪パフォーマンス・ディレクターであるデービッド・ブレイルスフォードが中心になり、英国車連も後援している衛星放送局ブリティッシュ・スカイ・ブロードキャスティング社をメインスポンサーに迎え、ウィギンスを中心として昨年からUCIプロチームとして活動を開始。今季はブエルタ総合優勝にあと一歩という所まで成長していた。 そして迎えた世界選で、英国はついにアルカンシエルを手中に収めたのだ。それは1965年にトム・シンプソンが獲得して以来、実に46年ぶりの快挙だった。コペンハーゲン世界選で英国チームが成功したのは男子エリートだけではない。女子ジュニアのロードでルーシー・ガーナーもアルカンシエルを獲得し、今大会で英国は6つのメダルを持ち帰っている。アルカンシエルを獲得したカベンディッシュは、まだ正式には発表されていないが、来季は母国のチームスカイで走る予定だ。
コペンハーゲン世界選、男子エリートは45カ国の209選手がスタート。快晴に恵まれた沿道には、25万人の観客が集い、年に1度の頂上決戦の目撃者になった。レースは1周目から平均時速が50km/hという展開になり、序盤から逃げ出したのはアントニー・ルー(フランス)、パブロ・ラストラス(スペイン)、タネル・カンゲルト(エストニア)、オレグ・チュズダ(ウクライナ)、ロベルト・キーゼルロブスキー(クロアチア)、マクシム・イグリンスキー(カザフスタン)、クリスティアン・ポース(ルクセンブルク)の7人。彼らは78km地点で8分差を付けて逃げていた。中盤で集団からヨハン・バンスンメレンとオリビエ・カイゼン(ベルギー)、ルーカ・パオリーニ(イタリア)、サイモン・クラーク(オーストラリア)、ヨアン・オフレド(フランス)がアタックし、先頭グループを追撃した。 残り6周、集団の後方で勝敗を左右する落車が発生した。ディフェンディングチャンピオンで優勝候補の1人だったトール・フースホフト(ノルウエー)が巻き込まれ、メイン集団から大きく後退。同じく落車に捕まってしまったトニー・マルティン(ドイツ)、グレッグ・ヘンダーソン(ニュージーランド)、ベルンハルト・アイゼル(オーストリア)、サミュエル・デュムラン(フランス)らとともにメイン集団との溝を埋めようと試みたが、時すでに遅く、栄光は彼方に遠ざかってしまっていた。 先頭には追走集団が合流し、脱落したポース以外の11人が逃げ続けていたが、残り5周で集団とのタイム差は1分にまで縮まっていた。残り3周に入り、先頭グループからはフランスのルーがアタック。単独で逃げ続けたが、残り2周で英国チームが引く集団に捕まってしまった。ここからルーのチームメートであるトーマ・ボークレールがアタックし、ベルギーのクラース・ロードウエイクと地元デンマークのニキ・セーレンセンが追走。3人で逃げ続けたが、最後はゴール残り6kmで集団に捕まってしまった。1つになった集団の先頭は、英国、オーストラリア、イタリア、ドイツがし烈なポジション争いを演じた。残り500メートルの最終コーナーを抜けた後、先頭はオーストラリアが引いてゴスのスプリントをお膳立てしたが、ゴスが飛び出すよりも先に、彼の後方からカベンディッシュが飛び出していた。
「今年は2つの目標があった。1つはツールのマイヨ・ベールで、もう1つがアルカンシエルだった。そして来年は、五輪が目標だ。ボクはマイヨ・ベールを獲得して、ミラノ・サンレモでも勝っているけど、このジャージ(アルカンシエル)はボクが得たもののなかで一番素晴らしい。ボクは来年じゅうこのアルカンシエルとともに走り、そして残りの競技人生もずっとこれをソデに入れられるんだ。19歳の時から世界チャンピオンになるのが夢だった。今日の勝利は素晴らしいチームワークの結果だよ」と、語ったカベンディッシュは、来年母国で開催される五輪に、世界チャンピオンとして参加することになるだろう。

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コペンハーゲン世界選・男子エリート順位
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