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ヒルクライムの聖地、長野に新たな大会が誕生「ヒルクライム佐久2015」開催

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蓼科スカイラインを舞台とする初開催ヒルクライム

9月20日(日)、長野県佐久市にて「ヒルクライム佐久2015」の第1回大会が開催され、総勢約700人が初秋の蓼科スカイラインを駆け抜けた。初回大会としては成功に終わり、参加者の評価は高く、来年の開催を期待する声が多く寄せられた。今回は本誌・大宅が実走。大会のレポートをお届けしよう。
 
本大会は、佐久市合併10周年を記念し、佐久をヒルクライムレースでさらに盛り上げようという狙いから開催されたものだ。大会メイン会場は佐久市街にある生涯学習センターに設けられ、前日受付の方式だ。コースは蓼科スカイラインの上り口地点をスタートし、ペンションや別荘が立ち並ぶ「蓼科仙堺都市」にゴールする全長23㎞(ゴール地点の標高は2029m)。標高差は1325m、平均勾配は5.7%で、上りごたえは十分だ。なお7.2㎞のショートコースもある。メイン会場からスタート地点までは約2㎞ほど離れており、その区間は収穫前の黄金色に輝く田園地帯をパレード走行する。
 
「ヒルクライム佐久2015」公式ウェブサイトより
「ヒルクライム佐久2015」公式ウェブサイトより


メイン会場は開業したばかりの北陸新幹線も通るJR佐久平駅が近く、輪行なら東京駅から乗車時間は約1時間半しかかからない。クルマの場合でも佐久インターチェンジが近く、高速道路で都内から3時間もあれば会場まで到着できる。首都圏からのアクセスが良好なのも魅力の一つだ。

 

コースは抜群の走りやすさ おもてなしも充実

実際にレースに参加してみて、非常にバランスの取れたよいコースだと感じた。路面はところどころ荒れた箇所もあるが、全体的によく整備されており、多くが2車線で広い。勾配は序盤と終盤にきつい箇所があるものの、足をついてしまうほどのどうしようもない激坂区間はなく、ビギナーでもペース配分に気を付ければ十分完走可能だ。

木漏れ日が差すグリーントンネルが続き、直射日光を避けられるので暑さの心配も少ない。参加者の走行マナーもよかった。ただし、ゴール付近になると多少展望が開けてくるが、ヒルクライムレースならではの絶景ポイントはあまりない。どちらかというとストイックにレースに集中したい人向けのコースといったところか。

 
田園地帯を抜けてスタート地点へ向かうパレードラン
田園地帯を抜けてスタート地点へ向かうパレードラン
チャンピオンクラスのスタートシーン。沿道では地元ゆるキャラ「ハイぶりっ子ちゃん」が手を振る
チャンピオンクラスのスタートシーン。沿道では地元ゆるキャラ「ハイぶりっ子ちゃん」が手を振る
コースは多くが2車線で広く、路面も非常にきれいだ
コースは多くが2車線で広く、路面も非常にきれいだ


チャンピオンクラスの優勝者は星野貴也さんで、記録は1時間3分。女子カテゴリーは女子A(16才~35才)と女子B(36才以上)があり、最速タイムは女子B優勝で、元オリンピック選手・中込由香里さんの1時間17分だった。

さて、筆者はというと、ゆっくり無理のないペースで上って1時間50分。来年の参加を検討するヒルクライムビギナーに参考にしてもらえれば幸いだ。

 
チャンピオンクラス優勝の星野貴也さん。
チャンピオンクラス優勝の星野貴也さん。
女子トップタイムの中込由香里さん(右から2番目)とチーム・シーナックの皆さん
女子トップタイムの中込由香里さん(右から2番目)とチーム・シーナックの皆さん
女子A優勝の土屋さん。自慢のバイクは日本で数台しかない限定モノ
女子A優勝の土屋さん。自慢のバイクは日本で数台しかない限定モノ


ゴール地点では、ヒルクライム後のすきっ腹にはうれしい軽食がふるまわれた。たっぷり具だくさんの豚汁、おにぎり、そして佐久特産品のプルーンだ。特にプルーンは甘さと酸っぱさがマッチし、大粒で食べ応えのある一品。「これはおいしいね!」と喜んでいる参加者が多かった。
 
 
ゴール地点でふるまわれた豚汁。具だくさんでおいしい
ゴール地点でふるまわれた豚汁。具だくさんでおいしい
おにぎりはやさしい味付けで何個でも食べたくなる
おにぎりはやさしい味付けで何個でも食べたくなる
佐久特産のプルーン。かなりの大粒
佐久特産のプルーン。かなりの大粒

レースに集中できる環境とアクセスのしやすさが最大の魅力 来年も開催に期待

表彰式では、各カテゴリー優勝者へインタビューが行なわれたが、「路面が非常によく、走りやすくてよかった」「来年もぜひ開催してほしい」とコースを評価し、来年の開催を求める声が多かった。

女子Aクラスで優勝した土屋さんにゴール後の感想を聞いてみると、「走りやすく、いいコースだった。ところどころ景色の開けている場所があったのもよかった。また、佐久はとてもあったかい町だと感じた」とのことだ。表彰台に上った選手は多くが都内からの参加者で、全体として首都圏からの参加者が多かったことがうかがえる。
 
近年、人気の高い有名ヒルクライムレースが天候不順や災害で中止となる事例が増えている。標高の高いロケーションで開催される大会は、春先であれば降雪、夏場であれば大雨などに見舞われるのも仕方のないことだろう。そうしたことを考慮すると、本大会の最大の魅力はレースに集中できる環境とアクセスのよさにあるといえよう。

正直なところ、コースの絶景ポイントは少なく、また会場も乗鞍や草津のようなヒルクライマーに知られた場所とはいいがたく、普通の町中にある。しかし、非常に走りやすくかつ上りごたえのあるコースであり、開催時期としても雨や災害は少なく安定した運営が見込めそうだ。会場が山奥にあるわけではなく、コンビニやスーパー、近隣に地元の特産品を使ったおいしい飲食店が多いので、むしろレース準備がしやすく、競技に集中でき、グルメも楽しめる。首都圏や近隣の主要都市からのアクセス性が高いので、移動に苦労しない。9月でシーズンも終盤となり、1年の総決算として挑む大会としてよさそうだ。
 
佐久市市長、大会主催者によると、「来年も開催したいと考えており、より多くの人々に参加してもらえる大会に成長させたい」ということだ。今後名物大会になることを期待したい。
 
なお、サイクルスポーツ12月号(10月20日発売)でも、多くの写真を交えてレポートを掲載する予定なので、ぜひ読んでみてほしい。

 
地元ゆるキャラ「佐久の鯉太郎」。来年もこのキモかわいい鯉太郎が待ってるかも
地元ゆるキャラ「佐久の鯉太郎」。来年もこのキモかわいい鯉太郎が待ってるかも


text●本誌・大宅宏幸 photo●吉田悠太、編集部

主催者●佐久市・(公財)日本サイクリング協会
開催地●長野県佐久市
 
ヒルクライム佐久2015 公式ウェブサイト
http://www.j-cycling.org/saku/