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荷重コントロールでビシッと曲がる!

コーナリングはコーナー手前で決まる!ねらったラインに乗せる
コーナー途中の変化に対応する
 

スムーズで早いこー名リング 荷重コントロールでビシッと曲がる!

「コーナーで膨らみすぎてしまう」「怖くてバイクを倒せない」など、コーナリングを苦手と感じる人は多い。本特集ではまず、コーナリングの基本動作を確認し、次にそのような動作をする理由や、コーナリング時に働いている力を力学的な視点から分析。
そこから見えてくるのは、コーナリングにおける荷重コントロールの重要性。
これを読めばいつもの峠がもっと速く、もっと安全に、そしてもっと楽しくなる!

text●小林徹夫(p38-43)/安井行生(p46-53)/本誌
コーナリングの基本手順



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コーナリングの基本をマスターする
コーナリングはコーナー手前で決まる!


コーナリングで最も優先すべきなのは安全に曲がること。そのためには基本的な事柄をいくつか守ればいい。まずはポジションをちゃんと取ること、ねらったラインどおりに走ること、周囲の状況をよく把握すること、ハンドルに寄りかからないこと、前ブレーキを中心にしてしっかり減速すること、頭を上げて視線を出口に向け続けること、カラダを緊張させないことなどに注意する。  最初はそんなに一度にできないと感じるかもしれないが、慣れてくれば自然とできてくる。また、簡単な事柄でありながら、実際にはできていない人がいることも確かなので、自分は大丈夫と思っているベテランも、今一度見直してみよう。
 ところで、コーナリングのうまい人と苦手な人の違いは、意外とコーナリングそのものよりも、コーナーに入る前の違いが大きい。うまい人はスピードが速い割に落車や事故の危険性が少ない。それはコーナー手前の準備段階に差があるからだ。
 うまい人は一見無謀に見えても、落車のリスクを最大限に排除して、安全マージンを自分なりにたっぷり取っていることが多い。無茶な突っ込みはしないし、無謀なスピードも出していないことが多いのだ。それはいくら速くても、落車や事故にあってしまえば今までの努力がムダになることがわかっているからだ。
 安全かつ速く走るためには、減速がしっかりできることがカギとなる。自分のスピードを自分の意志でコントロールできないほど怖いことはない。反面いくらスピードを出しても、自在にスピードを操れれば、いつでも余裕を持って走ることができる。コーナーリングとブレーキングは切っても切れない関係にあるわけだ。


1:状況把握
コーナーを速く曲がるためには、見えない先のことがある程度予測できなければ安心して進めない。優先すべきは安全で、その次に速さが続く。あらゆる状況を想定し、まず見える範囲で単純なコーナーなのか、複合コーナーなのかを予測する。出口の見えないコーナーに思い切り突っ込むのはテクニック以前の問題だ。ありえないことでも最悪の状況を想定すれば、とっさの場合でも対処はしやすい。 五感をフルに
働かせる

コーナーの手前では、カーブミラーや路面を見たり、風の強さを確認したり、耳を働かせたりと、可能な限り情報を得るようにする
上ってきた道から予測
コーナリングするには、行き当たりばったりの対処は危険。下りの路面状況やコーナーの傾向は、上ってきた道からある程度予測できる。下りが北側の斜面になる場合は路面が乾いていない場合もある
2:ラインを決める
路面状態や周囲の状況を確認したらラインを決める。一般道を走るときは、クルマがこないと思ってもアウト・イン・アウトのようなライン取りは考えずに、道なりに左側を走るようにするのが基本。対向車や後方の確認がしっかりできるならば、センターラインを越えない範囲でミドル・イン・ミドル(左コーナー)やアウト・ミドル・アウト(右コーナー)のラインを取ればスムーズな走りにつながる。 理想はアウト・イン・アウトだが
クローズドサーキットなどで、速く抜けることだけを考えるならば、アウト・イン・アウトが理想。ただし集団内では自分のラインを守ることを最優先。手前で外にあおるようなラインは禁物。またインに入るのが早すぎると出口で膨らんでしまいやすい
3:シフティング&ぶれーキング
状況を確認しライン取りを決めたら、そのラインが出せるスピードまで減速する。減速は手前の直線部分で終わらせ、コーナリング中にはブレーキングしないで済むのが理想。とくに入り口付近にグレーチング(排水溝の鉄ブタ)や落ち葉などがある場合は、その手前までに減速を終わらせておく。そうすればスリップの危険性はなくなる。最初は恐くないスピードまで落とすことが大事。まずはブレーキングによって荷重が前に行きすぎないように、少し腰を引き前ブレーキをおもに使って減速する。平坦路のコーナーでは立ち上がりを考えてブレーキング前にギヤを1~2枚軽くしておく。 五感をフルに
働かせる

コーナーの手前では、カーブミラーや路面を見たり、風の強さを確認したり、耳を働かせたりと、可能な限り情報を得るようにする
ブレーキングがしっかりできればコーナリングは難しくない。
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ねらったラインに乗せる
重心位置をニュートラなポジションに戻す
コーナー手前でしっかり減速し、適切なライン取りを決めることができればコーナリングは成功したも同然……とはいえ、ねらったラインどおりにバイクをコントロールできなければ元も子もない。また、キツいコーナーでバイクを倒さなければならないときは、前後輪のグリップが最大限に生かせたほうがいい。そのためにはまず、ブレーキング時に引いていた腰を元に戻し、重心をニュートラルな位置にすることが重要。コーナーに入っていくのはそのあとだ。
 ロードバイクが曲がり始めるために必要なのは、バイクを傾けること。曲がるためにはまずハンドルを切るのでは?と思われがちだが、通常、バイクが傾いていなければ、ハンドルを切ってもバイクは曲がっていかない(きわめて低速の場合は除く)。バイクを傾けることで傾いた方向に前輪が切れ込んでいき、曲がり始めることができるわけだ。
 基本的にコーナリングでは減速を直線部分で終わらせ、コーナリングの最中にはブレーキングは行なわない。視線は常に上げて出口を向くこと。ポイントは、視線の持っていき方とリラックスということを頭に入れておこう。
 バイクの進む方向は視線が支配し、曲がりは自転車の傾きが影響する。不要な力をハンドルに加えないために、体はリラックスして、外側のペダルに荷重をかけバランスをとる。細かなスピードとラインの修正はブレーキの当て効きやヒザの開き具合などで調整して行なう。カラダが緊張しやすい人は口を開いて息を吐き出すようにすると緊張しにくいということも覚えておこう。


重荷コントロールでビシッと曲がる!
基本はリーンウィズ コーナリングのフォームにはリーンウィズ、リーンアウト、リーンインなどいくつかのやり方があり、それぞれに特徴がある。しかしそれほどキツくなく、路面もいいコーナーではカラダとバイクの傾きが一直線になるリーンウィズが 基本。テクニカルなコーナーや路面状況によっては他のフォームを使い分ける 必要が出てくる(60ページを参照のこと)。
外脚荷重を意識曲がるためにはバイクが傾いた状態 になることが必要で、バイクが傾く と前輪は傾けたほうに切れ込む。傾 け始めたら外側のペダルを下にして 荷重をかけて、地面に押し付ける感 じにすると、横滑りに対応しやすく 安定感が増す。内側の脚が下がって いるとラインが安定しないばかりか、 傾けたときにペダルが路面に擦って しまうことがあり危険だ。 
ハンドルは切らない!?
とくに初心者の場合、曲がるときにハンドルを切ろうと意識しているように見えることがあるが、スピードが出ているときにはバイクを曲がりたい方向に傾けなければ曲がっていかない。最初はバイクを傾けることが怖いという人もいるが、頭を傾けずに外脚荷重を意識すれば安定して曲がれるのだという感覚をつかみたい。
基本はリーンウィズ コーナリングのフォームにはリーンウィズ、リーンアウト、リーンインなどいくつかのやり方があり、それぞれに特徴がある。しかしそれほどキツくなく、路面もいいコーナーではカラダとバイクの傾きが一直線になるリーンウィズが 基本。テクニカルなコーナーや路面状況によっては他のフォームを使い分ける 必要が出てくる(60ページを参照のこと)。
ヒザの開きで調節コーナリングのフォームにはリーンウィズ、リーンアウト、リーンインなどいくつかのやり方があり、それぞれに特徴がある。しかしそれほどキツくなく、路面もいいコーナーではカラダとバイクの傾きが一直線になるリーンウィズが基本。テクニカルなコーナーや路面状況によっては他のフォームを使い分ける必要が出てくる。キツいコーナーじゃないのに……ヒザを大きく開くのはコーナーがキツいときに重心を内側に入れるためで、普通のコーナーでヒザを極端に開く必要はない。ヒザを開くことでバランスが取りやすい感じがあるが、空気抵抗は増えてしまう 
ラインを決めたらコーナーの先を見てバイクを倒す。まずは基本フォームのリーンウィズを身につけよう。
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コーナリング中は視界が悪く、とっさの対応に迫られることも多い。直線路であれば進路変更は重心移動で済ませられるし、視界が効くので対処しやすいが、コーナーではバイクが傾いているため急激な進路変更は難しく、重心移動だけでは対応できないことも多いので、前後のブレーキをどう使うかも重要になる。
 ブレーキの制動力は前が圧倒的に強い。ただしむやみな前ブレーキは転倒のリスクがあり、その恐怖心から初心者はリヤを使いがちだが、これは不必要なスリップにつながる。リヤは微妙なコントロールのための当て効きに使うようにする。
 また、前ブレーキはより短時間で減速できるので、コーナー途中でバイクを起こして一気に減速し、再度バンクさせてコーナーを抜けることもでき、前ブレーキの使いこなしはコーナー途中でも重要なカギを握る。
 重心移動やスピードコントロールをやりやすくするには、リラックスしたポジションを取ることが重要になる。そのためには、若干余裕があるセッティングのほうが、恐怖心が強い人にはいいかもしれない。
 また、コーナー手前で後ろからクルマが迫ってくることもある。この場合は手を上げてクルマにしっかりアピールしたあと、先行しながらカーブを抜け、そのあとでクルマをやり過ごしたほうが急ブレーキの必要もなく安全だ。コーナーまで距離があり、余裕を持って減速できるなら、コーナーまでにクルマを追い抜かせたほうがいいだろう。道が狭く停止する必要がある場合は、カーブの途中は視界が悪く危険なので、直線部分で止まるようにすること。休日のクルマは峠の道に慣れていないことも多いので、平日以上に注意が必要だ。
当て効きだけでは減速が不十分なコーナーや、途中に溝などがあってバイクを傾けたままでは危険なこともある。そんなときには頭を切り替え、曲がるのをいったんやめてバイクをまっすぐに立て、減速してからすぐさまバイクを倒し込んで曲がっていくしかない。 溝の上でのブレーキングはNG
 
コーナーに入る前には適切だと思っていたスピードが、コーナーに入ってみたら予想以上に深くてオーバースピード! そんなときはあわてずに当て効きでスピードをコントロールする。バイクも傾いているので、通常のブレーキングほどには力を入れず、リムサイドをこする程度の当て効きで十分だ   十分な減速でコーナーに入れば問題ないのだが、突っ込んでから小さな変化に気づいて、ラインを若干修正する必要が出てくることもある。その場合は、上半身がバイクよりも内側に傾くリーンインで対処しよう。バイクが起き上がる分グリップが増し、より小さな回 転半径で曲がれるようになる
単純なコーナーとわかっているなら問題ないが、峠や山間部では次々にコーナーが待ち構えている。1つひとつのコーナーをすべてミドル・イン・ミドルと決めつけて走ると、次のコーナーにムリがでることもある。出口付近で早めに次のコーナーを確認し、効率的に抜けられるライン取りを考えていこう。ただし速いからといってS字コーナーでセンターラインをはみ出すのは厳禁。出口でペダリングを再開するときは、ペダルが擦らないようバイクが十分に起き上がってから
 
コーナーを抜けたら急に風がコーナーに入る前と出口では、進 む方向が変わるので風があるとき には要注意。とくにリムハイトの 高いホイールでは不意にあおられ ると一気に1m以上も流されたり、 ハンドルを取られたりすることも あるので、風向きはあなどれない。 風が強いときはそのことを念頭に 置いておくだけでも、いざという カラダが緊張していると・・・コーナーに入る前と出口では、進 む方向が変わるので風があるとき には要注意。とくにリムハイトの 高いホイールでは不意にあおられ ると一気に1m以上も流されたり、 ハンドルを取られたりすることも あるので、風向きはあなどれない。 風が強いときはそのことを念頭に 置いておくだけでも、いざという
緊張すると、いざというときに対処できない。
ココロもカラダもバイクにも余裕を持たせよう!
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