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カンパニョーロのリヤ12速を試乗! 16Tの真価は? +1枚に意味はあるのか?

2日間の試乗日程のうち、1日目はレコードのリムブレーキノーマルキャリパーモデルで約50km、1000mの標高差。2日目はスーパーレコードのディスクブレーキモデルで約60km、1100mの標高差があるコースを試乗した。


製品の基本情報をおさらい「カンパニョーロがリヤ12速化!」


 
text:Takehiro Nakajima

+1枚の真価を確かめに 再びカナリアへ

グランカナリア島の海岸線を行くジャーナリストたち
グランカナリア島の海岸線を行くジャーナリストたち
両日ともに晴天。コンポーネントメーカー、世界初の多段変速システムを作った会社としての意地を感じる、機械式変速でさらなる高みを目指すというストーリーが、まずいい。高級品である以上、こういうマインドやストーリーも所有する喜びには欠かせない。肝心の性能はどうか。

実は、昨年のディスクブレーキH11シリーズが発表されたときに、H11の機械変速モデルに試乗した時は、ブレーキの性能には満足したが、こと変速性能においては「?」が頭に浮かんだ。ちょっと微妙だなと。なので、そんな状態でリヤのギヤを1枚増やすなんて……と、試乗する前には勝手に思っていた。

あてがわれた試乗車のサドル高、ポジションをあわせてバイクにまたがる。エルゴパワーに手をかけると、ブラケットの形状自体は確かにほとんど変わっていないし、握ってみた胴回りのサイズも自然に受け入れられた。違いを感じたのはブレーキレバーのタッチだ。前作よりも肉厚になった感じがある。指の腹が触れる部分のボリュームが増えている印象だ。

ブレーキレバーのリーチアジャストが2段階ついているので、うまく活用したい。一気変速は5ダウン、3アップシフトが可能だ。
 

より自然なライドフィールを獲得


懸案の変速性能は、走り出せば、それは大きなお世話だったことを理解した。変速はスパスパ決まる。レバーの動きとしっかりリンクしている。12速になったことでギヤの歯間が詰まっているので、リヤはより少ないストロークで変速でき、チェーンがちゃらちゃらと音を立ててしまうような、"いまいち決まらない"という状態も起こりにくいように思えた。実際2日間、10人以上のジャーナリストと一緒にライドしたがそういったトラブルは見受けられなかった。

操作の重さは、シマノのデュラエース機械式変速と比べるとスーパーレコードのほうが力が必要に思う。手首のスナップも多く必要だ。デュラエースの変速は「たたけば変速が完了する」と言ってもいいくらい、軽い力で変速できる。

その理由を自分は両者の設計思想の違いとして見て取る。欧州の製品は、操作した感じを大切にすることが多い。部屋のスイッチ、白物家電の操作などがそうだと自分は思っている。しっかりした操作感があることが安心、確実な操作を実現しているからだ。操作自体が多少重かったとしても、結果が確実ならばそのほうがいい。

大きくなった変速レバーも、アクセスしやすい。もともとシフトアップとダウンのレバーが離れているので指で捉えやすいわけだが、特にシフトダウンレバーが、今まででは指が浅くかかっていたであろう位置からでも操作ができる。

そして12速化のキモ、追加された16Tのメリットを感じるか。これが難しい。実は走っている分にはあまりに自然過ぎるのだ。ローが1枚増えたら坂が楽に上れたなど、すぐにわかるメリットが発生するが、12速化のメリットはなにより「自然な変速ができている」ということに尽きるのだ。

サイクリング上級者にはその感覚を持つ人が多い。使用頻度の高いギヤ比ゆえに、地形が一定のところで一定のペースで走りたいというシチュエーションで余計な変速が必要なくなり、脚への負担も少なくなる。大きな意味を持ってくるのだ。

 
ディスクブレーキは昨年テスト済みだが、改めてそのタッチの良さを実感。

開発にはマグラが協力しているわけだが、マグラのMT8をさわった記憶と比較してみてもカンパニョーロの方が気持ち動作がリニアな感じが強いように思う。マグネットスプリングを内蔵している効果か。

全く新しい、リムブレーキについては、テフロン加工に似た表面処理が施された新型ワイヤと相まって操作感は軽い。

制動力もカンパニョーロのブレーキタッチらしく、レバーの引き以上でも以下でもないリニアな立ち上がり方に、すこしアーチの強さがプラスされたように思う。1つ言わせてもらうなら、もうちょっと見た目にカンパニョーロらしい個性が欲しかった……。

変速性能で気になるのは、スーパーレコードとレコードの性能差が非常に小さいこと。ゆえに、レコードがとても魅力的に映る。

新型クランクの構造上、リヤ変速よりもフロント変速で、差を感じそうであるが、レコードが明らかに劣るという感じはしない。よほど重量へのこだわりがないならレコードは十分なパフォーマンスである。

 


ライバルのシマノ・デュラエースってどんなコンポ?