名車エボが衝撃のモデルチェンジ

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名車エボが衝撃のモデルチェンジ

走り屋に高い評価を得てきたキャノンデール・スーパーシックスエボ。今夏、ついに三代目へとフルモデルチェンジを遂げる。アメリカのバージニアで行われたローンチイベントに、一代目も二代目も購入一歩手前までいったという安井が参加、ありのままを報告する。

没個性化か、鮮やかな変身か

名車エボが衝撃のモデルチェンジ風洞実験でいくつものチューブ形状を検討し……時速48km時の必要パワーを旧型比で30wも削減し……だんだんエアロロードのプレゼンを聞いている気分になってきた。
あのスーパーシックスエボのフルモデルチェンジ。胸を躍らせて渡米した翌日のことだ。とあるロッジの一室で本国スタッフの話は進む。
旧型比で18%も快適性を向上させ……インテグレーションも推し進め……ちょっと待ってくれ。空力?カムテール?ケーブル内蔵?インテグレーション?この変貌ぶりは一体どうしたことか。半日ぶんの時差ボケが吹き飛んでいく。
先々代は、695gというフレーム重量以上に完璧とも言えるバランスが武器の名機だった。先代は、エアロを意識しつつもストイックな設計を貫いたピュアレーシングバイクだった。それがモデルチェンジするというのだから、誰もがルック・785を真正面からメッタ刺しにするような軽量バイクを想像する。
しかし目の前の新型は、ディスクブレーキ化し、全身カムテールとなり、リヤ三角をコンパクトにし、ケーブルを内蔵した、トレンド全部入りの物体だ。バーモント州で行われたスーパーシックスエボのローンチイベント。それは、そんな驚きから始まった。これは旧型の面影を振り払い、意識を切り替える必要がありそうだ。

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

微変したコンセプト

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

フレームは全体的にカムテール形状を採用。CFDと風洞実験を併用しながら、チューブの断面形状を吟味したという

新型のコンセプトは、ざっくり言うと「旧型で定評のあった軽さ、剛性、ハンドリングを維持しつつ、その他の全ての性能(制動性能、空力、快適性、トータルインテグレーションなど)を向上させた」というもの。
特徴は見ての通り、空力を強く意識した設計だ。ほぼ全てのチューブがいわゆるカムテール形状となり、上位モデルにはエアロハンドルが組み合わされ、ディスク&Di2仕様ではケーブルがほとんど露出しない。コラムスペーサーまでカムテールなのだから、「これはエアロロードです」と断言しても誰も文句は言わないだろう。

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

上位モデルはSAVEハンドルバーとステムを装備する(ノーマルステムも使用可能)。ディスクブレーキ&電動仕様では、ケーブル類はほとんど露出しない。ただしメンテナンス性には配慮されているようだ

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

ディスクブレーキモデルのブレーキケーブルは、ヘッド前方に設けられたフレーム内部のスペースを通って前後キャリパーへ。まるでエアロロードのような作りに驚かされる

シートステーを下にオフセットさせ、シートステー由来の乱流を押さえつつ、シートチューブを積極的にベンドさせることでサドル周りの快適性を上げるという工夫も盛り込まれた。
ハイモッドとスタンダードモッドという2種類のフレームが用意されるのは前作同様だが、新型においてはハイモッド版がディスクブレーキのみとなる。スタンダードモッド版にはリムブレーキとディスクブレーキの両方が用意されるが、エボもとうとうディスクブレーキを主体とする方向に舵を切ったのだ。
フレーム単体重量は806g(48サイズ、塗装済、小物込み)。ディスクブレーキであることを考えるとエボの名に恥じない軽さと言っていいだろう。なお、フォークやシートポストを含めたシステム重量では、前作(ハイモッドディスク)比で19gの軽量化を達成しているという。

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

ハイモッド版は全てディスクブレーキに。しかしフレーム重量は800g強に抑えられている。スタンダードモッド版にはリムブレーキとディスクブレーキが用意される。

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

劇的に変化したのがシートステーだろう。シートチューブとの交点が大幅に下げられたのだ。このドロップドシートステーにより、空力性能と同時に快適性も向上したという

いいバイクじゃないか

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

走り出した瞬間に感じたのも、プレゼンでの第一印象と同様、「まるでエアロロードに乗ってるみたい」というものだった。用意されたのはデュラエース仕様のハイモッド完成車。足まわりは決して最速仕様というわけではないのに(45mmハイトのカーボンクリンチャー&旧型ルビノの25C)、走行抵抗がかなり低く抑えられている。空力性能向上の結果だろうか。
明らかな進化を感じるのはペダリングフィールである。旧型のような脚を刺すような刺々しさは影を潜め、ペダルが回しやすく、フレームとの一体感が高まっている。加速後半のスピードの伸びやかさは旧型を大きく凌ぐ。
走行抵抗の減少、ペダリングフィールの円熟に加えて、大きな点数アップを果たしているのが乗り心地だ。特にリヤセクションの快適性は大幅に向上している。
いいバイクじゃないか。実際に乗ると評価は好転した。軽やかで滑らかでスマートな、洗練された最新鋭スーパーバイク。確かに前作のような個性は薄れた。しかし、快適性、空力、ディスクブレーキへの最適化などを含めた万能バイクとして、これ以上の完成度を持つモデルはかなり少ないと思う。

ラインナップ

ハイモッドはディスクのみ。デュラエースDi2仕様、アルテグラDi2仕様、機械式デュラエース仕様、フレームセットが用意される。スタンダードモッドにはリムブレーキとディスクブレーキがあり、ディスク版はフォースeタップ仕様、機械式アルテグラ仕様、105仕様。リムブレーキ版は機械式アルテグラ仕様、105仕様というラインナップとなる。

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

ハイモッド デュラエースDi2(105万円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

ハイモッド アルテグラDi2(79万5000円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

ハイモッド デュラエース(72万円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

スタンダードモッド ディスク フォースeタップAXS(59万5000円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

スタンダードモッド ディスク アルテグラ(39万円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

スタンダードモッド アルテグラ(28万円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

スタンダードモッド ディスク 105(26万円、税抜)

名車エボが衝撃のモデルチェンジ

スタンダードモッド 105(22万円、税抜)