トピックス

ゼロ7の一卵性双生児 ウィリエール・ゼロ9

2013年のニューモデルとしてフラッグシップのひとつにチェントウノSRを加えたウィリエール。そんな同社が早くもニューモデル「ゼロ9」を追加した。そのフォルムや車名からも想像できるとおり、このモデルはウィリエールのもうひとつのフラッグシップである「ゼロ7」の一卵性双生児ともいえる存在となる。

text:吉本 司 photo:佐藤正巳

1台のバイクでなんでもしたい人に最適なモデル

2012年に登場したゼロ7は、最新ロードバイクにおけるBB規格の次世代スタンダードのひとつとなるBB386をいち早く搭載し、フレーム単体で750gの重量を実現した超軽量モデル。その実車は、肉厚のもっとも薄いトップチューブを手で押せばたわみを感じるほどで、扱いには軽量車ならではの繊細さが必要とされる。プロ選手ならレースで万が一壊れても無償で交換できるが、一般ユーザーはそうはいかない。ゼロ9登場の背景には、ゼロ7よりも扱いやすいモデルの要望があった。そしてもうひとつは、サドル高の調整幅の小さなインテグレーテッドシートポストを敬遠する声があったこと。こうした理由からゼロ7の形状をそのままに、堅牢性を高めたゼロ9が開発された。

 

ゼロ7との具体的な違いは使用素材だけだ。60tのHMカーボンは同様だが、ゼロ9にはゼロ7の軽量化に大きく貢献した技術のSEIフィルムを使用しない。代わりにゼロ9では強度や剛性を確保するためにゼロ7よりもカーボンの積層数を増し、その結果フレーム単体で950gの重量となり堅牢性を大きく向上させている。とはいえ、それでも軽さは実用十分なレベル。ゼロ7はプロレースでも山岳ステージのここ一番の決戦用仕様という位置付けなので、当然一般ユーザーが普段からガンガン使うことは考えてしまうはずだが、ゼロ9ならそれもないだろう。価格も抑えられているので、総合的に見れば一般ユーザーにとって好バランスなモデルといえる。

ウィリエール・ゼロ9

フレーム価格:39万9000円

シマノ・デュラエース WH-RS21 完成車価格:59万8500円

シマノ・アルテグラ WH-RS61 完成車価格:49万9000円

 

フレーム:カーボン

フォーク:カーボン

コンポーネント:シマノ・アルテグラ Di2

ホイール:フルクラム レーシング1 WO

タイヤ:ヴィットリア・トパジオ プロ 700×23C

ハンドルバー:リッチー・ロジック2 ロードハンドル

ステム:リッチー・プロ シートピラー2ボルト WET

試乗車実測重量:7.22kg(Mサイズ、ペダルなし)

サイズ:XS、S、M、L、XL

カラー:レッド

■写真下・左:クラウンまわりは大型化しているものの、全体的にはシンプルな作りのフロントフォーク。ブレードはわずかなアールを与えたオーソドックスな形状によって、振動を積極的に緩和する。

 

■写真下・中:下側のベアリングを1-1/4インチとしたテーパードヘッドチューブは、中央部を膨らますように成型され、これによりトップ&ダウンチューブの接合面積を増してヘッド剛性を強化する。

 

■写真下・右:乗り心地を求めてトップチューブを受け継ぐように成型されたシートステー。細身に成型することで軽量にしつつ振動吸収性を高め、十分なバック剛性を確保するため2本タイプを採用。

■写真下・左:変速ワイヤのルーティングは電動式、機械式兼用。チェーンステーにネジ止めされた機械式用のアウターストッパーを外すと電子ケーブルを通すための穴が設けられている。スマートな仕様だ。

 

■写真下・右:角型の断面に成型されたチェーンステーは十分なボリュームを持つ。BB386規格のオーバーサイズハンガーシェルと相まってパワーラインの剛性向上に貢献し、優れた駆動効率が追求される。

■比較的ボリュームは抑えられた感のあるハンガーまわり。しかしウィリエールが先駆けとなったオーバーサイズBB規格、BB386を取り入れることにより、軽量化と十分な剛性がバランスされている。

吉本 司の試乗インプレッション

ゼロ7は発表時にイタリアで試乗した経験がある。軽量車らしいパリッとしたペダリング感覚ながら、ための効いた剛性を持ち、腰高な乗車感覚も少ない好バランスの一台という印象だった。対するゼロ9の走りは同じフレーム形状だが、その印象はかなり違う。やはりSEIフィルムの省略によってカーボンの積層量が増し、ゼロ7よりもフレーム剛性にしっかり感が増している。したがって出足の軽さで勝負する超軽量車らしい性格は少々影を潜めた。しかし、それと引き替えに高速域での性能にも力強さが生まれ、とくにスプリント的な走りにおいてはゼロ9のほうが気を使わず走れそうな印象だ。剛性のしっかり感が増した分だけゼロ9はおいしい速度域が挙げられ、ゼロ7と比べるとトータルバランスを重視した走行性能に仕上げられている。

 

とはいえ、950gのフレームはハンディとなる重さではなく、上りも無難にこなせる。フレーム特性からすると、軽めのギヤを選んで回転重視で走らせるほうが推進力を得られる感覚がある。また、重量が増した分だけ、下りやギャップなどに突っ込んだ際の安定性などはゼロ9が優れており、メーカーの意図するとおり多くのライダーに使いやすい性能に仕上げられている。複数のバイクを所有できるならゼロ7のエモーショナルな走りは魅力的だ。しかし持つ台数が限られるサイクリストなら、破損におびえながらゼロ7に乗るよりもゼロ9で思いきり走るほうが幸せだ。ゼロ9には、ハイエンドモデルとしてライダーの欲求を満たしてくれる性能は十分に備わっている。

 

*************************************

問い合わせ先

服部産業
06-6981-3960
http://www.hattori-sports.com/