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最終ステージを迎えたツール・ド・とちぎ、ステージ優勝は右京のエゴイツ 総合はヒルが守り抜く

レース
矢板市役所をスタートし、矢板駅前をパレードランで通過(photo:Hideaki TAKAGI)
矢板市役所をスタートし、矢板駅前をパレードランで通過(photo:Hideaki TAKAGI)
4月2日(日)、3日間のステージレースであるツール・ド・とちぎもいよいよ最終日を迎えた。2日間の曇天から一変、清々しく暖かな日差しが降り注ぐ。最終日は、矢板市役所をスタートして、塩屋町、さくら市、那須烏山市、高根沢町、芳賀町、市貝町を経由、宇都宮市の清原中央公園にゴールする103.5kmの行程だ。今回のコースには3日間で最長の10kmほどの上りが控えていた。2日目終了時点でアタッキ・チーム・グストのベンジャミン・ヒルが総合リーダージャージを獲得。グストは、総合リーダーのイエロージャージを守るべくチームで闘っていくと前日から話しており、その通り序盤から集団のコントロールを始めた。

text:滝沢 佳奈子 photo:Hideaki TAKAGI/TdT2017/滝沢 佳奈子

 

ヒルがグアルディオラを差し切って山岳賞獲得を確定させる

矢板市役所をパレードランでスタートしたあと、県民の森へ向かうおよそ10kmほどの上りで抜け出したいチームが飛び出す。積極的に動いていたのは、総合大逆転を目論むブリヂストンアンカーサイクリングチーム。トップと約1分差で総合上位につける鈴木龍と西薗良太が飛び出す。
「もう攻撃だけを考えて、最初の上りで西薗さんと僕で飛び出して、キナンのリカルド(・ガルシア)と椿(大志)さんの4人で飛び出して、集団を分割することもできました。そのあと下ったあとの平坦でも攻撃を続けて、僕らとしてやれることはやったかなと。」と鈴木龍は振り返る。
この4人の攻撃により集団はバラバラとなり、リーダーチームのグストのアシスト勢も崩壊。総合リーダージャージであるグリーンジャージを身につけたヒルとアシスト一人をメイン集団の先頭に残すのみとなった。
 
アンカーの2人とキナンの2人が最初の山岳で逃げる(photo:Hideaki TAKAGI)
アンカーの2人とキナンの2人が最初の山岳で逃げる(photo:Hideaki TAKAGI)
しかしその4人の逃げも、逃げを容認したくないグストのアシストにより、14km地点に設定されていた最後の山岳ポイントの手前で吸収されてしまう。そのまま集団に残っていたヒルと山岳賞ジャージを着るサルバドール・グアルディオラ(チーム右京)の争いとなり、ヒルが差し切って山岳ポイントをトップで通過した。
この結果により、グアルディオラと山岳ポイントでは並んだが、よりカテゴリーの高い最後の山岳ポイントを制したヒルが山岳ジャージを確定させた。
 
山岳ポイントをヒルが先頭で通過
山岳ポイントをヒルが先頭で通過

平坦路で多くのチームが最後の攻撃を仕掛け、アンカー石橋の独走

アンカー石橋が単独で50kmほど逃げ続ける(photo:Hideaki TAKAGI)
アンカー石橋が単独で50kmほど逃げ続ける(photo:Hideaki TAKAGI)
残りのおよそ90kmは下り切ってから何度も小さいアップダウンを繰り返しながらほぼ平坦基調でゴールに向かう。下りに入ってから集団は落ち着きを取り戻し、リーダーチームのグストのアシストたちも先頭に戻ってくる。平坦に入り、集団前方では各チームが見合いながらアタック合戦が勃発する。誰かが抜け出してはそのカウンターでアタックがかかる。その中でもやはり目立っていたのはアンカーであった。

マトリックスパワータグの安原大貴が単騎で抜け出したところからカウンターでアタックを仕掛けたのは、アンカーの鈴木龍と真っ白の全日本チャンピオンジャージを纏う初山翔。しかし、それも数kmで潰されてしまう。その後もインタープロサイクリングチームやチーム右京、那須ブラーゼンも飛び出しを試みるがすぐに吸収される。
途中で飛び出したブラーゼンの岸崇仁も、「1日目、2日目もブラーゼンとしては後手に回っちゃって、でも僕らは若いチームですし、失うものは何もなかったんで、3人ですけど序盤からみんな積極的に動いていこう、という中でのアタックでした。」と動きを見せた。

その間にグストが先頭を固めて集団のペースを下げる。ゆったりムードになった集団から一人、アンカーの石橋学がアタックをかける。アタックしたタイミングについて石橋はこう話す。
「集団が完全に止まっていて、もうずっとこのまま行くぞっていう雰囲気を出してたんで。そのままだともうサイクリングして最後スプリントになるだけのレースになっちゃうんで自分としては飛び出したかったです。アンカーはずっと攻撃してたんですけど、あんまり同調するところがなかったんで、一人になった時、一人か……と思いましたけど。(チームメイトの大久保)陣さんスプリントできるんで、(アンカーが集団を)引かなくていいようにアドバンテージとなればいいかなと思ってひたすら走ってました。」
同じくチームメイトの初山はその時の集団の様子について、「僕らは結構アタックやってたんですけどね。今日に関しては集団スプリントにしたいチームが予想以上に多くて、アンカーしかいかないみたいな感じになっちゃって、結果的に石橋が一人で行ったんですけど。」と話した。
 

最終ゴールのスプリントに向けて闘いが激化! 勝負の行方は写真判定に

グストが集団をコントロールし、ヒルの総合優勝に向けて残りの距離を縮める(photo:Hideaki TAKAGI)
グストが集団をコントロールし、ヒルの総合優勝に向けて残りの距離を縮める(photo:Hideaki TAKAGI)
総合では3分以上の差があった石橋の逃げを容認したグスト率いる集団からはそれ以上飛び出す選手はおらず、ほとんどが集団ゴールスプリントに向けた算段を立て始めていた。石橋と集団との差は数十秒から最高2分ほどまでに広がっていった。独走のまま、残り十数kmを残した地点にある最後のホットスポットを通過した。
石橋は逃げ切りについては、「あわよくばって思ってましたけど、所詮泳がされてるっていうのは自分でもわかってたんで。一人ですし。自分の脚が持つまで行ければいいかなという感じでした。」と振り返った。想定の範囲内か、スプリントに持ち込みたいオリバーズ・リアル・フード・レーシングやマトリックスパワータグの引きによりラスト5kmで石橋が集団につかまった。
 
ラストスプリント、僅差でエゴイツ・フェルナンデス(中央)が初勝利をあげる
ラストスプリント、僅差でエゴイツ・フェルナンデス(中央)が初勝利をあげる
石橋がつかまったタイミングで連日仕掛けていたキナンサイクリングチームの山本元喜がアタック。しかしそれもすぐに追いつかれてしまう。集団先頭を引くのはオリバーズ。どこのチームも最終ゴールのスプリントに向けてチームで位置取りをしながら速度を上げる。大集団のまま、ラスト500m地点。ここで集団先頭の左側を占めていたオリバーズ、アンカー、マトリックスの選手たちが車両誘導のための曲がるべきでない道へとミスコースしてしまう。
吉田隼人(マトリックス)のためのスプリント体勢を整えていた土井雪広は、前にいたオリバーズの選手と一緒に流されてしまったという。「いやぁ、全部あそこで崩れました。前は全部曲がっちゃったので、(自分らの)後ろにいた人が全部前に行っちゃいました。」と、最後のスプリントに参戦させることができなかったことを悔やむ。

集団先頭の右側に位置取っていた右京やグストの選手たちがラストコーナーから立ち上がってくる。ラスト50mで右京のエゴイツ・フェルナンデス・アヤルサグエナ、畑中勇介、グストのヒルがほぼ横一線に並んだ。ゴールラインの間際でハンドルを投げた3人が見合ったあと、畑中が手を上げた。しかし、結果はチームメイトの畑中とフェルナンデスの2人の写真判定に持ちこまれた。写真でドット一つ分ほどの差をつけて先にゴールを決めていたのはエゴイツ・フェルナンデスだった。

惜しくも2位と判定を受けた畑中は、「3日間ショートステージなので、ボーナスタイムがかなり総合に影響してくるところがあったんで、総合優勝は決まってたんですがその後ろでボーナスタイムとろうと思ってもがきました。その結果、チームでワンツー取れて良かったです。速報で1位という結果が出て結構喜んでたんですけど、個人的にはちょっとがっかりしました。だけどチームとしてはやっぱりワンツーフィニッシュってなかなかできないですし、第1ステージから存在感を見せられたのでトータルでは良かったです。勝ったのがチームメイトで良かったです。」と、悔しさを垣間見せながら笑った。

ステージ優勝をとったエゴイツ・フェルナンデスは、「チームとしてサルバドールが前日まで山岳賞を取っていたので、そのまま山岳賞を取れるように動いたんですがそれがかなわなかった。チームメイトと一緒にゴール近くまで行って、自分の持ってる力を振り絞ってゴールに飛び込みました。プロ1年目で初勝利を今日あげることができました。個人としてもチームとしても勝利をあげられたことはとても嬉しいです。」と喜びを語った。
 
最終ステージのステージ表彰式(photo:TdT2017)
最終ステージのステージ表彰式(photo:TdT2017)
チーム総合を獲得したのはキナンサイクリングチーム
チーム総合を獲得したのはキナンサイクリングチーム

初開催だったツール・ド・とちぎについて

今回初開催となったツール・ド・とちぎ。日本では数少ないラインレースを走ることができるこの機会について畑中は、「ここまで交通規制して、応援してくれる人もいっぱいいてっていうのが日本で、周回コースじゃなく行われたというのは画期的なことですよね。北海道もありますけど、こういうレースもっと増やしていけたら。日本人(選手)も盛り上がってましたから。ブリッツェンとかブラーゼンのおかげでファンもいっぱいいて会場を盛り上げてくれて嬉しいですね。」と語った。
地元チームで多くの応援を受けた岡も、「栃木の自転車熱が高い栃木だから開催できたんだろうなと思います。どのステージも気が抜けないいろんな展開があって、楽しいレースだったと思います。」と振り返った。

来年もツール・ド・とちぎは開催予定。今年通らなかった栃木県内の地域も来年のコースに組み込まれることになっている。3日間ながら日ごとにさまざまな展開で楽しませてくれるこのレースに来年も期待が高まるばかりだ。
 
総合1、2、3位の表彰
総合1、2、3位の表彰
4賞ジャージ中3賞を獲得したベンジャミン・ヒルと新人賞の岡
4賞ジャージ中3賞を獲得したベンジャミン・ヒルと新人賞の岡

リザルト

第3ステージ順位

1位 エゴイツ・フェルナン デス・アヤルサグエナ (チーム右京) 2時間23分43秒
2位 畑中 勇介  (チーム右京 ) 同タイム
3位 ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 同タイム
4位 徳田 匠(鹿屋体育大学 自転車競技部 ) 同タイム
5位 鈴木 龍(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)  同タイム

総合順位
1位 ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 6時間59分2秒
2位 ジャイ・クロフォード (キナンサイクリングチーム ) +14秒
3位 鈴木譲(宇都宮ブリッツェン ) +19秒
4位 ホセ・ヴィセンテ・トリビ オ・アルコレア (マトリックス パワータグ ) +22秒
5位 サルバドール・グアルディオ ラ・トーラ (チーム右京) +1分14秒

山岳賞
ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 13pt

ポイント賞
ベンジャミン・ヒル (アタッキ・チーム・グスト ) 67pt

ヤングライダー賞
岡 篤志(宇都宮ブリッツェン )

チーム総合
キナンサイクリングチーム