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BMC新型SLR01デビュー ACEテクノロジーの申し子、第二世代へ

4年もの間、BMCロードカテゴリーのトップを張り、レースシーンで数多の勝利を収めてきた「SLR01」がモデルチェンジを遂げた。イタリアでのローンチイベントに潜入した安井が報告する。
 
text&photo:安井行生

リムブレーキとディスクブレーキの2台体制へ


4年前のあの日、先代SLR01に試乗したときの感動は、いまでもありありと思いだすことができる。このシャープな反応。このすばらしい振動減衰特性。夢のようなこの登坂性能。試乗後、勢い余ってショップに駆け込み、一台注文してしまったくらいである。あのとき、SLR01は間違いなくロードバイク界のトップ集団にいた。

そのBMCの旗艦がついにフルモデルチェンジする。そう聞いてドキドキしないわけがない。幸運なことに、イタリアはトリノで行われるローンチイベントに潜り込むことに成功した。

新型はリムブレーキ(前後ダイレクトマウント)とディスクブレーキの2タイプとなる。細身のシートステーやコンパクトなリヤトライアングルなど、旧型の戦闘的な雰囲気を残しつつも、2016年に発表されたラグジュアリーモデル、「ロードマシーン」のディティールを取り入れたようなルックスは、新世代のSLRシリーズに相応しいものだろう。

旧型SLRの最大の技術トピックは、ACEテクノロジー(=開発プログラム)だった。スイスのチューリッヒ工科大学と共同で開発したソフトを使って、チューブ形状、カーボンのグレード、プリプレグの形状と積層など何万通りものシミュレーションを行い、軽さ、剛性、快適性の最適解を導き出すという開発方法である。従来の「こういうカタチのフレームはどうだろう?」という人のアイディアを基にFEMを使って辻褄を合わせていくという開発方法とは大きく異なるものらしい。もちろん新型もそのACEテクノロジーを使って開発されている。
 
ブレードの途中から急に細くなっていた前作から一転、全体的に細身になったフロントフォーク。もちろん新設計。オフセットは一種類
リムブレーキ版は前後ともダイレクトマウントを採用
制動性能を強化することが新型SLR01の開発の目標の一つだったという
シートポストは前作と同形状ながら積層が変更された。シートクランプをトップチューブに埋め込むことで快適性向上を狙っている
チェーンステーを中心に左右非対称設計となっていることをアピールするためか、グラフィックも大胆なアシンメトリックとなっている
リヤブレーキワイヤはヘッド前面から入る。アウター受けが首を振るような設計になっており、ハンドリングへの悪影響は最小限
計算の前提条件(UCIルールから逸脱しないこと、ジオメトリー、コストなど)を設定するのはもちろん人間(BMC開発陣)だが、それをもとに最高の答えを導き出すのはプログラミング。要するに前作は、当時の技術・素材・コスト・ルールなどの制限内でスーパーコンピューターが考えうる「現状最高のモノ」だったはずである。それをどのように変化させたのか。

日程の関係でプレゼンを聞きそびれたので、夕食で同席したプロダクトマネージャー氏に話を聞いた。彼の言葉を簡単にまとめると、

・「ロードバイクの性能を構成する要素は、加速、快適性、軽さ、ハンドリング、制動性能である」

・「現行SLR01の加速やハンドリング、快適性は今でも一級にある。直近のレース(オリンピック、グランツール、クラシック……)で勝利していることでそれは証明されている」

・「いま強化すべきは制動性能だと判断した。現行と新型の最も大きな違いはブレーキング・テクノロジー」

・「我々は制動性能を強化した2つの選択肢を用意した。ディスクブレーキ版と、リムブレーキ(ダイレクトマウント)版である」

・「新たな制動システムを取り入れつつ、ACEテクノロジーを用いて他の性能は一切低下させないように留意した」


― これが新型SLRシリーズの大まかな生い立ちらしい。
さて、その結果、走りはどう変わったのか。ディスクブレーキ版とリムブレーキ版の走りに差はあるのか。SLR01は、今回も感動に値するフレームなのか―。
 
フロント用のブレーキアウターはコラムの途中からフォークに内蔵される
専用ステムはロードマシーンに採用されたものとほぼ同じもの
ステム下部からステムの中に入り、フォークコラムの脇を通る(そのためコラム断面は長方形になっている)
ブレーキは当然フラットマウント&スルーアクスル採用
ローター径はF:160mm、R:140mm
ディスクブレーキは制動時に左フォークブレードに負荷が集中する。そのため左ブレードのほうが太くなっている

ライター安井行生によるインプレッション!「納得のモデルチェンジ」

小高い丘を含むトリノ市街のアップダウンで試乗を行った。まずはディスクブレーキモデルから乗る。旧型の動力性能上の唯一の弱点は、大トルクを叩き付けたときのトラクションがやや薄かったことである。そこが新型(ディスク)では改善されていた。

どんなに踏み込んでもドカンと力強く進むのだ。左ブレードだけが太いフォークのせいか、ハンドリングには違和感があるが、すぐに慣れてしまう。上りでも平地でもどんな状況でもディスクの吐き出すトラクションはかなり濃い。今まで乗ったディスクロードの中でもかなり完成度は高いと思う。

次にリムブレーキモデル。ホイールが異なるためディスク版との正確な比較はできないが、剛性が高くトルクをかけたときにグイグイと進むのはディスクブレーキのほうだと感じた。一方、扱いやすく軽快感があるのはリムブレーキのほう。

脚を跳ね返す高剛性でもなく、かといってフレームが無様にたわむでもなく、軽々しくもなく、鈍重でもない。前作同様素晴らしいバランスである。ダイレクトマウントになったことで制動性能の向上は明らか。平地でのトラクションではディスクモデルに一歩劣るが、上りで一体感があるのはこのリムブレーキモデルだ。

エンジニアにこの印象の違いを伝えたら「それはホイールの違いによるところが大きいのではないか」と言われてしまったが、フォーク剛性に8%もの差があるのだから走りも微妙に変わると思う。とにかく2モデルとも魅力的だ。旧型オーナーとして納得のいくモデルチェンジである。
 

spec.

「チームマシーンSLR01」
スラム・レッド完成車価格/68万円(税抜)
シマノ・R8000アルテグラ機械式完成車価格/60万円(税抜)
フレームセット&パーツキット価格/50万円(税抜)

フレーム:ACEテクノロジープレミアムフルカーボン
フォーク:専用プレミアムフルカーボン
シートポスト:オリジナル型フルカーボン
付属品:BMC・RSM01ステム
ハンドル:3T・エルゴノヴァチーム
サドル:フィジーク・アンタレスR3カーボン
サイズ:47、51、54、56
カラー:チームレッド、カーボンレッド
フレーム重量:810g(54サイズ) 
フォーク重量:350g(コラム切断前)




「チームマシーンSLR01ディスク」
シマノ・R8050アルテグラDi2完成車価格/89万円(税抜)
シマノ・R8000アルテグラ機械式完成車価格/64万円(税抜)
フレームセット価格/54万円(税抜)

フレーム:ACEテクノロジープレミアムフルカーボン
フォーク:ディスク専用プレミアムフルカーボン
シートポスト:オリジナル型フルカーボン
付属品:BMC・ICM01ステム
ハンドル:3T・エルゴノヴァチーム
サドル:フィジーク・アンタレスR3カーボン
サイズ:47、51、54
カラー:チームレッド、カーボングリーン
フレーム重量:825g(54サイズ)
フォーク重量:355g(コラム切断前) 

※付属品はフレームセット&パーツキットの場合
※完成車は仕様が異なる場合があります



『サイクルスポーツ2017年9月号』ではSLR01の担当エンジニアとのインタビューを2ページに渡って掲載。もっと深く知りたい人は本誌をチェック!

 
ディスクブレーキ版。シマノ・アルテグラDi2完成車、アルテグラ完成車、フレームセットがラインナップ。フレーム単体重量は825g(サイズ54、塗装済、小物込み)とリムブレーキ版とほぼ変わらず
リムブレーキ版フレーム単体重量は810g(サイズ54、塗装済、小物込み)と重くなっているが、理由は各性能を維持しつつ強度を上げたため

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