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【ツール速報】 ピレネー決闘シュレック制すも首位変わらず

レース

第97回ツール・ド・フランスは、休養日明けの7月22日に、ピレネー山脈の最終日でツールマレー決戦を競い、ルクセンブルクのアンディ・シュレック(チームサクソバンク)が、山頂まで残り10kmでマイヨ・ジョーヌのアルベルト・コンタドール(アスタナ)とのデュエルに挑んだが、タイム差を付けることはできず、区間2勝目を上げるに留まった。3位には1分18秒遅れでホアキン・ロドリゲス(チームカチューシャ)が入っている。日本の新城幸也(Bボックス・ブイグテレコム)は、28分17秒遅れの100位でゴール。最後の最難関ステージを越え、ツール2度目の完走が見えて来た。

ポーからコル・デュ・ツールマレーまでの174kmで競われた第17ステージは、172選手が出走。スタート前にゴールのツールマレー峠では雨が降り、最高気温7度Cの予報が出ていた。3km地点で7人が飛び出し、すぐにこの日の逃げグループを形成した。メンバーはクリスチャン・コレン(リクィガス・ドイモ)、エドワルド・ボアソンハーゲンとフアンアントニオ・フレチャ(チームスカイ)、マルクス・ブルクハルト(BMCレーシングチーム)、アレクサンドル・コロブネフ(チームカチューシャ)、レミ・ポリオル(コフィディス)、R・ペレス(エウスカルテル・エウスカディ)。集団ではスタートから30分も経過していないのに、ランプレのシモン・スピラクが途中棄権してしまった。17km地点で、逃げる7人のタイム差は3分10秒。集団からはイグナタス・コノバロバス(セルヴェロテストチーム)が飛び出して追走を開始した。24km地点で落車が発生し、総合3位のサムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ)が巻き込まれた。ヒジを負傷したサンチェスは一時集団から遅れてしまったが、3人のチームメートに引かれて無事復帰した。集団がマイヨ・ジョーヌのコンタドールの指令でサンチェスの復帰を待つ間に、カルロス・サストレ(セルヴェロテストチーム)がアタック。チームメートのコノバロバスに合流した。

56.5km地点、この日最初のカテゴリー1のマリーブランク峠で、7人とサストレのタイム差は1分20秒、メイン集団とは8分15秒差だった。この坂でコノバロバスは集団に戻り、追走はサストレ1人になった。つづく117.5km地点のスーロール峠で7人とサストレの差は2分55秒に広がり、集団は4分25秒後にせまっていた。結局サストレは、116kmの追走劇をゴールまで残り34km地点で終え、集団につかまってしまった。

残り20km、最後のツールマレー峠のふもとで7人と集団とのタイム差は4分5秒だった。幸いにも予報は外れ、ツールマレー峠に雨は降ってしなかったが、選手たちを迎えたのは、伝説の峠らしい深くたちこめた霧だった。登坂が始まると逃げ集団は崩壊。先頭はブルクハルトとコロブネフの2人だけになった。メイン集団はサクソバンクのファビアン・カンチェッラーラが引き、つづいてクリスアンケル・セーレンセンが先頭交代。この加速でメイン集団はすぐに30人ほどの精鋭に絞られてしまった。先頭ではコロブネフがアタックし、単独でゴールを目指した。

残り10km、もうツールマレー峠しか勝負どころが残されていなかったシュレックが、満を持してアタック。マイヨ・ジョーヌのコンタドールが後、方にぴったりと張り付いて最後の決闘が始まった。2人は峠の両側にあふれる観客をかき分けるように前進し、前を走っていた選手たちを次々に追い抜いた。そして残り8.5kmでコロブネフも追い抜き、先頭に躍り出た。ずっとシュレックの後輪に張り付いていたコンタドールは、残り4kmで一度だけアタックを試みたが、シュレックを置き去りにはできず、状況はふたたび同じ形に戻った。深い霧のなか、フラムルージュをすぎてもフェンスがないツールマレー峠の人垣をかき分け、シュレックとコンタドールはぴったりと寄り添ってゴールに到達。そして先頭のシュレックが両手を上げてゴールラインを通過した。

「今日このステージを勝ててものすごくうれしいよ。今年のツールの最難関だからだ。ツールマレーで勝つのは、ラルプ・デュエズで勝つのと同じさ。区間優勝には満足しているけど、ボクはマイヨ・ブランからマイヨ・ジョーヌに着替えたかった。でも、それは可能じゃなかった。本当に一生懸命トライした。それは確かだ。ボクはリズムを変えて、すべてをやってみた。けれどボクたちはどの上りでも同じレベルだったんだ。アルベルトがアタックしたときも、ボクは彼についていけた。すぐに応えられた。でも最後に、彼は区間優勝するためのスプリントはしなかった。ボクがほとんど働いてたからだ。それはものすごくリスペクトする。彼は偉大なチャンピオンであることを示したんだ」と、区間優勝したシュレックは、自らの走りと区間優勝を喜び、同時にライバルのコンタドールを讃えた。「エル・ピストレロは強い。だろ? ボクは彼を蹴落とせなかった。彼はいつもそこにいた。どこかで弱点を見つけたかったけど、だめだった。彼はむしろアタックして、こう示したんだ。やい若造よく聞けよ、オレはここにいるからな。このゲームはオレと闘うべきじゃないゼ...ってね」と、25歳のマイヨ・ブランは付け加えている。

シュレックとの一騎打ちを危なげなく乗り切り、3度目のツール総合優勝に一歩近づいた27歳のコンタドールはこう語った。「ボクは本当に調子がいいと感じていた。とくに最後の上り坂でね。ゴールまで4kmでアタックしたのは、ボクにはまだ脚が残っていて、ここにいるんだとアンディに見せるためだったのは確かだよ。上り坂で彼はとても速いリズムを強要した。彼はボクたちの後ろにいたライバルたちに差を付けたかったからだ。個人的には、ボクはアンディに集中しつづけていた。みんなはボクが去年よりも走りにキレがないと言うけど、レースの状況はまったく変わっている。実際に、ボクは毎日好調だと感じているんだけれど、多分より慎重になっているんだ。調子のよかった日に、アタックするチャンスも必要もなかった。多分ボクも年を取ったってことさ!」

■第17ステージ[7月22日/ポー→コル・デュ・トゥールマレー▲▲▲▲/174km]
1 アンディ・シュレック(チームサクソバンク/ルクセンブルク)     5時間03分29秒
2 アルベルト・コンタドール(アスタナ/スペイン)
3 ホアキン・ロドリゲス(チームカチューシャ/スペイン)           +1分18秒
4 ライダー・ヘスイェダール(ガーミン・トランジションズ/カナダ)      +1分27秒
5 サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ/スペイン)      +1分32秒
6 デニス・メンショフ(ラボバンク/ロシア)                 +1分40秒
7 ロベルト・ヘシンク(ラボバンク/オランダ)                +1分40秒
8 クリストファー・ホーナー(チームレディオシャック/米国)         +1分45秒
9 ユルフン・バンデンブルーク(オメガファルマ・ロット/ベルギー)      +1分48秒
10 ロマン・クロイツィーゲル(リクィガス・ドイモ/チェコ)          +2分14秒
■第17ステージまでの総合成績
1 アルベルト・コンタドール(アスタナ/スペイン)          83時間32分39秒
2 アンディ・シュレック(チームサクソバンク/ルクセンブルク)           +8秒
3 サムエル・サンチェス(エウスカルテル・エウスカディ/スペイン)      +3分32秒
4 デニス・メンショフ(ラボバンク/ロシア)                 +3分53秒
5 ユルフン・バンデンブルーク(オメガファルマ・ロット/ベルギー)      +5分27秒
6 ロベルト・ヘシンク(ラボバンク/オランダ)                +6分41秒
7 ホアキン・ロドリゲス(チームカチューシャ/スペイン)           +7分03秒
8 ライダー・ヘスイェダール(ガーミン・トランジションズ/カナダ)      +9分18秒 
9 ロマン・クロイツィーゲル(リクィガス・ドイモ/チェコ)         +10分12秒
10 クリストファー・ホーナー(チームレディオシャック/米国)        +10分37秒
■マイヨ・ジョーヌ:アルベルト・コンタドール(アスタナ/スペイン)
■マイヨ・ベール :トール・ヒュースホーウト(セルヴェロテストチーム/ノルウエー)
■マイヨ・アポワ :アントニ・シャルトー(Bボックス・ブイグテレコム/フランス)
■マイヨ・ブラン :アンディ・シュレック(チームサクソバンク/ルクセンブルク)
■チーム成績   :チームレディオシャック(米国)
(http://www.letour.fr/)