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eロードバイクのジロ・デ・イタリア GiroE 日本人初参加レポート

日本でも徐々に盛り上がりを見せているeバイク。本場欧州ではeMTBのレースがいくつも開催されている。そして、かのジロ・デ・イタリアと同時開催されているeバイクイベントがあると聞き、編集部中島がイタリア政府観光局チームに所属して実際に3ステージ走ってきた!
 
text:Takehiro Nakajima Photo:GiroE/Takehiro Nakajima 取材協力:イタリア政府観光局

eロードバイクだけでレースをするとどうなるのか?

ジロ・デ・イタリアでeバイクレースが開催される。そんな情報が舞い込んだのは昨年のことだった。ジロEというこのイベントは今年が2回目。本家ジロ・デ・イタリア(以下ジロ)開催期間の途中、5月12日から6月1日までに全18ステージが開催された。ジロEが走るコースは、ジロで使われるコースの途中にある町からその日のフィニッシュ地点まで。 ステージの距離は最長で115kmとレギュレーションで決まっている。総距離1829km、獲得標高2万4000m! eバイクとはいえ、そのタフなコースはジロそのものだ。もちろん、道路もジロと同じように交通規制されている。

1チーム6人で構成されたチームが10チーム参加し、キャプテン1人が18ステージ通して走っている。他の5人は3~7ステージごとに入れ替わる。このレースを走っているのは、ジロを走るようなプロ選手ではなく一般のライダーたち。とはいえジロでステージ優勝経験のあるダビデ・レベリンや、イタリアでは人気スポーツのバレーボール界からイバン・ザイツェフ、女子テニス選手のマラ・サンタンジェロなど豪華。そして筆者のようなメディアの人間まで多岐にわたる。このようなライダー達が走るので、総合順位を決める方法は純粋な着順ではなく、決められた区間を、決められた速度で走れるかを競うことになっている。

連日eバイクで長距離を走るという、多くの人にとって未知の体験で参加者はもちろん、バイクメーカーにとっても大きな経験を残したビッグイベントであった。

 

チームメイトは?

イタリア政府観光局がスポンサードするチームENITで参戦
イタリア政府観光局がスポンサードするチームENITで参戦


キャプテンは、マッシミリアーノ・レッリさん(上写真赤いジャージ)。90年に宇都宮で行われたロード世界選手権にイタリア代表チームとして参戦。チーム・アリオステアやコフィディスを渡り歩いた元プロ選手だ。その他、写真左からスイス人のステファン、デンマーク人のマーティン、スペイン人のリカルドとデイビッド(左写真、ステージごとに交代)、スウェーデン人のパトリック、そして筆者。自転車雑誌や映像メディアの人間だ。上写真一番右端が筆者。

 

リーダージャージはあるの?

本番のジロさながらに、各選手一人一人サインをしてからスタートする
本番のジロさながらに、各選手一人一人サインをしてからスタートする
総合リーダージャージ
総合リーダージャージ
スプリント賞ジャージ
スプリント賞ジャージ
トライアル賞ジャージ
トライアル賞ジャージ
ヤンググリーンジャージ
ヤンググリーンジャージ


ジロと同じように4賞ジャージがあるが、獲得方法が異なる。スプリント賞はフィニッシュラインで各チームのキャプテンらのみによって着順が争われて決まる。トライアル賞は各ステージに2つ以上設けられている規定速度区間を一番正確な速度で走ったチームのキャプテンが着用。これらがポイント換算され、総合リーダーはそのステージまでの獲得ポイントが一番のチームに与えられる。ヤンググリーンはその名のとおりメンバーの年齢が若いチームのものだ。

どこを走った?

筆者は第14ステージ「アプリーカ~ポンテ・ディ・レーニョ」、第15ステージ「ボルツァーノ~アンテルセルバ/アントルツ」、第16ステージ「バッレ・ディ・カドーレ~サンタマリア・ディ・サーラ」を走行。ジロでは第16~18ステージに当たる部分だ。雨のモルティローロ峠やアンテルセルバへの緩く長い上り。そしてサンタマリア・ディ・サーラへのハイスピードの下りや横風の吹く平地を走った。あらゆる地形が盛り込まれたeバイクテストにもってこいの3ステージだった。

 
●筆者は走っていないが、第18ステージでは雄大なドロミテ山塊を望む、まさにジロ!という風景の中で開催された
●筆者は走っていないが、第18ステージでは雄大なドロミテ山塊を望む、まさにジロ!という風景の中で開催された
●パンターニのモニュメントがあるモルティローロ峠。いまだ多くのファンが集まる
●パンターニのモニュメントがあるモルティローロ峠。いまだ多くのファンが集まる
●雨の下りでは、集団も緊張感に包まれた
●雨の下りでは、集団も緊張感に包まれた
●イタリア文化とドイツ文化が入り交じるボルツァーノ。ヴァルター広場からスタートしていく
●イタリア文化とドイツ文化が入り交じるボルツァーノ。ヴァルター広場からスタートしていく

どんなバイクで走った? ピナレロ×ファツーア

ピナレロが誇るeロードバイク「ナイトロ」
ピナレロが誇るeロードバイク「ナイトロ」
●メカニックスペースでは大量のバッテリーが翌日のレースに向けて充電されていた
●メカニックスペースでは大量のバッテリーが翌日のレースに向けて充電されていた
アシストモード:HIGH POWER(ハイパワー)
アシストモード:HIGH POWER(ハイパワー)
NORMAL(ノーマル)
NORMAL(ノーマル)
ECO(エコ)
ECO(エコ)


ピナレロ、フォーカス、トレック、デローザ、オルモ、Eパワーズの6社のeバイクが参加。筆者はピナレロ・ナイトロで走った。フルカーボンフレームにオンダフォークを備えるあたりはノーマルロードバイクを踏襲した構成。アシストユニットはドイツのファツーア社製を採用。ダウンチューブにバッテリーとモーターユニットが取り付けられ、BBを介してアシストパワーを伝える。アシストなしの状態でもペダリングに違和感が少ないのがウリのユニットだ。アシストモードは3段階で最大400Wの力でアシストしてくれるが、時速25kmでアシストが切れる。急な上りは非常にラクだが、緩斜面などスピードが必要なシーンでは自分の脚力で走らなければならない。
 

デローザ×バーファン


デローザが採用していたのがバーファン社製のユニット。バーファンは、eバイクメーカーではベネリやBESVのバイクにユニットを提供している中国メーカーだ。バッテリーはダウンチューブに内蔵。ファツーアがフレームに対して下向きにバッテリーユニットを外すのに対して、バーファンは上側に外れる。ボトルケージを取っ手代わりに持ち運んでいたのが印象的。

メーカー担当者もレースに同行し、トラブルなどに即座に対応していた。

 

フォーカス×ファツーア


ドイツのファツーア社製ユニットを使用していたのはフォーカスとピナレロ。ダウンチューブと一体化できるバッテリーとモーターを内蔵したユニットが特徴。ロードバイク的なフォルムを崩さずにeバイクを設計できるのが強味。重量も比較的軽量に仕上がっており、2017年のユーロバイクで発表された車両は約12kgだった。

 

トレック×ボッシュ


トレックが採用していたのがボッシュ。フロントシングルギヤにワイドなギヤ比設定のリヤスプロケットを組み合わせている。ダウンチューブがかなり太いが、その分バッテリーライフが長く、パワーもある。


 

オルモ


歴史あるイタリアンメーカーのオルモもeロードバイクをリリース。同じくイタリアのミニバイクメーカー、ポリーニ社のモーターユニットを搭載している。フルカーボンフレームを採用し、ダウンチューブにバッテリーを搭載している。詳細なパワーは不明だが、各ステージをバッテリー交換なしで走りきれる容量を持っていた。

 

Eパワーズ

唯一リムブレーキを採用していたeロードバイク。フルカーボンフレームにバッテリーを完全内蔵しており、レースのなかで持ってみて一番軽量だった。ただ、バッテリーを充電するにはフレームにあるジャックにコードを差し込む必要があるので、他社のようにバッテリーが切れたらすぐにバッテリーのみを交換するという芸当ができない。

軽い分、走りも軽快で、重量によるロスをおさえることで電池のネガを補う設計だ。


 

ジロEはeバイクの壮大な実験場だ!


今回の経験をひと言で言うなら「eバイクだろうがつらかった!」である。いくらアシストパワーがあるとはいえ、ライダーの出力に比例してアシストしてくれるので、大きなアシストパワーを得ようと思うならライダー自身もがんばらないといけなくなる。

モルティローロ峠など、かつてノーマルロードバイクで上ったときとは比べものにならないくらい速く走りきることができたが、周りが同じようにeバイクに乗っている場合は、結局のところライダーの勝負になる。第15ステージのような緩斜面が一番つらくて、時速25km周辺で走れてしまう斜度だと、パワーがあるライダーについていくのは大変! とはいえ、ノーマルバイクなら、さらなる大きな差がついていたであろう。今回のように脚力に大きな差がある集団でも30分以上の大差がつくことなく走れた。

ちなみに第15ステージでは、フル充電でスタートし113km、2205mアップのコースのラスト1kmでバッテリー切れ。3つのモードを使い分けながら走り、十分な航続距離を備えていることが実証できた。

最終日は下り基調だったので常に時速40km辺りで走り続けるが、たまに短い丘が現れる。でも、スピードが速いのでパワーアシストの圏外! ヘビーなバイクなので、慣性が効いて速度が維持されているうちに上りきらないと大変という、山とは違うeバイクの走らせ方が必要だった。

下りはさすがピナレロ! と思わせてくれるハンドリング性能で、eバイクになっても安定したハンドリングは健在。今回の3ステージはeバイクの様々な側面を感じることができて、非常に貴重な経験となった。

 

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