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俺チャレ定番コースガイド

1.東京- 大阪 / 2.東京- 仙台 / 3.伊豆半島一周 / 4.房総半島一周 / 5.名古屋- 糸魚川 /
 国道1号線起点からということにこだわって、日本橋からスタート。都内の国道1号線は何度か折れ曲がるため快適とはいえないが、神奈川県に入るころにはスムーズに進むようになる。ほどよいアップダウンを繰り返してから海沿いの平坦な道に変わり、やがて小田原以降では箱根越えという核心に入る。予想を裏切ることなく箱根峠は上りごたえ十分。最高所までたどり着いたときはかなりの達成感が待っている。また三島市へ入っていく下り坂では、苦労が報われるほどのハイスピードのそう快感を味わえること間違いなし。で、もう1つの核心部「静岡」に突入する。この界隈は体力的には問題なく走れるのだが、バイパスが多くて自転車の走れる道が限られるのが難点。まず三島市では県道380号線に逸れて海沿いの東海道へ。そして富士川を渡ったあとでは、由比の“走行可能な道探し”に悩まされるだろう。バイパスから外れて交通量の少ない街道や、バイパスの側道を走ることになる“なんとなくの勘” をフル稼働させ、それと不親切な標識に従っていれば、やがて清水にたどり着く。

 昨年のゴールデンウイークに神戸から鎌倉までのロングライドにチャレンジ。600kmの道のりを41時間で走破した指澤氏。その間の睡眠時間はなんと1時間10分。本人にとってやはり最大の敵は睡魔だったと言い、それでも途中で30分ずつに分けてとる程度に留めた。また防寒着はコンビニをフル活用することを前提として最小限かつ最軽量に。食事はコンビニのおにぎりを常に持って走るようにして、次のコンビニが現われたところでそれを食べてまた補給ということを繰り返す。気分転換として回転寿司などを利用した(待ち時間ゼロ)。また道路の環境では、静岡県内の道が迷いやすいことを指摘している。「気づいたら逆走しているようなこともあり、そうなると精神的にもつらい。それとバイパスに迷い込みやすくて仮に入ってしまうと引き返すこともできず、料金所で厳重注意を受けることになる」。国道1号線では道路上に東京までの距離が頻繁に表示されており、その距離が縮まっていくことにだれもが喜びを感じるだろう。指澤さんが個人的に達成感を得られたのは浜名湖を渡るときだった。ちなみにこの旅ではスタートの神戸でもろもろの荷物と輪行袋を自宅に送り返している。途中リタイアが許されない過酷なチャレンジでもあったのだ。
 路面を照らすことのできるハイパワーのライトをハンドルバーに、地図やサイクルコンピュータを確認できる小型ライトをヘルメットに固定するのが使いやすい。走行中に身につけているのは財布程度。あとの荷物はシートポストに装着するキャリアで運ぶのが定番となっている。シューズは長時間履いていてもラクなMTB用のSPDシューズがなにかと便利。カメラはトップチューブに付けたバッグへ。小物も工夫する。たとえばバルブアダプターを携行して街の自転車屋でもフレンチバルブのチューブに空気が入れられるようにし、必携すべきチェーンオイルは目薬のパッケージに入れてコンパクトに。ドリンク類はそれほど凝らないが、紙パックの紅茶なら100円で購入できるし糖分も摂取できてよいとのこと。また、ベルは万が一のため装着しておこう。


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指澤竜也さん
神戸、名古屋、鎌倉という都市に住んできた経験から、それらをつなぐ国道1号線(一部2号線)を走ることに興味を持つ。気ままに走れるソロのロングライドを好み、自転車の種類を替えるなどして多彩なチャレンジを続ける。普段の生活が夜型のため夜通しのライドも気にならず、むしろ得意分野である。
 静岡から浜松までは国道1号線を使わず、国道150号線を使う。これは頻繁に現われるバイパス(自転車不可)を避けるために、距離は長くなってもスムーズさを優先させるため。静岡に入るころには国道150号線の標識が目立ち、それに従って進む。しばらく快適な海沿いの道が続くが、県道416号線(用宗街道)との分岐で海沿いの道を選ばなくてはならない。でもそこは海のダイナミックさを肌で感じられる大崩海岸のワインディング。旅のだいご味を感じられるポイントなのでぜひ堪能したい。峠を越えて国道150号線に合流すると、あとは浜松まで平坦路が続く。浜松から国道1号線に合流するが、ここは道の幅が広くトラックが勢いよく飛ばしているから恐ろしい。浜名湖、そして潮見坂を越えたらいよいよ愛知県。豊橋、岡崎、安城の各都市はやや混雑するが、その間の道は勾配もなく交通量も適度となっている。名鉄線(鉄道)と並走するのも心地よい。名古屋に入ると交通量にへきえきするので気持ち&体力に余裕を持たせて走ろう。

 休日にツーリングを楽しんでいるといっても、せいぜい100㎞程度。それを2日間で500㎞以上走るというのは、「そりゃ無謀だよ」とまわりから言われても無理のないものだった。で、その期待を裏切ることなくボクは三重県に入った417㎞地点でリタイアした(どーぞ、みなさん笑ってください)。大阪、遠かったです。あとになって痛感したのが「もったいないなー」ということ。本当に自分を限界まで追い込めたのか、本当にやめるべきだったのか、そんな感情があとになってわいてくるのだからたちが悪い。さて実走してみた感想だが、国道1号線のセルフ耐久ランは「体力のみならず神経もすり減らしながら走らなくてはならない」ということだ。真横を突っ走る大型トラックに怯え、バイパス入り口という落とし穴も巧みにかわさなくてはならない。夜に街灯がないところもある。だから心身ともにタフさが必要なんだと思う。あとアドバイスできるとすれば、決して無茶をしてはいけないということ。公道である以上、不測の事態も考えられ、そこには歩行者やほかの自転車もいる。そこをギリギリいっぱいの自分でいるのはどうかなと思った。だからせいぜい1~2割は自分のキャパを残して、休むときは休む。みなさんくれぐれも安全走行でお願いしますね。
 だいたい"ルート1"というこの響きにボクたちは心をわしづかみにされる。ただサイクリストにとっては残念ながらそれほど快適とはいえない道ということは断言できる。だって考えてもみてほしい。東京、名古屋、大阪を結ぶ大動脈なのだから交通量からしてハンパではないのだ。さてその国道1号線にはときおりバイパスが現われるが、もっぱらそこは自転車が通行禁止で、またトンネルやちょっとした高架までも通行が禁止されている。進入を防ぎたいという心理はわからないでもない(たしかに危険だ)が、迂回路の1つくらいは表示しておいてほしい。そんなわけでやむなく国道1号線から外れなくてはならない場所が頻繁に出てくる。地図でそれを確認できれば問題ないが、地図にも載らない細い道になってしまうと不安になるだろう。そんなときには自分の勘を信じてその細い県道(旧東海道であることが多い)をぐいぐい進むと意外にもまた国道1号線に戻ることができる。あとは地元の人を見つけて道を訪ねるのが最良の方法だろう。

 夜間の走行にはそれなりの知識、装備、経験が必要だろう。日没をポジティブに捉えるかネガティブに捉えるかだが、指澤さんいわく夜は「交通量も減って、涼しくて快適」となるのだという。一方、若月の場合は怖くてビビりながら走ったので極端にスピードが落ちた。よしあしの判断はできないが、結局若月は深夜の5時間をシュラフの中で過ごした。もちろん効率を求めるならば夜通し走り、コンビニの壁にもたれて少し仮眠する程度のほうがよいが……。さぁ、あなたはどっちの方法でトライする?ちなみに夜は眠くならず、睡魔が襲ってくるのは朝方だという。あとシュラフのような眠るための道具を携行することはけっこうな負担にもなるので、それもどう割り切るか悩むところだ。

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若月武治さん
山好き、旅好き、MTB好きなフリーランスライター。これまで1日で走った距離は、小学生時代の浜松~静岡を往復した約180km。あのころは若かったなあと振り返りながら今回は同じ道を一部たどる。トレックのカーボン製MTBに1.25の細タイヤを履かせてトライしたものの、たび重なるパンクにより途中リタイア。悔しいです。
 名古屋市内は意外に広く、なかなかその大都市部を抜け出せないで苦労する。とくに大型交差点における"左折専用レーン出発"は冷や汗ものだ。それでも木曽、長良、揖斐の三河川を渡るといよいよ三重県。道も走りやすくなって気分も盛り上がっていく。四日市、鈴鹿、亀山を過ぎるとそこからはいよいよ西の核心・鈴鹿峠への上りだ。長く続く坂は疲労した体にはこたえるが、峠自体はそれほど規模が大きくはない。ピークはトンネルになっていて地味である。 ここから始まる滋賀は国道1号線で最も走りやすい県で、土山、水口あたりは牧歌的な風景の続く道を快走できる。そんな道も草津くらいまで来ると都会的なムードになって、京都までは我慢の走りが求められるだろう。京都から大阪までは、さらに我慢が必要だ。国道1号線は交通量も多く、数カ所で自転車進入禁止の高架が現われる。代替の道があればよいのだが国道171号線も快適とはいえず、淀川沿いはクルマ止めのゲートが走りを邪魔する(夜はとくに怖い)。国道1号線は守口を過ぎ、今市から城北公園通りを使うと大阪市内までは快適だ。

 東京-大阪の区間は何度か通ったことがあります。ゴールにもよりますが、だいたい2日~3日で走りきる計画で行くといいと思います。
  数日にわたって走行するときに注意するべきポイントは、その日にどこまで走るのか見極めることです。16時~ 17時くらいにいったん立ち止まり、地図を見て次の街まで行くのか、それともココまでにしておくのか判断するといいです。とくに次の街までに峠がある場合はなおさらで、峠で夜を迎えないように判断することが大切です。東京- 大阪のコースだと、夜泣き石で有名な島田と掛川の間は判断のポイントになります。島田に着いた時間をみて、掛川まで行くか判断するといいでしょう。もう1つ大切なのは、心に不測の事態を楽しめる余裕を持つことです。パンクなどのトラブルはもちろん、コース終盤になればゴールまでもうすぐだ!と思い込んでしまうことがあります。ところが走っていくともっと距離があって心が折れるなどの精神的な問題が起こるからです。このコースなら最後の上り、鈴鹿峠を越えたあとも大阪まではまだ距離は110km以上あります。しかも交通量の多い大津、京都を通っていくので。疲れた心に油断は禁物です。そのうち着くだろう、と気持ちを切り替えて大阪を目指します。

パンクは最も可能性のあるトラブルだ。基本的には交通量の多い国道はガラスや鉄クズなどは道の端に寄せられ、そこが自転車の通り道になっている。しかもボクは今回ちょっとでもバイクを軽くしたいと考 えて、超軽量チューブを使っていた。そんなふうにパンクのリスクは増していった。次回やるとするならばそれなりに厚みのあるチューブをつけてから臨むだろう。ちなみに予備のチューブは最低2本持つべきだということをあとから知った。情けないです。実際にパンクを経験してから痛感したが、パンク修理は気分がなえる。できれば、CO2ボンベなどすぐにパンク修理に対処できる用品を予備に持ったほうが、テンションが一挙に落ちないで済む。

  路面を照らすことのできるハイパワーのライトをハンドルバーに、地図やサイクルコンピュータを確認できる小型ライトをヘルメットに固定するのが使いやすい。走行中に身につけているのは財布程度。あとの荷物はシートポストに装着するキャリアで運ぶのが定番となっている。シューズは長時間履いていてもラクなMTB用のSPDシューズがなにかと便利。カメラはトップチューブに付けたバッグへ。小物も工夫する。たとえばバルブアダプターを携行して街の自転車屋でもフレンチバルブのチューブに空気が入れられるようにし、必携すべきチェーンオイルは目薬のパッケージに入れてコンパクトに。ドリンク類はそれほど凝らないが、紙パックの紅茶なら100円で購入できるし糖分も摂取できてよいとのこと。また、ベルは万が一のため装着しておこう。

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奥村悠大さん
東京から北海道、四国、九州など、どこに行くにも自転車を使う。大学生のときに距離への挑戦に目覚め、毎年夏になると1人自転車で3週間ほど距離をかせぎに出ている。現在は東京でメッセンジャーをしているが、やはり夏になると仕事を休んで走りに行っている。

長距離を走るときはこの乗り慣れたアンカーRH600で行きます。カーボンフレームも持っていますが、乗っている期間がアンカーのほうが長いので、こちらをチョイス。何が起こるかわからない長距離は乗り慣れた自転車を使うのがいちばん。それと軽量化は自転車ではなく、荷物を工夫するほうが走っているときにトラブルが少ないです。

 仙台までのルートはいくつかあるが、"俺チャレ"も人それぞれのモチベーションでルートを選ぶのがいいだろう。海岸線沿いの国道6号線は夜間と朝方にスピードを出すクルマも多いので、今回は白河経由の国道4号線のルートを紹介したい。
  スタートは日本橋。都内を抜け、前半はなんてことのない一般道だが、下間久里の交差点からは新しくできたバイパスのおかげで路肩も比較的走りやすい。そのかわりクルマもスピードを出しているので注意が必要だ。交差点を左の日光街道に入っても宇都宮の先で合流するが、バイパスのほうが断然走りやすい。宇都宮の先からは東北本線と並行して走る一車線の道。周辺は田んぼが広がっている。
  矢板の先から徐々に標高が高くなり、那須塩原駅から白河までは上り区間が多くなる。白河を過ぎると下り基調の平坦路が郡山、二本松、福島と続く。各町に入ると渋滞が起き、抜けるまで時間を要する。郡山はまっすぐ行くと市内に入る。遠回りになるがバイパスを走るのもあり。
  国見付近はまた道が細くなり、上り区間がある。白石から名取までも細かいアップダウンの山間部の道が続く。人家が
多くなり、平坦路に入れば仙台は近い。仙台は東北最大の都市だけあって、交通量も多くなる。目指す青葉城は仙台駅から西の青葉山の上にある。最後のヒルクライムの先に荘厳な石垣が見えてくる。自分の脚で走り切ったあとの仙台の町の眺めは格別のはずだ。
 吉田さんは、「機材選びは長距離走行でいかに疲れずにラクにこげるかがポイント」という。「サドルはいつもより5㎜下げて、トップチューブに擦れるぐらいヒザを入れてこぐと故障しにくいです。ペダルも2㎜シムを入れて外に出るようにします。ハンドルはブラケットを持つことが多いので、緩衝材のゲルを入れたり、ハンドル上を平らにし、幅も少し広めだと、ポジションの自由度が増して呼吸も楽です」
  また、「ギヤはほとんど変えず、同じ回転数を維持するように心掛けている」という。吉田さんの友人はシングルスピードに乗って、上り、平坦、下りともに同じリズムでこぐスキルを向上中。ギヤがないことでトラブルも少ないのがメリットだ。「チェーンのたわみが少ないのでパワーがよりダイレクトに伝わる」とのこと。「DHバーはなくてもいいですが、少しでも速く走りたい気持ちを高めるために付けています。体勢がラクなように高めにセッティングします。ただし、手首をひねるようなタイプは長距離走行には向きません」。荷物は軽い物以外は背負わず、荷物が多いときはリヤキャリヤを使用

 
 だれでも迷わずに仙台まで走れるのが国道4号線をとったルート。景色の変化などは望めないものの、仙台までひたすら走るのには最適なルートです。埼玉県から栃木県に向かう新4号線バイパスは、日光街道を行くより全然速いのでオススメです。宇都宮を越えたあとの矢板周辺は1車線になり渋滞になることもあります。新幹線の高架下をくぐった那須塩原過ぎからは、またバイパスとなり距離を稼ぐことができます。
  昨年走った際は横浜スタートだったので白河で夜を迎えました。主要道とはいえ白河付近などは夜間走るのは危険です。雨も降っていたこともあり、そこで野宿して休みました。その先の郡山は左に行くとバイパス、まっすぐ行くと市街地です。どちらでも先で合流しますが、バイパスのほうが渋滞を回避できます。郡山を過ぎて二本松辺りから福島辺りまでは走りやすいバイパスですが、下り基調なのでスピードの出しすぎに注意。福島市内を越えて阿武隈川を渡ると、その先からは快適な田舎道です。国見あたりに少し上り区間があり、白石までも走りやすいです。最後の名取から仙台市内に入るまでは交通量が増えるので少し時間がかかります。
  仙台までのルートはそのほかに水戸を経由する国道6号線のルートもあります。夜間と朝方にクルマがかなりスピードを出していますが、こちらを選ぶのもあり。また、水戸から国道118号線を使い大子町、棚倉へ抜けるルートは田舎の快適な道です。

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吉田泰弘さん
かれこれ20年以上も前からの本誌読者。昨年の夏に横浜~宗谷間を約1週間かけて走った際に仙台までのルートもとった。仙台行きは数しれず、国道6号線ルートや茨城、福島の県道も知り尽くすツワモノ。そのほかに鹿児島行きなどの長距離ランの経験もあり。

宗谷行きに使用したのはアンタレス・カーボン205ロード。ホイールベースが短く剛性があり、少ない力でより速く走れるのでチョイス。ダンシングもしやすいので、短い上りが多いバイパスでは重いギヤを使って一気に上るスタイルに向いている。ちなみに仙台までは一度もインナー36Tには落とさず、50T×11-23Tで走り切った。

「お宮の松」で有名な熱海をスタートし、伊豆半島を時計回りに一周する。コースは全体的にトンネルが多いので前後ライトは忘れずに。前半は国道135号線がメイン。東伊豆、宇佐美、伊東、熱川、稲取と名だたる温泉地を通過していく。伊東の先で一時国道を離れ川奈へ。有名な川奈ホテルゴルフコースの横を通る。稲取を抜けると早咲きの桜で有名な河津。2月末~3月初旬ならば満開の桜が。下田からは135号線を引き継ぎ国道136号線を走るが、下賀茂へ向かわず国道をそれて石廊崎へ。石廊崎灯台は行程こそまだ半分だが、達成感にひたれるおすすめポイント。西伊豆に入れば交通量も少なく走りやすい。土肥からは国道と別れ海岸沿いを走る。土肥、戸田、大瀬崎では晴れていれば港の先に富士山がそびえる絶景が楽しめるだろう。内陸に入ると現われる最後の難関熱海峠は、上りよりも急勾配の下りが要注意。スピードの出しすぎに気をつけ、落ち着いてゴールの熱海駅へと向かおう。

伊豆半島に限らず、半島一周ツーリングには時計回りで走るのがオススメ。なぜなら、海側の車線を走ることになるので景色が存分に楽しめるからだ


 「まずはチャレンジするための体力レベルが100㎞を平均時速25㎞で余力を持って完走できること。標高の高い峠はないのですが、意外とレベルは高いです。大きな丘越えが連続するのでトータルの標高差は峠を3~4つ越えるくらいのレベルがあります。そのぶん得られる達成感は大きいです。また、走る時間については、可能な限り早朝にスタートすることをおすすめします。なぜなら夕方以降、日が暮れる前くらいの時間帯は体力が落ち、視界が十分でなく、疲れで注意力が落ちているからです。後半1時間のペースアップより1時間早いスタートのほうがいいことを肝に銘じてください」。また、後半の疲労対策について、オススメはクエン酸! 長距離のライド後半では甘いものを食べても疲れが回復しない、クエン酸など疲労低減効果を持つサプリメントが効果を挙げるのだそうだ。最後に食事についても伊豆ならではのアドバイス。「お昼はせっかく伊豆に来ているのだし、地元の海の幸を使った定食がいいと思います。栄養バランスもいいし、楽しみにもなりますよ」。


西伊豆では河口のある湾にしか集落がないので、休憩や補給などの地点の距離が離れている。休憩したいと思ったら迷わず休んだほうがいい



最後に現われる唯一の峠、熱海峠。勾配はゆるやかだが、体力的に厳しいなら迷わず三島か沼津へ抜けて輪行して帰ったほうがいい

伊豆半島にはトンネルが多いうえに路肩が狭い道が多い。前後ライトは必需品で、もし通行できる旧道があればそちらを選択してもいいという。また体力に余裕があって注意力もあるうちに交通量の多い東側を走り抜けてしまったほうが安全面においてもいい
(左)鍋谷 治さん
(右)磯部義孝さん

ピコリバイシクル、アトランタ所属。鍋谷さんは30歳のころにBR- 1で走っていた強豪で、ロングライドは練習で長距離を走っていたら得意になった。磯部さんは青森から自宅の大磯まで"無睡ライド"を敢行、91年9月号のサイスポに投稿した経験を持つチャレンジ好き。
鍋谷さんのバイク「クォーク」は、ホビーレーサーとしても有名なビルダー、細山正一氏にロングライド用にオーダーしたスチールバイク。ダンシングを多用するタイプの鍋谷さん、その挙動にはこだわりがある。「少しの違和感でもロングライドは影響が大きいので、自分の走りにマッチしたバイクを作るにはオーダーがいちばんです」とのこと。



前半までのコースでリタイアの有無を考えるならば下田までにする必要アリ。西伊豆には電車が通っておらず、アクセスが悪いからだ

石廊崎はぜひ訪れてほしいと磯部さん。達成感が大きいこと、その達成感がその後の頑張りにもつながるからだという


 コース全体として大きな峠はなく、何カ所か丘を越えていくところが登場する。大半は海岸沿いを走っていくので、風向きによっては楽にも難しくもなる。千葉ポートタワーをスタートし、国道126号線で東金方向へ。路肩がほとんどないので走行には注意が必要。台方あたりから道は左へとカーブして道幅も広がり交通量も多い。そのまま銚子方向へ進んでいき、八木の交差点で九十九里方面へ。ここからひたすら海岸線を南下するが、海はところどころで見えるくらい。夏場に海水浴客で道路が込む。国道128号線に入り、御宿あたりからアップダウンとトンネルが現われる。国道410号線に移るといよいよ房総半島を東京湾へと回り込んでいく。途中にある野島崎には灯台があり、日本最古の8灯台の1つだ。布良の先で国道から平砂浦に進むと南国ムードたっぷりな道が続く。館山を過ぎるとふたたびトンネルをいくつか抜ける。木更津を通り日本有数の工業地帯を過ぎるといよいよゴールも近い。
 
今は自転車の製造をやめてしまったソフトライド社製、パワーV。もう10年以上前のモデルだ。トライアスロンバイクとしての知名度が高い。カーボンでエラストマーを挟んだ構造のビームによりサドルへの振動を抑える機構を持つ。タイヤはあえてチューブラーを選択。理由はパンク修理でのリスクを減らしたいため。

 コースはいたって平坦。上りと言っても何㎞も続くようなものはない。逆に言えば下りで休めるところはないので、ペース配分が完走のカギを握っている。道が平らなのをいいことに序盤で飛ばしすぎると、気温が高くなったときに疲労で走る気力をそがれてしまう。また、場所が海水浴に行くようなところなので日焼け対策は万全にしよう。何カ所も景勝地を通過するので、走りながら楽しむことができる。距離を短くしたい場合のショートカットポイントは、東金からまっすぐ九十九里浜まで行ってしまうパターンと、国道128号線と410号線の分岐でずっと128号線を進み館山まで抜けてしまうパターンがある。九十九里浜にたどり着いたなら、ちょっと立ち止まって浜辺まで行ってみよう。ビーチの向こうにはでっかい海が広がって、思わず飛び込みたくなる! 補給ポイントは千葉から九十九里浜にかけてはとくに問題ないが、勝浦から鴨川にかけての疲れてくるあたりにタイミングよくコンビニが現われないので気をつけよう。それと終盤の工業地帯を抜ける道路はトラックの通行量が多いため、路肩の状態が悪い。疲れた終盤にパンクしないよう、集中して走り抜けよう。


日本の道100選に選ばれた房総フラワーラインで房総半島を回り込んでいく。ここが関東地方か、と思う雰囲気を楽しめる
   
台方インターチェンジ。東金九十九里道路へ行くクルマとの接触に気をつけて直進。その先で道が左にカーブしていくと海岸と平行になる
工業地帯を抜ける道は広くていいのだが、路肩はいろいろなものが落ちているのでうっかり踏んでパンクしないよう気を使うことが大切だ 50㎞にわたる浜辺に沿って、ひたすら南下する。海水浴シーズンは道が込む。休憩するならコンビニで食料を買って浜辺で食べよう!
中島丈博
今年からサイスポ編集部に入ったペーペー。自転車歴は7年。よく友人と思いつきで目的地を決めてツーリングに出かけていた。房総半島には、これまた「300km走ってみたい」という単純な思いつきで走りに行った。途中での観光よりも遠くに行き着くことに喜びを覚える。



八木の交差点を右折して飯岡漁港方面へ。ちなみに交差点に八木の文字はないので九十九里浜の文字を頼りに進もう。いよいよ太平洋とご対面だ



九十九里浜が終わると、道の雰囲気が変わる。小さな上りやトンネルが現われ、補給ポイントが減るので注意


 名古屋-糸魚川コースは、かつて名古屋市のサイクルショップ・ズノウチューブが開催していたスーパーロングライドイベントの舞台だった(現在ショップとしてはイベントは行なっていない)。総距離335km、アップダウンの激しいタフなコースだ。
  スタート地点は名古屋市の名城公園。東山動物園前を経て、古戦場でおなじみの長久手町に入り、猿投グリーンロード(有料)で飯田街道の宿場町・足助へ。国道153号線でアップダウンを繰り返すうちに長野県へ入る。
  この先はコース最高地点の治部坂峠に向け、険しい上りが続く。峠を越えると、10km以上も続く長い下りが待っている。
  国道沿いにさらに北上し、飯田市を抜けて駒ヶ根市へ。このあたりはアップダウンが多く、脚を使わされるが、天気がいいと木曽駒ヶ岳を一望できる。
  伊那市を過ぎて、塩尻・松本両市にかけては、交通量が急増する。松本市街を抜け、国道147号線に入ると、しばらく見通しのよい直線道路が続く。ゆるやかな上りになっており、向かい風が吹くことも多い隠れた難所だ。
  大町市からは仁科三湖のひとつ・青木湖の畔に向けて高度を上げていく。この先の白馬は、体力や時間と相談して、糸魚川まで行くかリタイアするか決断するポイントだ。
  栂池高原を過ぎると、新潟県境も近い。新潟県に入れば、糸魚川まではほぼ下り基調。ゴールの糸魚川駅まで一気に下ろう。

 長距離を走るとき、出発前の悩みの1つがウエア選び。アップダウンの激しいコースを走ることが多いので、暑さ寒さで不快な思いをすることも少なくない。吉岡さんのロングライド仲間・山田篤さんが、かつて名古屋- 糸魚川コースを走った際には「走行中の最高気温が25℃、最低気温が5℃なんてこともあった」と言う。
  こんなときの服装はどうすべきか?「冬のウエアと夏のウエアを両方用意して、途中で着替えるのがベスト。それが無理なら、半ソデの上下にレッグウォーマーとアームウォーマー、レインジャケットを組み合わせ、足元はレインシューズカバーで守るのがいいのでは」と山田さん。雨具と防寒具を兼用することで、荷物を最小限に減らすアイデアだ。


 名古屋-糸魚川は、全体的にアップダウンが連続する厳しいコースですが、厳しいのはやはり最高地点の治部坂峠への上り。とはいえ、このあたりはまだ序盤なので何とかなるでしょう。
意外にきついのは、大町方面に向かう国道147号線。直線道路で平坦に見えますが、じつはゆるやかな上り。しかも向かい風が吹くことが多いんです。疲労がピークに達するころでもあるので、マイペースを保って走るのがコツです。
名古屋-糸魚川のロングライドをショップのイベントとしてやっていたころは、「335kmを19時間以内に走る」という大枠の時間設定がありました。スタートは午前0時、糸魚川ゴールの最終時間が午後7時でした。
所要時間は速い人でも11時間以上。長丁場になるので、補給は重要です。とはいえ、コースのほぼ全域にまんべんなくコンビニなどがあり、補給ポイントには事欠きません。1人で走る場合は、必要以上に荷物を増やさないために最低限の補給食だけ携帯し、道中は補給しながら走って必要な分を買い足していく―というのも1つのアイデアだと思います。
 携行品では、明るい前照灯とフラッシャーは必須アイテム。深夜・早朝の暗い時間帯に走る可能性も高いですし、長野・新潟県境周辺のトンネルが続く一帯は、悪天候の場合は昼でも薄暗いからです。なお、トンネルは、時期によっては雪解け水で路面が濡れていることも多いので注意しましょう。


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吉岡英一さん
2001年にロードレーサーを購入。名古屋市のサイクルショップ・ズノウチューブのイベントで浜名湖一周や知多八十八カ所巡りなどを経験したあと、2003年に名古屋-糸魚川に初挑戦。超ロングライドに目覚める。奈良県サイクリング協会主催の「山岳グランフォンドin吉野」には、毎年スーパーロングコースに出場し続けている。
ライトスピードのチタンフレーム・ボーテックスは「乗り味がマイルドで、長距離を楽に走れる」。コンポはカンパニョーロのレコード&コーラスの2×10S仕様。フロントは52-39T、リヤは13-26Tだ。最近チューブレスタイヤ対応ホイールを購入。「パンクのリスクの少なさ、乗り心地の良さはロングライド向き」と大絶賛する。