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ポーランドMTBメディアワールドカップ参戦レポート

イベント
サイクルスポーツ編集部にある日、ポーランド政府観光局から1本の電話がかかって来た。「今度、ポーランドでメディア関係者向けにMTBのイベントがあるんですが、参加してみませんか?」

そんな面白そうな話を逃すはずはなく、今回サイスポ編集部から1人で参戦することに決定。ポーランドの関係者によくよくメールで問い合わせてみると、今回のイベント名は''ポーランドMTBメディアワールドカップ''というなんとも仰々しい大会名であることがわかった。正直、MTBは初心者なのだが、バイクも現地でレンタルできるということだし、一抹の不安を抱えつつも一路ポーランドへ。


text:西村裕貴  photo:西村裕貴、ポーランドMTBメディアワールドカップ2017
開催日:2017年5月12日
開催地:ポーランド・ヴァルミアマズーリ県・ゴーラクリザーワ地区特設コース
 

ポーランドへはワルシャワ行きの直行便で

日本からポーランドへは、2016年3月より東京・成田空港から首都のワルシャワ・ショパン空港まで週3便のポーランド航空の直行便が就航しており、これまでに比べてアクセスしやすくなっている。ポーランドは人口約3800万人で面積は約31万2700㎢で日本よりも少し小さい。取材を行った5月の平均気温は15度C前後とサイクリングを楽しむには最適な気候だ。

今回イベントを行ったのは首都ワルシャワから車で約4時間、北へ260kmほど行ったところにあるヴァルミア=マズーリ県のリシャルト・ヴァルミンスキという街だ。同県は大小約6000もの湖を有する湖水地方として知られ、その自然が育んだ景観にポーランド国民のみならず、欧州各国からも避暑に訪れる人が絶えないそうだ。

自転車事情は日本とは異なっており、ポーランドではMTBの割合が高く、街中で見かけるサイクリストも概ねMTBに乗車していた。関係者によるとロード乗りとMTB乗りの比率は1:5という。
 
ポーランド航空の飛行機
ポーランド航空の飛行機
ワルシャワ市内の自転車
ワルシャワ市内の自転車

15カ国から参加した国際MTBイベント

今回行われたMTBメディアワールドカップというイベントは”メディアワールドカップシリーズ”というヴァルミアマズーリ地方の観光PRを促進する一環として企画されたイベントで、そのシリーズの第1回目としてMTB部門を開催。今年は同シリーズで5月末にロード部門、7月にはトライアスロン部門も実施予定である。

5月12日に行われたMTBレースにはイタリア、中国、ウクライナ、ノルウエー、オーストラリアなど15カ国からアウトドア系の媒体や自転車専門媒体を含むさまざまなメディアが参加。コースは1周が約4.2kmで、男性はこれを5周(21km)、女性は3周(12.6km)する。標高差が約400mほどでシングルトラックあり、ハードな急登区間ありと、走り応えのあるコースだ。
西村はイタリアのウィストル・パトウィンというバイクをレンタル
西村はイタリアのウィストル・パトウィンというバイクをレンタル
専用のゼッケンやトートバック、オリジナルボトルなどが参加者に配られた
専用のゼッケンやトートバック、オリジナルボトルなどが参加者に配られた

プロレベルのハイレベルなコース

栄えあるスタートセレモニーは、リジバルク・バルミンスキ市内にある歴史的な城門前で行われた。レース会場までは、ジャセク・ウィズナイオスキー市長を先頭とするパレード走行。城門付近には参加国の国旗を掲げたたくさんの地元の子どもたちがサイクリストたちに声援を送っており、参加者たちはその光景にみな感動し、スマートフォンで撮影する一幕も。

その後、ゴーラクリザーワというエリアにある特設コースに移動し、午後1時に予定時刻通りスタート。500mほどアスファルトのコースを周回し、参加者は一斉に森の中に突入。まずは標高差40mの直登区間が現れる。その後は、下り基調のシングルトラック区間が続く。

 
各国の参加者と気軽に交流が図れるのもうれしい
各国の参加者と気軽に交流が図れるのもうれしい
クイーンのウィーアーザチャンピオンをBGMに選手がスタート。気合いが入る
クイーンのウィーアーザチャンピオンをBGMに選手がスタート。気合いが入る
もちろん日本の国旗もありました
もちろん日本の国旗もありました

ほぼ素人的な感想だが、距離以上にアップダウンが非常に多いコースだと感じた。正直試走段階では若干ビビってしまったが、周回を追うごとにだんだん楽しくなってきた。山を上りきるごとに日本では見ることのできないポーランドの青々とした原野が開けて、思わずため息をつく。時折ダウンヒル区間があり、下りの直前ではポーランド人の女子学生が声援を送ってくれるので、とても勇気づけられた。

そうこうしているうちにあっと言う間にトップ選手がゴールしたようだ。今回正式なゴールタイムは発表されていないものの、推定フィニッシュタイムは約1時間半だ。

ちなみに西村はというと、1周あたり30分もかけるという劇遅ペースで、正直タイムを書くのは憚られるほどだ。ゴール時には、両足がつって悶絶してしまった.....。ちなみにMTB経験の少ない人にとっては難しいコースだったため、3周でDNFとなってしまった選手が続出。まさにワールドカップの名にふさわしいコース設定だったといえる。

 
メディア関係者といえど、トップの選手はまるでプロ並みの走行テク
メディア関係者といえど、トップの選手はまるでプロ並みの走行テク
西村も一応参戦。終始緊張しつつ走行.....。
西村も一応参戦。終始緊張しつつ走行.....。

優勝者はなんとノルウエーから約1200km自走で会場へ!

優勝者は男女ともノルウエーからの参加者で、男子はブリンジャー・ファルシュタッドさん、女子はニナ=マルメ=グルブランセンさん。

なんと同じ自転車ウエブサイト・シュテルケブルヴェン所属(ちなみに女子2位も同じ媒体)で、驚くべきことにブリンジャーさんは自転車でノルウエーから自走して来たそうだ。現地滞在中もトレーニングを重ねており、優勝したのも頷ける(いつ仕事をしているのかは激しく疑問に思ったが.....)。 ノルウェーのウエブサイトアドレス→http://styrkeproven.no/en/frontpage

他の参加者によれば、このコースはプロユースにも耐えうると言う。これがしっかり走れるようになったらMTBでは一人前になれるのかなぁ?来年へのリベンジを密かに誓いつつポーランドを後にした。
 
男子1位はブリンジャー・ファルシュタッドさん(ノルウェー)
男子1位はブリンジャー・ファルシュタッドさん(ノルウェー)
女子1位はニナ=マルメ=グルブランセンさん(ノルウェー)。彼女もバイクを持参してきた
女子1位はニナ=マルメ=グルブランセンさん(ノルウェー)。彼女もバイクを持参してきた

総合優勝のプリンジャーファルシュタッドさん


優勝者のブリンジャー・ファルシュタッドさんは、レースに関して次のようにコメントした。
「今回のコースはとても楽しいもので、私たちがノルウエーで走ったことのあるコースに少し似ていましたが、そのコースよりもさらにアップダウンが激しいものでした。」「競争当日の朝、私は前もってルートを下見した結果、とてもテクニカルなコースだと判断しスペアで持ってきていたサスペンションに交換しました。」と、彼のレースに対する本気度が伺える。

 

1999年ツアー・オブ・ジャパン総合優勝、 アンドレ・シピカウスキさんも参加!

今回、メディアワールドカップのスポーツディレクターを務めているアンドレ・シピカウスキさんは、1988年のソウル五輪で2つの銀メダルを獲得、なんと1999年のツアー・オブ・ジャパンではムロズチームとして来日し、総合優勝を飾っている。

アンドレさんは、「私はより魅力的な観光地としてポーランドをアピールするべく今回のイベント開催を決めたマリウズ・ヘルマンさんの考えを強く応援したい思っていました。しかし正直言って、試走段階で私はこのコースに尻込みしてしまいました。自転車を全くコントロールできなかったのです。幸いにも3周目以降はレースを楽しむことができるようになり、急なダウンヒルでも怖さを感じることはなくなりました。そして今はもう、このルートを走れないことを寂しく思います。」と今回のイベントとコースについてのコメントを寄せてくれた。

ポーランドMTBメディアワールドカップの詳細な記事については、サイクルスポーツ8月号をチェックしてほしい!!
 
今回はオプショナルツアーとしてミコワイキ地区にあるポーランド最大の湖シニャルドヴィ湖も見学。面積は琵琶湖の6分の1くらい。ショパン号と名付けられた船に乗った
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リシャルトヴァルミンスキ市内から車で10分ほど行ったエリアには、蓄光するLEDライトが埋め込まれた光るサイクリングロードがあった
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