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高次元なトータルバランスを備えた KTM REVELATOR MASTER

オーストリアのKTMといえばマニアックなモーターサイクルブランドとして人気だが、同社が1964年から自転車製造を行なっているのは意外に知られていない。本国ではロードやMTBはもとより、トレッキングバイクに至るまで豊富な品ぞろえを誇り、そのどれもが独自の設計から生まれている。「レヴェレイターマスター」はトータルバランスが高次元でまとめられ、使いやすさが際立つレーシングバイクだ。

text:吉本 司 photo:山内 潤也

モーターサイクルブランドが製造する、レベルの高い自転車

日本初上陸、ロードバイクのトップレンジとなる「レヴェレイター」の最高峰はフランスのプロチーム、ブルターニュセシュに供給される。今回紹介するのはプロモデルと同スペックのフレームにアルテグラのコンポを搭載した「レヴェレイターマスター」だ。カーボン製のフレームはオリジナリティにあふれる形状で、自社でしっかり開発されていることがわかる。その基本設計は、フレームの上部をコンフォートゾーンとし、下部をパワーゾーンとする最新トレンドを確実に反映したものだ。 パワーゾーンは、上下異型ヘッドとプレスフィット式のハンガーシェルによりヘッドからチェーンステーまで大きなボリュームが与えられ、高効率なペダリングのためのフレーム剛性が追求される。一方のコンフォートゾーンは薄型のトップチューブに加え、細く成型されたチェーンステーの接合位置をシートチューブに対して低く保つことでバーティカルコンプライアンスの向上が狙われる。 フレーム単体重量は885g、フォークは345gに仕上げられ、軽さだけでなく剛性感や堅牢さを必要とするロードレースモデルとしてバランスのいいレベルだろう。そして細部の仕様も電動/機械式兼用の内蔵式ワイヤ、耐久性の高そうな独自形状のリヤエンドなど、しっかりした作り込みだ。自転車部門は日本でまだなじみの薄いKTMだが、レヴェレイターマスターを見る限りその製品レベルはきわめて高く、十分な付加価値を備えた存在といえるだろう。

KTM レヴェレイターマスター

シマノ・アルテグラ完成車価格 34万円 フレーム:カーボン フォーク:カーボン コンポーネント:シマノ・アルテグラ ホイール:DTスイス・R23 タイヤ:コンチネンタル・グラプリ4000S 700×23C ハンドルバー:リッチー・WCSロジックカーブ ステム:リッチー・WCS 4AXIS 73° ステムBB サドル:セライタリア・SLSキットカーボンフローMn シートポスト:リッチー・WCSアジャスタブル シートピラー1ボルトBB 試乗車実測重量:7.135kg(57サイズ、ペダルなし) サイズ:52、55 カラー:ブラック×ホワイト

■写真下・左:ストレートタイプのフロントフォークを装備。ヘッドベアリングの大径化に伴い、クラウン部のボリュームも大きく設計され、十分な剛性によって正確なハンドリング性能をもたらす ■写真下・中:下側のベアリング径を1-1/4インチとしたテーパードヘッドチューブにより、ヘッドまわりの剛性を高める。トップとダウンチューブの形に合わせてヘッドチューブも上下で形状が異なる。 ■写真下・右:シートステーは横扁平させた細いチューブを使う2本タイプとして、快適性とねじれ剛性を両立する。トップチューブから連なるようにシートステーを成型してさらに効果を高める。

■写真下・左:ダウンチューブは台形の断面に成型される。下底を大きくすることでねじれ剛性を高める。BBに向かって下底を広げ、高さを抑えることでハンガーまわりに適度な剛性を与える。 ■写真下・右:軽量化と剛性アップを図れるプレスフィット規格のハンガーシェルを採用。ハンガーまわりは上部にもしっかりとボリュームを与えたボックス形状とすることで、ペダリングロスを防ぐ。

■オリジナルのディレーラーハンガーは、ワイヤストッパーを兼ねるコンパクトな設計。十分な肉厚で丈夫そうだ。KTMのコーポレートカラーであるオレンジにアルマイト処理される。

吉本 司の試乗インプレッション

KTMのバイクといえば、今から10年ほど前にミラノショーで現物を見たのが最初だったが、とくに近年は意欲的なラインナップを展開しており、じつは個人的に密かに注目していた。 レヴェレイターマスターの走りはというと、ペダリングフィールはかっちりとしていてパワーゾーンの剛性は高い。パワーをかけたペダリングでもネガティブなウイップ感はなく、推進力をバイクにしっかり与えてくれる。かといって脚をムダに使わされるほど過度な剛性レベルではない。なおかつ柔軟性を持つコンフォートゾーンは、パワーゾーンとの剛性バランスに優れているためダンシングにおけるバイクの振りも軽く、スムーズな加速につなげることができる。 エモーショナルな性能こそないものの、平地から上りまでそつなくこなし、レースバイクとして十分な快適性も備え、素直かつ総合力に長けた性能を実現している。こうしたバイクはちょい乗りでは強いインパクトを得られないが、距離を重ねるとその優れた性能バランスはアドバンテージとして現れる。疲れていても上りでムリのないペダリングをしやすく、平坦の巡航性能でも必要以上に力を使わず、扱いやすいハンドリングは疲労がピークにあっても操作に神経をとがらせることもない。つねにライダーのパフォーマンスを発揮しやすいバランスに優れた走行性能は、じつはレース機材としてもっとも必要とされる要素であり、レースでここ一番の走りをサポートしてくれるだろう。 ※試乗車のサイズは特別仕様 ***********************************

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和田商会 WBS
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