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今年最初の山岳区間のツール第5ステージはベルギーのバンアーベルマートが独走で逃げ切ってマイヨ・ジョーヌも獲得!

レース
31歳で夢のマイヨ・ジョーヌを獲得したベルギーのバンアーベルマート(Photo: YAZUKA WADA)
31歳で夢のマイヨ・ジョーヌを獲得したベルギーのバンアーベルマート(Photo: YAZUKA WADA)
 
第103回ツール・ド・フランス(UCIワールドツアー)は、7月6日にリモージュから中央山塊のル・リオランまでの216kmで今年最初の山岳区間だった第5ステージを競い、ベルギーのグレッグ・バンアーベルマート(BMC)が独走で逃げ切って区間優勝し、マイヨ・ジョーヌに初めてソデを通した。

優勝候補が顔を揃えたメイン集団は、バンアーベルマートよりも5分以上遅れてゴール。マイヨ・ジョーヌを着ていた世界チャンピオンのペーテル・サガン(ティンコフ)は、23分45秒遅れだった。

ジロ・デ・イタリアで総合優勝したイタリアのビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナょそは、この日最初のカテゴリー2の峠で集団から遅れてしまい、結局14分近く遅れてゴール。ダブルツールの可能性はあっさり消えてしまった。

「ボクは大丈夫だ。ツールにはチームとアルーのために働きに来たんだとわかっている。足が働かなかったから、ギブアップしたのさ。目標はアルーを助けることと、五輪のためにいいコンディションを作ることさ」と、ニーバリはゴール後に語っていた。
 
バンアーベルマートはメイン集団に5分以上のタイム差を付けて逃げ切った(Photo: YAZUKA WADA)
バンアーベルマートはメイン集団に5分以上のタイム差を付けて逃げ切った(Photo: YAZUKA WADA)

ベルギー勢が区間ワンツー

35km地点を走る9人の逃げグループ(Photo: YAZUKA WADA)
35km地点を走る9人の逃げグループ(Photo: YAZUKA WADA)
集団はチームスカイのルーク・ロウが引く(Photo: YAZUKA WADA)
集団はチームスカイのルーク・ロウが引く(Photo: YAZUKA WADA)
(Photo: YAZUKA WADA)                         
(Photo: YAZUKA WADA)                         
第5ステージは好天の下を198選手が出走。最初の4ステージで誰もリタイアしないのは、2005年以来の記録だった。スタートからつづいた逃げの試みはなかなか成功せず、レイモン・プリドールの故郷サン・レオナール・ド・ノブラの丘にあったカテゴリー4の山岳ポイント(16.5km)は、マイヨ・アポワを着たヤスペル・スタイブン(トレック・セガフレード)が先頭で通過した。

21km地点で9人の逃げが決まり、バンアーベルマートもその一人だった。彼の他にはアンドレイ・グリフコ(アスタナ)、ラファウ・マイカ(ティンコフ)、シリル・ゴチエ(AG2R・ラモンディアル)、セルジュ・パウエルス(ディメンションデータ)、バルトシュ・フザルスキー(ボーラ・アルゴン18)、トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル)、ロマン・シカール(ディレクトエネルジー)、フロリアン・バション(フォルチュネオ・ビタルコンセプト)がいた。

2014年の山岳王であるマイカは、すでに第3ステージで7分近く遅れていて、総合争いからは遠ざかっていた。スタートから70kmを過ぎて、9人と集団のタイム差は6分以上に広がっていた。

85km地点で、9人の逃げからバンアーベルマート、ドヘント、グリフコの3人が先行。レースの中間地点で他の6人に1分15秒差を付け、チームスカイがコントロールする集団には10分近いタイム差を付けた。ゴールまで残り73kmで、その差は15分以上にふくれ上がっていた。

ゴールまで残り50kmになり、集団は目を覚ましたかのようにモビスターチームが引き始めてタイム差は縮まっていったが、それでも残り35kmでまだ11分も開いていた。

3人の逃げがカテゴリー2のパ・ド・ペロル峠を上り始めると、グリフコが付いて行けずに後退。先頭は2人のベルギー人だけになった。集団ではこのカテゴリー2の峠越えでマイヨ・ジョーヌのサガンだけでなく、ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ)も集団について行けずに遅れてしまった。

つづくカテゴリー2のペルテュス峠の上り坂で、バンアーベルマートがアタックし、同郷のドヘントを置き去りにした。ゴールまではまだ17kmあったが、バンアーベルマートは力強い走りで独走を続け、ドヘントに55秒差を付けて山頂を通過した。

最後のカテゴリー3の峠でも失速することはなく、バンアーベルマートは結局ドヘントに2分34秒差、メイン集団には5分以上の差を付けて中央山塊のスキーリゾート地、ル・リオランに到着し、勝利の雄叫びを上げた。彼は昨年も第13ステージで優勝していて、これがツールで2度目の区間優勝だった。

区間2位でゴールしたドヘントは、山岳賞のマイヨ・アポワと敢闘賞を獲得した。「後悔はしていない。ただ不運だったのさ。世界で最高の選手の1人であるバンアベールマートと一緒に先行しちゃったんだからね」と、彼は語っている。

前日まで18秒遅れの総合20位だったバンアーベルマートは、この日総合首位に立ち、31歳で初めてマイヨ・ジョーヌにソデを通した。自転車競技の『赤い悪魔』は、サッカーのユーロ2016で早々に敗退し、意気消沈していたベルギー人を元気づけてくれた。


メイン集団では、このエリア出身のロマン・バルデ(AG2R・ラモンディアル)が最後の上り坂でアタックしたが、ナイロ・キンタナとアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)によって鎮圧された。しかし、この加速にケガをしているアルベルト・コンタドール(ティンコフ)はつ付いて行けず、総合のライバルたちよりも30秒以上遅れてゴールした。

「とても難しい日だった。いくらか力を取り戻したと思っていたが、最後はツケを払わされた。もちろん、2度の落車のケガは痛むよ。難しくなることはわかっていた。いかに早く回復するかの問題だ。やる気は失わない。大勢の観客が僕を後押ししてくれるからね。ベストをつくして、何ができるのかを見極めるよ」と、コンタドールは語っている。 

 
 
観客の声援に背中を押され、難しいステージを乗り切ったコンタドール(Photo: YAZUKA WADA)
観客の声援に背中を押され、難しいステージを乗り切ったコンタドール(Photo: YAZUKA WADA)


■区間優勝してマイヨ・ジョーヌも獲得したバンアーベルマートのコメント「ドヘントを蹴落とした後、最後の17kmはクラッシュしないよう注意していた。アスファルトが溶けていて、とてもテクニカルだったんだ。僕は集中し続けた。自分がマイヨ・ジョーヌを取りに行ってるのはわかっていたけど、それは落車をしなければの話だった。それでも僕は、最後の1kmをエンジョイできた。

最後の瞬間は素晴らしい感覚だった。1年で最大のレースで、マイヨ・ジョーヌを獲得するために走るのはまったく違うものだった。今日、マイヨ・ジョーヌは区間優勝よりも重要だった。去年は初めてだったから、区間優勝が特別だったけれどね。僕のようなタイプの選手だとマイヨ・ジョーヌを獲得するのは難しいものだからね」


 
(Photo: YAZUKA WADA)
(Photo: YAZUKA WADA)
 
7月7日はピレネーに向けてさらに南下をつづけ、アルパジョン・シュル・セールからモントーバンまでの190.5kmで第6ステージが行われる。途中カテゴリー3の峠が2カ所、カテゴリー4の丘が1カ所あるが、ゴールは平坦だ。
 
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
MAP : ASO
 
■第5ステージ結果[7月6日/リモージュ~ル・リオラン/216km]

1 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)5時間31分36秒
2 トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)+2分34秒
3 ラファウ・マイカ(ティンコフ/ポーランド)+5分04秒
4 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+5分04秒
5 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+5分07秒
6 バルトシュ・フザルスキー(ボーラ・アルゴン18/ポーランド)+5分07秒
7 ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ/フランス)+5分07秒
8 アダム・イエーツ(オリカ・バイクエクスチェンジ/英国)+5分07秒
9 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+5分07秒
10 ティージェイ・バンガルデレン(BMC/米国)+5分07秒
30 アルベルト・コンタドール(ティンコフ/スペイン)+5分40秒
68 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+13分45秒
110 ペーテル・サガン(ティンコフ/スロバキア)+23分45秒
171 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+25分14秒
■第5ステージまでの総合成績
1 グレッグ・バンアーベルマート(BMC/ベルギー)25時間34分46秒
2 ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ/フランス)+5分11秒
3 アレハンドロ・バルベルデ(モビスター/スペイン)+5分13秒
4 ホアキン・ロドリゲス(カチューシャ/スペイン)+5分14秒
5 クリストファー・フルーム(スカイ/英国)+5分17秒
6 ワレン・バルギル(ジャイアント・アルペシン/フランス)+5分17秒
7 ナイロ・キンタナ(モビスター/コロンビア)+5分17秒
8 ファビオ・アルー(アスタナ/イタリア)+5分17秒
9 ピエール・ロラン(キャノンデール・ドラパック/フランス)+5分17秒
10 ダニエル・マーティン(エティックス・クイックステップ/アイルランド)+5分17秒
25 アルベルト・コンタドール(ティンコフ/スペイン)+6分38秒
50 ビンチェンツォ・ニーバリ(アスタナ/イタリア)+14分06秒
143 新城幸也(ランプレ・メリダ/日本)+33分07秒
[各賞]
■ポイント賞(マイヨ・ベール):ペーテル・サガン(ティンコフ/スロバキア)
■山岳賞(マイヨ・アポワ):トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)
■新人賞(マイヨ・ブラン):ジュリアン・アラフィリップ(エティックス・クイックステップ/フランス)
■チーム成績(黄ゼッケン):BMCレーシングチーム(米国)
■敢闘賞(赤ゼッケン):トーマス・ドヘント(ロット・ソウダル/ベルギー)
(http://www.letour.fr/us/)
 
 
いつものマイヨ・ベールに落ち着いたサガン(Photo: YAZUKA WADA)
いつものマイヨ・ベールに落ち着いたサガン(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・アポワを獲得したドヘント(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・アポワを獲得したドヘント(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・ブランはアラフィリップが守った(Photo: YAZUKA WADA)
マイヨ・ブランはアラフィリップが守った(Photo: YAZUKA WADA)
ドヘントは敢闘賞の赤ゼッケンも獲得した(Photo: YAZUKA WADA)
ドヘントは敢闘賞の赤ゼッケンも獲得した(Photo: YAZUKA WADA)






ツール第5ステージの公式ダイジェスト映像


Summary - Stage 5 - Tour de France 2016 投稿者 tourdefrance_en