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一騎打ちのスプリントを制してカンチェッラーラが優勝 パリ~ルーベ 2013

石畳の悪路に挑む“クラシックの女王”は、今年は意外にもベロドロームのスプリントで勝者が決した

●Photo: Graham Watson

ベロドロームで競われた最後の闘い

 

今年、111回目を数えた“クラシックの女王”パリ~ルーベは、下馬評通りスイスの“スパルタクス”こと、ファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・レオパード)の3度目の勝利で幕を下ろした。しかし、そのシナリオは、けっして誰もが予想していたようなものではなかった。カンチェッラーラはルーベのベロドロームに、1人では現れなかった。彼の後ろには、24歳の若きフランドリアン、セップ・ヴァンマルク(ブランコプロ)がピッタリと付いていたのだ。2人の間の駆け引きは、ベロドロームに入場する前に始まっていた。最初のコーナーでヴァンマルクが前に出ると、トラック競技のスプリント種目のような牽制が始まった。ヴァンマルクは、昨年のオムロープ・ヘットニュースブラッドでトム・ボーネン(オメガファルマ・クイックステップ)をゴールスプリントで下していたが、ルーベのベロドロームという非常に特別な状況下での闘いは、まだ経験がなかった。百戦錬磨のカンチェッラーラには、それがよくわかっていた。彼はゴール目前で先に仕掛けたヴァンマルクを外側からあっさり抜き去ると、両手を上げてゴールに飛び込んだ。

不運に見舞われたオメガファルマ・クイックステップ

 

ディフェンディングチャンピオンのボーネンは、1週間前のツール・デ・フランドルで落車して負傷し、今年のパリ~ルーベには参加できなかったが、チームは勝利をあきらめていなかった。序盤の逃げにはヒールト・スティーフマンスが加わり、石畳区間が始まった後は、残り40kmでステイン・ヴァンデンベルフがヴァンマルク、ダミアン・ゴダン(チームヨーロッパカー)、セバスティアン・ラングベルト(オリカ・グリーンエッジ)とともに先行した。しかし、ボーネンに代わってゼッケン1を付けていた地元フランスのシルヴァン・シャヴァネルは、メカニカル・トラブルで自転車交換をしなければならなくなり、これで失ったタイムを最後まで挽回することはできなかった。

 

ヴァンデンベルフ、ヴァンマルク、ゴダン、ラングベルトの4人は、ゴールまで残り32kmでズデネク・シュティバル(オメガファルマ・クイックステップ)、グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)、ルーカ・パオリーニ(カチューシャ)、フアンアントニオ・フレチャ(バカンソレイユ・DCM)らのグループに12秒差、カンチェッラーラのグループに20秒差を付けていた。その1km後に、カンチェッラーラは単独でアタックし、前のグループに合流した。先頭では残り29km地点からヴァンデンベルフとヴァンマルクがアタックし、2人で先頭を走り続けていた。そしてサイソワンの石畳区間で、追走グループからカンチェッラーラがアタックしたとき、そのスピードに付いて行けたのは元シクロクロスの世界チャンピオン、シュティバルだけだった。2人は最後から5番目の石畳区間の入口で先行していた2人に追いつき、先頭は4人になった。

 

今年のルーベで4人の明暗を分けたのは、ゴールまで残り17.5kmから始まったカルフール・ド・ラルブルの石畳区間だった。最後尾にいたヴァンデンベルフは石畳を避けて道の端を走っていたが、前の選手に気を取られていた観客と接触して落車してしまった。その1km後、今度はシュティバルが同じように石畳の端を走っていて、写真を撮ろうとした観客と接触。彼はかろうじて落車を免れたが、外れたペダルを付け直すわずかなタイムロスは致命的だった。オメガファルマ・クイックステップの2人が脱落したことで、戦況は大きく変わってしまった。カンチェッラーラはヴァンマルクだけを蹴落として、得意の独走をすればよかった。ところがヴァンマルクは、けっしてカンチェッラーラを逃さなかった。あのペーテル・サガン(キャノンデール)でさえ屈したアタックに、ヴァンマルクは最後まで耐え切ったのだ。スパルタクスを限界ギリギリまで追い込んだ若きフランドリアンは、ゴールスプリントで負けて2位に終わったが、その素晴らしい走りは大いに称えられた。


■3度目の優勝を果たしたカンチェッラーラのコメント「ベロドロームに入って、自分のショーをするのはいつでも素晴らしい。けれどボクが探していたのはショーではなく、勝利だった。どうやってそれを成し遂げたのかはわからないよ。それは大きな闘いだった。最後にどうしてシュティバルとバンデンベルフがいなくなったのかはわからなかったが、ボクとヴァンマルクの2人になっていた。彼は素晴らしいレースをした。ボクはアタックしたけど、もう勘が冴えていなかった。どうやって勝てたのかはわからないが、今日くらい限界を越えたことはなかっただろう。ただ勝利を探していた。ゴールラインを探していた。おそらく他の何よりも、ゴールラインを通過する最初の選手になることを探していたんだ」

 

第111回パリ~ルーベ結果

1 ファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・レオパード/スイス)5時間45分33秒

2 セップ・ヴァンマルク(ブランコプロ/ベルギー)

3 ニキ・テルプストラ(オメガファルマ・クイックステップ/オランダ)+31秒

4 グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング/ベルギー)+31秒

5 ダミアン・ゴダン(チームヨーロッパカー/フランス)+31秒

6 ズデネク・シュティバル(オメガファルマ・クイックステップ/チェコ)+39秒

7 セバスティアン・ラングベルト(オリカ・グリーンエッジ/ベルギー)+39秒

8 フアンアントニオ・フレチャ(バカンソレイユ・DCM)+39秒

9 アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウエー)+50秒

10 セバスティアン・テュルゴー(チームヨーロッパカー/フランス)+50秒