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小林海(マリノ)の体当たりスペインロードレース参戦記 第6回

レース
こんにちは。「小林海の体当たりスペインロードレース参戦記」第6回目です。前回はレースが始まるためAlicanteからCantabriaのオスカルの家に3日間戻り、そこからチームの宿舎があるAsturiasに移動するところでした。あれから約2週間、新しい環境に早くも順応し、快適な生活を送っています。今シーズンは日本に帰国するまでここに住む予定です。3月1日の初戦の内容と結果は後ほどご報告するとして、まずはここでの生活についてです。
 
チームの新ジャージを着て撮影。謎のジャパン仕様・・・。
 
選手の生活環境は?
宿舎であるマンションの一室は、チームのスポンサーから貸与されています。光熱費もスポンサー持ち、食費はチームが負担してくれています。チームドクターが作った「選手が食べて良い食品リスト」があり、必要な食材の項目にチェックをしておくと、監督が毎週一回、一週間分を買って来てくれます。その他生活に必要な雑貨類も基本的にはチームが負担します。
 
チームメイトとトレーニング。左が元欄プレのオレクサンドレ。右が大学生のパブロ
 
ここに到着して最初の1週間は僕1人でしたが、先週ウクライナ人のオレクサンドレが合流して、今は2人です。この後コロンビア人が2人来る予定ですが、ビザの関係で3ヶ月しか滞在できないため6月には帰国するそうで、それまでは4人の生活になります。レース前には国内の選手が泊りに来ることもあります。
寝室は3つあり、2人部屋が2つに、3人部屋が1つ。と、こんな感じです。各自が個人的に欲しい食べ物や飲み物を買う以外は基本的に生活にお金はかかりません。正直とんでもなくありがたいです。
今度、みんなが共同で使うためのパソコンまで買ってくれるとか。お金あるなあ、なんて思ってたら、監督いわく「ベルギーやオランダにある小さなコンチネンタルチームくらいの資金力はある。あっちにはコンチチームがたくさんあるが、こっちの少しお金のあるアマチュアチーム程度の規模だから。逆にうちみたいなアマチームは少ない。」だそうです。
 
こっちに来て初の6時間以上のロングトレーニングで辿り着いた、Oviedoの観光名所の峠。ブエルタ・ア・エスパーニャでは、何度もコースに組み込まれたところだそう
 
宿舎といえば“鉄の掟”
そして宿舎の鉄の掟は「掃除をすべし」。普段から掃除をして常にきれいにしておくこと。「不潔なところに住んでると体調不良の原因になるし、チームはお前たちにレースを走ってもらうためにお金を使ってる。良い成績を出してもらうためにお金を使ってる。だから自分達の体調管理はしっかりしてもらう。掃除しない奴は追い出す。」とのこと。
今のところ、僕たち2人は問題ないが、このあと来るコロンビア人たちには要注意だそうだ。これも監督談。まあ、今のところここでの生活はとてもうまく行っているので、このまま楽しく生活できればと思う。
アストゥリアス地方の眺めのいい大自然
 
気になるレースの結果は?
さて、前回の3月1日のレースについてです。場所は首都マドリッド近郊のトレド。レースの主催者は1959にスペイン人で初めてツール・ド・フランスで総合優勝したフェデリコ・バモンテス氏。レースの距離は133km。コースはトレドの街をスタートし、基本的に平地でところどころに緩いアップダウンが少しあり、1.5kmほどの上りが1つあるコースを計4周して、スタート地点のトレドに戻る、という感じ。コース自体は決して厳しいコースではないものの、例年強風で集団が分裂するというレース。
幸い?今年は風がほとんどなく、比較的簡単なレースになった。同日開催のステージレースがあったため少し層は薄いものの、このレースにベストメンバーを連れて来ている強豪チームもあったため、レース前の作戦会議では4人の強豪選手をマークし、この中の1人でも逃げようとしたら必ずチェックするように、となった。
 
そしてレース開始。風もなく、コースも簡単なのでとにかく逃げを作ろうとする動きが前で頻繁に起きる。レース前半は後方にいるのが好きな僕だが、今日のコースで今日くらいのメンバーだと逃げが決まると誰も追わなくなるので、すぐに前に上がって強豪選手が逃げようと試みるのをチェックに入ったり、一緒にエスケープしようと何度か試みるが、なかなか逃げが決まらないままレース中盤に差し掛かる。
ここで8人程の逃げグループが形成される。マーク対象ナンバー1の選手が入っているのに、うちのチームが誰もいない。人数を揃えてるチームの中で唯一逃げに1人も乗ってないのが我がチーム。ここで監督から「1人を除いて、他全員で前を追う」という指示が出た。7人でローテーションをするが、初戦で、しかも初めて顔を合せるメンバーが多いためなかなか息が合わない。しかもU23の1年目の選手達などはキツいのか何なのかわからないが、さぼり始める。
で、気付くと毎回同じ3人になっていて、誰かが全員を収集にかかりに後ろに下がる、の繰り返し。正直イライラがMAXだった。その結果、全員がしっかり仕事をすれば追いつくものも追いつかず、逃げがそのまま最終便になった。
 
不満が残るも、これがロードレース
レース中、今日の(一応)エースとされている選手より、正直僕の方が確実に強い自信があったので、引いてる時にもかなり迷いがあった。こいつのために仕事して意味があるのか。仮に逃げを捕まえられても、こいつで勝負できるのか。恐らく他のチームの手助けをしているだけだろう。などと考えているも、チームカーが上がって来て監督からは「とにかく引け、前を捕まえろ!」と言われる。さすがに初日からがっつり監督の指示をしかとすることはできないので、最終的には最後まで仕事をすることにした。
結局、今日のエースはスプリントがないのに最後の上りでアタックなりの動きもせず、そのまま僕と同じメイン集団ゴールしたことに、僕は怒りMAXでレースを終えた。集団の頭は超絶スプリントの強い選手が取ったので無理だったにせよ、仕事をしていなければ、その後ろくらいにはなれた、10位前後で入れたはずだと思ったからなおさらだ。超絶フラストレーションの溜まったレースとなった。
まあ、これが自転車レースなので仕方ない。自分がエースになった時に同じことをしてしまうかもしれないし、チームメイトをイライラさせてしまうかもしれないし、こういった点がこのスポーツの難しさでもある。働いた分はしっかり返して貰うけど。
 
レース前にいきなり監督に取り付けられたカメラ。撮影した動画は後日アップされるのかな? そうしたらURLをお知らせします
次のレースは15日の日曜日。場所はカンタブリアで、自分がずっとトレーニングをしてきた場所なので知り尽くしている。そして登りが超絶キツいのも知り尽くしてる。まだ今の自分のコンディションではかなりしんどいレースになりそうだ。頑張ります。