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G’day, Australia!~ブリスベンからの自転車だよりVol.18 ブリスベンの自転車街づくりと真夏のホリデーライドをレポート!

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こんにちは!オーストラリア クイーンズランド州のブリスベンに、相棒のリブ・エメとともに留学中のAyakaです。

今回は、ブリスベンの自転車街づくりの現場から、日豪サイクル・ツーリズムミーティング、真夏のオーストラリアのホリデーライドの様子まで内容盛りだくさんでお届けします。これを読めば、日本でも自転車シーズンが来るのがさらに待ち遠しくなること間違いなしです!

 

目指せ、理想のサイクルシティ!ブリスベンの自転車街づくり

私がブリスベンを走っていてつくづく感じるのは、自転車インフラがとても充実しているということ。クイーンズランド州の州都であり、シドニー、メルボルンに次ぐオーストラリア第三の都市でありながら、自転車が街にこんなに自然に馴染んでいるのかと渡豪当初、感動したことをよく覚えています。

ブリスベンの自転車政策を担っているのは、市の行政ブリスベン・シティカウンシルの自転車政策部門『サイクリング・ブリスベン』です。シティサイクルの運営の他、自転車道などの各種インフラ整備も管轄しています。私のインターンシップ先である自転車非営利組織、『バイシクル・クイーンズランド』とパートナーシップ関係にあり、イベントのスポンサーや、安全走行啓発のビデオを共同制作したりしています。
 
サイクリング・ブリスベンのスポンサー朝食会にインターン先の上司と参加。市民の自転車利用率・目的の調査報告がされました
サイクリング・ブリスベンのスポンサー朝食会にインターン先の上司と参加。市民の自転車利用率・目的の調査報告がされました
市は、2012~2016年にかけて自転車インフラの整備に1億2千万ドルを投資、2016~2020年にかけても1億ドルの投資を決めています。先日も郊外からシティ南部の繁華街へとつなぐバイクウェイが開通し、私も同僚と共に開通式に参列してきました!
 
ブリスベンを訪れてまず驚くのは、街中で黄色のシティサイクルが走っているのを見かけることかもしれません。ブリスベン市内のサイクルステーションは150カ所あり、一時利用は1回2ドル、月会員なら月額5ドル(学生は月額3ドル)で利用できる(いずれも30分以内の利用は無料)ので通勤手段にしている市民や学生もたくさんいます。

 
リプトンの広告が目印のシティサイクル。ヘルメット着用は義務なのでカゴには黄色い専用ヘルメットが入っています
リプトンの広告が目印のシティサイクル。ヘルメット着用は義務なのでカゴには黄色い専用ヘルメットが入っています
シティサイクルの利用画面は日本語を含め多言語対応しているので外国人旅行者にも使いやすくなっています
シティサイクルの利用画面は日本語を含め多言語対応しているので外国人旅行者にも使いやすくなっています

ロードバイクやクロスバイクでシティ中心部のオフィスに通勤する人に便利なのが、シティのど真ん中、キングジョージ広場近くの地下にある『Cycle2City』(サイクルトゥシティ)という施設。2008年にオープンし、420台の駐輪スペースを構え現在の利用者は120名ほど。スパのようにきれいなシャワーとロッカールームを完備し、スタッフが常駐しているのでセキュリティも万全です。

私が見学に行った朝も、通勤ライド後にシャワーを浴びて、ジャージからピシッとオフィススタイルに着替えて利用者たちが颯爽と街へと出て行きました。施設内にバイクショップ『イエロージャージ』も入っており、通勤時にバイクをメンテナンスに預け、仕事帰りに受け取り、乗って帰ることも可能です。週末にわざわざメンテナンスに出しにショップまで行かなくていいのは効率的ですね!利用料金は、1日利用で5ドル。3カ月契約で月70ドル、半年:月60ドル、1年間:月50ドルと長期契約するほどお得になります。オーストラリアではこのような施設は、End of trip facility と呼ばれます。日本でも都心を中心にランニングステーションが増えてきていますが、エンドオブトリップ施設も増えてほしいですね!
 
Cycle2Cityの施設。中には片道30kmを通勤する利用者もいるそう
Cycle2Cityの施設。中には片道30kmを通勤する利用者もいるそう
公園のバイクウェイ沿いにあるポンプ&工具ラック。万が一工具を忘れてもここでさっと調整できます
公園のバイクウェイ沿いにあるポンプ&工具ラック。万が一工具を忘れてもここでさっと調整できます

ブリスベンの自転車政策は日々推進されており、市内各地のバイク設備の充実、自転車道の道幅拡大、新規政策について市民から意見を聞く“Have Your Say”(公聴会のようなもの)なども積極的に行われています。バイクショップの割引特典などがついたサイクリング・ブリスベンのメンバーシップは無料で、現在6000人以上の市民が登録しています。自転車都市ブリスベンもまだまだ課題はありますが、ブリスベンも日本も、互いに見習いたいところがたくさんありますね!

 
街中の自転車専用横断歩道。信号はボタンを押して利用します
街中の自転車専用横断歩道。信号はボタンを押して利用します


【関連リンク】
Cycle2City


ブリスベン・シティサイクル


サイクリング・ブリスベン

 
バイクウェイ 開通式の動画

 

青少年育成、女性のエンパワーメントと「自転車」の関係を探る

オーストラリアで1年近く走ってみて感じたのは、自転車が社会的なツールとして積極的に活用されているということです。

例えば、青少年の社会教育への活用。ブリスベンを拠点とする非営利組織『トラクション』では、中高校生を対象に、1人1台、バイクの組み立てを通して、技術はもちろん、集中力や自信を付けることを目的にワークショップを開催しています。移民の多いオーストラリアは、思春期に英語もままならない状態で移住してきて、学校に馴染めない生徒も多くいるとのこと。そんな中、学校側からワークショップを紹介し、指導員や仲間と作業に取り組む中で、コミュニケーション能力も育成されていくそうです。
 
12月中旬の夏休み集中コースを見学。将来、エンジニア志望の生徒さんも多く集まるそうです
12月中旬の夏休み集中コースを見学。将来、エンジニア志望の生徒さんも多く集まるそうです
トラクションのロゴ。『ビルド・ユア・オウン・フューチャー』(自分の未来を組み立てよう)の力強いメッセージが印象的
トラクションのロゴ。『ビルド・ユア・オウン・フューチャー』(自分の未来を組み立てよう)の力強いメッセージが印象的

女性向けの組織が多いのもオーストラリアの特徴。オーストラリア自転車競技連盟『サイクリング・オーストラリア』による女性向けの講習コース、『シ―・ライズ』(She Rides)を始め、オーストラリア全土にある、女性のための自転車ローカルコミュニティネットワーク、『チックス・フー・ライズ・バイク』(Chicks Who Rides Bike)、「ママになってもスポーツバイクにアクティブに乗りたい!」という女性ライダーのための組織、『サイクリング・マムズ・オーストラリア』など、他にもたくさんあります。

10月の100kmライドイベント『ブリスベンtoゴールドコースト サイクルチャレンジ』でも、各自転車団体の代表者を中心に、ベテラン女性サイクリスト7人が紫色ジャージを着て、『マグニフィセント・パープル・セブン』と称し、女性サイクリストの参加促進やビギナーのサポートのためのアンバサダーとして活躍しました。日頃のショップライドなどでも、30代~50代で一人でも参加しに来る女性サイクリストも複数います。

あくまで私の個人的な感覚ですが、日本と違うと感じるのは、女性が心身ともにたくましいというか、凛として自立した存在であるということ。ブリスベンのバイク仲間の40代のマリアに意見を求めたところ、「地図が読めない?メカニックトラブルが怖い?なら皆、自分で学べばいいじゃない!そこに男女とか関係ないでしょ~」とさらり。自転車に限らず他のスポーツ、もしくは社会全般に言えることかもしれませんが、オーストラリアには「男性があえて意識的に、女性を手厚くサポートしてあげる」というような構造・考えが男女ともにそもそもないのかもしれません。
 
マグニフィセント・パープル・セブン。特に今年は大雨の大会だったので、ベテランライダーたちのサポートに助けられた参加者も多数
マグニフィセント・パープル・セブン。特に今年は大雨の大会だったので、ベテランライダーたちのサポートに助けられた参加者も多数

もちろんオーストラリアにも「レディーファースト」の考え方や習慣はあります。ただ、それはあくまでレストランやパーティーなどの場面で男性が女性をエスコートする、マナー的なイメージに留まり、「自転車(・スポーツ)においてわざわざ男女を持ち出さない」というのが私の印象です。
 
ちなみに、レジュメ(職務経歴書)でも一般的には、写真・年齢・性別は基本的に掲載しません。スポーツにしても、職務にしても、個人主義・能力主義で向き合っているのでしょう。そんな中、自転車については従来的に、男性の割合の方が高いため、「もっと女性も、自転車をどんどん楽しめばいいんじゃない?」という切り口で、各組織の活動が活発なのかなと私は受け止めています。



【各団体ホームページ】
Cycling Australia -She Rides

 
Chicks Who Rides Bike

 
Cycling Mums Australia

 
バイシクル・クイーンズランド マグニフィセント・パープル・セブン

 

日豪サイクル・ツーリズムの意見交換会を実施!

12月中旬、日本の人気ファンライドイベント『グレートアース』を主催する、デポルテ代表の坂口弥寿久さんがブリスベンを訪問してくれました。毎年10月の『ブリスベンtoゴールドコースト サイクルチャレンジ』などのイベント参加を始め、サイクル・ツーリズムを促進したいクイーンズランド州政府観光部・観光局や、バイシクル・クイーンズランドの担当者らとの意見交換会を、オーガナイズしました。

 
州政府のサイクル・ツーリズム担当たちと坂口さん(左から3番目)。「ゴールドコーストマラソンに続き、日本からももっと自転車イベントにも来てほしい!」とラブコールをもらいました
州政府のサイクル・ツーリズム担当たちと坂口さん(左から3番目)。「ゴールドコーストマラソンに続き、日本からももっと自転車イベントにも来てほしい!」とラブコールをもらいました
バイシクル・クイーンズランドのオフィスにて。坂口さんとジョエルはイベントディレクター同士、意気投合!
バイシクル・クイーンズランドのオフィスにて。坂口さんとジョエルはイベントディレクター同士、意気投合!
 
オーストラリアの自転車イベントは、「走る」ことそのものがメインになっているため、景観やエイドの充実は二の次になりがち。日本各地の景勝地を駆けめぐり、エイドステーションで地元の方との交流や郷土料理を楽しむグレートアース参加者たちの動画に、オージーの関係者一同「えっ!こんなに食べるの!?」と興味津々。「なぜその場所にわざわざ赴き、走る価値があるのか?を問うこと」という坂口さんの言葉に、一同頷いていました。「日豪サイクリストの懸け橋になる」という目標に向けて、私も引き続き日本の素敵なところをたくさん紹介してつないでいきたいです。

【関連ホームページ】
 
バイシクル・クイーンズランド

 
グレートアース

 

年末もアクティブに!クリテリウム大会&Festive500達成!

南半球で季節が日本とは逆のオーストラリアは、年末年始は真夏のシーズン。オーストラリアのクリスマスホリデーは、日本人にとってのお正月のようなもの。家族で集い、食事をしたりビーチに出かけたりするのが定番ですが、熱心なサイクリストたちにとってはさんさんと輝く太陽と空の下、走り込むチャンス!

クリスマス前には、ブリスベンの老舗バイクショップ、『ライフサイクル・ガレージ&ビスポーク』主催のクリスマス・クリテリウム大会に参加してきました。お楽しみイベントながら、クイーンズランド自転車競技連盟『サイクリング・クイーンズランド』から審判員も来る本格ぶり。子供向けの障害物競走ライドやバーベキューも開催され、さながら真夏の運動会となりました。ハイ・ファイブからミッチェルトン・スコットに移籍し、今年のツアーダウンアウンダーでも走るルーシー・ケネディ選手も遊びに来てくれて、皆にハイ・ファイブ時代のジャージにサインを入れてプレゼントしてくれました!

 
私が参加した女子クリテリウムレース。エリミネーション形式で8分後から1人ずつ失格されるルールにドキドキ!
私が参加した女子クリテリウムレース。エリミネーション形式で8分後から1人ずつ失格されるルールにドキドキ!
キッズクリテリウムレースの表彰台。フルーツや自転車グッズをもらい、みんな晴れ晴れした表情
キッズクリテリウムレースの表彰台。フルーツや自転車グッズをもらい、みんな晴れ晴れした表情
ルーシー、実は同い年であることを知りびっくり。TDUでの活躍も楽しみです!
ルーシー、実は同い年であることを知りびっくり。TDUでの活躍も楽しみです!

人生初のクリテリウムレース参加を満喫した私は火が付き、ストラバ上でのラファ主催の年末チャレンジ、『Festive500』にも挑戦することに。これは、クリスマスイブ~大晦日までの8日間で500kmを走り、ストラバ上でデータを登録して申請すれば、賞品が当たったり達成記念ワッペンがもらえるというもの。

12月24日~29日の6日間で走破!合計で505.5km、獲得標高4980mでした。達成の秘訣は、間に2日間の休養日を挟みつつ、50km×2本、200km×2本で挑んだこと。自身の過去最長は1日160kmだったので、200kmは未知の領域でしたが、また一歩、サイクリストとして自分の限界を広げ、自信を付けることができました。2018年も引き続き、心身ともに精力的に走っていきますのでどうぞよろしくお願いいたします!

 
クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州との州境まで往復200km!おかげでこんがり焼けました……
クイーンズランド州とニューサウスウェールズ州との州境まで往復200km!おかげでこんがり焼けました……
ブリスベン内陸部のバイクウェイも新たに開拓できました
ブリスベン内陸部のバイクウェイも新たに開拓できました

Ayaka

Cycle Evangelist、Writer。Z会で約6年間、英語教材の企画・開発を担当。ロードバイクで国内外各地のイベントやレースにも出場し、自転車メディアでも活動。「日本をもっと元気で楽しい場所にする!」を目標に、ビジネス留学を通し、スポーツツーリズム業界へのキャリアチェンジを目指し退職。オーストラリア クイーンズランド州ブリスベンにあるバイシクル・クイーンズランドでインターンシップ中。

 
HP:http://gdaybabyccino-ayaka.com/
Instagram:aya_p_14