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もう一つの最北ツアー「きた北海道ロングライド」で宗谷岬へ

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“最北 北の大地へ~自転車乗りのロマン、宗谷岬を目指す”という記事が『サイクルスポーツ12月号』に掲載された(p82~87)。東京・羽田空港発着、2泊3日で旭川空港から宗谷岬までの旅行記だ。取材したのは、9月28〜30日。

8日後の10月8〜11日の3泊4日、同じく旭川空港発・宗谷岬着で、異なるルートをたどったモニターツーリング“きた北海道ロングライド”が催行された。CS記事中のライダーは半袖とレーパン姿だった。ところが、10月7日に稚内市で初雪を観察。モニターツアーの参加者は全身防寒具という出で立ち。時期と経路が異なると、道北ルートのツーリングはどう変わるのか、サイスポの記事を併せて読むことお勧めする。静岡県から参加したイラストレーター、岩本陽子さんから風景と旅の模様を描いたイラストレーションが届いたので、こちらもぜひご覧いただきたい。

 
サイクルスポーツ12月号、6頁の記事“最北 北の大地へ”
サイクルスポーツ12月号、6頁の記事“最北 北の大地へ”
全体コースマップ
全体コースマップ

いざ日本のてっぺんへ、出発!

“きた北海道ロングライド”は、日本最北欄地域の約325㎞を愛車で走りきる、3泊4日のモニターツアー。旭川空港を出発し、北海道遺産の天塩川を眺めながら、日本海沿岸を走り抜け、日本最北端の宗谷岬へ向かう自転車旅だ。

自転車ガイドが道案内をし、伴走車などのサポートも地域が担う地域発・地域初の企画。途中、ご当地スイーツの提供を受けながら、北へ天塩川の流れとともに1日均100kmを進む。昨年度より当エリアを巡るためのモデルコースの試走や検討を行ってきたが、モニターツアーとして今年度に実施にこぎ着けた。北海道観光振興機構広域観光推進事業の“道北版エコ・モビリティ事業”として実施された。

参加者は10人。男性8人・女性2人で、平均年齢は50歳台。道内から4人、静岡県と東京都から各1人、そして台湾から4人。台湾組は、旅行会社添乗員1人と集客した3人、全員が台湾から愛車を輪行してきた。ツアー参加者が旭川空港で自転車の組立をしていると、ザックを背負った数人のロードバイク集団が到着。自作のキャスター付き段ボール箱に自転車を分解して収納し始めた。台湾からのグループでガイドを付けないサイクリングの帰途だった。段ボール箱を空港のどこかに預けることができたようだ。
 
旭川空港で、飛行機輪行してきた自転車を組み立てる台湾からの参加者
旭川空港で、飛行機輪行してきた自転車を組み立てる台湾からの参加者
このルートの前半は、蛇行を繰り返す天塩川に何度も遭遇する
このルートの前半は、蛇行を繰り返す天塩川に何度も遭遇する

​1日目105km。大雪山系を眺めながら塩狩峠を越えてもち米の里、名寄へ

・旭川空港〜クラーク・ホースガーデン(昼食:旭川市)〜塩狩峠〜道の駅 絵本の里けんぶち〜道の駅 もち米の里なよろ~なよろ温泉サンピラー(泊:名寄市)
・平均勾配:上り2.4%・下り3%、最大標高差:199m、獲得標高:上り331m・下り307m(以上、当日にルート変更する前のデータ)


空港の気温標示は12.8度C。ウェアは、上下ともロングが必要だった。昼食場所はコテージ泊や乗馬体験ができる施設、クラーク・ホースガーデン。白樺の森の中に、馬が数頭つながれている。ウエスタン風のカフェは暖房でぽかぽか、ピリッとスパイスが利いたカレーと珈琲が冷えた体にはありがたい。ここは参加者に好評だった。「牧場に馬がいて、犬と鶏が放し飼い。ストーブに薪がくべてあった」と、前述の岩本陽子さんはお気に入りの光景をイラストで表現した。

午後のハイライトは、塩狩峠(標高273m、比布町・和寒町境)越え。上りは幹線の国道40号を通る。頂上の休憩所、塩狩パークで休憩。下りルートは、塩狩峠記念館から40号線をそれて静かな脇道へ。2車線の舗装路だが、クルマの往来はほとんどなく、まるで自転車専用道の趣き。最後は、まっすぐな道が彼方まで見渡せた。この直線路は10㎞近く続き、ザ・北海道という景色を味わえた。

最後の休憩地、道の駅もち米の里なよろに着いたのは、日暮れ時の16時40分。気温は、体感だが10度C以下まで下がった。泊地の、なよろ温泉サンピラーまでは残り19㎞だが、日没のためライドは打ち切りとなった。急なスケジュール変更だったが、運営スタッフ人が手分けして、参加者も自転車も無事宿へと送り届けた。手際の良さと夜遅くまで続いた運搬作業には頭が下がる。

 
1日目(10月8日)、出発地の旭川着 ⓒアトリエモコ岩本陽子
1日目(10月8日)、出発地の旭川着 ⓒアトリエモコ岩本陽子
1日目(10月8日)、旭川市の乗馬施設、クラーク・ホースガーデンで昼食 ⓒアトリエモコ岩本陽子
1日目(10月8日)、旭川市の乗馬施設、クラーク・ホースガーデンで昼食 ⓒアトリエモコ岩本陽子

2日目94km。天塩川の流れと一緒に河川敷や信号がない道を通って北へ

・なよろ温泉サンピラー発〜智恵文沼〜道の駅びふか〜天塩川温泉(昼食:音威子府村)〜道の駅おといねっぷ〜アトリエ3モア〜北海道命名の地〜道の駅なかがわ〜ポンピラ・アクア・リズイング着(泊:中川町)
・平均勾配:上り2.2%・下り2.4%、最大標高差:182m、獲得標高:上り277m・下り414m(以上、当日にルート変更する前のデータ)


走り出してすぐ大粒の雨が降り出した。雨具を着込み、防水シューズカバーを着ける。名寄市日進から智恵文沼(ちえぶんぬま)までのルートは、悠々と流れる天塩川に沿って続く緑のトンネル状の道。左側、木立の間から川面が間近にのぞくリバーサイドコース。護岸がされていない天然の姿が眺められる。右側斜面の上は、JR宗谷線が通る。交通量も少ない、お勧めの道。

智恵文沼は、蛇行する天塩川の三日月湖。樹木に覆われて、ひっそりとたたずむ景色は「キレイだった」と、台湾からの参加者、呂昭慶さん。この日の天気は、晴れては曇り、雨が降り、また晴れてとまさに千変万化。天気雨で、巨大な虹のアーチを何度も見ることができた。
昼食は天塩川温泉で、ご当地メニューの黒いソバ、音威子府そばと鶏の唐揚げ、大きなおにぎりのセット。

雨が激しくなったので台湾グループから午後の走行はキャンセルしたいと要望があり、走行を中止。日本人参加者に、ライドの継続か否かを問うと、ノーという人は皆無。「民族性の違いが出ましたね。台湾の人は状況に合わせ、日本人は計画どおりにする」。最終日の打ち上げの際に、通訳として参加した名寄市の李さんが、こう分析した。

午後の見所は、旧筬島(おさしま)小学校を利用した彫刻家砂澤ビッキの記念館、BIKKYアトリエ3モア。学芸員の解説付きでダイナミックな木彫作品を鑑賞できた。天塩川を左、右、左に見て、雨に煙る水墨画のような景色を眺めながら、宿となる中川町のポンピラ・アクア・リズイングヘ!

 
2日目(10月9日)、名寄市にある天塩川の三日月湖、智恵文沼 ⓒアトリエモコ岩本陽子
2日目(10月9日)、名寄市にある天塩川の三日月湖、智恵文沼 ⓒアトリエモコ岩本陽子

3日目126km。日本海側の海岸を利尻島を眺めながら走り日本のてっぺん、宗谷岬へ

・ポンピラ・アクア・リズイング発〜JR雄信内(おのぶない)駅〜JR豊富駅~キッチンゆうゆう(昼食:豊富町)〜夕日ヶ丘展望台〜宗谷ふれあい公園〜宗谷岬〜(バス移動)〜稚内サンホテル着(泊:稚内市)
・平均勾配:上り2.6%・下り2.1%、最大標高差:69m、獲得標高:上り342m・下り335m(以上、当日にルート変更する前のデータ)


JR宗谷線の無人駅、雄信内駅を出るころ、あられに見舞われる。緊急避難で、幌延(ほろのべ)駅から勇知駅までの駅間距離で37.3㎞を宗谷線で移動することになった。自転車は輪行数台と残りはサポートカーで運んだ。車窓から日本海、その向こうに三角形の利尻島がシルエットで浮かぶ。

昼食は悠遊ファームのキッチン悠々でバーベキュー。地元、サロベツ産の牛肉をはじめとする、北海道の食材を堪能した。昼食後は、日本海沿いのオロロンライン(道道106号線)経由で夕日ヶ丘展望台まで北上する予定だったが、強い西風が吹いて自転車のハンドルを取られるので、ルート変更となった。内陸へと進路を取り国道40号線経由で北上。大沼を眺めながらアップダウンを繰り返して、休憩地の宗谷ふれあい公園へ。建物内の部屋が用意され、利尻昆布のスープ、コーヒーの文字どおり温かいもてなしが待っていた。

 
あられに見舞われ、行程とルートを急遽変更。30㎞ほどを宗谷線で移動した
あられに見舞われ、行程とルートを急遽変更。30㎞ほどを宗谷線で移動した
稚内から宗谷岬へ至るシーサイドライン。強烈な西風が吹いた
稚内から宗谷岬へ至るシーサイドライン。強烈な西風が吹いた
サイクリストの聖地、宗谷岬。「日本最北端の地」の石碑前で記念撮影
サイクリストの聖地、宗谷岬。「日本最北端の地」の石碑前で記念撮影


ところで、ルート変更で走れなかったオロロンラインだが「最高の景色が眺められるコース」と、年に何回もサイクリングツアーこのルートに案内するという石塚裕也さんは太鼓判を押す。CS12月号のp82〜83に、海を望む原野の一本道を走る写真が掲載されているので参照していただきたい。

稚内空港の脇から、海岸線へ。左は日本海。宗谷丘陵が前方左に突き出ている。横風であおられながら進む。小さな岬を越えながら道は屈曲して続く。進路が変わり、最後は追い風。三角錐の“日本最北端の地”碑に到着。サイクリストの聖地である。自転車を頭上に掲げるお約束の万歳ポーズで、記念撮影。
前述の岩本さんは「宗谷岬から、曇っている空の下、浮かんでは消えて見えたサハリンが見えたとき、北の果てに来たという実感が湧いた」と、感想を語ってくれた。最後の宿、稚内サンホテルへバスで向かう道すがら、オレンジ色夕日を背景に利尻島の黒々としたシルエットが、招くかのようにくっきりと浮かび上がった。

さてこのコース、いつ走るのが最適なのだろう。「5月でも走れますがまだ寒いかもしれない。(気候的には)6〜9月がいいですね」と、ツアーのライドガイドを務めた原文宏さん。夏休みのツーリングにうってつけのコースだ。

 
3日目(10月10日)、JR宗谷線雄信駅付近の牧場風景 ⓒアトリエモコ岩本陽子
3日目(10月10日)、JR宗谷線雄信駅付近の牧場風景 ⓒアトリエモコ岩本陽子
3日目(10月10日)、宗谷岬からの帰途、利尻富士が燃えていた ⓒアトリエモコ岩本陽子
3日目(10月10日)、宗谷岬からの帰途、利尻富士が燃えていた ⓒアトリエモコ岩本陽子

4日目:ツアー後にフェリーで利尻島へ渡り日本最北端の大規模自転車道路を走行

モニターツアーは、各自の公共交通機関の発時間に合わせてホテル出発(稚内空港まで自転車をサポートカーで搬送)。


稚内港から利尻島の鴛泊までハートランドフェリーで約1時間40分。稚内のホテルでは朝6時半発のフェリーで利尻へ渡る人のために、5時から朝食バイキングを用意しているという。ツアーは終了したが、午後2時30分稚内港発のフェリーで利尻島へ渡った。宿泊は、利尻富士町にあるマルゼンペンション レラモシリ。

翌日、利尻島自転車道を、りしり富士地域協力隊の、澤田知仁さんの案内でサイクリングした。日本最北端に位置する大規模自転車道の“一般道道利尻富士利尻”である。北東海岸の野塚展望台から西海岸の利尻町運動公園までの全長24.9km。自転車道は、一般道と分離している区間がほとんどだが、一般道との共用区間が4個所ある。現地で無料配布している“利尻島サイクリングロード”地図には、時速8kmで走った場合の所要時間が、3時間15分と記されていた。

利尻町運動公園から走り始めた。クマザサが生い茂る原野の中に、自転車道が延びる。右手に、進むにつれて前方に白い雪化粧をした利尻山(標高1721m)が姿を変えながら望める。裾を広げコニーデ型の山容で別名、利尻富士。海沿いの道では、日本海に浮かぶ礼文島の平らな姿が見える。ここまでは、視界180度の大パノラマコース。

一変して、利尻富士温泉あたりから東は、樹木に覆われた山裾の高台に続く上り坂となり、いくつもの橋を越えて行く。深い谷に架かる橋からは、海岸線の眺望が開ける。姫沼の先で頂上に達し、最後は野塚展望台まで一気に下る。絶景を楽しめるルートだった。

 
稚内空港ターミナル前には、木製自転車ラック3台が設置されていた
稚内空港ターミナル前には、木製自転車ラック3台が設置されていた
日本最北端の大規模自転車道、全長24.9㎞の利尻島サイクリングロード
日本最北端の大規模自転車道、全長24.9㎞の利尻島サイクリングロード


参考までに、利尻島一周する場合の距離をお知らせしよう。車道のみだと53km/6時間37分、サイクリングロードを通ると60.2km/7時間31分と、利尻島サイクリングロード”地図に記されていた(所要時間は時速8kmで走った場合)。