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アンカーのミドルレンジモデル「RS8」、「RL8」がプロフォーマットで生まれ変わった

アンカーの基盤技術、プロフォーマットを用いて開発された2台のミドルグレードが発表された。

アンカーが誇る旗艦、「RS9」&「RL9」の下位モデルとなる「RS8」と「RL8」である。奥多摩にて行われた試乗会からの報告。

 
text:安井行生 photo:岩崎竜太

前作より大幅に進化した走り

ブリヂストン アンカー・RS8
ブリヂストン アンカー・RS8

クルマのナビが指定した場所は青梅市、多摩川沿いにある広大な施設だった。手入れの行き届いた芝生の上に白い建物が何棟も建っている。ブリヂストンの研修施設兼保養所、奥多摩園である。

2015年にプロフォーマット第一弾のレーシングモデルRS9を、2016年には第二段となるエンデュランスロード、RL9&RL6を発表し、フレーム作りの深淵に手を掛けつつある日本のアンカー。今回奥多摩園にて発表されたのは、RS9&RL9の下位モデルとなるRS8とRL8。アンカー2018ラインナップの目玉となるミドルグレードモデルである。

近年、アンカーのフレーム作りの基盤技術となっているのが、プロフォーマットと呼ばれる推進力最大化解析技術。よりよく進むフレームを作るための技術の総称だ。もちろんRS8とRL8の2車もそのプロフォーマットを用いて設計されている。

RS8のフレーム形状はRS9とまったく同じ。カーボンの種類や積層を変更し、RS9の約半額というフレーム価格を実現した。金型を共有しつつ素材を変え、派生モデルを作るという昨今お決まりとなった手法である。

担当エンジニアの植田充俊さんは「先代RS8の価格はそのままに、どれだけ性能を現行RS9に近づけられるか。それが新型RS8のコンセプトでした」と言う。旧型RS8を100%とすると、新型RS8は前三角の剛性が125%まで高められている。RS9(前三角が173%、後ろ三角が136%)ほど高剛性ではないが、ホビーレーサーがレースで使いやすい剛性感に仕上げられているという。
 
ヘッドは下側1-1/4インチの上下異径タイプ。ワイヤ類は内蔵されるが、ワイヤが入る角度は何度も試作を繰り返して煮詰めたという
ヘッドは下側1-1/4インチの上下異径タイプ。ワイヤ類は内蔵されるが、ワイヤが入る角度は何度も試作を繰り返して煮詰めたという
トップチューブは左右に広い長方形断面。ヘッドまわりのねじり剛性と上下方向の柔軟性を両立させるための形状だろう
トップチューブは左右に広い長方形断面。ヘッドまわりのねじり剛性と上下方向の柔軟性を両立させるための形状だろう
薄いトップチューブに対し、ボリュームのあるダウンチューブ。新型RS8は旧型比で前三角の剛性が25%も向上しているという
薄いトップチューブに対し、ボリュームのあるダウンチューブ。新型RS8は旧型比で前三角の剛性が25%も向上しているという
複雑な形状のBBまわり。ダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステーの全てがハンガー幅いっぱいまで広げられている
複雑な形状のBBまわり。ダウンチューブ、シートチューブ、チェーンステーの全てがハンガー幅いっぱいまで広げられている
チェーンステーは左右非対称形状。旧型RS8と比べてフレームセットで70gほど軽量化されている(旧型1690g→新型1620g)
チェーンステーは左右非対称形状。旧型RS8と比べてフレームセットで70gほど軽量化されている(旧型1690g→新型1620g)

皇族が訪れたこともあるという奥多摩園の一室でプレゼンを聞いたあとは、奥多摩湖の湖畔に移動してテストライドというスケジュール。テストバイクが並ぶ会場に行くと、アンカーらしくない色のRS8とRL8が置いてあった。RS8がミリタリーグリーン。RL8がターコイズブルー。2台ともマット仕上げだ。カラーオーダーのサンプルも兼ねているのだろう。なかなかカッコいい。カラーオーダーシステムによってアンカーの魅力は間違いなく増している。

RS8から乗ることにした。旧型RS8については、数年前にかなり辛辣なインプレ原稿を書いたことがある。正直言ってよく進むバイクとは思えなかったからだ。新型は、旧型にあったようなモッサリとした走りの重さが払拭され、かなりキビキビと動くようになっている。上りでもペダリングが軽い。さすがにRS9の嘘みたいな上質感はないが、RS9の実力の7割くらいは再現してある感じ。これでフレーム18万。悪くない。
 

これぞ“プロフォーマットらしさ”

ブリヂストンアンカー・RL8
ブリヂストンアンカー・RL8

RL8の生い立ちもRS8とほぼ同じ。旗艦エンデュランスロード、RL9のフレーム形状をそのままに、素材を変更してコストを下げたモデルだ。前作のRL8は、アンカーエンデュランスラインのトップモデルだった。その上位モデルとしてRL9が登場した今、新型RL8はRL9の弟分としてデビューする。前作とは立ち位置が異なるのだが、RS9と同様、RL8もRL9に近い性能を目指したという。

結果、前三角と後ろ三角のバランスを保ちつつ、旧型RL8と現行RL9のほぼ中間の剛性となった新型RL8。
「形状に担保されている走行性能はRL9から引き継いでいるので、素材でコストを抑えました。そのかわり重量はやや増えています」と植田さんが言うように、重量はフレームセットで50gほど重くなっているが(旧型1490g→新型1540g)、推進力の向上という重量増を補って余りあるメリットを手にしているという。

価格はRS8、RL8ともにアルテグラ完成車が33万5000円、105完成車25万5000円、フレームセット18万円。ミドルグレードど真ん中である。

2018シーズンにおけるアンカーのトピックの一つがカラーオーダーシステムの拡充だ。各モデルにはアンカーらしいレーシーなカラーも設定されるが、シンプルスタイルというカラーでは基本カラー、ロゴカラー、3種の表面仕上げを組み合わせてオーダーすることができる。2018モデルではその色数が増やされたのだ。

プロフォーマットで走りの深みを、カラーオーダーシステムで所有の喜びを。ここ数年のアンカーはかなりいい感じだ。
 
フォークも専用設計。RS8はストレートで機敏な動きを、このRL8はベンドフォークとして振動吸収性をもたせている
フォークも専用設計。RS8はストレートで機敏な動きを、このRL8はベンドフォークとして振動吸収性をもたせている
テーパードヘッドを採用するが、フレームは全体的に細身。曲線と曲面が多用されており、しなやかさと推進力を両立する
テーパードヘッドを採用するが、フレームは全体的に細身。曲線と曲面が多用されており、しなやかさと推進力を両立する
ダウンチューブもRSシリーズより明らかに細い。「RL9の乗り味は継承できたと思います」とは担当エンジニア
ダウンチューブもRSシリーズより明らかに細い。「RL9の乗り味は継承できたと思います」とは担当エンジニア
振動を吸収させるため、シートステー上部は横方向に扁平されている。しなり具合もプロフォーマットで解析したという
振動を吸収させるため、シートステー上部は横方向に扁平されている。しなり具合もプロフォーマットで解析したという
シートステーは緩やかなアールを描きながらトップチューブへとつながる。標準装備のタイヤは25Cだが、28Cまで対応する
シートステーは緩やかなアールを描きながらトップチューブへとつながる。標準装備のタイヤは25Cだが、28Cまで対応する

走り始めた瞬間、ソフトでマイルドでふかふかのソファにでも座っているような気分になった。よくあるエンデュランスロードのそれかと思ったら、乗り込むうちに剛性感の中心には強靭な芯があり、なんとも言えない進み方をすることが分かってくる。剛性は決して高くないが、なぜかパワーが吸われている感じがほとんどない。

RS9にも共通するこの上質な味わいは個人的にかなり好み。山々が秋色に色づき始めた奥多摩湖の周りをのんびりと走ってみる。気持ちのいい自転車だ。いつまでも走っていられる。頭を空っぽにしてどこまでも走っていける。試乗後、嫌な硬さがまったくないのにパワーロスがないというプロフォーマットっぽさがありますねと言ったら、植田エンジニアが笑いながら「我々の狙い通りです」と一言。自信作なのだろう。
 

Spec.

ブリヂストン アンカー RL8
シマノ・アルテグラR8000完成車価格/33万5000円(税抜)
シマノ・105完成車価格/25万5000円(税抜)
フレームセット価格/18万円(税抜)
選択可能カラースタイル:エッジスタイル2色、シンプルスタイル38色
サイズ:390、420、450、480、510、540


ブリヂストン アンカー RS8
シマノ・アルテグラR8000完成車価格/33万5000円(税抜)
シマノ・105完成車価格/25万5000円(税抜)
フレームセット価格/18万円(税抜)

選択可能カラースタイル:レーススタイル1色、エッジスタイル2色、シンプルスタイル38色
サイズ:430、460、490、520、550

 

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