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ヨネックス・カーボネックス アサノ試乗します!その28

テニスやバドミントンのラケットでおなじみの日本ブランド「ヨネックス」。自転車業界でのデビュー作が超軽量レーシングロード「カーボネックス」シリーズだ。フレームはキナンサイクリングチームの山本元喜選手が2018年の全日本選手権ロードレースを制した高剛性仕様のHRと、山の神・森本誠選手が駆る標準モデルの2タイプがあり、フォーク形状もストレートとベントから選択できるなか、今回は標準モデル×ベントフォークの組み合わせでテストする。
 
text:浅野真則 photo:岩崎竜太

世界を制したテニスラケットのノウハウを自転車へ

「ヨネックス・カーボネックス」 フレームセット価格/45万円(税抜)
「ヨネックス・カーボネックス」 フレームセット価格/45万円(税抜)

カーボネックスは2014年、テニスやバドミントンのラケットでおなじみの日本のメーカー・ヨネックスの自転車業界デビュー作となるカーボンフレーム。カーボンはヨネックスが40年以上も前から可能性に注目し、テニスやバドミントンのラケットなどにすでに応用実績のある素材だが、同社が長い年月にわたる研究開発で得た知識と技術の蓄積をさらに活用し誕生した。設計から製造まで新潟県長岡市の同社新潟生産本部で行われており、正真正銘のメイド・イン・ジャパンだ。

最大の特徴は、フレーム単体重量650g(Sサイズ、未塗装)という軽さに加え、しなりを生かした快適性とバネ感のある走りにある。開発テーマである「より強く、よりしなやかに速く」を実現するために、さまざまなテクノロジーを駆使している。

カーボンフレームは、カーボンシートと樹脂を合わせたプリプレグをさまざまな形にカットし、組み合わせながら何層か重ねて作られる。ヨネックスではカーボン繊維だけでなく、樹脂にも着目しているという。

例えば、最新ナノサイエンス素材・ネオカップスタックカーボンナノチューブを使ったカーボン繊維は、重なり合ったカップ状のカーボンナノチューブが柔軟に動くことで踏み込みに対する反応性と振動吸収性を向上。さらに樹脂にナノサイエンス新素材・X-フラーレン分子を配合することで、樹脂層の結合力を強めている。両者の相乗効果で高い強度と剛性、重量の軽さを高次元で兼ね備え、しなりを生かす反発力に富んだフレーム特性を実現している。

快適性の追求では、シートステーの芯材として通常のものと比べて250%も密度の高いマイクロコアを採用し、振動吸収性を向上させている。また、シートステーやダウンチューブのカーボンにトヨタ自動車グループが開発したゴムのような特性を持つ金属素材「ゴムメタル」を繊維状にして配合し、路面からの衝撃を緩和しつつ、しなりを生かしたバネのような加速感を実現した。

リムブレーキ仕様のラインナップは、ノーマル仕様のカーボネックスと、高剛性仕様のカーボネックスHRがあり、ノーマル仕様は組み合わせるフォークが、軽量で振動吸収性に優れたベントタイプ(重量320g)と反応性に優れるストレートタイプ(重量345g)から選べる。カーボネックスHRはストレートタイプのみ。

 
リムブレーキ仕様のカーボネックスは、ベントタイプとストレートタイプの2種類のフロントフォークが選べる。写真は320gと軽量で衝撃吸収性に優れたベントフォーク
リムブレーキ仕様のカーボネックスは、ベントタイプとストレートタイプの2種類のフロントフォークが選べる。写真は320gと軽量で衝撃吸収性に優れたベントフォーク
上1-1/8インチ、下1-1/2インチのテーパードヘッドを採用。軽量レーシングロードでありながらヘッドまわりの剛性が高く、優れたハンドリング性能とブレーキング性能を誇る
上1-1/8インチ、下1-1/2インチのテーパードヘッドを採用。軽量レーシングロードでありながらヘッドまわりの剛性が高く、優れたハンドリング性能とブレーキング性能を誇る
シフトケーブルやリヤブレーキケーブルは、ヘッドチューブ付近からフレームに内蔵される。リヤブレーキケーブルは日本で多い左レバーでの操作を考慮し、スムーズな取り回しになるように設計されている
シフトケーブルやリヤブレーキケーブルは、ヘッドチューブ付近からフレームに内蔵される。リヤブレーキケーブルは日本で多い左レバーでの操作を考慮し、スムーズな取り回しになるように設計されている
シートステーはシートチューブとの接合部付近が板状になったモノステーを採用。横幅はワイドだが縦方向には薄く、路面からの衝撃を効果的にいなす。芯材にはマイクロコアを採用し、優れた快適性を実現する
シートステーはシートチューブとの接合部付近が板状になったモノステーを採用。横幅はワイドだが縦方向には薄く、路面からの衝撃を効果的にいなす。芯材にはマイクロコアを採用し、優れた快適性を実現する
BB規格はプレスフィットBB86。シマノのコンポーネントなどが採用する24mmシャフトのクランクに最適化されている。シェル幅はワイドだが、BBまわりはガチガチではなく、しなりを生かしたバネ感のある走り
BB規格はプレスフィットBB86。シマノのコンポーネントなどが採用する24mmシャフトのクランクに最適化されている。シェル幅はワイドだが、BBまわりはガチガチではなく、しなりを生かしたバネ感のある走り
チェーンステーは横幅がワイドで縦方向に薄いオーバルプレスドシャフトを採用。横剛性を保ちながら縦方向の柔軟性を高め、快適な乗り心地と後輪の優れた路面追従性を両立
チェーンステーは横幅がワイドで縦方向に薄いオーバルプレスドシャフトを採用。横剛性を保ちながら縦方向の柔軟性を高め、快適な乗り心地と後輪の優れた路面追従性を両立

レース用機材としては今なお最高クラスの性能を誇る


同じ日本のマーケットでも、クルマに関しては日本車が圧倒的なシェアと存在感を示しているのに、ロードバイクに関しては日本ブランドのシェアはそれほど多くない。そんななか、存在感ではヨネックスは奮闘しているブランドのひとつだと思う。

ヨネックスは2014年、フレーム重量650gの超軽量ロードフレーム・カーボネックスで自転車業界参入を果たした。それまでラケットスポーツのイメージしかなかった同社の自転車業界デビューは、個人的にはかなりインパクトがある出来事だった。その後、Jプロツアーのキナンレーシングチームの選手たちや、山の神・森本誠選手をはじめとする強豪ホビーレーサーの活躍のおかげで、この数年の間にサイクリストには「ヨネックス=ロードバイクのカーボネックス」というイメージが定着したと言えるのではないか。

カーボネックスの歴史を振り返ると、もうデビューから4年以上経つのだと驚かされる。デビュー以来、乗鞍をはじめとするメジャーなヒルクライムレースで勝ちまくっているし、ニセコクラシックのような長距離レースでも結果を残している。2018年はカーボネックスの派生モデルである高剛性バージョンのHRが、全日本選手権も制した。この4年で欧米のブランドは続々とニューモデルを投入しているが、カーボネックスはこれらのバイクに伍して走っており、その実力は間違いなく今でも一線級だ。

カーボネックスの見た目は、オーソドックスという形容がまさにしっくりくる。BB規格はBB86で、ヘッドパーツの規格も下ワン1-1/2インチのいわゆるテーパードタイプで、奇をてらっていない。ヘッドチューブも短めで、レーサーが好む低いハンドルポジションも許容する。

しかも軽さに関しては、今もマスプロのバイクではトップクラス。見た目はいい意味で普通だが、実はめちゃくちゃ軽いというギャップに個人的にはそそられる。

実際に走り出すと、フレーム重量の軽さから来る加速の良さに驚かされる。しかし、丁寧にペダリングしないと、フレームのしなるリズムとペダリングがうまくリンクせず、加速が伸びない気がする。特にダンシングでやや乱暴にペダリングを踏み込むように加速すると、フレームのしなりを強く感じるためか、その傾向が強い。しかし、フレームがしなるリズムとペダリングがシンクロすると、フレームのバネ感が生かせ、ものすごく進むのが印象的だった。

最近の剛性過多気味のバイクは、多少乱暴なペダリングをしても力が逃げないため進むが、長時間走っていると脚へのダメージもある。カーボネックスがもつバネ感は、最近の軽さと剛性を高い次元で融合するタイプの軽量レーシングロードとは明らかに違う。速く走るにはそれなりのスキルも求められるが、バイクとじっくり付き合って慣れてしまえばなんとかなる。このしなりやバネ感は、加速時の伸びという形だけでなく、おそらく長時間乗ったときの脚のダメージの少なさという形のメリットとして現れるのではないか。

上りはこのバイクの檜舞台だ。圧倒的なフレーム重量の軽さは、ダンシングでバイクを振ったときにも感じられるし、上りでペダルを踏み込んだときにグンとバイクが伸びる感じでも味わえる。

フレームの剛性がないわけではないのだが、それよりもしなやかさが前面に感じられる不思議な乗り味だ。しなやかさは、ペダルを踏み込んだときのフレーム全体のバネ感という形でも現れるが、路面からの衝撃吸収性の高さという形でも感じられる。おそらく縦方向につぶしが入ったチェーンステーやシートステーの形状によるところが大きいのではないか。また、試乗車はフロントフォークがベントタイプだったので、その恩恵もあるだろう。

このバイクはあくまで超軽量レーシングバイクだと思っているが、実はグランフォンドやロングライドも十分守備範囲だと思う。マイクロコアを採用し、振動吸収性を高めたシートステーは、レーシングバイクとして類い希なる快適性ももたらしているからだ。

このバイクに死角はあるのか? ライダーによって合う合わないはあるかもしれないが、レースの機材としては今でも一級品だと思う。性能面での弱点を無理やり探すなら、“エアロでない”ことぐらいだろう。

スポーツバイクはレース機材ではあるが、趣味性の高い乗り物という側面も持ち合わせる。カーボネックスをそのような対象として見るなら、個人的にはフレームのグラフィックや色使いにもう少し色気がほしい。贅沢な要望であることは承知だ。たとえばフレームカラーやデザインパターンをいくつかの候補の中からオーダーできるようにするだけでもいい。自分好みのバイクが作れると考えるだけでも、愛車にしたいという欲求は高まるはずだ。ぜひ検討していただきたい。
 

spec.


「ヨネックス・カーボネックス」

フレームセット価格/45万円(税抜)

フレーム/カーボン
フォーク/カーボン
コンポーネント/シマノ・デュラエースR9000
ホイール/シマノ・RS81
タイヤ/パナレーサー・レースLエヴォ2 700×23C
カラー/ブルー×グリーン、レッド×ブラック、イエロー×ブラック、グラファイト
サイズ/XXS、XS、S、M

■浅野真則
実業団エリートクラスで走る自転車ライター。ロードレース、エンデューロ、ヒルクライムなど幅広くレースを楽しみ、最近はTTに精力的に取り組んでいる。海外のグランフォンドにも参加経験がある。ロード系の愛車は、キャノンデール・スーパーシックスエボとキャード10、スコット・アディクトの3台。ハンドル位置が低めのレーシングバイクが好き。
 

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