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雪で短縮した過酷な闘いをツィオレックが制した!  ミラノ~サンレモ 2013

今年のプリマベーラは真冬の天候に見舞われ、降雪で一時中断したが、その闘いを最後に制したのは南アフリカのチームに所属するドイツのツィオレックだった

南アフリカのMTNクベカにもたらされたビッグタイトル


ミラノ~サンレモはイタリア語で春を意味する“ラ・プリマベーラ”の愛称で親しまれているが、今年は真冬の寒さがレースを襲った。主催者は伝統的に土曜日に開催されていたこのレースを、今年から日曜日開催に変更したのだが、まるで天がそれを怒っているかのように、スタートから冷たい雨が選手たちをさいなんだ。降雪の影響でレースは一時中断し、トゥルキーノ峠もラ・メンテ峠も通過しなかったため、よりスプリンター向きになったのではないかと思われたが、厳しい寒さは無慈悲にも選手たちを選別し、ゴールまで残り6kmのポッジオ峠山頂を越えたとき、先頭にはたった6人の勇者しか残っていなかった。ゴール勝負は優勝候補の筆頭だったスロバキアのペーテル・サガン(キャノンデール)が安々と勝つのかと思われた。しかし、ゴールラインで雄叫びを上げたのは黄色と黒のMTNクベカのジャージだった。南アフリカ初のUCIプロコンチネンタルチームに史上最高の勝利をもたらしたのは、ドイツ人スプリンターのゲラルド・ツィオレックだった。

降雪でレースは一時中断


ミラノのカステッロ広場を25チームの200選手がスタートしたとき、天気予報は雨と寒さと雪を告げていた。そんな天候のなか、序盤から果敢にアタックしたのはフィリッポ・フォルティン(バルディアーニバルボーレ)、マッテーオ・モンタグティ(AG2R・ラモンディアル)、マクシム・ベルコフ(カチューシャ)、ディエゴ・ローザ(アンドロニジョカットリ)、ラルスイティン・バク(ロット・ベリソル)、パブロ・ラストラス(モビスターチーム)の6人だった。しかし、ミラノからサンレモへと南下する途中に通る予定だった142km地点のトゥルキーノ峠は、降雪で通過することができず、118.5kmのオバダでレースは一時中断する決定が下された。選手たちはチームバスで131km地点のコゴレートまで移動し、2時間ほどの中断のあと、逃げていた6人がまず再スタート。レースが中断した時点でのタイム差は7分10秒だったため、集団は7分10秒後に再スタートし、レースは再開した。この時点でオメガファルマ・クイックステップのトム・ボーネン、ニキ・テルプストラ、ステイン・バンデンベルフやトムイェルテ・スラフテル(ブランコプロ)は、レース続行を断念して棄権してしまった。雨天で下りが危険であるという判断からラ・メンテ峠通過もキャンセルされたため、298kmで競われる予定だった104回大会は246kmに短縮されることになった。競技再開後も凍てつく雨に負けてしまった選手たちが続々とリタイア。残り45km地点では、優勝候補の1人だったビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)が自転車を降りてしまった。 集団はチームスカイが先頭を引いて、逃げを追い詰めていった。フォルティンが脱落して5人になった先頭の逃げからは、ゴールまで残り40kmのカポ・ベルタの上りでバクがアタック。ローザとベルコフが追走し、3人で逃げ続けたが、チプレッサ峠手前の残り30kmで全員集団に吸収されてしまった。その直後に落車が発生し、タイラー・ファーラー(ガーミン・シャープ)やゲラント・トーマス(スカイ)が巻き込まれてしまった。奇しくもそのとき、集団の先頭からはマクシム・ブエ(AG2R・ラモンディアル)がアタックし、チプレッサ峠で先頭は30人程度の選手に絞られていた。ゴールまで残り20km、チプレッサ峠からの下り坂で仕掛けたのは、アルカンシエルを着たフィリップ・ジルベール(BMCレーシング)だった。しかし、下り終えたところで追走してきた選手たちに捕まってしまった。そこからアタックしたのはシルバン・シャバネル(オメガファルマ・クイックステップ)、イアン・スタナード(スカイ)、エドワルド・ボルガーノフ(カチューシャ)だった。3人は追走の精鋭グループに26秒差を付けてポッジオを上がりはじめた。

ポッジオで積極的な攻撃を見せたのはスタナードで、ボルガーノフは序盤で脱落し、先頭はシャバネルとスタナードの2人になった。追走グループからはマクシム・イグリンスキー(アスタナ)がアタックして前の2人を追ったが、ポッジオを越える前にルーカ・パオリーニ(カチューシャ)に捕まってしまった。さらにペーテル・サガン(キャノンデール)、ファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・レオパード)も攻撃を開始し、ゲラルド・ツィオレック(MTN・クベカ)とフィリッポ・ポッザート(ランプレ・メリダ)も応戦したが、ポッザートはすぐに脱落してしまった。ポッジオの下りでサガン、カンチェッラーラ、ツィオレック、パオリーニの4人は、先行していたシャバネルとスタナードをとらえ、6人でサンレモのゴールを目指した。英国チャンピオンのスタナードはゴールまで残り1.8kmでもう一度アタックしたが、勝利の女神は微笑まなかった。最後は6人でのゴールスプリントになり、ツィオレックがサガンを下して優勝した。イタリアのミラノ~サンレモでドイツ人が優勝したのは、2001年のエリッツ・ツァーベル以来だった。 昨年までオメガファルマ・クイックステップで走っていたツィオレックが移籍したMTNクベカは、今季UCIコンチネンタルチームからUCIプロコンチネンタルチームに昇格したチームで、南アフリカ初のUCIプロコンチネンタルチームとして話題になっている。ツィオレックはすでに3月上旬にベルギーで開催された西フランダースの3日間レースで区間優勝し、チームに国際レースでの初勝利をもたらしていた。彼はその後も好調で、MTNクベカが初めて主催者招待枠で参加したUCIワールドツアーのティレーノ~アドリアーティコでも、スプリント勝負になった区間で3位と4位になっていた。ツィオレックが初めて獲得したクラシックのビッグタイトルは、南アフリカのMTNクベカにとっても、予想外に早く訪れた大成功となった。そして最高のクラシックと呼ばれるミラノ~サンレモが、トップチームではない格下のチームにその玉座を明け渡したのも珍しい出来事だった。 ■優勝したツィオレックのコメント「今朝バスのなかで、ボクたちはただここにいることが勝利のようなものだと話していた。そしてボクたちは、この日を本当の勝利で終えたんだ! ここにいるチャンスを与えてくれたRCSにボクたちはとても感謝している。ボクは今日という日を、雪で厳しい1日だったことと、最後にもたらされた大きな勝利で忘れないだろう」

第104回ミラノ~サンレモ結果

1 ゲラルド・ツィオレック(MTN・クベカ/ドイツ)5時間37分20秒 2 ペーテル・サガン(キャノンデール/スロバキア) 3 ファビアン・カンチェッラーラ(レディオシャック・レオパード/スイス) 4 シルバン・シャバネル(オメガファルマ・クイックステップ/フランス) 5 ルーカ・パオリーニ(カチューシャ/イタリア) 6 イアン・スタナード(スカイ/英国) 7 タイラー・フィニー(BMCレーシング/米国) 8 アレクサンダー・クリストフ(カチューシャ/ノルウエー)+14秒 9 マーク・カベンディッシュ(オメガファルマ・クイックステップ/英国)+14秒 10 ベルンハルト・アイゼル(スカイ/オーストリア)+14秒