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極寒のヘットニュースブラッドでパオリーニが優勝! 春のクラシックシーズン開幕

ベルギーで行われたクラシック開幕戦は、気温マイナス1度Cという厳しい条件下でスタートした
Photo: Graham Watson

36歳のベテラン、パオリーニがフランドル地方で初クラシックタイトル獲得!


今年のクラシックシーズン開幕は例年よりも1週間早いこともあり、厳しい寒さと降雪に見舞われれる結果になった。ベルギーのロードレースシーズン開幕戦であり、春のクラシック開幕戦でもあるオムロープ・ヘットニュースブラッド(ヨーロッパツアー1.HC)は、日中の気温が0度Cまでしか上がらないと予報されていた通り、マイナス1度Cという厳しい気象条件の下でスタートした。しかし、過酷なクラシックの栄冠を手中に収めたのは、地元ベルギー勢ではなく、イタリアのルーカ・パオリーニ(カチューシャ)だった。 1月で36歳になったベテランのパオリーニは、オムロープ・ヘットニュースブラッドのようなフランドル地方のクラシックレースで優勝したのはこれが初めてだった。しかも彼は2009年にコッパ・ベルノッキで優勝して以来、3年間勝ち星がなかった。しかし、彼はベテランらしく、ステイン・バンデンベルフ(オメガファルマ・クイックステップ)との一騎打ちのゴールスプリントを難なくやってのけた。ゴールまで残り300メートルで仕掛けたパオリーニに、バンデンベルフは追いすがることすらできなかった。「ボクは疲れていたから彼がアタックするのを恐れていた。でも、彼はもっと疲れているのがわかった。彼とはカチューシャで一緒に走っていたから、ボクの方が速いのは知っていた。でもゴールラインを先頭で通過するまでは安心できなかったよ」と、パオリーニはゴール後のTVインタビューで心中を明かしていた。2008年まではオムロープ・ヘットフォルクという名称で開催されていたオムロープ・ヘットニュースブラッドは今年で68回目。イタリア人でこの過酷なクラシック開幕戦を制したのは1995年のフランコ・バレリーニ、2001年のミケーレ・バルトリ、2007年のフィリッポ・ポッザート(ランプレ・メリダ)で、パオリーニは4人目のイタリア人優勝者になった。そして何よりも重要なことは、これがロシアのカチューシャチームにとって、UCIプロチーム登録後、初めての勝利だったことだろう。

マイナス1度Cの曇り空の下、198選手がゲントをスタート。寒さを物ともせずに、33km地点で逃げ出したのはウイリアム・クラーク(チームアルゴス・シマノ)、プレーベン・バンヘック(トップスポルトブラーンデレン・メルカトル)、フロリアン・バション(ブルターニュ)、ジュリアン・フシャールとニコ・セイマンス(コフィディス)、ガティス・スムクリス(カチューシャ)、シリル・ルモワン(ソジャスン)、ジェローム・クザン(チームヨーロッパカー)、ザック・デンプスター(チームネットアップ・エンデューラ)の9人だった。彼らは集団に5分近い差をつけていたが、ベルギーのクラシックレースを特徴づける石畳の丘が始まると、その差は次第に縮まっていった。 ゴールまで残り50kmになって逃げグループのタイム差が1分を切ると、集団でもレースが始まった。エイケンベルフの石畳でシルバン・シャバネル(オメガファルマ・クイックステップ)がアタックし、独走で逃げを追走したのを合図に、マルコ・バンディエラ(IAMサイクリング)、ユルフン・ルーランツ(ロット・ベリソル)、グレッグ・バンアーベルマート(BMCレーシング)、マールテン・ワイナンツ(ブランコプロ)、スウェン・バンドゥスラール(トップスポルトブラーンデレン・メルカトル)、エゴイツ・ガルシア(コフィディス)、ゲラント・トーマス(スカイ)、バンデンベルフ、パオリーニが集団から抜け出し、10人で新たな先頭グループを形成した。10人はトム・ボーネン(オメガファルマ・クイックステップ)の集団に残り30kmで1分57秒差をつけていた。 この日、レースのターニングポイントになったのはゴールまで残り27.8km地点から始まり、1.3km続いたリッペンホーブストラートの石畳だった。そこを先頭で走り続け、最後にアタックしたのはアンダー23のヘットフォルクで優勝した経験がある地元出身のバンデンベルフだった。先頭グループでこのアタックに唯一付いて行けたのがパオリーニだった。元チームメートの2人は協力して逃げ続け、ゴールまで残り20kmで追走グループに28秒差、ボーネンの集団には3分24秒差を付けていた。

バンデンベルフとパオリーニのタンデムは、8人の追走グループに追いつかれるどころか、タイム差を広げでゴールのゲントへと向かった。フラムルージュを通過したあと、バンデンベルフは先頭を走りながらパオリーニが仕掛けるのを気にかけていたが、ベテランがスプリントを開始した時には、何も為す術がなかった。「2位もいいけど、勝てたらもっとよかった。でも2位で満足だよ。パオリーニは単純に速かった。アタックしたときにパオリーニがついてきたのは知っていた。そして彼が本当に強いことも。でも、今日のように厳しいレースでは、最後に彼がどんな状態なのかはわからないものだからね。2位でも満足だから、よく寝られるよ」と、バンデンベルフはゴール後に語っていた。1分13秒後にゴールした追走グループは3位争いのゴールスプリントを競い、トップスポルトブラーンデレン・メルカトルのバンドゥスラールがその座を勝ち取った。地元ベルギー勢は表彰台の真ん中こそベテランのイタリア人にゆずったが、両脇はきっちり獲得した。 ベルギーでクラシックシーズンが開幕した週末は、ヨーロッパを厳しい寒波が襲ったため、レース中止が相次いだ。オムロープ・ヘットニュースブラッドが行われた土曜日は、フランス南部で初開催する予定だったラ・ドローム・クラシック(ヨーロッパツアー1.1)が降雪のため中止になり、ベルギーでもビーブルビーク・クラシック(ヨーロッパツアー1.2)が降雪でコース短縮となった。日曜日はベルギーでも朝から雪が降り、クールネ~ブリュッセル~クールネ(ヨーロッパツアー1.1)が中止。スイスではGP・ルガーノ(ヨーロッパツアー1.1)も、同じく降雪のため中止になっている。

第68回オムロープ・ヘットニュースブラッド結果


1 ルーカ・パオリーニ(カチューシャ/イタリア)4時間52分15秒 2 ステイン・バンデンベルフ(オメガファルマ・クイックステップ/ベルギー) 3 スウェン・バンドゥスラール(トップスポルトブラーンデレン/ベルギー)+1分13秒 4 ゲラント・トーマス(スカイ/英国)+1分13秒 5 グレッグ・バンアーベルマート(BMCレーシング/ベルギー)+1分13秒 6 マルコ・バンディエラ(IAMサイクリング/イタリア)+1分13秒 7 シルバン・シャバネル(オメガファルマ・クイックステップ/フランス)+1分13秒 8 ユルフン・ルーランツ(ロット・ベリソル/ベルギー)+1分13秒 9 マールテン・ワイナンツ(ブランコプロ/ベルギー)+1分13秒 10 エゴイツ・ガルシア(コフィディス/フランス)+1分13秒