トピックス

スペシャライズド・ヴェンジ 走りの質を3人のライダーが斬る

いくらバンクにおける走行抵抗が小さくても〝走りの質〟が低ければロードバイクとしては失格でもある。果たしてヴェンジの実力はいかなるものか。

 


鈴木真理
鈴木さんには実験に続き登場頂いた。なにせ選手全盛期は希代のスプリンター。高速高負荷域でのコメントには重みがある。
 


吉本 司
サイクルスポーツ本誌編集長。業務多忙により思うように走れぬ日々が続くが、本来は〝決闘値〟高めの走り屋。血が騒ぐのかインプレ当日は踏みまくっていた。


 
安井行生
本誌で試乗や技術系記事を担当するライター。かつては所有するバイクに全てDHバーを付けていたらしい。実は空気抵抗を少なくしたい人。


 


CS:鈴木さんは実験走行のときから絶賛していましたね。

鈴木:ヴェンジは完璧。言うことないです。加速もいいし平地で脚にこないし上りもいい。フレームの剛性感も硬すぎず柔らかすぎず。

安井:なんか悔しいけどヴェンジは良かった。ちょっと完成度が違う。

吉本:同じく悔しいけど(笑)、とにかくペダリングが軽い。ヴェンジ乗るとターマックいらいないじゃんって思っちゃう。上りで軽いギヤでダンシングでズバーンって加速できる。

鈴木:思わずもがいちゃいましたよ。レースで使いたい。これなら脚残ってなくても踏めると思う。

吉本:そうだね。硬くないもんね。

安井:しかしこの激変ぶりは一体どういう。ヴェンジヴァイアスを作った人たちが作ったとは思えない。しかもこれディスクブレーキですから。リムブレーキのヴァイアスがあれだけ硬くて、ディスクの新型がこんなにバランスいいって、どういう作り方しているのだと。普通逆だろ(笑)。

吉本:ヴェンジヴァイアスがあったからこれができたのでしょう。

安井:そうか。ヴァイアスで学んだのですね。にしてもいきなり設計うまくなりすぎでしょう。

吉本:スペシャライズドの設計思想が、全体的にバランス重視になってきたような気がしますね。旧型ターマックあたりから。

安井:ですね。このヴェンジでそれがさらに推し進められた感じ。

吉本:モノづくりの方向性が良く言えば〝フレキシブル〟悪く言えば〝安定しない〟のが、またスペシャライズドらしいですよね。トレックってずっと同じ方向を見ているような気がしますが、スペシャはあっちいったりこっちいったり。

安井:ターマックもいきなりしなやかにしてみたり。ヴェンジだって初代はしなやかだったのが二代目でカチコチになって三代目でこれ。

吉本:時代に影響されやすいメーカー……とか、嫌みのひとつでも言っておこう(笑)。

安井:珍しいインプレですね。

吉本:このバイク欠点ないですから。

安井:小さいサイズでも見た目いいしなぁ。Sワークスは高いけど、同じフレーム使ったヴェンジプロなら70万円ですから。電動アルテでカーボンクリンチャー。実際バカ売れしているみたいですが。僕も無理して悪口言っとくと、完成度高すぎて、これ買ったら〝負け〞な気がしないでもない。先代スーパーシックスエボが出たときも旧型マドンに乗ったときも同じことを思いましたが。

吉本:完成されすぎていて面白みに欠けるというのはありますよね、趣味人としては。しかもこれはこのパッケージで乗るのが一番いいだろうから、いじる余地もない。ネチネチと自転車遊びをしたい人からすると面白みは薄いかもしれません。結果を求めるレーサーなら最高の1台でしょうね。

安井:僕なら、このハンドルは合わないので自分好みのハンドルとステム付けて、エアロロードとしてではなくノーマルロードとして乗りたいです。上りならローハイトのホイールを付けてもいいだろうし。これでロングライドしたら最高だろうな。そんなことが想像できちゃう自転車。うー。悔しいけどこれは欲しい。

スペシャはいきなり設計がうまくなった(安井)

これならターマックいらないんじゃ……(吉本)


 
剛性感と調整幅にこだわった専用ハンドル&ステム。ただしハンドル高の調整はオイルラインの長さを再調整する必要もあり面倒な部分も。信頼できるショップにお願いしたい。一般的なステムとハンドルも使用可能
剛性感と調整幅にこだわった専用ハンドル&ステム。ただしハンドル高の調整はオイルラインの長さを再調整する必要もあり面倒な部分も。信頼できるショップにお願いしたい。一般的なステムとハンドルも使用可能
ダウンチューブはシンプルなカムテール形状。前作と比較してヘッド〜ダウンチューブの形状がおとなしくなったのは、ハンドリングのバランスをとるためだとか
ダウンチューブはシンプルなカムテール形状。前作と比較してヘッド〜ダウンチューブの形状がおとなしくなったのは、ハンドリングのバランスをとるためだとか
エアロロード然としたリヤトライアングル。完成車には64mmハイトのカーボンクリンチャーが付属する。タイヤクリアランスは大きく確保され、32Cまで飲み込む
エアロロード然としたリヤトライアングル。完成車には64mmハイトのカーボンクリンチャーが付属する。タイヤクリアランスは大きく確保され、32Cまで飲み込む

エアロロードの本質

取材と執筆を終えた吉本と安井が、第四世代のエアロロードについて、ロードバイク界の変化について、そして自転車の魅力について語り合う。

 

企業力がものを言う時代

安井:いやしかしエアロロードの進化スピードには驚いた。初代スコット・フォイルが出てまだ数年ですよ。

吉本:今の潮流(ディスクブレーキ化、ワイドリム・ワイドタイヤ化、変速の電動化、タイヤのチューブレス化など)が、たまたまエアロロードと相性が良かったんですよ。今までエアロロードのネガとされていたものが、それらによって一気に解消された。第四世代って、そのタイミングがドンピシャだったんです。第三世代からの積み上げも加わって、より強い追い風が吹いた。

安井:確かに。これはもう企業対企業の闘いになってきましたね。どう考えてもビッグメーカー有利。

吉本:変速系の部品以外、全部自社で作る時代が来ていますからね。そうしないとこの性能は出せない。企業力がものを言う時代。

安井:これまでみたいに、伝統とか匠の技とかレースの世界で培われたなんとかじゃなくて、資金とマンパワーと設備と技術力がバイクの走りの達成度を決める時代。あくまでエアロロードに関しては、ですが。このガチの闘いに参戦できるメーカーは少ないですよ。

吉本:同じカーボンフレームでも、ハイテク系バイクと手工芸品的バイクに分かれるでしょう。おそらくモジュール化はエアロロードだけじゃなくて全体に波及すると思います。果たしてユーザーがそれについていけるのか……。

間違いなく最速の自転車

吉本:でもね、エアロロードには〝スピード〞という単純明快な魅力が詰まっているんです。それってロードバイクの本質ですから。

安井:今回4台のエアロロードに乗りましたが、冷静に考えると、これって今まで自分が乗ってきたなかで、明らかに最速の自転車なんですよね。もちろん、上りとか路面状態とかフィッティングとかメンテナンス性とか課題はまだ多いですが、間違いなく自分史上最速の自転車。

吉本:そう。このスピードを体感できるって最高ですよ。今のエアロロードって、平地でガンガン踏んで「うわっ! 速ぇー!」って驚ける。それが純粋に楽しい。だから、断言してしまいましょう。エアロロード最高ですよ。エアロロード最高。ロードバイクって、やっぱりかっ飛ばしてスピード出してナンボの乗り物だって、改めて思いました。

安井:スピードがロードバイクの原点ですからね。

吉本:そう。スピードがロードレーサーの真理です。ロードバイクって、どこまでいっても〝速さ〞なんですよ。〝速さ〞に興奮するんですよ。今回はそれをすごく強く感じました。今まで自転車をそれなりに経験してきて、結局脚だろと達観しているところがあったんですが、今回乗って「うわ速い!楽しい!」って、久々に純粋無垢なロードバイカーになれた気がします。やっぱりロードバイクはスピードが命だなって強く感じさせてくれた。だからエアロロードは最高。そう思いました。どんなレベルのサイクリストでもエアロロードに乗れば、その速さに興奮できるはずです。

サイスポの結論! 今回、最も優れたエアロロードは SPECIALIZED S-WORKS VENGEである

結局、空気抵抗・インプレ・ユーザービリティの全項目でヴェンジが1位との評価を受けた。完勝。吉本は「今回検証した項目がたまたま良かっただけかもしれないが、確かにヴェンジの完成度が最も高かった。乗り味も洗練されており、パーフェクトなものに感じられた」、安井は「久々に際立つモデルが出てきた。純粋に性能で乗ってみたいと思わせてくれた自転車」とコメント。というわけで、『どのエアロロードが最も優れているのか?』という質問に対して、サイスポは『現時点では、それはスペシャライズド・Sワークスヴェンジである』と回答します。

 


S-WORKS VENGE

VENGE PRO

試乗サービス”BE SPECIALIZED”ならVENGEを丸1日たっぷり試せる!