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自転車生活「ワザあり!」大辞典 メカニック編

スローパンク:ゆっくりと空気が抜けていくパンクのこと。「走っていて、気がついたら空気圧が減っていた」という現象がこれに当たる。いったん空気圧が低くなっても、空気を入れるとある程度走れるときもある。原因は、タイヤに異物が刺さり、中のチューブに微細な穴が開いていることが多い。この場合、異物を取り除くと一気に空気が抜けることがある。そのほか、バルブ不良、バルブ根元部分の亀裂、チューブの劣化などが原因のことも。
いまさら聞けないパンク修理の極意
特別な裏ワザはなし 基本的な技術の積み重ね
スポーツバイクに乗るならばマスターしておきたいパンク修理。だが、たいていは出先でパンクに見舞われるため、恐れている人が多い。ワークショップ「モンキー」店主今泉紀夫さんにパンク修理が簡単にできる裏ワザがあるか聞いてみた。
「自転車整備全般に言えることなのですが、パンク修理についても特別な裏ワザはありません。すべては基本的な技術の積み重ねです。あえて挙げるとすれば、いろいろやってみて自分なりのやり方を見つけるのが裏ワザでしょうか。もしパンク修理をやったことがない、もしくは苦手だという人は、事前にチューブ交換だけでもやってみましょう」
たしかに出先でパンクするとあわててしまうが、自宅での予行演習なら落ち着いて作業できる。あらかじめうまくできないところを練習しておけば、いざというときの不安が少なくなる。
 さらに今泉さんは続ける。「工具や補修用品にこだわる人は意外に少ないですね。タイヤレバーやポンプ、パッチなどは、種類の違うものを試してみると使い勝手の違いがわかります。自分が使いやすいものを携行すると作業がグッと楽になり、確実性も増します。個人的には、テーピング用のテープをつねに持っています。本来はけがをしたときに使うのですが、タイヤを補修したりチューブに巻いたりできます。ほかにも自転車の応急処置で重宝します」
 では実際に修理する際、どんなところに気をつければいいのだろうか?
「屋外でパンク修理するときは、ホコリやゴミ、ドロ、砂などがチューブについたり、タイヤの中に入らないよう注意してください。とくにチューブは、なるべく地面につけないように、フレームにかけるなどして保護しましょう。ハンドルやサドルは作業台の代わりにもなりますよ。そして作業が終わったらチェックすることも忘れずに」
 裏ワザではなく、むしろこうした確実な作業が大切なのだ。まずやってみる。そして道具選びと確実な作業がパンク修理を成功に導く。
使いやすいものを探してみよう
パンク修理に欠かせないタイヤレバー。じつはさまざまな種類がある。しかし、一度購入すると同じものを使い続けることがほとんど。いろいろなタイヤレバーを試したことがある人は意外に少ないのでは? ひと口にタイヤレバーと言っても、プラスチック製か金属製かといった素材、タイヤのビードを引っ掛ける部分の幅や出っ張りの高さ、スポークに固定できるようフック形状になっているかなどの違いがある。いくつか使ってみて、自分が使いやすいものを探してみよう。お気に入りが見つかれば、作業はグッとしやすくなる。
フック形状でスポークに固定できるタイプ(右)、ビードを引っ掛ける部分が幅広で平たいタイプ(左)。使い勝手に違いがある
仕上がりの美しさはヤスリがけで決まる
チューブにパッチを貼る前には、ヤスリがけが不可欠だ。では、なぜヤスリがけをするのか? それはチューブ成型時についた離型剤を取り除くため。そして、チューブ表面の段差を平らにして、しっかりパッチが貼りつくようにするためだ。ヤスリがけするときは、チューブがタイヤの太さになる程度まで空気を入れると作業しやすい。空気を抜くとチューブが縮むので、少し広めにヤスリをかける。段差部分は、平らになるまで作業を続けること。ヤスリがけが不足していると、パッチのふちがチューブになじまず浮いてしまう。
パッチのふちが浮いた失敗例。ここから空気が漏れることもある。水につけて確認するなどし、漏れるようなら貼り直しが必要だ
ワークショップ モンキー
東京都豊島区高田3-13-6 グレイス高田馬場102号
営業時間:10時~ 18時 ※祝日は12時~ 定休日:水曜、日曜 
TEL:03・3985・5663
今泉紀夫さん
ワークショップ「モンキ
ー」店主。得意分野はMTBで、いつも山の中でライディングしているため、トラブルに対処するノウハウが豊富。SBM(スポーツバイク・メカニック)養成講座の講師も務める。
パンク修理の際には、パンクの原因を明らかにして、それを取り除くことが非常 に重要だ。原因が残ったままでは、また すぐにパンクしてしまう。まずチェック するのは、タイヤに異物が刺さっていな いか。タイヤ全周を表と裏から目視と触 りながら確認。刺さっている異物で手に ケガをしないよう注意すること。異物を 取り除く際は、携帯工具などを使って工 夫しよう。リムフラップに穴が開くとチ ューブが落ちてパンクが起きる。タイヤ、 リムフラップともに異常がなければ、リ ム打ちパンクが原因として考えられる リムフラップの穴にも注意
タイヤの指定空気圧が高いロード用では、とくにリムフラップが傷みやすい。出先では、ビニールテープなどを貼って応急処置する
タイヤを全周にわたって外す
タイヤを外す
リヤをトップに入れクイックを解除
ブレーキ解除
ある程度タイヤレバーで外れたら、手で全周にわたってタイヤを外す。タイヤに刺さった異物でケガをしないように注意しよう
タイヤレバーを使ってタイヤのビード部分をリムから外す。1カ所外れた2本目のタイヤレバーを使う。3本目を使ってもよい。レバーでチューブをかまないように注意(右)
リヤのギヤをトップに入れた状態にし、クイックレリーズを開いてホイールを外す ホイールを外す前にブレーキのレリーズレバーを操作してブレーキシュー間隔を広げるとタイヤが通りやすい
ホイールを外す際、フロントのギヤをインナーにしておくとチェーンのテンションが緩まり、突っ張らなくなるので外しやすい
やすりがけ
穴を探す
異物のチェック
チューブを出す
パッチを貼る部分にヤスリをかける。パンク修理の成否を左右する重要な作業なので、時間を惜しまず根気よくていねいに行なうこと
チューブに開いた穴の位置を探す。ポンプで少し空気を入れ、漏れ出す音をたどっていく。ボトルの水を使うとさらにわかりやすい
タイヤに穴や裂け目がないか、異物が刺さったり入り込んでないかをチェック。タイヤの表裏ともに目視しながら触って確認 チューブを取り出す。チューブがタイヤ裏側に固着していることもあるので慎重に
チューブをなるべく地面につけない
取り出したチューブに汚れがつくと、パッチの貼りつきが悪くなる。なるべく地面にはつけないように
圧着具合をチェック
フィルムをはがす
パッチを貼る
のりを塗る
パッチを貼った側とは反対から指で押して、さらに貼り具合を確認。とくにふちが浮いていないかを念入りに パッチを十分に押し当て、チューブにしっかりと貼りついていることを確認したら表面のフィルムをはがす ゴムのりが完全に乾いたらパッチを貼る。中央から外に向けて押す。ハンドルの上にのせると力が入れやすい ヤスリがけした部分にゴムのりを塗る。なるべく均一になるよう、指のハラを使って広げていく。そしてテカリがなくなるまでしばらく待つ
失敗例
フィルムとともにパッチのふちが浮いた失敗例。手荒に引っ張らず慎重に作業すること
大きさに注意
パッチの大きさには種類がある。大きすぎはチューブに沿わず、うまく貼れないので注意
ホイールを戻してクイックを閉める
タイヤを最後まではめる
タイヤをはめる
チューブを入れる
最終チェックののち、空気を十分に入れたらホイールを装着してクイックレリーズを閉める。ブレーキのレリーズ戻しも忘れずに
バルブキャップを付けよう

バルブキャップはバルブ先端 が折れたりしないよう守ってく れる。キチンと装着しよう
左右から均等にタイヤのビードをリムに収め ていく。最後にビードが突っ張ってしまったら、 タイヤレバーを使ってOK。このときタイヤレ バーでチューブをかまないように
ここでは、バルブ側からタイヤをはめる方法を紹介。まずバルブを押し上げ、タイヤのビードをリムに入れる バルブをリムに通し、ここからチューブをタイヤ内に収めていく。少しだけ空気を入れておくと作業しやすい
「BAR」と「PSI」:タイヤの空気圧が低いとリム打ちパンクが起きやすい。指定空気圧の表示単位は製品によって異なっている。おもに使われているのは「BAR」と「PSI」。一般的になじみがある「気圧」に換算すると1BAR=約0.987気圧なので、おおむね「BAR=気圧」と考えればよい。PSIは「Pound-forceper Square Inch」(1平方インチの面積につき1重量ポンドの力がかかる圧力)の略。1BAR=約14.504PSIなので、8BARなら約116PSIだ。

リムにタイヤをはめこんでいくとき、「バルブ側から」と「バルブとは反対側から」に意見が二分される。いったいどちらが正解なのだろうか? 今泉さんによれば……「どちらでもかまいません。個人的には、バルブの反対側からはじめます。このほうが最後にチューブが動きにくく、やりやすいと思います。しかし、バルブ側からでも左右均等にハメこんでいけば問題ありません」とのこと。自分のやりやすい方法が正解だ。
大きく分けてパンクには3つの種類がある。タイヤが裂けることでチューブが破裂する「バースト」、異物が刺さってチューブに穴が開く「貫通」、段差などでリムと路面でチューブをはさみ込む「リム打ち」とそれぞれ原因が異なる。どの種類かを把握して適切な修理方法を選ぶこと。たとえばリム打ちの場合、リムの両サイドで打ちつけられるため、穴が2カ所開くことが多い。原因がわかっていないと片方の穴を見逃すこともある。
リム打ち 貫通 バースト
ツーリングなどで遠出した際は、必ずしも十分な工具や補 修用品を携帯しているとは限らない。また近くにサイクル ショップがない場合も多い。そんなときメカトラブルに見 舞われてしまったら、持っているあり合わせのもので工夫 して乗り切るしかない。以下にパンク修理で役立つ応急処 置ワザを紹介。このほかにも、タオルや草をタイヤの中に 詰め込んで、とりあえず帰ってくるという荒ワザも。使え るものは何でも使おう。
タイヤが裂けた!
裂けたタイヤにそのままチューブを入れるとバーストしてしまう。これを防ぐには、タイヤの裏側からパッチやテープを貼って裂け目をふさぐとともに、チューブにもテープを巻くと効果的だ。テーピングテープはケガの手当てにも使えるので、ぜひ携行したい。
パッチがない!
パッチを使い切った、もしくは忘れたというときは……。ほかにあるものを使って乗り切ろう。たとえばタイラップがあれば写真のようにすることで空気を入れられる。ほかにも工夫すれば何とか帰ってこられる。
タイヤレバーを忘れた!
クイックレリーズのレバー部分や10円玉などのコインをタイヤレバー代わりに使える。ただし、リムを傷つけないよう注意。タイヤがリムに対して緩ければ、ビードをリム内側に落とし込むと手で外すことができる。
パンク修理は出先で行なうことが多いため、携帯アイテムは厳選したい。ポンプは高圧までしっかり入るものを。空気が低いとリム打ちパンクにつながる。スペアチューブはエアロリムでもOKのロングバルブがオススメ。さらにバルブエクステンダーがあれば安心だ。
●トピーク「ロードモーフG」はフロアポンプになる携帯ポンプ。 体重をかけてポンピングでき、ロード用タイヤに必要な高圧にま で入れられる。
価格/ 4935円 問マルイ TEL:078・451・2742
 
 
タイヤをリムに装着しようとすると、最後はビードが突っ張ってしまう。このビードの突っ張りを最小限にするには、手のひらの母指球部分を使い、なるべく左右均等にしっかりタイヤをリムに沿わせていく。最後にはめこむ際には、母指球をタイヤレバー代わりにしてグッと押し込むのがワザ。指で引っ張っても力は入らない。母指球をうまく使ってもはめられなければ、タイヤレバーを使う。このとき、タイヤレバーでチューブをかむと穴が開いてしまうので最大限の注意を払うこと。ここは何度も作業して感覚をつかむしかない。
力に自信のない人が作業する場合は、ビードがはまっているところの端をストラップで固定し、最後をタイヤレバーでリムに収めるという手もある。この場合もタイヤレバーでチューブをかまないように注意。非力な人でなくても、リムとタイヤの相性でビードの突っ張りが多くなる組み合わせのときに有効だ。

タイヤの装着が完了したら、空気を入れる前にタイヤのビードがチューブをかんでいないかをチェックする。チューブをかんだまま空気を入れると、そこからバーストしてしまうからだ。タイヤを横に押して、ビードの下にチューブが露出していないかを目視する。バルブを起点にすると1周がわかりやすい。リムの両側をチェックしよう。チューブがかんでいなければ、やっと空気を入れられる。しかし、いきなり指定空気圧まで入れるのではなく、少し入れたところでビードが正しくリムに装着されているかを確認して完了だ。
タイヤサイドのリムラインがリムに沿って均等ならばOK(右)。隠れていたり斜めになっていたらNG(左)。いったん空気を抜き、タイヤを手でこじるなどして修正が必要だ

アウターワイヤの長さの決め方:交換前のアウターワイヤがハンドルを左右に切ったとき、ヘッドチューブにひっかからなければ問題ない長さ。新しいアウターワイヤは、その長さと同じにカットすればいいのだ。
 シマノやカンパニョーロのブレーキ&シフトケーブルセットに入っている各アウターワイヤには、アウターとインナーワイヤとの抵抗を減らすため、樹脂製ライナーチューブが内部に通っている。その樹脂製のライナーチューブの中には、潤滑のためやアウターワイヤの切り口から水やホコリの浸入やサビを防ぐため、グリスが注入されている。
  各インナーワイヤは、取り回しのためにカーブを描いた部分やアウターワイヤの切り口部分などで抵抗が発生しやすい。そのため、注入されているグリスは長期間にわたり、潤滑やサビ止めの効果を発揮して同じコンディションを保ってくれる。
  しかし、もっと抵抗を減らしてレスポンスを高める潤滑剤を使うテクニックがあるので紹介したい。
  まず、ブレーキパーツクリーナーをライナーチューブへスプレーしてグリスを洗い流す。次にバイダスドライをスプレーしてテフロンベアリングをライナーチューブ内にコーティングする。
  そして、やや粘りがあるメンテルーブをスプレーすることでウェット状態の潤滑を行なう。
  潤滑剤を換えたら1カ月に1度はアウターストッパー部分でアウターワイヤを取り外し、ブレーキパーツクリーナーでクリーニングしてから、メンテルーブで動きの軽さをキープするようにしよう。

バイダスドライをスプレーしただけだとドライ潤滑になるので、より抵抗を減らすために、やや粘度が高いメンテルーブを樹脂製ライナーチューブへスプレーしてウェット潤滑の状態に

樹脂製ライナーチューブの中にバイダスドライをスプレーする。超微粒子のテフロン樹脂のボールベアリングで、インナーと樹脂製ライナーチューブとの抵抗を減らせる

ブレーキのアウターワイヤの中に入っている樹脂製ライナーチューブにブレーキパーツクリーナーをスプレーして、中へ注入されているグリスを洗い流してしまう

アウターワイヤは必ず切れ味の鋭い専用のワイヤーケーブルカッターを使って切断して、切り口をつぶさないようにする。アウターワイヤ自体が変形した場合は円径に戻してから使おう

ケーブルカッターでカットしたアウターワイヤの切り口をヤスリなどで平らに仕上げてからキャップを付けると、なじみが出やすく初期のインナーワイヤのゆるみを最小限にできる

アウターワイヤの切り口をケーブルカッターで切断した際に、中に通っている樹脂製ライナーチューブも変形しているので、千枚通しなどの針先を通し丸く戻して抵抗を減らす
ワコーズ・
ブレーキ&パーツクリーナー8

容量/ 650ml 価格/ 1575円 
問:和光ケミカル TEL:0465・48・2211
オイルやグリスなどを溶かしてクリーニングできるブレーキ&パーツクリーナー。揮発が早く、自転車パーツに採用されている樹脂やシリコンゴムなどへのダメージも少ない
ワコーズ・バイダスドライ
容量/ 200ml 
価格/ 4200円 
問:和光ケミカル
高い圧力がかかる場面で潤滑剤としてすぐれているテフロン製の超微粒子ボールベアリングを揮発性の高いケミカルに含ませてスプレーする。本来はドライ潤滑タイプの潤滑剤
ワコーズ・メンテルーブ
容量/ 180ml 
価格/ 1680円 
問:和光ケミカル
油膜を構成する性能が高く、チェーンやケーブルや変速機などの潤滑に最適な、やや粘度のあるルブ(オイル)。スプレータイプで針のような注入口でピンスポットで注油が可能
クイックやアジャスターでワイヤのたるみを作り、アウターストッパーの割りを利用してアウターワイヤを外す。そして切り口をブレーキ&パーツクリーナーでクリーニングする 1カ月に1度は注油する。アウターワイヤの切り口にメンテルーブの針先のような噴射口を当ててスプレーして、インナーワイヤと樹脂製ライナーチューブとの摩擦抵抗を減らす ブレーキ&変速レバーが一体になっているレバーの、シフトワイヤと巻き取り部分はワイヤの曲がりが急なので負担のかかる場所。ここにもメンテルーブをピンポイントで注油する

トーインをつける:ブレーキ調整の際に左右両側のブレーキパッドが進行方向に向けてハの字形に調整すること。名刺などの厚紙をリムとブレーキパッドの後ろ側の間にかませてブレーキをかけながら行なうと作業が早い。フロント側はリムと接しているので、自然に厚紙の厚さ分トーインがつく。
 メカニックと聞くと他人まかせにしてしまうアナタ。自転車は大半のパーツが表に見えているので仕組みを理解すればそんなに難しくない。
  まず、ブレーキもシフトもワイヤの張りで動いている。そのため、シフトはレバー部分でワイヤを巻き取ることでインデックス変速していく。ブレーキはなお簡単だ。レバーを引くことでワイヤが引っ張られ、ブレーキが利く。当たり前だがこれを応用すれば、フレームの表にわたしてあるワイヤを引くことでレバーに手をかけないでもブレーキを利かせることができる。購入当初、ワイヤの調整ネジはできるかぎり締め込んだ状態にしてあるのも、ワイヤが伸びて張りがなくなってきた場合にこのネジ部分を延ばし、インナーワイヤの張りを戻すためだ。
  逆に、表に見えていない箇所であまりバラしたりしないヘッド部分の仕組みも一度覚えておくと簡単だ。アヘッド部分の仕組みがわかると自分でもヘッドのガタ調整などができるようになり、いざというときに役に立つので紹介しよう。
  メカニックの作業ではスピードと効率が求められるので、一般ユーザーが意識していないところで手順や姿勢、工具の持ち方などを体で覚えて行なっていることが多い。"ワザは見て盗むもの"と言われるようにプロの作業を見るだけでも、普段気づかないことを発見するはずだ
よくある間違いはコラム上端部とステム上部のツラがあってしまっている場合。その場合はスペーサーを増やして高さ調整をする必要がある。写真のようにキャップが当たらないように2~3㎜コラム上端がステム上部より低い位置にあるように。この透き間がないといくらプレッシャープラグのキャップを締め込んでもベアリングが押されないことに
フォークを交換するような状況はあまりないが、一般的なアヘッド式の仕組みをマスターしておけばガタの調整などもできるようになるので覚えておこう。フォークコラムとその外側に入っているベアリングやスペーサー、ステムなどはステム上部に締め込むプレッシャープラグのネジで固定すると同時にヘッド調整がしてある。そのため、ステム側面についているネジはあくまでステムを固定するためのもので、ヘッド調整に直接は関係ないことを覚えておこう。ポイントはプレッシャープラグのキャップを締め込むことでステム上部が押され、中ほどに入っている上下ベアリングがそれぞれのワンに押しつけられてヘッドの固さ調整ができること。そのため、ステム固定ネジを緩めた状態にしないとプレッシャープラグのキャップを締め込んでも意味がない。ベアリングも今はシールドベアリングが大半なので、適度な力で締めれば微妙な調整は必要ないので扱いやすいはずだ
インナーワイヤがフレーム外側に沿わしてある場合は、ワイヤを引けばブレーキが効く。後輪を素早く止めたい場合はこのほうが手っ取り早い
変速機の可動域は
簡単に確認できる
レバー変速しなくても、パ
ンタグラフ部分をクランクを
回しながら押せば、ギヤはロ
ー側に移動できる。この方法
を使えば、変速機の可動域を
素早く確認できる。手で押し
てスポーク側にチェーンが落
ちるようなことがあれば、変
速機のロー側調整ネジを締め
る必要がある。ワイヤの張り
は変速機の可動域が正しく調
整してあることを確認してか
ら行なおう
左ペダルは"逆ネジ"といわれる通常とは反対に反時計方向に回していくとネジが締まっていくようになっている。そのため、緩めるときに誤って締め込んでしまったりすることがよくある。簡単な理解の仕方は緩める工具の位置を体で覚えてしまうことだ。左ペダルが逆ネジのため、左右のペダルは一見同じ方向に緩む(ネジが両サイドから入っているため)。写真のよ うに自転車を上からみて工具をリヤ側に倒すことで緩められると覚えよう
右記の方法でレバー変速をせずに変速機をロー側に入れると、インナーワイヤが緩んだ状態になる。次にチェーンステーにあるアウターストッパーからアウターワイヤを外せば、インナーワイヤを緩めることなくシフトレバー部分からワイヤのタイコが確認できる。インナーワイヤはタイコ部分の付け根が擦れて摩耗しやすいので、交換の目安にしよう
ネジの適度な締め具合を解説するのはとても難しい。トルクレンチも絶対とはいえないので、まずは壊れてもかまわないような古いパーツなどでネジに慣れておくことが望ましい。そこでオススメしたいのが、T字形のアーレンキー工具。L字形のアーレンキーよりもやや値が張るが、過度なトルクが一度にかからず、微妙な加減を調整できるので扱いやすい。緩める場合もアーレンキーの持ち方を変えれば素早くできる(写真左)。カーボンシートポストの場合は少しずつ慎重に回して力を加えよう(写真右)