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RaphaのCEO サイモン・モットラム氏にインタビュー

急成長をつづける英国発のサイクリングウェアブランド Rapha を率いるCEOは、スタイリッシュなサイクリストであり、熱心なロードレースファンでもあった

自転車への情熱でトップブランドを牽引する“The Man”

英国のロードサイクリングウエアブランド、Raphaの創設者でCEOのサイモン・モットラム氏が日本の市場視察のために来日した。たった8年でRaphaブランドを急成長させ、ヨーロッパの経済界で注目されるまでになった一流のビジネスマンは、スタイリッシュなサイクリストであり、熱心なロードレースファンでもあった。Raphaの“The Man”、モットラム氏にインタビューした。
--- 2004年の7月に最初のコレクションを発表し、たった8年でこれだけ成功した秘訣は? 「我々は他の人々より前に、好機を見つけられたという幸運に恵まれたからだ。自転車レースはランス・アームストロング時代(1995-2005)を背景にして、英国、米国、オーストラリア、スカンジナビア諸国で大流行した。私の同世代もとても増加したんだ。我々は、他よりもおそらく3~4年くらい早くその好機に気がつき、ブランドを立ちあげてそれを確固たるものにした。他の人々も同じことをしようとしているが、最初だったということは重要だった。しかし鍵になったのは、我々が製造業出身ではなかった、ということだと思う。私はただのサイクリストで、ファンで、服飾のことは知らないし、自転車製造業のことも知らない。ただ、スポーツとしての自転車については好きだったから知っていた。自転車製造業の市場はとても異なっていて、製造業の人間は製造業の視点でものを見ている。けれど私は顧客の視点でものを見ていた。私は顧客の側にいるんだ。おそらくそれが一番重要なことなのだと思う」 --- Rapha(ラファ)のブランド名の由来は? 「サン・ラファエルから取ったものだ。サン・ラファエルはカンパリみたいなフランスのアルコール飲料で、1960年代にラファエル・ジェミニアーニのナショナルチームのスポンサーをしていた。当時はスポンサー広告を自転車に付けることが禁止されていたのに、ジェミニアーニは「サン・ラファエルは私の名前で、広告ではない」と言い張ってその名前を付けたという逸話があるんだ。ラファというのはサン・ラファエル社が出した別のノンアルコール飲料の名前で、それはサン・ラファエルよりヘルシーだが、とてつもなく不味いんだ。ジェミニアーニはまだ85歳で健在で、以前会った時に「オレの名前を盗んだな」って言われたよ」 --- 自転車レースの経験は? 「子供の頃から自転車に乗っていたけれど、ただ楽しむためにだけで、レースには一度も出たことはなかった。プロになりたいとも思わなかったよ。後になって、走ることにとても興味を持ったときにはもう20歳で、レースを始めるには遅かった。たしか1983年だったと思うが、英国のTV局がツール・ド・フランスの放送を開始して毎日観られるようになり、それは私にとってとても重要な番組になった。18歳くらいのときだった。その番組はポール・シャーウィンとフィル・リゲットがやっていた。コメンテーターのリゲットがこのスポーツのことをとても詳しく説明してくれて、おかげで完璧に理解できるようになったんだ。風に対する集団の動きについてとか、アシストというものについてとか。それ以前には、ただ本や雜誌で見ていただけだった」 --- ヒーローはマルコ・パンターニ。だからジロ・デ・イタリアのピンクをブランドに使った? 「それだけではない。何年か前に、ポール・スミスがピンクを使っていたからだ。彼がグレーのバッグにピンクを使っていて、それが私の心の中に強く残っていた。それで黒を基調としてブランドをスタートさせたときに、アクセントカラーにピンクを使った。だから半分はジロで、半分はポール・スミスなんだ。彼のように素晴らしい人物と一緒に働くことができて幸運だ。初めて会ったとき、彼は自転車レースを愛していることを知った。けれど彼はファッション業界の人間で、みんなにそれを知られたくなくて黙っていた。彼は4~5年前にそれを公表して、今は自転車レースについて話すことができてとても幸せそうだ。彼はマーク・カヴェンディッシュとブラッドリー・ウィギンスの大ファンなんだよ」 --- ラファ・コンチネンタルを始めた理由は? ラファ・コンチネンタルは4年前に米国でスタートしたオフロードを走るロングライドで、より自由でクリエイティブなものだ。普通のレースとはちがって、自分が走りたい道を探しながら走ることができる。たとえばクリテリウムはコースにフェンスがあって閉鎖されていて、冒険というものがない。けれどラファ・コンチネンタルでは、サイクリストは未舗装路を走り、道標のない場所で道を探しながら走るんだ。それはよりチャレンジ精神にあふれている。だから私はこれをスタートさせたんだ。そして人気を得た。米国ではこういうレースを『グラベル(未舗装路)レース』と呼んでいて、年に150レースくらい行われている。ルールには縛られないアンダーグラウンドなレースで、街中でメッセンジャーたちが行うアリーキャットレースのようなものだ。ロードレースが真剣勝負なのとは異なり、シリアスではなくより楽しいレースなんだ。 --- 日本で開催している野辺山シクロクロスもとても人気ですね? 「シクロクロスはロードレースよりも受け入れられやすいものなのだと思う。競技はたった1時間で、狭い場所で行われるから人々が観に来るのも簡単だ。米国ではシクロクロスはより楽しいもので、大勢が観戦している。ベルギーでも観客は多いが、それはまったくシリアスなものだ。英国で行われるシクロクロスも米国に似ていて、途中でテキーラを飲まなければいけないショートカットがあったり、泡が吹き出す場所があったりする。テキーラで酔っ払って、泡の中を走るんだよ」 --- 最後に、ロンドンで一番お気に入りの場所は? 「自転車で走るならリージェンツパークだ。自宅にもオフィスにも近くて、毎日走っている。1周4kmと短いコースだけど、とても美しくてロンドンらしい場所なんだ。週末には子供たちを連れていって、幸せな週末を過ごせる場所だよ。何か食べる場所だったら Rapha Cycle Club がおすすめだよ。ロンドンでいちばん面白い中心部にあって、とても情熱にあふれた場所だ。イチジクのケーキが美味しくておすすめだからね!」





インタビューはRapha Japanのイベントをサポートする渋谷のバイクメッセンジャー会社、courier(クーリエ)のオフィスで行われた。自転車文化のなかでもっともファッションに敏感なメッセンジャーの拠点に、モットラム氏は自然と溶け込んでいた


※RaphaのCEO サイモン・モットラム氏のインタビューは、サイクルスポーツ2月号(12月20日発売)にも掲載を予定しているのでお楽しみに!

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