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小林海(マリノ)の体当たりスペインロードレース参戦記 第10回

レース
こんにちは。「小林海の体当たりスペインロードレース参戦記」第10回目です!
 
今回は、全日本出場後にスペインへ戻ってからのシーズン後半戦と外国人チームメイトの入れ替わりによる生活の変化などについて書こうと思います。

 
ブエルタ・レオンに応援に来てくれたチームメイトのセルヒオのクルマと。日本車が大好きな彼はなんとしても日本人の僕とツーショットを撮りたかったそう

アルゼンチン人のマルコがチームメイトに

2週間の日本滞在中に一緒に住んでいたコロンビア人が全員帰国、代わりにアルゼンチン人のマルコが加わり宿舎で一緒に住むことになった。

マルコはジュニアの頃から7年間スペインで走ったアルゼンチントップクラスの選手で、最強のスプリンターとしてスペインでは知られた存在。アルゼンチンへ帰国後は中南米のチームを渡り歩き、今年ひさしぶりにスペインに戻ってきた。彼のとても陽気な性格と行動にはいつも驚かされる。例えば、スポーツ用品店に入ると、商品と価格の写真を撮って送信しまくる。アルゼンチンではヨーロッパなどの自転車関連商品が少なく、価格もとても高いそうだ。

彼は、7年間のスペイン滞在で培った人脈を駆使して様々な商品を安く入手し、大きなダンボールに詰めてアルゼンチンに送る。「せっかく来たんだからただじゃ帰らないよ」とよく言っていた。今まで僕の周りにはいなかったタイプの彼にはトレーニング後に振り回されることが多くなり、おかげで退屈な時間が減った。

 
左がマルコ


日本からスペインに戻る時、経由地のフランクフルトからの便が大幅に遅れてマドリッドに到着し、オビエドまでの国内便に乗り遅れてしまった。夜中12時発の夜行バスに何とか間に合い、オビエドには朝5時半に疲労困憊で到着。2日間休んで臨んだ後半戦最初のレースはGran premio de Arevalo、僕の苦手な風の強いスペイン中部の平地のレースだ。距離はArevaloという町をスタートゴールとする160km。気温が高く、湿度が低く、爆風が吹く。

僕はレース前から萎えていた。昨年このレースを走ったチームメイトのセルヒオに風向きが変わる区間などを教えてもらい、一緒に前に上がった。20km地点でできた約20人の先頭集団に入ることができて、集団は安定したまま100km程進んだ。脚の調子の良さを感じる一方で、エースたちの調子の悪さも感じていた。集団が残り30キロほどの所で活性化し、前後10人ずつに分裂した。僕はチームで唯一前に入り、もうこれはこの10人で決まりだな、と確信した。

何とか表彰台に上がりたいと思い、アタックなどには躊躇せず反応していたが、たまたまチームカーが上がって来て監督から声をかけられたタイミングで3人の逃げが決まってしまった。集団はなかなか協調体制が取れず、結局前に追いつくことができずに6位でフィニッシュ。苦手なタイプのレースで大きな進歩があったと感じた。シーズン序盤だったら完走がやっとのレベルのレースで入賞できたことは素直にうれしかった。

 

12日間で9日間走るハードスケジュール!

ブエルタサモラのゼッケン
その後1週間空き、スペインのステージレースシーズンが開幕した。ご存知のように、スペインではステージレースがとても重要視されている。それはプロだけではなく、エリート・U23カテゴリーでも同じだ。ステージレースが連続して行われるこの期間が、スペイン人選手たちの最も強い時期であり、選手として成長するためにもとても重要な期間だ。

ステージレースは、疲労困憊でも翌日また走らなければならない。その過酷な状況下で、レース中にやってはいけない無駄な動きやレース後の回復の仕方などを学んでいく。僕もブエルタ・アビラ2日間、2日休んでブエルタ・サモラ4日間、1日休んでブエルタ・レオン5日間という12日間で9日間走るハードスケジュールを経験した。きつく感じるのは最初の頃だけで、身体が痛くても疲れていても翌日レースをするということに慣れていき、終わる頃には、身体的にはものすごくつらいにも関わらず、なぜだかとても楽しくなっていた。

最初のブエルタ・アビラは、第1ステージÁvila-Navarrevisca、第2ステージEl tiemblo-Ávilaというエリート・U23のレース。序盤とても調子が良く、先頭集団20人に残り、このまま行けるんじゃないかと思った矢先にまさかのハンガーノック。ここまではっきりとしたハンガーノックにあったのは初めてだった。少し前まではよく脚が動いていたのにいきなりパタッと動かなくなり、先頭から回収車まで一直線、今シーズン2回目のリタイアとなった。この日のことは一生忘れないだろう。

つづくブエルタ・サモラは、プロローグToro-Toro、第2ステージRoales del Pan- Benavente、第3ステージHermisende-Lubian、第4ステージMoraleja del Vino-Zamoraと走るエリート・U23、4日間のステージレースだ。前回ハンガーノックでリタイアしてしまったが、調子は悪くなく、プロローグで20位、U23では6位だった。エリート、U23ともにスペインチャンピオンが出場しているとても濃いメンバーの中で、良い走りができたと思う。

 
ブエルタ・サモラ、プロローグスタート
ブエルタ・サモラスタート地点にあったトラック背面には自転車から1.5m離れて追い越そうというマーク


実はこの頃からTTが好きになった。2日目は、129キロの中盤に3級山岳が1つある比較的平坦なステージ。3級山岳で予想以上にペースが上がったため、集団の人数が大幅に減って60人ほどでゴールスプリントに向かった。チームメイトのセルヒオが僕の脚の調子の良さとスピードがあることをわかっていて最高の位置まで上げてくれて最終コーナーに差し掛かったが、予想以上にコーナーが深くまさかのコースアウト。絶好のチャンスを無駄にし、セルヒオに申し訳ない思いだけが残った。

3日目はスタートから2級山岳を上り、その後も5つの山岳を越えるというなかなかにエグいコースだったため、最終ステージのことを考えて早めに大人数のグルペットに入った。あまり脚を使わずに完走。自分にチャンスがなく、チームにも特に何も貢献できないと思った時は、早めにグルペットに入って翌日のために脚を貯める。これもステージレースを走る上ではとても大事なことだ。

 
ブエルタ・サモラ第2ステージのエグさがわかるコースプロフィール


4日目最終ステージは、60キロほど平地を走ってからサモラの街に入り、1.5キロの周回コースを20周する短いけれどとてもきついステージで、毎年完走者は20人ほど。この日もサモラの街に入ってから一気にペースが上がり、選手たちはどんどん千切れていく。街に入る時の位置取りが悪かったため、前に上がるのにとても苦労したが、何とか先頭付近まで上がり、周回をこなしていく。

僕はコーナリングなどがまだ上手くないので、上手い選手と比べて余計な脚を使っているのが一目瞭然だった。それでも最終コーナーですぐ前の選手が落車しなければ表彰台も狙えたほど脚があったのに、と残念でならなかった。
 

次回は、僕にとって転機となったブエルタ・レオンをレポートします。