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路線バスと自転車、道路共有のあり方を考えるシンポジウム開催

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歩行者に危害を加えることのある自転車も、車道ではクルマの脅威にさらされている。そんな“交通弱者”である自転車が、いかに安全で快適に走行できるようになるか。その一つの解決策を探る場となったのが、日比谷公園の一画にある「日比谷グリーンサロン」で、23日夜に催されたシンポジウム『めざせ!TOKYO自転車革命 自転車通勤の危機を跳ね返そう!』だ。

 

主催した自転車活用推進研究会は、これまでも自転車走行レーンを提唱するなど自転車の地位向上、安全で快適な走行環境実現のために力を尽くしてきたが、この日は自転車通勤に絞って、なかでも路線バスとの共存をいかに進めるかをテーマに討論。路線バスの運転手でありツーキニストでもあるという稲見正博さん、風間吉泰さんのお二人もパネリストに加わった。

 

会場となった日比谷グリーンサロンは、自転車の未来に関心を持つ人たちで埋め尽くされた

会場に集まった参加者が認識を共有するため、冒頭に映し出されたのが国道246号線の通勤風景。そこには信号無視や逆走、後方確認をしないままの進路変更、歩道と車道の行ったり来たりなどなど、勝手気ままな自転車乗りの実態が明かされている。しかもそれが極端な事例だけを抽出したものではなく、日常のごくありふれた光景であることは、都市部の車道を走ったことのある人なら誰もが納得するはずだ。

 

こうした自転車乗りの振る舞いの影響を最も受けるのが路線バス。バスの運転手は左端の車線を共有する存在である自転車に対し、つねに注意を払わなければならない。のみならず前方を走る自転車が急に進路を変えたときなど、危険を回避するためブレーキをかける場合も、ただかければいいわけではない。バスの乗客の多くは高齢者や障がい者、妊婦、幼児など、たとえイスに座っていても体勢を保つことが困難な方たちであり、急ブレーキをかけようものならイスから転げ落ちて大けがをすることになる。つまり運転手は車外と車内の両方に細心の注意を払いながらハンドルを握っているのだ。一方で自転車にとっても、車幅があるうえに停留所ごとに止まるバスの存在が何かと目障りに感じられる。

 

壇上に並んだパネリストたち。彼らの声を直接聞くことのできた意義は大きい

となると当然、路線バスと自転車はお互い相容れない存在と思ってしまいがちなのだが、大局的な観点に立てば路線バスは慢性的なオーバーユースとなっている都市の道路事情を変えていくうえで欠かせない存在であり、それはクルマからの転換を担う自転車も同様。つまり路線バスや自転車こそ車道における優先順位が高くあるべきだし、それらが走りやすい道路に変えていくというのが、これからの道路行政に求められている。

 

そして、その先駆となるべく期待されているのが、まさに問題事例として取り上げられた国道246号線の、駒沢から三軒茶屋までの区間なのである。ここで国土交通省は、片側3車線のうち左端の1車線を路線バスと自転車の共有通行帯とすべく検討を始めたところ。自転車ツーキニストの疋田智さんによると、実際に自転車先進地域であるヨーロッパではそのようにして成果を上げた事例が多々あるとのことで、今後の成り行きが注目される。

 

本誌連載でおなじみ、サイクルライフナビゲーターの絹代さんがコーディネーターを務めた

ただし、危惧されることもある。前述したようにバスは車幅があるため、現状のままでは自転車が追い抜く際、隣の車線にはみ出さざるをえないのだ。確かに他の車線が3.2mあるのに対し、左端の車線は2.7mしかない。そのように割り振られている事情はわからないが、共有通行帯を設置する以上、他の車線を狭めて左端の車線を広げるほかはない。このことは疋田さんが強く主張していたうえ、その声は同じくパネリストとなった国土交通省東京国道事務所長である西尾崇さんや、自転車活用推進議員連盟の小泉昭男参議院議員の耳に直接届いたので、実施にあたっては何らかの措置が施されることを期待したい。(澤田 裕)

 

東京国道事務所長である西尾崇さん(右)の説明を聞く、路線バス運転手の稲見正博さん(中)と風間吉泰さん(左)


限られた時間のなか、会場からも活発に質問や意見が寄せられた